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No.13960の一覧
[0] 『男子が花道』(リリなの二次 転生男オリ主 原作知識なし 同年代)[十和](2011/02/03 00:01)
[1] 『本気でなのはに恋する男』 一話[十和](2009/11/14 18:14)
[2] 『本気でなのはに恋する男』 二話[十和](2009/11/21 14:06)
[3] 『本気でなのはに恋する男』 三話[十和](2009/11/26 00:43)
[4] 『本気でなのはに恋する男』 四話[十和](2009/12/06 21:56)
[5] 『本気でなのはに恋する男』 五話[十和](2009/12/12 17:08)
[6] 『本気でなのはに恋する男』 閑話[十和](2009/12/19 16:31)
[7] 『本気でなのはに恋する男』 六話[十和](2009/12/26 16:03)
[8] 『本気でなのはに恋する男』 七話[十和](2009/12/29 22:23)
[9] 『本気でなのはに恋する男』 八話[十和](2010/01/02 17:41)
[10] 『本気でなのはに恋する男』 九話[十和](2010/01/09 17:10)
[11] 『本気でなのはに恋する男』 十話[十和](2010/01/16 22:25)
[12] 『本気でなのはに恋する男』 十一話[十和](2010/01/24 00:44)
[13] 『本気でなのはに恋する男』 閑話2[十和](2010/02/06 15:52)
[14] 『本気でなのはに恋する男』 十二話[十和](2010/02/06 16:16)
[15] 『本気でなのはに恋する男』 十三話[十和](2010/02/13 16:36)
[16] 『本気でなのはに恋する男』 十四話[十和](2010/02/21 03:06)
[17] 『本気でなのはに恋する男』 十五話[十和](2010/02/28 03:46)
[18] 『本気でなのはに恋する男』 十六話[十和](2010/03/07 04:46)
[19] 『本気でなのはに恋する男』 十六話②[十和](2010/03/14 04:01)
[20] 『本気でなのはに恋する男』 十七話[十和](2010/03/21 14:32)
[21] 『本気でなのはに恋する男』 閑話3[十和](2010/03/28 10:42)
[22] 『本気でなのはに恋する男』 十八話[十和](2010/04/04 11:03)
[23] 『本気でなのはに恋する男』 十九話[十和](2010/04/11 00:50)
[24] 『本気でなのはに恋する男』 二十話[十和](2010/04/18 02:40)
[25] 『本気でなのはに恋する男』 二十一話[十和](2010/04/25 03:48)
[26] 『本気でなのはに恋する男』 二十二話[十和](2010/05/03 22:19)
[27] 『本気でなのはに恋する男』 二十三話[十和](2010/05/09 20:54)
[28] 『本気でなのはに恋する男』 閑話4[十和](2010/05/15 22:25)
[29] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話[十和](2010/05/22 17:27)
[30] 『本気でなのはに恋する男』 二十五話(無印終了)[十和](2010/05/30 04:14)
[31] 『本気でなのはに恋する男』 二十六話[十和](2010/06/27 10:51)
[32] 『本気でなのはに恋する男』 二十七話[十和](2010/07/04 22:03)
[33] 『本気でなのはに恋する男』 二十八話[十和](2010/07/14 23:33)
[34] 『本気でなのはに恋する男』 28.5話[十和](2010/08/15 23:44)
[35] 『本気でなのはに恋する男』 二十九話[十和](2010/09/05 23:24)
[36] 『本気でなのはに恋する男』 三十話[十和](2010/11/07 00:59)
[37] 『本気でなのはに恋する男』 三十一話[十和](2010/11/25 00:15)
[38] 『本気でなのはに恋する男』 三十二話[十和](2010/12/24 00:10)
[39] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話[十和](2011/02/03 00:02)
[40] 『本気でなのはに恋する男』 三十四話[十和](2011/04/12 00:05)
[41] 『本気でなのはに恋する男』 三十五話[十和](2011/08/12 23:47)
[42] 『本気でなのはに恋する男』 三十六話[十和](2011/12/04 23:03)
[43] 『本気でなのはに恋する男』 三十七話(空白期間終了)[十和](2012/03/20 00:10)
[44] なの恋 簡易的キャラ紹介[十和](2011/12/04 23:04)
[45] 『なの恋』 外伝 『ドリームカップル』[十和](2010/06/06 21:32)
[46] 『なの恋』 外伝『ARISA』[十和](2010/08/15 23:39)
[47] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅡ』[十和](2010/10/06 00:08)
[48] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)[十和](2012/03/20 00:10)
[49] ネタ『魔法少女リリカルなのは TTS』[十和](2010/06/20 03:13)
[50] オマケ『短編集』[十和](2010/10/06 00:11)
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[13960] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話
Name: 十和◆b8521f01 ID:c60c17ce 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/03 00:02
+++

ピンポーン

『はい、どちら様ですか?』
「あ、すいません美由希さんですか? 俺ですけど」
『おや、雄介? ちょっと待ってねー』

 休日の朝に俺が居るのは、高町家のインターホン前だ。
 時刻的には、ちょうど9時半になったばかり。
 しばしそのまま待っていると、美由希さんが姿を見せる。

「や、おはよう雄介」
「おはようございます、なのは居ますか?」

 ちなみに今日は、高町家にて勉強会みたいな感じ。
 たまに、本当にたまに俺達もこういう事をやったりもするのだ。
 まぁ大抵は途中から、普通に遊んでるんだけど。

 ちなみに今日は、アリサとすずかは居なかったりする。
 アリサは父親が一昨日帰ってきて、急遽キャンセルで。
 すずかは今回は先約ありだそうで、後で聞いたら八神との約束らしいけど。

「ん? いや、今日はまだ起きてきてないよ…約束でもしてた?」

 思わず、首を傾げる。
 約束の時間は10時で、確かにちょっと早く来てしまったけど、まだ起きてないとは思わなかった。
 忘れてた、のか? 誰かに言うのをか、俺が来るのをかは分からないけど。

「一応、10時の約束だったんですけど…?」
「そうなの? まだ起きてないし、昨日はちょっと夜更かししてたみたいだったけど…取り合えず、中で待つ?」

 美由希さんの好意に頷いて、高町家へと入れてもらう。
 それにしても、なのはがこんな時間まで寝てるなんて珍しい。
 夜更かしもしてたらしいし、俺が来るのも昨日確認したから忘れてたとかも無いとは思うけど。
 美由希さんに、玄関の方へと先導されながら。

「今日は、雄介だけなんだ?」
「えぇまぁ、すずかは前からと、アリサも一昨日に用事が入りまして」
「ほうほう、つまり雄介万々歳と」

 美由希さん、そろそろ俺の中ではそのニマニマ顔がデフォルト何ですけど?
 なんかもう、慣れきってしまった美由希さんのからかいを受け流しつつ、高町家の玄関をくぐる。
 靴を脱ぎ、完全に上がらしてもらったところで。

「どうする? 声くらい、掛けてきてあげよっか?」
「あーいえ、良いです寝てるのを起こすのも忍びないんで」

 別に、他に用事があるわけでも無いから、特に待つのに支障はないし。
 リビングかどこかで、大人しく待たせてもらおうかな。
 寝起きのなのはに、ビックリとかはさせたくない。

 と、ちょうどそんな事を考えていたその時。
 美由希さんの向こうにある二階へと上がる階段、その一番上に人影が見えた気がして。
 何の気なしに視線を向ければ、そこに居たのはちょうど俺が待とうとしていた人。
 ただ…

「おねえちゃん、おはよー…」
「おはよー、なのは」

 寝起きのせいか、それとも美由希さんが間に居て俺が見えてないのか、美由希さんとだけ挨拶を交わすなのは。
 本当に寝起きなんだろう…パジャマ姿のままで、目元を擦りながらゆっくりと階段を降りてきている。
 …何と言うか、始めて見たからちょっと得した気分と思うのは、ちょっとあれだろうか?
 あ、しかも寝癖ついてるぞ。

「今日は、ずいぶんゆっくりだったねぇ?」
「…うん、昨日ちょっと遅くまで起きてたから」

 片手で目元を擦りながらも、片手でペタペタと壁を探りながら、ゆっくりと階段を降りているなのは。
 ごめん正直けっこうハラハラしてます、いつ足を踏み外してしまわないか凄い怖いんだけど。
 あぁなのは、せめてちゃんと目を開けてから階段は降りてくれ…!

「そっか、でもなのは? 雄介、もう来てるよ?」
「……ふぇ?」
「え?」

 いかん、なのはの様子を見るのに必至で、美由希さんの言葉を全然聞いてなかった。
 とっさに美由希さんを見た後で、何でかなのはの方を指されたので、もう一度視線を戻して。
 そこでなのはと、バッチリ視線が合った。

 パチパチと、分かりやすく瞬きしているなのは。
 どうしたものかと一瞬考えたけど、取りあえずは挨拶が先か。
 内心では少々、始めて見るなのはの姿にドキドキしつつ片手をあげて。

「あー…おはよう、なのは」
「…?」

 あれ? 何でか、無言で小首を傾げてしまうなのは。
 何か間違ったか…いや、間違うような要素はどこにも無かった筈だけど。
 取りあえず、もう一回挨拶した方がいいのかと思って。

「あー」
「え、っと…?」

 なのはに、途中で遮られてしまった。
 しかも、何でかさらに不思議そうな顔になってる。
 次は一体どうしようかとも思ったけど、取りあえずは挨拶するくらいしか無いしなぁ。

 何でか、なのはがゆるゆるとこちらに指を突きつけているのは、寝起きだからと気にしないようにして。
 いや実のところ気になるし、よくよく見れば何だか少しずつ、表情が驚きに変わってるような…?
 そうは思いつつ、まぁ挨拶が先だろうと自分に言い聞かせて。

「…おっす、なの」
「ふえぇぇぇええーーーーっ!?」

 うぉ!? ビ、ビックリと言うか、何その反応!?
 再び挨拶しようとした俺の声を遮って、いきなり悲鳴を上げたなのはは、そのまま一気に階段を駆け上がって俺の視界から隠れてしまう。
 いや、ちょ…ふ、普通に傷つくんだけどその反応!?

 なに、と言うよりも何で!?
 我知らず強張る体に苦労しながら、ようやく階段の上を見ればなのはが少しだけ顔を出していて。
 思わぬ事に硬直してしまっている俺に聞こえてきたのは、階段の上に隠れているなのはからの、悲鳴のような問いかけだった。

「な、何で雄介くんが居るの!?」
「え、いや…何でって、約束、してたし…?」

 それなのに何でって、それも地味に傷つくんですけど…?
 なのはにとっては、俺との約束ってそんなものなのだろうか…いや、違うよな?
 そんな事をつい自問しそうになるが、

「そ、そっちじゃなくて! まだ時間じゃ無いよ!?」
「いや…三十分前だから、良いかなって思ったんだけど」

 ダメだったんだろうか…って、このなのはの取り乱しようは、ダメだったって事だよな。
 よし、落ち着け俺。
 まずはクールに…そう、原因から考えようか!

 まず、何よりも一番の大元の原因になるのは、俺が約束の時間よりも前に来たことだろう。
 その所為で、なのはをびっくりさせてしまったんだし…なら、俺が次にするべきなのは一旦出直す事だろう。
 うん、そうと決まれば一応なのはに声を掛けて…と思ったんだけど。

「え、えっと! すぐに準備するから、もうちょっとだけ待っててね雄介くん!」
「え、いや俺…」

 出直そうか、と言おうとした時には、二階からドタバタと走る音。
 少し後には、ガチャバタンと言う音も聞こえたので、どうもすでに部屋へと戻って行ってしまったようだ。
 言いかけたそのまま姿勢で、しばし呆然とする俺。

 俺ここに居ても大丈夫かなとか、やっぱり早く来るべきじゃなかったとか…いや、お陰で珍しいものは見れたけれども云々。
 色々考えている俺の横で、美由希さんが面白そうな顔をしてるのには、文句を言ってやりたいところでもあるのだけれど。
 そんな事をつらつらと、現実逃避に考えていたら

「きゅー」
「ん?」

 聞こえた鳴き声に、ふと顔を階段の上に向けてみれば、小さな影が階段を降りてきていた。
 小さな体で軽やかに階段を駆け降りてくるユーノ、そういや寝るときはなのはの部屋に居るんだから、なのはが起きてようやく出てこれたんだろう。
 と美由希さんが、そんなユーノに近づきつつ。

「ほら、こっちおいでユーノ~?」
「…きゅ」

 伸ばした手を、あっさりと避けられてしまっていた。
 ユーノはそのまま、俺の方へと向かって来たので、軽く手を差し出せばその手に飛び乗り、俺の肩へと自分から移動した。
 …いやあの、美由希さん? そんな恨めしそうな眼で見られても、困るんですけど?

「どーして、雄介にはそんなに懐いてるかな…」
「いえ、知りませんてそんなの…案外、男同士とでも思ってるんじゃないですか?」

 俺の記憶が正しければ、恭也さんにもけっこう懐いてた筈だし。
 だから、そんな眼で見られても、本当にどうしようもありませんから。
 と、それよりもこんな玄関先でいつまでも、ぼーっと立ち尽くしてるわけにもいかないか。

「美由希さん、なのはにリビングで待ってるって伝えてもらって良いですか?」
「ん、それは良いよ…別に、なのはが降りてきてからでも?」

 もちろん、伝えてくれればそれで良いので、問題はなし。
 一度美由希さんに軽く頭を下げて、後は勝手知ったる他人の家…ユーノを連れてリビングの方へ。
 移動中、ふと物音があんまりしないのに気づいて、士郎さん達は翠屋だろうかと考える。

 そしてリビングへと到着し、そのまま横断し縁側へと向かう。
 実は俺、高町家の縁側がかなり好きだったりする。
 家のマンションに無いと言うのもあるが、それよりも何となく縁側と言う空間にかなり落ち着きを感じるのだ。

 そうして縁側を視界に入れたところで、先客が居るのに気がついた。
 先客は家の中に居る俺に背中を向けている形になるけど、でも多分俺に気づいてるよな。
 だって、縁側に居るのは

「おはようございます、恭也さん」
「あぁ、おはよう雄介」

 一度は振り向いて挨拶をかわすと、すぐに恭也さんは元の方へと向き直った。
 取り合えずそのまま縁側に近付き、近くに持ってきた荷物を置いてから改めて縁側に出る。
 恭也さんの横の方に座って、その手元を見れば…俺の見る限りではいつも通りに、盆栽を弄っていた。

「今日は、翠屋には出ないんですか?」
「あぁ、たまにはな。 それに昼には、皆ここに揃う筈だ」

 そうなんですかと相づちを打ちながら、ユーノが降りたそうにしていたので一応、恭也さんとは反対側に降ろした。
 と、ユーノはそのままどこかに行ったりはせずに、そのまま俺や恭也さんと同じように縁側に居座り始める。
 二人と一匹…一体どんな取り合わせだと思いながら視線をどこへともなく、取り合えず高町家の庭へと向けて、ただただボーっと外を眺める俺。

 そのまましばらく、うるさい車も近くを通っていないのか、横から聞こえるチョキンと言う音以外は本当に静かで。
 俺としては騒がしいのが嫌いと言うわけでは無いけれど、だからと言って静かなのが嫌いと言うわけでもない。
 だからノンビリと、この静寂を楽しんでいると。

「お、お姉ちゃん退いてー!?」

 高町家の中の方から、なにやら物音と声が聞こえる。
 擬音で表すなら、ドタドタとトタタタタの中間くらいの、慌ただしい…足音かな、コレは?
 足音なら多分なのはだろうし、音の感じからすると多分もう一階に降りてきてるな。

 と言うか退いてと言っているからには、もう一階に降りてきて美由希さんと会ってるか。
 こっちにまだ来てないのは…洗面所かな、寝起きだったし寝癖もついてたし。
 女の子だから時間も掛かるだろうし、まだもうしばらくはここに居れるかな?

 そんな事をつれづれと考えながら、まだぼーっと外を眺めた。
 隣の恭也さんも、逆側のユーノも静かなので静寂をより楽しめる。
 …何となく、これで隣がなのはだったらなぁと思わなくもない。
 なのはは、静かな時間も楽しめる方だと思うし…これがアリサだったら、すぐにでも暇そうにして話しかけてくるんだろうな…すずかなら多分静かなままだろうけど。

「…雄介、何をそんな顔をしてるんだ?」
「…へ?」

 掛けられた声に顔を上げてみれば、恭也さんの不思議そうな顔。
 そんな顔って、一体どんな顔なんだろうか?
 思わず、自分の顔を触って確認…うん、良く分からんな。

「そんなって、どんな顔してました俺?」
「そうだな…何やら眉根寄せていたが」

 そう恭也さんが言うのに合わせるように、なぜかユーノがきゅーと鳴いた。
 俺の表情は、フェレットにも易々と見抜かれてしまうんだろうか?
 ともあれ、

「心当たりがないです、そんな変な顔してましたか?」
「変、とまでは言わないが…何か考えていたのか?」
「えーと…こんなに静かな場合、三人はどんな反応するかな、くらいですけど」

 そうか、と頷いて首を傾げる恭也さん。
 思わず真似して首を傾げ、ちらっと見ればユーノも真似をしている。
 ううん、良く分からん。

「雄介くん! ごめんね、お待たせ…って、何してるの?」

 背後からの声に振り返れば、そこには普段どおりの姿になったなのは。
 服装はもちろんパジャマでなく普通の服で、髪型もいつも通りに二つに縛っている格好だ。
 恭也さんと話していて、接近に気づかなかったか。

「いや、特に何してるわけでも無いぞ?」
「そうだな、おはようなのは」
「あ、うん。 おはよう、お兄ちゃん」

 なのはと恭也さんが挨拶を交わしてる横で、よいせっと立ち上がる俺。
 ふと時計を見れば、もう来てから20分近く経っていて10時も目前だ。
 荷物を手に取り、家の中に入ろうとしてふと

「ユーノ、お前も来るか?」
「…きゅー」

 おぉ、首を横に振られてしまった。
 毎回思うけど、本当に頭が良いんだなユーノは。
 まぁ単に偶然の可能性もあるけど、ユーノは本当に分かってそうな行動が多いし。

「あ、あの雄介くん…その、ごめんね? あの、いきなりだったからビックリしちゃって」
「え、あ、いや、気にするな。 俺も約束より早く来ちゃったし、お互い様だろ」

 家の中に入った途端、そんな風に謝られて俺も慌てて謝る。
 ビックリしたのもお互い様だろう、俺も約束の時間守ってないんだしな。
 そんな風に互いに謝っていたら、どこからともなく小さく笑うような声が。

 思わず口を閉じて、一体どこから聞こえているのかを探すと…なのはと俺の視線が、同時に縁側の恭也さんへと集中した。
 じとっとした眼でその背中を見ていると、微妙に肩が震えているようにも見える。
 もう一度なのはと視線を合わせて、

「じゃ、じゃあ部屋にいこっか?」
「…そうだな、もうすぐ約束の時間だし」

 追求しても、間違いなくはぐらかされそうだし。
 背中を向けたままの恭也さんに、一礼だけして先に歩きだしたなのはを追う。
 何だか朝から色々と有りすぎた気がしないでもないが、もうこれ以上は無いよなぁ。

+++

「なのは、さっきから難しい顔してるけど、何か分からないのか?」
「え、あ、うん。 ちょっとこれが分かんないんだけど」
「ん、どれだ?」

 互いに時折教え合いながら、勉強会を始めて二時間ほど経った。
 まぁ勉強会とは言うけれど、実際の中身はちょっと違う。
 勉強はしてるんだが、その中での役割分担があるのだ。
 簡単に言うなら、俺とアリサが一応の先生役で、なのはとすずかが生徒役みたいな。

「…ねぇ雄介くん、雄介くんって塾に行き始めたのって今の塾が始めてなんだよね?」
「ん? まぁ、そうだな…それまで行ったこと無かったし」

 まぁなのはは数学が強いし、すずかは微妙に深い知識があるから、完全に分担してる訳じゃないんだけど。
 しかも大抵の場合は、最終的に皆で一緒に問題解いたりしてるから、本当に一応でしか無いんだよな。
 誰にでも、得意科目や不得意科目はあるんだし。

「じゃあ、どうしてそんなに勉強できるの?」

 そしてその勉強会の最中に、何の前触れも無くなのはから言われた一言が、これだ。
 聞いた瞬間は、何を言われてるのか良く理解出来ず、ただただ首を傾げるしか出来なかったが…。
 ゆっくりと、その意味を考えて。

「…なんだ、急に?」

 取りあえず、そう言うしかなかったのは仕方ないと思う。
 なのはの顔に視線を向けてみても、その表情には特に揶揄したりとかそういうものは窺えない。
 となると、なのははこれを本気で聞いてるわけだが。

「だって、雄介くんってあんまり勉強とかしてないのに、アリサちゃんと同じくらいテストとかも出来てるなぁって思ったから」

 …あれ? 微妙に貶されてないか俺、勉強してないとか。
 いや、確かにしてないけどさ。
 だがしかし、それとこれとは微妙に違う気がする。
 ともあれ、なのはから聞かれたことに答えるのならば。

「まぁ、勉強してなくても本は読んでるし?」

 我ながら、疑問系の答えだ。
 いやでも、それ以外に答えようがないし。
 少なくとも、漢字系統は本を読んでるから得意なんだと自分では思ってる。

「そっか、雄介くん本とかたくさん読んでるもんね」
「俺の個人的な考え方だけど、例えば漢字なんかは読めないと書けない、って思ってるしな」

 読めれば、部首の特定も出来ることがあるし。
 取り合えずその漢字の読みが分かれば、それだけでもどんな漢字かパズルみたいに組み合わせで完成させれると思う。
 まぁ、それでも漢字は覚えないといけないけど。

「さ、最後が一番苦手かも…」
「あー、公式覚えたりするのは、得意なのにな?」

 俺の言葉に、うんうんと頷いて見せるなのは。
 まぁでも、なのはの場合は出来ないと言うより、アリサを基準に考えてるっぽいし。
 あれはあれで、十分に規格外なんだけどな。

 それに、なのはとすずかの成績は同じようなもんだし。
 すずかの場合は、何と言うか雰囲気でものすごく勉強できるように見えるけど。
 あぁでも、学業以外での知識量なら、すずかが圧勝してそうだ。

「…雄介くん、何か失礼なこと考えてない?」
「え、いやいや。 たんに皆どれだけ勉強できたか、思い出してただけだぞ?」

 嘘は言ってないし、本当に否定的な意味合いは含んでないぞ。
 ただ、こうして考えると、相対的になのはは勉強が出来ないになっちゃうんだよな。
 クラスの中では、間違いなく出来る方に入るのに。

 比較対象が悪すぎる、という言葉しか出ないな。
 と言うか、むしろアリサはどうしてあそこまで勉強が出来るのか…しかも結構な割合で俺を上回るし。
 毎日勉強してるのもあるんだろうけど、それでも凄すぎると思う。

「…私も、本とか読んだらもっと勉強出来るようになるかなぁ?」
「…んー、どうだろうな? ただ読むだけじゃ、意味はないと思うが」

 むむむ、なんて唸り出してしまうなのは。
 ただ読むだけじゃ意味が無いと思うのは、本当だけど…読まないよりは良いかも知れない。

「あー、良かったらなんか、読めそうなのでも探そうか?」
「え?」

 キョトンとした顔をするなのは、内心すこしだけ慌てながら言葉を続ける。

「いや、取り合えずは俺が持ってる奴の中からだけど、今ちょうど他の奴にも本探してるからついでに出来るし?」
「そうなの? …あんまり、難しくないのとかある?」
「それはまぁ、俺だって最初から難しいの読んでたわけじゃないし…それに、そんな難しい本は読んでないぞ俺は」

 基本的に、ライトノベルが主だし。
 つい昨日、八神に貸すのも決めたから、それなりに薦めれるのにメドもたってるし。
 なのははそこまで本を読んでないし、まずは薄めのかな?

 いや、本自体の厚さよりも話の長さが短い方が良いか?
 だとしたら、なんか短編連作みたいな感じの中から、選ぶとするかな。
 …って、何をなのはが頷いてもないのに、もう貸す本を考えているんだろうか?
 まず大前提として、なのはが読もうと思わなければ意味がないわけだし。

「うん、じゃあお願いしても良い?」

 …あれ?

 思わず首を傾げ、もう一度なのはの顔に視線を向ける。
 すると不思議そうな顔のなのはと目が合い、あぁさっきのは幻聴じゃなかったかと理解。
 一人そうやって納得していると、今度はなのはが不思議そうに首を傾げて、そういえばまだ了解の返事をしていないのに気がついた。

「え、あ、おう。 モチロンですよ?」
「…雄介くん、言葉遣い変だよ?」

 …ゴメン、まさか頷くとはあんまり思ってなかったんだ。
 内心でも、否定したばかりだったし…もちろん、そんな事を馬鹿正直に言えば、なのはの機嫌を損ねるのは間違いないわけで。
 なのはの疑惑の視線を受けながらも、どうにか愛想笑いで誤魔化しきろうとする俺だった。

+++

 そしてそれからしばらくし、お昼も過ぎたので本探しのために俺の家に移動することとなった。
 一応むこうでも勉強はするつもりなので、今度はなのはが荷物をまとめる。
 その間、俺はと言えば。

「…そんな訳で、午後はなのはも俺ん家に居ますんで、連絡がつかない時は家にお願いします」
「あぁ、わかった。 まぁ、何もないとは思うが」

 恭也さんの言葉に、でしょうねと返しながら頷く。
 本当に一応程度だし、伝えておかないのは何となくアレだし。
 そんな事を考えながら、なのは待ちで恭也さんと話していると。

「雄介、それってもうすぐにでも家を出るの?」
「…美由希さん、急に現れないでください」

 視界の外から、いきなりヌッと現れた美由希さんには、もう驚けない。
 なんせ、結構な頻度でこういう現れ方してるし。
 ただただ、呆れるしか無かったりする。

「まぁまぁ…で、どうなの?」
「一応、そのつもりですけど…どうかしました?」
「うーん、どうかって言うかね」

 そう言って、言葉を切る美由希さん。
 何か言いよどむような事が、今の会話のなかにあっただろうか?
 不思議に思い、首を傾げていると。

「あら? いらっしゃい雄介君」
「あ、はい、お邪魔してます桃子さん」

 ちょうどキッチンの方から、桃子さんが顔を出していた。
 そのままこちらへと歩いてくる桃子さんは、何でかエプロンを着けている。
 そういや俺が来た時には居なかった筈だけど、勉強している間に帰ってきたのだろうか?

「荷物をまとめてるけど、もう帰るのかしら?」
「あぁいえ、えっと…帰ると言うか家の方に、場所を移そうと言う話になりまして」

 そうちょうど答えた時、軽い足音が俺たちのほうへと近づいてくる。
 足音の軽さからすると、今ここに居ない士郎さんでは有り得ない。
 つまりは、もうあと一人しか居ないわけで。

「お待たせ、雄介くん! …あれ、お母さん?」
「おはようなのは、あんまり家の中で走っちゃダメよ?」

 キョトンとした顔を桃子さんに向けるなのは、ぱっと見る限りでは出掛ける準備はもう完璧のようだ。
 起きてからまだ一度も会っていなかったのか、色々と話を始める二人。
 そんな二人を、ぼけーっと見ていると。

「ところでなのは、お昼はどうするの?」
「え?」

 なのはが桃子さんから唐突に、そんな言葉を言われていた。
 聞いていただけなのに思わず俺までポカンとしてしまうが、よく考えれば今はもうお昼時…を少しばかり過ぎている。
 すっかり時間を見るのを忘れていた…と言うか、桃子さんがエプロン着けてるんだから気づけよ俺。

「もちろん、雄介の分もあるよー?」
「え、俺のもですか?」

 美由希さんとかにもちろん、と言われるのは地味に嬉しい。
 何と言うか、一員に見て貰えてる気がするし。
 まぁ、なのはの家に遊びに来たときには、けっこう頻繁にごちそうになってるんだけど。

 と、そんな事を考えていたら、なぜか急に美由希さんがニヤニヤし始める。
 ヤバイ、嫌な予感しかしない。
 内心で身構えていたら、美由希さんはなのはの方を向いて。

「良かったねぇ、なのは? 雄介の家に行ってなくて」
「ふぇ?」

 美由希さんの言葉になのはが首を傾げているけど、内心では俺も疑問だ。
 俺の家にまだ行ってない事と、お昼ご飯にいったい何の関係が?
 そう思っていると、美由希さんは自分のお腹を示しながら。

「朝も食べてないんだから、食べておかないと途中でぐーって鳴るんじゃない?」
「…そ、そんな事ないよ!」

 笑い顔でそういう美由希さんに、想像したのか顔を赤くして反論するなのは。
 いやまぁ、確かに他人の家でそれは恥ずかしいよなぁ。
 恥ずかしいと言うか、何だか居たたまれない気分になりそうだ。

 それにそういえば、俺が来たときに起きてきたんだから、朝から何も食べてないんだよな。
 完全に想定外、考えもしなかった。
 俺だって、今日の朝はしっかり食べたんだけど。

「まぁ、雄介ならしれっと流してくれそうだけどね~」
「え…いや、まぁそうでしょうけど」
「だ、だからそんな事無いってば!!」

 いきなり話を振られたので、咄嗟に答えたらなのはに怒られてしまった。
 そのまま顔を赤くして美由希さんに食って掛かるなのはだが、美由希さんはのらりくらりと笑いながらいなしている。
 本気では無いだろうけど、顔を真っ赤にして怒るのを見て…可愛いなぁとか思うのはダメだろうか?
 いやダメじゃない、なんて自己完結していると。

「も、もう! 行こう、雄介くん!」
「ん…ん? え、いや…なのは!?」

 自分の考えに沈んでいて、頷いた後にようやく言葉の内容に気が付いた。
 行こうって、何に?
 いや、今までの会話からすると一つしかないけれども。

 驚きながらなのはの方を見ようとして、何かが両方の肩に置かれる感触。
 いったい何がと思い、置かれたものを確認すれば、それは何となのはの両手で。
 置いた両手で俺の肩を掴んだなのはは、そのまま俺を背後から押し始めたのである。

「ほ、ほら! 雄介くんもしっかり歩いて!」
「い、いやいや! 押さないでくれなのは、コケるから!」

 ぐいぐいと、なかなかに強い力で押してくるなのは。
 周りの人たちは笑ってみていて、助けてくれそうもない。
 いや、もちろん抵抗しようと思えば出来るんだけど。

 いや別に抵抗する必要も無いのか、実は?
 なのはがもう行こうと言ってるんだし、食事は最悪コンビニにでも寄れば問題ない。
 いやでも、それもこの調子だと、なのはの方が拒否しそうだ。

 と言うことはつまり、やっぱりここで食べるのが一番な訳で。
 家に来ても、何か食べ物があったか怪しいし。
 …結論と言うか最終的には、美由希さんがからかわなければ何の問題も無かったわけだ、ウン。

「…あぁうん、なのは? 美由希の言うことは気にしないで、お昼くらいは食べていったらどうだ?」
「そうね、なのはの分もあるから、ちゃんと食べてから出掛けなさい」

 恭也さんと桃子さんがそれぞれで声を掛けて、若干ながらなのはが俺を押す力も弱くなる。
 後ろから聞こえる引き留める声に、俺も便乗して何か言おうとしたその瞬間。

 ぐー

 とんでもないタイミングで、今一番聞こえてはいけない音が聞こえた。

 ピタリと、全員の動きが止まる。
 音の発信源は…少なくとも、俺では無い。
 俺ではなく、ついでに言えばその音はとても近くから聞こえて。

「…」

 無言で、出来る限り体を動かさないようにして後ろを見てみる。
 後ろに居るなのはの顔は、ちょうど下を向いていて見えない。
 見えないが…チラリと見えている耳の辺りが、ものの見事に赤くなっていて。

 色んな意味で、何か言わねばと思う。
 いやまぁ、何を言えば良いか何てちっとも分からないんだけども。
 でもアレだ、何か言わないと凄い気まずいよね?

「あー…」
「っ!?」

 ただ声を出しただけなのに、物凄くなのはにビクッとされた。
 よし落ち着け俺、ここで失敗するとなのはがさらに恥ずかしい思いをしかねないんだ。
 何て言えば、この場を丸くおさめられるか…それでこの気まずい空間は解除されるはず!

「その、なのは?」
「…な、なに?」

 もう一度、チラッと後ろを見てみるが、いまだになのはは顔を上げていない。
 ついでに、返事の声も若干硬かったりするが、きっと多分おそらく一応これで大丈夫!
 と言うか、もうこれ以外に何にも思い付かないけどな!
 いちかばちか、当たって砕け…たくは無いけれど、取り合えず言うしかない!

「いやその、実は盛大にお腹が減ってきたから、ここでお昼をご馳走になりたいなーとか…まぁうん、そう思ってたりするんですが…どうでしょう?」

 なのはからの反応がなかったので、つい敬語になってしまった。
 いやうん、自分でも白々しいとは思ってるんだけど。
 でも! 他に思い付かないんだから仕方ないじゃないか!

「…」

 背後のなのはからは、無反応。
 顔が見えないので、今怒っていたりするのかも不明だ。
 ヤバイ、なんかじわじわと不安になってきたんですけど…?

 内心でそんな不安と戦っていると、唐突に俺の体が反転した。
 いや、勝手に反転するわけは無いし、なのはがしたのは分かってるんだけど。
 さっきまで玄関に向かっていた体が、今度は高町家の奥の方へと。

「あー、えっと…なのは?」
「…」

 後ろは向かずに声を掛けてみるけど、無視されてしまった。
 いや完全に無視じゃなくて、ちょっと強めにぐいぐいと肩を押されたので、何も言わずに早く移動してほしいのだろうけども。
 今度は正面に見える美由希さんが、恭也さんからオシオキを受けているけど、ざまあみろとしか思わない。

 と、まぁ色々なんだかありすぎるくらいにあったけれど、お昼は高町家でご馳走になり、それからなのはと二人、改めて俺の家へと移動したのだった。


+++後書き
 …また、一ヶ月かかってしまったorz
 今回は一応予告どおり、なのはメインなお話です。
 なのはメインと同時に、高町家メイン(士郎除く)な話でもありますが。

 …最近どうにも、妄想力が落ちてきた気がしてならないですww
 書こうと思った場面が、ちっとも脳内に描けない…もしかして、熱が冷めてきたんだろうか…?
 むぅ取り合えずは、リリなの日常系で個人的に崇拝してる某作品でも読んで来よう。

 あと、そろそろタイトルの【チラ裏より】は消してもいいかなと思ってるんで、近いうちに消すかもです。
 まぁおそらく次回更新時に消すつもりなので、次回はお気をつけ下さい。

 妄想力を鍛えつつ、それではまた次回の更新にて!
 あ、一応ですが、作者は劇場版未見なので、そちら関係のものは一切気にしないので、設定とかで矛盾あっても直しませんのでご了承ください。


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