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No.13960の一覧
[0] 『男子が花道』(リリなの二次 転生男オリ主 原作知識なし 同年代)[十和](2011/02/03 00:01)
[1] 『本気でなのはに恋する男』 一話[十和](2009/11/14 18:14)
[2] 『本気でなのはに恋する男』 二話[十和](2009/11/21 14:06)
[3] 『本気でなのはに恋する男』 三話[十和](2009/11/26 00:43)
[4] 『本気でなのはに恋する男』 四話[十和](2009/12/06 21:56)
[5] 『本気でなのはに恋する男』 五話[十和](2009/12/12 17:08)
[6] 『本気でなのはに恋する男』 閑話[十和](2009/12/19 16:31)
[7] 『本気でなのはに恋する男』 六話[十和](2009/12/26 16:03)
[8] 『本気でなのはに恋する男』 七話[十和](2009/12/29 22:23)
[9] 『本気でなのはに恋する男』 八話[十和](2010/01/02 17:41)
[10] 『本気でなのはに恋する男』 九話[十和](2010/01/09 17:10)
[11] 『本気でなのはに恋する男』 十話[十和](2010/01/16 22:25)
[12] 『本気でなのはに恋する男』 十一話[十和](2010/01/24 00:44)
[13] 『本気でなのはに恋する男』 閑話2[十和](2010/02/06 15:52)
[14] 『本気でなのはに恋する男』 十二話[十和](2010/02/06 16:16)
[15] 『本気でなのはに恋する男』 十三話[十和](2010/02/13 16:36)
[16] 『本気でなのはに恋する男』 十四話[十和](2010/02/21 03:06)
[17] 『本気でなのはに恋する男』 十五話[十和](2010/02/28 03:46)
[18] 『本気でなのはに恋する男』 十六話[十和](2010/03/07 04:46)
[19] 『本気でなのはに恋する男』 十六話②[十和](2010/03/14 04:01)
[20] 『本気でなのはに恋する男』 十七話[十和](2010/03/21 14:32)
[21] 『本気でなのはに恋する男』 閑話3[十和](2010/03/28 10:42)
[22] 『本気でなのはに恋する男』 十八話[十和](2010/04/04 11:03)
[23] 『本気でなのはに恋する男』 十九話[十和](2010/04/11 00:50)
[24] 『本気でなのはに恋する男』 二十話[十和](2010/04/18 02:40)
[25] 『本気でなのはに恋する男』 二十一話[十和](2010/04/25 03:48)
[26] 『本気でなのはに恋する男』 二十二話[十和](2010/05/03 22:19)
[27] 『本気でなのはに恋する男』 二十三話[十和](2010/05/09 20:54)
[28] 『本気でなのはに恋する男』 閑話4[十和](2010/05/15 22:25)
[29] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話[十和](2010/05/22 17:27)
[30] 『本気でなのはに恋する男』 二十五話(無印終了)[十和](2010/05/30 04:14)
[31] 『本気でなのはに恋する男』 二十六話[十和](2010/06/27 10:51)
[32] 『本気でなのはに恋する男』 二十七話[十和](2010/07/04 22:03)
[33] 『本気でなのはに恋する男』 二十八話[十和](2010/07/14 23:33)
[34] 『本気でなのはに恋する男』 28.5話[十和](2010/08/15 23:44)
[35] 『本気でなのはに恋する男』 二十九話[十和](2010/09/05 23:24)
[36] 『本気でなのはに恋する男』 三十話[十和](2010/11/07 00:59)
[37] 『本気でなのはに恋する男』 三十一話[十和](2010/11/25 00:15)
[38] 『本気でなのはに恋する男』 三十二話[十和](2010/12/24 00:10)
[39] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話[十和](2011/02/03 00:02)
[40] 『本気でなのはに恋する男』 三十四話[十和](2011/04/12 00:05)
[41] 『本気でなのはに恋する男』 三十五話[十和](2011/08/12 23:47)
[42] 『本気でなのはに恋する男』 三十六話[十和](2011/12/04 23:03)
[43] 『本気でなのはに恋する男』 三十七話(空白期間終了)[十和](2012/03/20 00:10)
[44] なの恋 簡易的キャラ紹介[十和](2011/12/04 23:04)
[45] 『なの恋』 外伝 『ドリームカップル』[十和](2010/06/06 21:32)
[46] 『なの恋』 外伝『ARISA』[十和](2010/08/15 23:39)
[47] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅡ』[十和](2010/10/06 00:08)
[48] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)[十和](2012/03/20 00:10)
[49] ネタ『魔法少女リリカルなのは TTS』[十和](2010/06/20 03:13)
[50] オマケ『短編集』[十和](2010/10/06 00:11)
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[13960] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話
Name: 十和◆b8521f01 ID:663de76b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/22 17:27

 また明日からなのはが出かけるという夜に、そのなのはから電話が掛かってきた。

「もしもし、なのはか?」
『あ、うん…雄介くんは今、大丈夫?』

 今大丈夫かと聞かれれば、別に明日の準備も終わってるし問題は無い。
 むしろ、なのはからの電話ならある程度の作業は、すべて放り出して電話に出るけどな。
 って言うか、

「なんとなく、もう出発してるんじゃないかって思ってたけど、まだ大丈夫なのか?」
『うん、出るのは明日の朝からだから』

 なるほど、それならば納得。
 そういえば、前のときも夜に電話が掛かってきてたか。
 …あれ? なら夜更かしは駄目なんじゃ?
 まぁ、気にしないようにしよう、うん。

「あー今は、まぁ大丈夫だけど、どうかしたのか?」
『うん、その…ちょっと雄介くんに、相談したいことがあって』

 …相談したいこと?
 何というか、なのはには珍しい気がしないでもない。
 特に、最近では隠し事があるし…いや、隠し事があると宣言してる隠し事だから、どうって事は無いけど。

「まぁ、俺で相談に乗れる事なら頑張ろう」
『えへへ、ありがとう雄介くん』

 …そんなに嬉しそうにされると、俺としては本気で頑張ろうと気合を入れるしか無いのだが!
 いやうん、元々頑張る気だったけど、さらに気力が上がったな。
 それに自惚れかも知れないが、最近はなのはからの相談が多くて、頼りにされてる気もするし。

「あーその、それで相談って?」
『あ、うん…あのね、例えばの話なんだけど』

 いや、その切り出しから始まる話は、大抵において今起きている本当の話だぞ?
 友達の事何だけどって言われるのと同じくらい、なのは自身の事だって丸わかりなんだが。
 いや、それは良いとして

『えっと…友達に、なりたいなって思う子が居て、でもその子とは色々あったりして』
「うん」
『それで、えーと…色々な事情もあって、まだ友達になれるような状態じゃないんだけど。 もし、事情が変わって友達になれるような状態になったら、どうやって、友達になれば良いと思う?』

 …いまいち、話が掴めない。
 まぁ、最近の隠し事関連かつまりは。
 あーと、こういう場合は箇条書きにすれば分かりやすいんだったか。

「つまりだな? ①友達になりたい子が居る、ただし喧嘩中? ②今は事情があって、友達になれない ③でもその事情が変わって、友達になれるようになったら、何をすれば仲良くなれるのか?って、所で良いんだよな?」
『う、うん…例えばの話なんだけど』

 いや、そこに拘らなくても別に良いんだけど。
 まぁうん、何でそんな事を隠したいのかは知らないけど、まぁ良いだろう。
 ともあれ、一つずつ答えていくか。

「あー、取りあえず、その例えばの一人をなのはとして、だ…相手の子は、なのはと友達になりたがってるのか?」
『私じゃないけど…多分、今は思ってないと思う』

 …うおーい、なのはさんや?
 それは一体…いやいや、まだ他に二つも解決すべきことがあるのだから、そっちからだ。

「…えー、その事情か何かは、解決する見込みは?」
『…まだ、全然』

 …おおーい、なぁのはー?

「取りあえず、前提二つが完璧に駄目な以上、あんまり考えても仕方ない気がするけど…どうすれば友達になれるかって、なのはは何か思いつくか?」
『そ、それが…あんまり思いつかなくて』

 うん、そういう言い方は全く思いついていないんだな?
 と言うか、

「なぜ、そんな五里霧中の状態で俺に?」
『ゴリムチュー?』

 いかん、通じなかった。
 でも可愛い、取りあえず誤魔化して

「うん、例えば今なのはと仮定してるその人だが、聞く限りだと殆ど絶望的だろう?」
『う、うん』
「なのに、どうして…って言うか、嫌われてるかも知れない相手なのに、友達になりたいのか?」
『た、例えばの話だもん』

 おぉ、そうだった。
 そう言われると、何で友達になりたいかは聞けないな。
 …まぁ、あまり気にすることでも無いか。
 本当になのはが友達になったら、いつか会うことになるだろうし。

「それもそうだったな…とりあえず、前提として今のところは駄目なわけだけど。 俺が考えられるとすれば、その前提が両方とも大丈夫だった場合しか無いぞ?」
『うん…じゃ、じゃあそれでも良いから、何か、無いかな…?」

 …そんな不安そうな声を出されると、もの凄く悪いことしてる気分になるんだけど。
 って言うか、そこまで大事な事なのかコレは。
 誰かは知らないが、そこまで友達になりたいのか…男じゃないよな?

 違うよな、さすがにそんな訳無いよな?
 聞くか? 聞いてみるか?
 いやでも、それで男だって言われたら俺の精神的に、もの凄いダメージが間違いないんだけど…っ!!

 いや待て俺、よく考えろ。
 なのはがそう、俺以外の男と会う事なんて…今は学校に来てないから、ありうる…っ!!
 待て俺、クールだクールになれ。
 
『あの、雄介くん?』
「お、おう!? いや、何でも無いぞ? ちょっと考え込んでただけだから」
『え? う、うん?』

 どうしよう、ぶっちゃけもの凄く気になる。
 いや、落ち着けよ俺。
 今はなのはから相談を受けているんだ、そんな雑事は後回しにするべき…何だけど。

 ヤバい、ぶっちゃけて言えば、気になって他の事が考えられない。
 き、聞くべきか聞かざるべきか…っ!
 これはある意味、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥状態!?
 な、ならば…っ!

「な、なぁなのは? あんまりこう、関係ないといえば関係ないんだけど、一つだけ聞きたいんだが…良いか?」
『うん? 良いよ?』
「その、だな? 例えばの話の…そう、相手の方、なのはじゃないの方だけどな?」

 な、何だろうこの緊張!?
 なんか、久しぶりにここまで緊張した気がする。
 最近けっこう、緊張するような事が多いと思っていたけれど、そうでも無かったんだろうか?
 ええいもう、後は野となれ山となれだ!!

「…その、相手の人は、女の子か? それとも……男、か?」
『?女の子だよ?』

 いよっしゃあああぁぁぁぁぁあああ!!
 セーフ、超セーフッ!
 思わずガッツポーズ、思いっきり!
 良かった、本気で良かった…!
 神様仏様、ありがとう!

『あのー、雄介くん? それが一体?』
「うん、いやぁははは、特に何でも無いぞ?」

 声が弾むのを抑えきれない、もともと俺の被害妄想みたいなものからの疑問だったが、的外れで本当に良かった!
 なのはの言い方も、何を言ってるんだろうみたいな、完全なキョトンとした口調だったし。
 すべての問題は解決した、だとすれば今度はなのはの相談に全力を注ぐとするか!

「あーうん、それで仲良くなる方法だったな?」
『うん、友達になるには、どうすれば良いのかなって』

 友達になるには、ねぇ…それはまた曖昧と言うか、不確定な事と言うか。
 個人的な言い分だけど、友達と言うのは何時の間にか、自然になっているものだと思う。
 いやもちろん、そこに友達になりたいという考え、もしくは意思がないとなれないけれど。
 なのはの場合、意思はあるのだから、それ以外の方法って事になるし…

「そうだな、簡単なところで言えば、握手とか?」
『握手…』
「あとは、友達だって指切りしてみるとか…」
『うーん…そういうのじゃ、無いほうが良いかも?』

 ううむ、それなら…
 と言うか、俺はその子名前も知らないのに、仲良くなる手段なんて思いつくわけが…あっ。

「なのは、そういえば基本的なのが一個あったぞ」
『え!? ど、どんなの?』

 うおっ、なんか凄い食いついてくる。
 いや、本気で基本的だから、期待に沿えるようなものじゃ無いと思うんだけど。

「あーそのだな? 基本的な事だけど…相手を、名前で呼ぶってだけなんだが?」
『名前で?』

 あぁ、と頷きつつ

「んーまぁ、その、何だ? 古風な言い方をするなら、苗字ってのは相手の家を指すから、個人を示してるわけじゃ無いし」
『え、えっと…?』
「あ、すまん今の無しで。 あー、あれだよ、名前って言うのは、その人だけのものだから、家族で同じ苗字よりは、確実に親しくなってる感じなんだが?」
『そ、それは分かるよ?』

 …ちょっと疑わしい。
 ん、まぁ他の理由もあるし…ってか、そっちがメインだけどな。

「まぁそれよりも、あれだ。 なのはだって多分、苗字と名前だったら、名前で呼ばれたいだろ? だから、名前で呼び合ったら、それで友達で良いんじゃないか?」

 俺だって、名前で呼ばれたほうが嬉しいし、名前で呼ばれようと少々画策したことすらある。
 うん、アリサとすずかに頼み込んだんだけど。
 目的は無論、なのはに名前で呼んでもらうためだったが。

『…そっか、そうだよね! うん、ありがとう雄介くん!』

 喜んでもらえたようで、何よりだ。
 俺も、なのはから名前で呼んでもらえたときは嬉しかったし。
 あーでも、その相手がそれでそう思うかは、分からないけどって言ったほうが良いかな?

「あー」
『雄介くんって、凄いよね』

 …え、ななな何だ急に!?
 ど、どうしたんだなのは!?
 急にそんな、本気でビックリ何だけど!?

「ど、どうしたんだ急に?」
『ううん、ただ純粋にすごいなぁって』

 い、いや、それがもの凄くビックリなんだが?
 何だよ急に、今もの凄く心臓に悪いんですが!?
 なに、俺の耳が幻聴でも聞いたか!?

『雄介くんって、私が悩んでることを、いつだって解決してくれるもん』
「い、いや…それは、あれだぞ? ぐ、偶然だってあるし!?」

 何言ってるか俺!?
 そ、そこは肯定しておいても良いだろう!?
 内心テンパッてる俺の耳に聞こえてくるなのはの声は、どこまで普通の事を話すようで。

『偶然でも、凄いよ。 その…雄介くん、私がどうしても言えないことには、触れないでいてくれるから…』
「え、いや…まぁ、うん…」
『それは、すっごく嬉しくって、でも申し訳なくて』
「い、いや!? 申し訳なく思う必要は無いぞ!? 俺は俺なりに、納得してるんだからな!?」

 申し訳ないとか、そんな事をなのはから言われるなんてある意味すさまじく俺にはキツイ。
 そんな事を思わせたなんて、そんなのは俺の意図していたことでは全然無いのに。
 だが俺のそんな思考を裏切るように、電話の向こうのなのはの声は、少しだけ笑っているように弾んで。

『そういうのが、やっぱり凄く嬉しいから』
「…」

 思わず黙り込む俺、すこしからかわれたかも知れないのが恥ずかしいのか、それ以外の感情なのか区別が出来ない。
 でも一つだけハッキリと言える、スゲー嬉しい。
 こんな風になのはに感謝を伝えられて、自惚れかも知れなくてもなのはに信頼されてるようで。
 混乱してる俺の頭でも、嬉しいのだけは間違いなかった。

『…あのね雄介くん、さっきの例えばの話って本当は例えばの話なんかじゃないの』
「…うん」
『さっきの話は全部本当の事で、友達になりたい子が出来たの』

 どんな心境の変化だったのか、そう語りだすなのは。
 返事も出来ず、ただ聞くだけの俺。

『どうして会ったのかとか、そういうのは言えないんだけど…私ね、その子と友達になりたいって、思ったの』
「…どうしてだ? こういう言い方はあれだけど、友達だったら俺たちが居るだろう?」
『うん…あのね? その子が、昔の私とおんなじ目をしてたから』

 …同じ目を、していた?
 その意味深な言葉に、咄嗟に聞き返すことも出来ない俺。
 でも、なのははそんな俺の心境を察してくれたようで

『これは、多分雄介くんにまだ話してなかったと思うんだけど…あのね、私は小さい頃ずっと一人だったの』
「…一人、だった?」

 それは一体どういう事なのか、俺には何の想像も沸かない。
 文字通りの意味なのだろうか、でも恭也さんや美由希さんはなのはが小さい頃から居たはずだ。
 そんな俺の疑問も含めて、なのはが話を始めた。

『あのね、私が小さかった頃にお父さんが入院してた時があったの』
「入院? 交通事故か何かか?」
『ううん、お仕事って言うことしか分からないんだけど…』

 …よく分からないんだろうか?
 何故と考えて、なのは曰く、まだ小さかったなのはには話されなかっただけなんだろうかと考える。
 いや、そこに拘るべきじゃ無い。
 だって、まだなのはの話は続いているんだから。

『お父さん、凄い大怪我で長い間入院してて』
「あぁ」
『それでね、翠屋もちょうどその頃にオープンしたの』

 翠屋がオープンした、ちょうどその頃に士郎さんが入院。
 それはつまり、人手が完全に不足すると言うことでは無いのだろうか?
 今でこそバイトの人も居るけれど、オープンしたばかりならば居ない可能性もある。

 いや待て、なのはが一人だった事と今してる話が無関係なはずが無い。
 ならその二つには関係があって、その関係を考えるのならば。
 …もしかして、そういう事なのだろうか?

『…雄介くん?』
「ん、いやごめん、何だ?」
『ううん、何か急に何も言わなくなっちゃったから』
「すまん、ちょっとなのはの話してくれたことを頭の中で整理してただけだ」
『そっか…それでね、お店がオープンしたばっかりで、でもお父さんが入院しちゃって。 お母さんだけじゃお店が開けないから、お兄ちゃんはお店を手伝ってて、お姉ちゃんはお父さんの看病で…私は一人でお留守番してたから』

 やっぱりか、恭也さんも美由希さんも今普通に手伝っているし、もしかしたら昔からそうなのかもと思ったけれど。
 それに士郎さんが、そんな入院するほどの大怪我をしていたなんて…温泉に行ったときは、視線を合わせないようにしてたから、体に傷があったとしても気がつかなかった。
 いや、傷が残ってるとは限らないのだけれど。
 でもそれ以上にあの家になのは一人、そんな時期があったなんて…

『私はその頃、すっごく寂しかったけど、そういうのは絶対に言っちゃいけないって思ってた。 お父さんが入院してて、お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、みんなにすごく大変なのに、そんな我侭言っちゃダメなんだって』
「…なのは」

 思わず何かを言いかけたが、名前を呼ぶだけでどうにか抑える。
 そんな事は無かったって、そういう事は言ったほうが良かったなんて、今言ってもしょうがない事だから。
 それにまだ、なのはの話は終わっていない。

『雄介くん?』
「いや、何でも無い。 話を続けてくれ」

 うんと言って、また話を始めるなのは。

『それでね、そのさっきの例えばの話の相手の、その女の子がその頃の私とおんなじ目をしてたの』
「おんなじ目って言うと…」
『寂しくて、でもそれを言っちゃいけないって思ってる目』

 はっきりとした、なのはの断言。
 電話越しだから、なのはの顔なんて見えないけれど、きっと今はまっすぐに前を見ているんだろう。
 でも、それは目の前の景色じゃなくて、それを通り越して…その、寂しい目をしてる女の子へと、きっと注がれているんだと確信できた。

「…つまり、なのはは」
『うん…お友達に、なりたいなって。 そんな寂しい顔じゃなくて、その子の笑ってる顔も見たい、ってそう思ったの』

 …格好いいことを、言ってくれるなぁ。
 言い切るなのはに、俺はただ一言だけ。

「ヒーロー、みたいだな」
『え?』

 だって、そんなのまるでヒーローじゃないか。
 寂しい目をした女の子に笑ってほしいなんて、何かの物語の主人公みたいだ。
 …でも、なのはにはそれが似合ってると、そんな風に思ってしまう俺が居て。

「なのはって、そういえばそうだもんな」
『えと、あの…雄介くん?』

 なのはは、守られるだけの女の子…ヒロインじゃあ無いもんな。
 いつだって、譲れないことは絶対に譲らなくて。
 アリサとだって、真正面からやりあう事もあるんだ。

 それに、俺がなのはに一目ぼれした時だって、なのははヒロインじゃあ無かった。
 あの時だってなのはは、誰かのために前へ出れる女の子だった。
 誰かのための行動を、しっかりと取れるヒーローみたいな女の子だったんだから。
 
「うん、なぁなのは?」
『あ、うん…えっと、なぁに?』

 電話の向こうの、ヒーローみたいな女の子。
 また明日には、どこかへ出かけてしまう俺の友達。
 きっと俺には、応援しか出来ることが無いんだろうなと思いながら。

「そのさ、頑張れよ? 俺が何か出来るわけじゃあないけれど、応援だけはしてるからさ」
『…うん! ありがとう、雄介くん…でも、さっきのヒーローって何?』

 そこに食いつくのかなどと思ったが、よくよく考えればけっこう失礼な感想では無いだろうか…女の子にヒーローって。
 うん、どうやって誤魔化そう?

「うんいやぁ、何だ? あれだ、その…ほら、そういえば、その女の子の名前とかって知ってるのか?」
『それは知ってるけど…フェイトちゃん、って言う子だよ』

 なるほど、相手の名前を知ってるくらいは親しいのか?
 いや、相手の…そのフェイトって子が、なのはの名前を知ってるかは知らないけれど。
 まぁでも、なのはがこれだけ言えるってことは、それなりに顔を合わせた事があるんだろうし。

「仲良くなれると良いな、なのは」
『…うん、きっと私とフェイトちゃん、仲良くなれると思うから』

 …ちょっとジェラシーと言うか嫉妬しそう、そんなになのはに心配されているとは。
 むう、相手は女の子なんだから、別にどうってこと無いんだけどなぁ。

『私とフェイトちゃんが仲良くなったら、きっと雄介くんにも…アリサちゃんたちにも紹介するね?』
「あぁ、楽しみにしとく」

 ふと、フェイトなんて名前ならば、きっと外国人なんだろうと思う。
 なのはが外国の子と交流を持つなんて、ちょっとビックリだ。
 いったいどこで…って、今俺達に内緒にしてるところに決まってるか。
 …んー、なのはが友達になりたいって思うような子だから、きっと同い年か違っても少しだろう。
 なのは以外にも子供が、しかも外国人の子供が居るって事は、そこまで危なかったりするところじゃ無いのかもしれないな。

『それじゃあ雄介くん、相談にのってくれてありがとう』
「気にするな、友達なんだから当たり前だろう」

 個人的には、友達以上の関係になりたいけれど。
 うん、口が裂けても言わないけど、そんな恥ずかしいことは。
 
『…うん、本当にありがとう雄介くん。 えっと、それじゃあ…』
「あぁ、今度はどれくらいかとか、分かってたりするのか?」
『ううん、でももうすぐで終わると思うから』
「そうか、じゃあまぁ…」

 そこで、何となく言葉を切って。
 改めて息を吸い、

「いってらっしゃい、なのは」
『うん、行ってきます雄介くん』

+++

 次の日の朝、起きて朝ごはんをノンビリと食べつつ、今もうなのはは行ったのかなぁ…なんて考えていたら、携帯が鳴り出した。
 朝早くに珍しいなんて思いながら見てみれば、そこに表示されていたのはアリサの名前。

「もしも」
『ねぇ! アンタ昨日、家に居た犬見かけてない!?』
「…昨日から見て無いけど、どうかしたのか?」

 なにか、切羽詰ってるようなアリサに正直に答える。
 電話の向こうのアリサは、かなり慌てているようで。

『居なくなっちゃったのよ、昨日の夜は確かに居たのに! 檻も全然壊れてないのに、中に居たあの犬だけ消えちゃったの!』
「…解った、取り合えず学校へ行くバスに乗るまでしか無理だけど、それで良いか?」

 その後少しばかり俺がどの辺りを探すかをアリサに伝えて、電話を切って急いで朝ごはんを掻きこんでいく。
 とりあえず学校へと行く準備を完璧にして、

「母さん、ちょっと俺早めに出るから!」
「そうなの、いってらっしゃい」
「行ってきます!」

 家を出て、昨日アリサの家で見た犬の姿を探して回る。
 俺の家とアリサの家はけっこう離れてるから、ほとんどこっちまで来てる可能性は少ないだろうけれど。
 それでも友達として、あそこまでアリサが慌てているのなら探してあげて当然だ。

 そう思った後、すずかに電話を掛けたところ、アリサはすずかに話すのは完全に忘れていたようだ。
 何でか俺が『どうして早く知らせてくれなかったの!?』と、すずかに怒られつつ知ってる情報を全部話して、同じく探してもらう事になった。
 ノエルさんやファリンさんも手伝ってくれ、二人は余裕があれば俺たちが学校に行っている間にも探してくれるようだ。

 探している途中で、ふとなのはにも電話して聞いてみようかとも考えたけれど、さすがに止めておいた。
 なのはの事だから、それを聞いたら今やっている筈の事を放り出しそうだし。
 余計な…と言うわけでは無いけれど、今からやらなきゃならない事のあるなのはに、そんな話は不要だろう。

 うん、そういう建前もあるけれど、一番は昨日の電話でいってらっしゃいとか言ったのに、その後に電話するのが気まずいからだが。
 いやだって、昨日あんな風に電話を終えて、今日早速犬が見つからないとか、色々俺の小さいプライドが…なぁ?
 そんな事を考えながらだが、バスの時間までギリギリ昨日の犬を探し続ける俺だった。
 

+++後書き
 順当に終わりへと近づいております、というか雄介はなのはとの電話の場合長く話せてるなぁ…一話の大半が埋まりますし。
 無印ラストの、あの感動シーンへの伏線を張ってます…雄介いないですけどね、その場に。
 あと、ラストは普通に考えたらアリサはああなってるだろうと思ったので追加。

 んー、後二話くらいかな?


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