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No.13960の一覧
[0] 『男子が花道』(リリなの二次 転生男オリ主 原作知識なし 同年代)[十和](2011/02/03 00:01)
[1] 『本気でなのはに恋する男』 一話[十和](2009/11/14 18:14)
[2] 『本気でなのはに恋する男』 二話[十和](2009/11/21 14:06)
[3] 『本気でなのはに恋する男』 三話[十和](2009/11/26 00:43)
[4] 『本気でなのはに恋する男』 四話[十和](2009/12/06 21:56)
[5] 『本気でなのはに恋する男』 五話[十和](2009/12/12 17:08)
[6] 『本気でなのはに恋する男』 閑話[十和](2009/12/19 16:31)
[7] 『本気でなのはに恋する男』 六話[十和](2009/12/26 16:03)
[8] 『本気でなのはに恋する男』 七話[十和](2009/12/29 22:23)
[9] 『本気でなのはに恋する男』 八話[十和](2010/01/02 17:41)
[10] 『本気でなのはに恋する男』 九話[十和](2010/01/09 17:10)
[11] 『本気でなのはに恋する男』 十話[十和](2010/01/16 22:25)
[12] 『本気でなのはに恋する男』 十一話[十和](2010/01/24 00:44)
[13] 『本気でなのはに恋する男』 閑話2[十和](2010/02/06 15:52)
[14] 『本気でなのはに恋する男』 十二話[十和](2010/02/06 16:16)
[15] 『本気でなのはに恋する男』 十三話[十和](2010/02/13 16:36)
[16] 『本気でなのはに恋する男』 十四話[十和](2010/02/21 03:06)
[17] 『本気でなのはに恋する男』 十五話[十和](2010/02/28 03:46)
[18] 『本気でなのはに恋する男』 十六話[十和](2010/03/07 04:46)
[19] 『本気でなのはに恋する男』 十六話②[十和](2010/03/14 04:01)
[20] 『本気でなのはに恋する男』 十七話[十和](2010/03/21 14:32)
[21] 『本気でなのはに恋する男』 閑話3[十和](2010/03/28 10:42)
[22] 『本気でなのはに恋する男』 十八話[十和](2010/04/04 11:03)
[23] 『本気でなのはに恋する男』 十九話[十和](2010/04/11 00:50)
[24] 『本気でなのはに恋する男』 二十話[十和](2010/04/18 02:40)
[25] 『本気でなのはに恋する男』 二十一話[十和](2010/04/25 03:48)
[26] 『本気でなのはに恋する男』 二十二話[十和](2010/05/03 22:19)
[27] 『本気でなのはに恋する男』 二十三話[十和](2010/05/09 20:54)
[28] 『本気でなのはに恋する男』 閑話4[十和](2010/05/15 22:25)
[29] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話[十和](2010/05/22 17:27)
[30] 『本気でなのはに恋する男』 二十五話(無印終了)[十和](2010/05/30 04:14)
[31] 『本気でなのはに恋する男』 二十六話[十和](2010/06/27 10:51)
[32] 『本気でなのはに恋する男』 二十七話[十和](2010/07/04 22:03)
[33] 『本気でなのはに恋する男』 二十八話[十和](2010/07/14 23:33)
[34] 『本気でなのはに恋する男』 28.5話[十和](2010/08/15 23:44)
[35] 『本気でなのはに恋する男』 二十九話[十和](2010/09/05 23:24)
[36] 『本気でなのはに恋する男』 三十話[十和](2010/11/07 00:59)
[37] 『本気でなのはに恋する男』 三十一話[十和](2010/11/25 00:15)
[38] 『本気でなのはに恋する男』 三十二話[十和](2010/12/24 00:10)
[39] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話[十和](2011/02/03 00:02)
[40] 『本気でなのはに恋する男』 三十四話[十和](2011/04/12 00:05)
[41] 『本気でなのはに恋する男』 三十五話[十和](2011/08/12 23:47)
[42] 『本気でなのはに恋する男』 三十六話[十和](2011/12/04 23:03)
[43] 『本気でなのはに恋する男』 三十七話(空白期間終了)[十和](2012/03/20 00:10)
[44] なの恋 簡易的キャラ紹介[十和](2011/12/04 23:04)
[45] 『なの恋』 外伝 『ドリームカップル』[十和](2010/06/06 21:32)
[46] 『なの恋』 外伝『ARISA』[十和](2010/08/15 23:39)
[47] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅡ』[十和](2010/10/06 00:08)
[48] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)[十和](2012/03/20 00:10)
[49] ネタ『魔法少女リリカルなのは TTS』[十和](2010/06/20 03:13)
[50] オマケ『短編集』[十和](2010/10/06 00:11)
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[13960] 『本気でなのはに恋する男』 十八話
Name: 十和◆b8521f01 ID:663de76b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/04 11:03

 旅行が終わって、俺は少々油断していたかも知れない。
 
 旅行に行って元気が出た様子だからと言って、問題が解決したわけでは当然無く。

 更に言えば、俺個人は何か悩みがあるとは打ち明けられていても、他の人になのはが打ち明けてるかどうかとか、そういう事も全然考えていなかった。



 頑固ななのはだから、少しだけ強引に踏み込んだ俺には、仕方なくで打ち明けたのもあったかも知れない。

 打ち明けられた俺も、それを誰かに相談したりせずに、ただなのはが自力で解決するか、それとも助けを求められるのを待っているだけで。

 いくら本気では無かったと後で知っても、あんな事になるのを止めれなかったのは、俺の所為だと

 そう、思う。


+++

 バンッ!

「いい加減にしなさいよ!!」

 突然の怒声が、ぼーっと携帯のストラップを眺めていた俺の耳に届いた。
 俺の耳は即座にその声の主がアリサだと判断し、これまた即座に俺に向けて言っているのだと判断した。
 俺の頭の中で言い訳が凄い勢いで、いや別にストラップを眺めてたんじゃないぞ、今のこれは偶然で別になのはとお揃いだからと眺めてニヤニヤしてたわけでも無くてだな、そうこれは偶然で別にアレだ…ってアレ?

 そんな言い訳が口から出る寸前に、アリサの言葉が俺に向けてでは無いのにようやく気がついた。
 そういえば、俺は今別にアリサとは話していなかった筈だ。
 それどころか、俺は自分の席でぼーっとしてた筈。
 なら一体、誰に対してあんな大声を…

 両手で机を叩き、アリサの睨む先は…なのは。
 アリサに怒鳴られ、俺の位置からでは横顔も良くは見えないけれど、きっと目を丸くして驚いているだろう。
 突然の大声に、教室はシンと静まり返っている。
 教室の中は静まり周りの視線がこっちに集中していて、ガヤガヤとした騒音は教室の外からだけ聞こえていた。

「この間から、なに話しても上の空でぼーっとして!」
「あ…ご、ごめんねアリサちゃん…」
「ごめんじゃないわよ!」

 なのはを睨みつけながらアリサが問い詰め、なのはの謝罪も跳ね除けた。
 机を挟んだ状態で、アリサは立ち上がり睨みつけ、なのはは僅かに顔を伏せている。
 ほぼ反射的に、アリサの隣に立っているすずかを見るが、その表情は困惑を隠しきれて居ない表情だった。
 アリサは、

「私達と話してるのがそんなに退屈なら、一人で幾らでもぼーっとしてなさいよ!! 行くわよ、すずか!」
「あ、アリサちゃん…」

 なのはにそう言い捨てて、靴音高く歩き出した。
 その足は決して止まらず、こちらを振り返ることもしない。
 そして音高くドアを叩きつけるように開けて、教室を出て行った。

「あの、なのはちゃん…」

 アリサの背中が見えなくなり、すずかがなのはへと声を掛ける。
 心配そうな声のすずかになのはは、僅かに顔をあげて小さな…本当に小さくて元気の無い、そんな声で。

「良いよ、すずかちゃん…今のは、私が悪かったから」
「そんな事は無いと思うけど…取りあえずアリサちゃんも言いすぎだから、少し話してくるね?」
「うん…ごめんね、すずかちゃん」

 そう言って、今度はすずかがアリサを追って教室を出て行く。
 そうやって皆が行動を起こしている中、俺はあまりにも予想外な事が起きすぎて、全く口を挟めなかった。
 ただ呆然と状況を眺めているしかなく、ようやく何でこんな事になったのかをボンヤリと頭の端で考えていた。

 アリサは、多分なのはが何かをずっと隠して悩んでいるのが気に入らなかった…いや、違うか。
 気に入らないじゃなくて、心配だった。
 心配だけど聞けなくて、聞けないから心配で…だから、怒った?
 いや、何か違う気もする…今の俺じゃあ、思考がまとまらないな。

 そんな事を考えて、そっとなのはに目をやると、

「…怒らせ、ちゃったなぁ。 ゴメンね、アリサちゃん…」

 そう俯きながら、謝っている。
 本当に済まなそうに、何かを堪えているようにも聞こえる、そんな謝り方だった。 

 俺から見える後姿とその声と、それらは本当に元気が無くて心配になるくらいで。
 何か、声を掛けた方が良いはずなのに何を言えば良いのか分からなくて。
 俺はそのまま、黙ってなのはを見ている事しか出来なかった。

+++

 全部の授業が終わって、帰りの時間。
 手洗いに行っていて、教室に戻ってくるとすずかとアリサが入り口に居て、自分の席で荷物を纏めているなのはに声を掛けている所だった。
 二人はすでに荷物を纏めていて、すずかだけが教室のなのはに声を掛けていた。

「じゃあなのはちゃん、今日は私達お稽古の日だから」
「夜遅くまでなんだよね? 行ってらっしゃい、頑張ってね」

 そうなのはが言った途端、顔も向けずに歩き出すアリサ。
 思うことはある、けれど今のアリサの気持ちが俺に分かるわけでも無い。
 と、アリサが急に立ち止まった。

「雄介…」
「…よう」

 その理由は…まぁ、戻ってきた俺がちょうど正面に居ただけだけど。
 偶然だけどある意味必然的に、アリサと俺の視線が正面からぶつかる。
 別に、俺とアリサが喧嘩してるわけじゃないけど、今この状態はもの凄く気まずい。
 今ココで、仮にアリサに対して仲の良い態度を取ったら、なのはが孤立してしまうんじゃとか、そんな事を考えてしまう。

「…じゃな」

 情けないとは思うけど、何を言って良いのか分からなくてそうとだけアリサに告げる。
 出来る限りぶっきらぼうに、ただし、アリサの目を見ながら、何を言いたいかなんて定まってないが、何かを伝えるように見つめた。
 そんな俺にアリサは、友達になってから殆ど見たことの無い無表情のまま、無視するかのように通り過ぎ

「…頼んだわよ」

 る直前に、そっと俺にだけ聞こえるように呟いた。
 思わず振り向きそうになるのを堪えて、アリサが呟いた意味を考える。
 俺にだけ聞こえるように呟いたのは、きっと聞かれたくない事の筈だ。
 そう思って、黙っておく。
 何を頼まれたかって言うのは、今なら間違いなくなのはの事だろう。

 アリサはそのまま、俺の横を通り過ぎて歩いていくのが足音で分かる。
 足音に特に迷いなんかは無く、むしろ教室の入り口に居るすずかの方が慌てているようだ。
 慌てた様子で、俺とアリサや教室の中のなのはを見ている。
 
「アリサちゃん…あ、大丈夫だからね、なのはちゃん!」
「う、うん、ありがとうすずかちゃん」

 そうすずかはなのはに声を掛けて、今度は俺に。

「あの、雄介君? アリサちゃんにも、悪気は無いから…」
「ん…分かってるよ、それじゃまた明日なすずか」

 俺が怒ってると思ったのか、そう言うすずかに心配するなと笑顔を見せてみせる。
 俺の行動に、ほっとしたような顔のすずか。
 なのはにも俺にも気を配るのは、大変だろうに。

 そんなやり取りの後、すずかは小走りにアリサの後を追う。
 すれ違いざまに、小さな声で「お願いね…」と言われたので、出来る限り力強く頷いておいた。
 …しかし二人とも心配性なのか、揃ってわざわざ俺にお願いしていくとは。

「なのは」

 教室に入ると俺たちで最後のようで、もうなのは以外の人影は無かった。
 なのはは誰も居ない教室で一人席に座っていたが、俺の声を聞いてこっちを振り向いた。

「雄介くん」

 そう笑って返事をするなのはだけど、正直に言えば俺には全く笑顔に見えない。
 これでも友達暦は長いのだから…言っても、一年くらいだけど、簡単に分かる。
 無理して笑ってるなのはなんて見たく無い、けど俺に出来ることなんて殆ど無いから。
 だから、少しでもなのはが無理しなくても良いように、俺は何も気にしてないと自分で思って。

「帰ろうぜ、なのは」

+++

 なのはと、二人だけの帰り道。
 気落ちしているなのはと、なのはと二人きりだと緊張で会話の続かない俺。
 盛り上がるわけも無く、二人並んで歩くだけになっていた。
 
 …いや、なのはは俺に気を使って話を振ってくれるんだけど、俺がそれにあんまり反応できない。
 普段なら、俺が緊張して話が途切れそうになったときに、いつもアリサとかが間に入ってくれていたけど。
 二人が居ないだけで、こんなに間が保たないとは…本当に、ダメな奴だ俺は。

 アリサの話題を避けた所為か、ついに話の種も尽きてある意味ではちょうど良く普段の分かれ道。
 ここから、いつも俺となのはは別れる。
 なのはは真っ直ぐ、俺は左に行ったら、次に会うのは明日で。

「じゃあ雄介くん、また明日」
「…あー」

 また明日、とそう言えば良いのかも知れない。
 なのはには、一人で考える時間が必要かも知れない。
 だから、俺が居ないほうが良いかも知れない。

 かも知れない、かも知れないと頭の中では浮かぶのに、俺の口は一向に『また明日』とは言おうとしない。
 そんな俺になのはが小首を傾げているけど、それでも中々口は動かず。
 そんな俺が考えるのは、さっきとは全く反対の事。 

 明日じゃなくて、今日が良いかも知れない。
 一人じゃなくて、誰かが居たほうが良いのかも知れない。
 俺で良いのかは分からないけど、居ないよりは居たほうが良いのかも知れない。

 …いや、きっと良いと、そう思おう。

 そう、俺はなのはが心配だから、今のなのはを一人にしない方が良いと思うから、『また明日』なんて言えないんだ。
 色んな理由と諸々込みで、なのはと別れたく無いから。
 だったら、俺は何をすれば良いのか?

「…なぁ、なのは?」
「なぁに、雄介くん?」

 ふぅ、と小さくばれないように深呼吸。
 こんなんで緊張するとか、俺はどれだけ初心なのか自分に聞きたい。
 心の中で三つだけ数えて、それでようやく覚悟が決まる。

「あのな…あーと、ちょっと、寄り道しないか? …聞きたい事とか、あるんだけど」

 ぼかしてはいるけれど、きっとなのはは俺が何を聞きたいか何て分かってるんだろう。
 その証拠に、俺に誘われた瞬間、少しだけなのはの表情が強張った。
 いや、流石に俺が嫌いで強張ったとかは無いと信じたいし。

 そんな下らない事を考えながら、なのはの返事を待つ。
 なのははしばらく、ぎゅっと口を噤んで考え込んでいたが、やがて小さく頷いてくれた。

+++

 寄り道、とは言え聞きたいこととかがあるので、あんまり人の多いところは落ち着かない。
 なので取りあえず人もあんまり居なくて、それでいてベンチもあって座れる海鳴公園へと移動してきた。
 正確には、海鳴臨海公園と言うんだけどな。

「そこ、座らないか?」
「…うん、そうだね」

 近くにあったベンチを指して、二人で並んで座る。
 ベンチに座って正面を見れば、そこには堤防があってその向こうにはすぐに海。
 まだ春先なので海風で少々肌寒いけれど、なのはは大丈夫だろうか?

「なのは、寒くないか?」
「え? ううん、大丈夫だよ」

 そっかと呟き、正面の海を眺めた。
 海風が吹くお陰で、寒いと言うのはあるけれど、それ以上に頭は冷静になれる。
 そのまま、互いに海を眺めたままベンチに座っていて。

 …はっ!? 思わず、会話が止まってしまった。
 イカン、何か話さないと。
 俺から誘ったんだし、ええと…な、何から話すか…?

「…ねぇ、雄介くん」
「っ、何だ?」

 中々俺から言い出せないうちに、なのはから話しかけてきた。
 極力、同様は表に出さなかったと思いたい。
 ちらりと横目でなのはを見るけれど、なのはは正面の海を見ながら。

「アリサちゃん、怒ってるよね…」

 そう呟いた。
 その横顔は、とても寂しそうに見えて。
 でも、俺がどうこう出来るものじゃなくて。

「そうだな、怒ってたかもな」
「うん…」

 俺が肯定すると、更に落ち込むなのは。
 やばっ、普通にミスした。
 落ち込ませるつもりは無かったのに、えーとじゃあ…

「なぁ? どうしてアリサが怒ってるのか、解るか?」

 そう聞くと、なのはは視線を伏せて。

「それは…私が、アリサちゃんに隠し事したから」
「まぁ、それもあるけど…アリサが、ただ単に隠し事しただけで、あんなに怒ると思うか?」

 俺の質問に、しばらく考えてから改めて首を横に振るなのは。
 その辺は、俺と一緒か…アリサがあんなに怒るのは、とても珍しい。
 そもそも普段はじゃれあい程度で、そこまで本気で喧嘩する事も珍しいのだけど。
 それでも、俺たちの知っているアリサ・バニングスと言う人物が、ただ隠し事をされただけであそこまで怒るとは思えない。

「なぁなのは、俺の勝手な考えだけど、アリサがどうして怒ったか考えてみた…聞いてくれるか?」
「…うん」

 あの後、ずっと考えていたのだ。
 どうしてアリサが怒ったのか、アリサは理由無く怒るような奴じゃあ無いし。
 じゃれ合いじゃなくて、本気でアリサが怒る時には理由がある…そう信じられるくらいには、俺はアリサを知っていると断言できる。

 ベンチの上で、互いに向き合う。
 口を噤んだ表情のなのはが、正面から俺を見つめていた。
 正直、かなりドキッとしたけど、今はそんな気持ちは不要。
 気力でねじ伏せて、なのはと正面から向き合った。

「本当に当たってるかは分からない、そういう前提だけど…アリサは、隠し事をされて怒ったんじゃない」
「…うん」
「多分、『隠し事をしているのを黙っていた』から、怒ってるんだ」

 俺がそう言うと、すこし目を丸くして驚くなのは。
 そんななのはを見つつ、俺は思いっきり独りよがりな解釈をなのはに告げる。

「隠し事してて、それを言っておいたら、多分アリサは『しょうがない』で済ましてたと思う。 でも、なのははそうは言わなかった…だな?」
「う、うん」
「でも隠し事してて、それを言わなかったら…『どうして言ってくれない』とか、多分そんな気持ちになると思わないか?」

 …少し待って、小さくなのはが頷いた。
 今回のことは、結局はその辺で全部説明出来ると思うのだ。
 アリサがどうしてあんなに怒ったのかとか、俺に対してわざわざ頼んだとか言った理由とかは。
 大事だったのは、隠し事をしていると言ったか言ってないか…それだけの、違いなんだろう。

 隠し事があると言っていたら、アリサは心配しつつ…いや、真正面から心配することが出来た。
 しょうがないから、隠してる範囲で相談事が無いか訊ねたり、少しでもなのはの心配事を解消しようと頑張っただろう。
 アイツは、友達思いのそんな奴だ。
 
 でも、なのはは俺たちを心配させないように隠し事を隠したままにしていたから。
 もちろん、それが普通ではあるんだけど。
 それでも、なのはの隠し事に気が付いてしまったから、だけどなのははそれを隠そうとしてたから。
 
「今だから言っちゃうけどな…この間、すずかの家で集まったのも、アリサの発案なんだ。 俺が特に心配してたとかそんな感じに言ってたけど、アリサだって凄く心配してたんだぞ」
「…」

 俺の言葉に、なのははただ黙って俯いていた。
 口を噤んで、スカートに置かれた手に力がギュッと篭っていて。
 静かに、悔いているようなそんな雰囲気で。

 こんな雰囲気にするつもりは無かったのだけれど、つい言いすぎてしまったかも知れない。
 殆ど何も考えずに、反射的になのはの手に俺の手を重ねる。
 なのはがビックリしているが、正直俺のほうが自分にビックリだ。
 いきなり何をしているのか、本気で解らないが取りあえず、なのはの手からは力が抜けたようでちょっと安心。

「ゆ、雄介くん? どう、したの?」
「…」

 どうしたかは、俺も知りたい。
 いや、本当に反射的で自分でも何がしたかったのか意味不明だ。
 やばいやばいやばい、本気でこれからどうする?
 何言えば良いんだ、いや今なのはの手に手を重ねている状態で何言っても、台無しかもしれないけど。

 ええい、こうなったらままよ…っ!
 流されるままに、言いたいことだけ言ってやる…!!

「なぁ、なのは?」
「う、うん」

 なのはの手に手を重ねて、正面からなのはを見たままで。

「隠し事は、俺たちに絶対に相談できない事か?」

 俺の問い掛けに、なのはの表情が確実に強張った。
 卑怯な聞き方だとは自覚してるけど、それでもこれは聞いておきたい。
 本当に相談、してくれないのかどうかだけは。
 じっと、なのはを正面から見つめて。

「そ、それは…」

 なのはは、少しだけ視線を彷徨わせた後、まず俺の目を見た。
 俺が視線を逸らさないでいると、今度はなのはが視線を伏せてしまう。
 そのまま少しだけなのはは考えるような素振りを見せて、もう一度顔を上げたときにはいつものなのはが居た。
 こうと決めたら譲らない、そんな俺たちの友達だ。

「うん、ごめんね。 やっぱり、言えないよ」
「…そっか」

 はっきりとしたなのはの言葉、拒絶されているのに無性に嬉しい。
 隠してるんじゃなくて、こうやってハッキリ言ってくれたほうが良い。
 ダメならダメで、俺たちは他の手段を考えるし。
 何より俺が好きになったのは、こうやってハッキリと言える、そんな高町なのは何だから。

「じゃあ、帰ろうぜなのは」
「え…?」

 なのはから手を退かして、立ち上がりながらそうなのはに声をかける。
 どうにもニヤついているのを止められないが、もう別に良いや。
 何でかまた驚いてるなのはに、ほらと手を差し出しながら。

「どうしたんだ? そろそろ帰らないと、遅くなっちゃうぞ?」
「え、あ…うん。 …聞かないの、雄介くん?」

 俺の手を取って、ベンチから立ち上がるなのは。
 聞かないって…あぁ、拒絶したのに、何で追及しないのかって事か。
 そんなの、簡単な事だ。

「言えないなら聞かないさ、絶対に言えない事なんだろう? なのはが言えないって考えてるって事は、きっと俺は役に立てないんだろう?」
「え、えっと…それは」

 言葉を濁すなのは、まぁ正面切っては言えないな普通。
 俺はそんな事、全く気にしないけど。
 それに今は、嬉しさの方が大きいし。

「な、何でそんなに雄介くんは笑ってるの?」

 そんなの、それこそ簡単だ。

「嬉しいからだな、なのはがいつも通りに戻ってくれて」
「いつも、通り?」

 鸚鵡返しに聞き返してくるなのはに、あぁと頷いて。

「一度こうと決めたことは絶対に譲らなくて、真っ直ぐな所がいつも通りだ」

 俺がそう言うと、何だか複雑そうな顔のなのは。
 どうしたのかと首を傾げていると、

「…それ、私が頑固だって言われてるみたいだよ」

 …ふむ、確かに。
 まぁでも、

「そんな所、あるだろ?」
「…雄介くんの、ばかっ!」

 なのははむうっと頬を膨らませたかと思うと、そう言って俺を置いて歩き出してしまった。
 慌てて、謝りながら追いかける。

「すまん、ごめんなのは! 最初は褒めてるつもりだったんだ!」
「知らないっ」

 追いついても、ぷいっと顔を背けられてしまった。
 うわしまった、本気でどうしよう?
 も、もしかしてこれで嫌われたか?
 そうなったら、色んな意味で俺終わった…回避せねば!

 なのはの隣で、一人奇怪な動きでどうにか謝罪の言葉をひねり出そうとしていると、こっちを見たなのはが小さく笑った。
 …もしかして、怒ってないの…か?

「…怒ってないのか、なのは?」
「うん、怒ってないよ雄介くん…ちょっとからかって見ただけ」

 笑顔のなのはに、本気で思う…タイミング悪いよ!
 いやでも、本気で良かった…からかわれてるだけだったか。
 思わず胸を撫で下ろすと、またなのはが笑う。
 むぅ、笑ってくれてるのを良しとすべきか。

 しばらく、今度はいつもの様に会話を弾ませながら二人で歩いて。
 また、いつも別れる道に到着した。
 寄り道する前とは違って、俺もなのはも笑顔のままで。 

「それじゃあ雄介くん、また明日ね?」
「あぁ…あっ、なのは!」

 最後に、これだけは言っておかないと。
 首を傾げているなのはに、ちょっと逆効果になるかも知れないけれど。
 これは、なのはが言うべき事だから。

「隠し事はどうしても言えないって事、アリサとすずかに伝えておけよ?」

 俺がそう言うと、なのはの表情が一瞬だけ強張って。
 でも次の瞬間には、満面の笑顔で言い切った。

「うん! 私から、ちゃんと伝えるね!」

 思わず見とれそうになるけど、どうにか俺も笑顔で返事をする。
 そのまま、なのはは踵を返して。

「…ねぇ、雄介くん!」

 こちらを振り向いたなのは、何だろうと次の言葉を待つと。
 なのはは満面の…花が咲いたようなと言うのが、ピッタリな笑顔で。

「今日は、雄介くんが居てくれて本当にありがとう! 雄介くんがいつも通り傍に居てくれて、私も嬉しかった…またね、雄介くん!」

 そう言うと、すぐに駆け出してしまったなのは。
 その後姿を見ながら、俺は必至に思わず叫んでしまいそうになるのを堪えている。

 傍に居てくれてとか、嬉しかったとか…なのはに他意は無いんだ!
 だから、落ち着け俺…他意は無い、けど嬉しいっ!
 あの笑顔は反則だろう…可愛かったけれどもっ!
 落ち着け、クールだ…クールになれ、佐倉雄介っ!!

 その後しばらく、俺はその場に立ち尽くしたままで、通りがかりの人からかなり不思議そうな目で見られていたけど…不可抗力だっ!


+++後書き
 最後のほうで、なのはに振り回される雄介の話でしたww

 ワードパッドでコレ書いてるんですが、ファイル容量がついに1000KBを突破!…自分でも、よく書いたなってか、続いたなと思いますww
 
 そういえば、まだ書いてないですけど、これからは時間軸が飛ぶことがたくさんあるかも知れません。 …だって、アニメだと極端に減っていきますから日常パート。


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