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No.13960の一覧
[0] 『男子が花道』(リリなの二次 転生男オリ主 原作知識なし 同年代)[十和](2011/02/03 00:01)
[1] 『本気でなのはに恋する男』 一話[十和](2009/11/14 18:14)
[2] 『本気でなのはに恋する男』 二話[十和](2009/11/21 14:06)
[3] 『本気でなのはに恋する男』 三話[十和](2009/11/26 00:43)
[4] 『本気でなのはに恋する男』 四話[十和](2009/12/06 21:56)
[5] 『本気でなのはに恋する男』 五話[十和](2009/12/12 17:08)
[6] 『本気でなのはに恋する男』 閑話[十和](2009/12/19 16:31)
[7] 『本気でなのはに恋する男』 六話[十和](2009/12/26 16:03)
[8] 『本気でなのはに恋する男』 七話[十和](2009/12/29 22:23)
[9] 『本気でなのはに恋する男』 八話[十和](2010/01/02 17:41)
[10] 『本気でなのはに恋する男』 九話[十和](2010/01/09 17:10)
[11] 『本気でなのはに恋する男』 十話[十和](2010/01/16 22:25)
[12] 『本気でなのはに恋する男』 十一話[十和](2010/01/24 00:44)
[13] 『本気でなのはに恋する男』 閑話2[十和](2010/02/06 15:52)
[14] 『本気でなのはに恋する男』 十二話[十和](2010/02/06 16:16)
[15] 『本気でなのはに恋する男』 十三話[十和](2010/02/13 16:36)
[16] 『本気でなのはに恋する男』 十四話[十和](2010/02/21 03:06)
[17] 『本気でなのはに恋する男』 十五話[十和](2010/02/28 03:46)
[18] 『本気でなのはに恋する男』 十六話[十和](2010/03/07 04:46)
[19] 『本気でなのはに恋する男』 十六話②[十和](2010/03/14 04:01)
[20] 『本気でなのはに恋する男』 十七話[十和](2010/03/21 14:32)
[21] 『本気でなのはに恋する男』 閑話3[十和](2010/03/28 10:42)
[22] 『本気でなのはに恋する男』 十八話[十和](2010/04/04 11:03)
[23] 『本気でなのはに恋する男』 十九話[十和](2010/04/11 00:50)
[24] 『本気でなのはに恋する男』 二十話[十和](2010/04/18 02:40)
[25] 『本気でなのはに恋する男』 二十一話[十和](2010/04/25 03:48)
[26] 『本気でなのはに恋する男』 二十二話[十和](2010/05/03 22:19)
[27] 『本気でなのはに恋する男』 二十三話[十和](2010/05/09 20:54)
[28] 『本気でなのはに恋する男』 閑話4[十和](2010/05/15 22:25)
[29] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話[十和](2010/05/22 17:27)
[30] 『本気でなのはに恋する男』 二十五話(無印終了)[十和](2010/05/30 04:14)
[31] 『本気でなのはに恋する男』 二十六話[十和](2010/06/27 10:51)
[32] 『本気でなのはに恋する男』 二十七話[十和](2010/07/04 22:03)
[33] 『本気でなのはに恋する男』 二十八話[十和](2010/07/14 23:33)
[34] 『本気でなのはに恋する男』 28.5話[十和](2010/08/15 23:44)
[35] 『本気でなのはに恋する男』 二十九話[十和](2010/09/05 23:24)
[36] 『本気でなのはに恋する男』 三十話[十和](2010/11/07 00:59)
[37] 『本気でなのはに恋する男』 三十一話[十和](2010/11/25 00:15)
[38] 『本気でなのはに恋する男』 三十二話[十和](2010/12/24 00:10)
[39] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話[十和](2011/02/03 00:02)
[40] 『本気でなのはに恋する男』 三十四話[十和](2011/04/12 00:05)
[41] 『本気でなのはに恋する男』 三十五話[十和](2011/08/12 23:47)
[42] 『本気でなのはに恋する男』 三十六話[十和](2011/12/04 23:03)
[43] 『本気でなのはに恋する男』 三十七話(空白期間終了)[十和](2012/03/20 00:10)
[44] なの恋 簡易的キャラ紹介[十和](2011/12/04 23:04)
[45] 『なの恋』 外伝 『ドリームカップル』[十和](2010/06/06 21:32)
[46] 『なの恋』 外伝『ARISA』[十和](2010/08/15 23:39)
[47] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅡ』[十和](2010/10/06 00:08)
[48] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)[十和](2012/03/20 00:10)
[49] ネタ『魔法少女リリカルなのは TTS』[十和](2010/06/20 03:13)
[50] オマケ『短編集』[十和](2010/10/06 00:11)
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[13960] 『本気でなのはに恋する男』 十七話
Name: 十和◆b8521f01 ID:663de76b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/21 14:32

 あの後…アリサ達に見られた後の事は、全くと言っていいほど覚えていない。
 いや、本気でな?
 何を言って何を言われたのか、もうさっぱりだった…気が付いたら、夕食の直前だったし。
 夕食は、美味しかったけど。

 それも過ぎて二日目の夜…つまりは今なんだが、俺は一人でなのは達を待っていた。
 待っている部屋は、昨日寝た場所…つまり、なのは達の女子部屋なんだけど。
 そういえば今日も、何の疑問も差し挟まれることなく、俺がこの部屋に寝ることが決定した。
 一応、確認はしたんだけど、笑顔の士郎さんに押し切られた。
 マジで何この人たちと言いたい…心の中では散々に言ってるけどな。

 ちなみに、今日も夜は士郎さん達と一緒に入ってたんだけど、昨日みたいなことは何も聞かれなかった。
 心密かに、何かまた聞いてくるのではないかと恐れていただけに、かなり拍子抜けだったけど。
 いや、疑心暗鬼なのは解ってるんだけどなぁ…昨日が昨日だし。

 と、そんな事を延々と考えながら、なのは達が温泉から上がって来るのを待っている。
 端的に言って、すごく暇だ。
 この部屋には後はユーノしか居ないし、隣に恭也さんと士郎さんは居るけれど、二人で将棋指してるし。
 なのでまぁ、持ってきていたトランプで、タワーを作って暇を潰している。

 このタワー作り、どうしても五段以上が組めないのが俺だ。
 五段までは、もの凄く集中すればギリギリ出来るのだけど、それ以上となるとダメである。
 まぁ前に、五段でも十分でしょう?とは、アリサに言われたんだが。

「……ふー」
「きゅー…」

 組んだタワーから手を離して、顔を背けながら息を吐く。
 何故だか、隣のユーノも同じように息をついているが気にしない。
 現在、トランプタワー四段目、今までに無いくらい上手く組めている…と、思う。
 こう、何ていうかガッシリしてるとか、そんな感じだ。

 今までに無いくらいの好感触に、一人気合を入れるのは仕方ない事だ。
 この五段目、間違いなく成功するだろうしそして次は未知の六段目…!
 だからと言って、油断して五段目で失敗するわけにはいかない…まさしく、乾坤一擲の心構え。
 手が震えないように、心を落ち着けて…!

「やっぱり、温泉って良かったねーファリン?」
「そうですねー美由希さん」

 わいわい

「はいどうぞ、忍お嬢様」
「ん、ありがとうノエル」

 ガヤガヤ

「あ、ごめんなさいノエルさん? 悪いのだけど、お茶か何か取って頂けるかしら?」
「はい、少々お待ちくださいませ」

 どたどた

「父さんと恭ちゃん、何やってるの?」
「ん? あぁ美由希か、お前もやるか?」

 バラバラ

「お、ユーノ発見!」
「きゅ、きゅー!?」

 グシャグシャ

「あれ…? すずかちゃん、雄介くんは?」
「あ、こっちに居た…けど」

 ずーん

「?どうかしたの、すずかちゃん? わっ!? ど、どうかしたの雄介くん!?」
「いや…別に、何でも無いさ」

 床に両手をついて項垂れている俺を見て、なのはが驚いた声を上げるなのは。
 何でもない、何でもないんだ…ただ、組んでたタワーが崩れただけだから。
 うっわもう、最高に空しい…頑張ってたのになぁ。
 一応言っておくと、最後のほうの擬音は俺のタワーの倒壊とその惨状の音だから。
 最後のだけは、俺の気分的な効果音だけど。

「で、でも何だか凄く落ち込んでるみたいだけど…?」
「ははは、そうかもな…強いて今の気分を言うなら、未知の領域へと足を踏み出し損ねた感じだ」

 キョトンとした顔をするなのは、まぁ良く解らなくても当たり前だな。
 取りあえず、散らかったトランプでも集めようか。
 どうせこの後、寝るまではトランプでもやるのだろうし、適当に集めておく。

「あ、雄介くんトランプ持ってきてたんだ」
「あぁ、あれば困らないと思ったしな」

 そう言いつつ、トランプを集め終わったのでようやくなのは達に顔を向ける。
 そうしてなのは達、主になのはを見た瞬間、思わず思考が停止した。
 なぜならば、

「…普段と、変えたのか?」
「え? …あ、コレの事?」

 俺の呟きに、なのはが後ろで一つに纏めた自分の髪を触っている。
 そう、今のなのはの髪型は、普段のツインテールでも無く、下ろした状態でも無い。
 頭の後ろで一つに纏めた、ポニーテールなのだ。

 アリサ達の様に髪が長くは無いので、後ろで文字通りに馬の尻尾のようになっているなのはの髪。
 ポニーテール…しかも今のなのは見たいに短いヤツと言えば、個人的には運動の出来る感じの女の子に似合うのだろうと思っていたけど…そんな事は無かった。
 なのはにも良く似合ってる、こう何て言うか…子犬とかそんな感じの、小動物的な意味で。
 可愛いって事だが…って、また何を考えてるよ俺はっ!?

「に、似合ってるぞなのは」
「そ、そうかな?」

 俺のぎこちない褒め言葉に、照れてみせるなのは。
 うわもう、照れたような動作と一緒に髪が跳ねるのが、また尻尾みたいでかわ…ってさっきから思考が危ないぞ俺!?

「あら、何を見詰め合ってるのよ?」
「そ、そんな事してないよアリサちゃん」

 む、いきなり現れたなアリサめ。
 そのニヤニヤ笑いを止めて、手のユーノを下ろしてやれ…嫌がられてるんだからお前は。
 あとなのは、そんな事って言わないでくれ。
 もう少しで良いから、良い夢を見ていたいんだよ。

「夢じゃなくなると良いね?」
「あぁ…ん?」

 何時の間にか背後に居たすずかに返事をしてから、俺は今のを口に出していないはずと気づいた。
 咄嗟に振り向けば、そこには笑顔のすずかさん。
 最近、たまに友達が解らなくなります…主に、その能力的な意味で。
 今間違いなく、すずかが読心術を会得してた感じだったけれど…?

「今から、行くんだよねアリサちゃん」
「そうよ、もう今日が最後じゃない…ねぇ雄介?」
「…ん? 何だアリサ?」

 アリサから話しかけられて振り返れば、そこには何やら口元に笑みを浮かべたアリサの姿。
 そういえば、アリサも普段と髪形が違うなぁ…ツインテールか。
 すずかも普段と違って、髪を二つに分けてお下げにしてるし。

「星、見に行かない?」
「星?」

 星ってあれか、夜空にあるやつ?

「折角こういう山の中に来たんだし、ちょっと外に出て星でも見に行かないって思ったのよ」
「あぁ、確かにこういう山の上だと良く見えそうだもんな」

 納得、こういう山の上で見る星はさぞ綺麗だろう。
 前世でも、田舎の行った時に見た星はかなり綺麗だったし。

「まぁ、旅館の外なんてあんまり探検してないから、あんまり旅館からは遠くないところだけどね」
「それは確かに」

 山の上だし夜だし、色々子供だけで出歩くには危ないだろうしな。
 それに今から探しても、すぐに夜も遅くなって長くは見れないだろうし。
 …あ、そういえば。

「そういえば、あそこなら星を見るに良いかも知れないなぁ…」
「ん、どこよ雄介?」
「あー、俺が朝に散歩してたときにあったんだけど、旅館からつながってる大きい道を進むと、大きな川とそれに架かる橋があってな? 橋の上には木とかが無かったから、見に行くんならどうだろうってな」

 俺がそういうと、アリサは感心したような顔をする。
 問題は少し距離があること、それと川の上だからきっと寒いに違いない。
 ただ見たわけじゃないけど、あそこで見る星はきっと綺麗だろう。

「その場所、良さそうね」
「でも、ちょっと遠いかもしれないから、俺たちだけじゃ行っちゃダメなんじゃないか?」
「その辺は、今から聞いてくるわ。 ちょっと待ってなさい」

 俺にそう言ったら、すぐに踵を返すアリサ。
 思い立ったら直ぐ行動、何とも頼りがいのあるヤツだ。
 と、そんな事を考えていたらなのはが。

「雄介くん、どこで星を見るか決まったの?」
「ん? あぁ、一応良さげなところがあったから、アリサはそこにするつもりみたいだ」
「そっか、外に行くんなら何か着て行ったほうが良いかなぁ?」
「あーそうだな、行くところも川の上に架かってる橋だから、きっと寒いと思うぞ?」

 そんな事を話しながら、出しっぱなしだったトランプを今度はちゃんと片付ける。
 使うにしても、一度外へ出てそれからだろうし。
 それにしても、星かぁ…眺めるのは、久しぶりだからちょっと楽しみだ。

+++

 星を見に行くのは、やっぱり俺たちだけだったらダメと言われた。
 その代わりと言うか、まぁそれだったら俺たちだけで行かなければ良いわけであって

「へぇ…確かにここだと良く空が見えるわね」
「本当だね、アリサちゃん」
「でも、寒いわねココ?」
「そうだね、雄介くんの言ったとおり上に羽織ってきて良かったかも」

 俺たち四人+ユーノは当然として、

「いやー本当に、良くココ見つけてたね雄介?」

 保護者として美由希さん、そしてちょっと離れた所では恭也さんと忍さんが居る。
 ノエルさんとファリンさんは、士郎さんと桃子さんと一緒に旅館で待機中だ。
 ってか、恭也さんと忍さんから雰囲気読んで離れてきたけど、保護者代わりだから俺たちから離れたら不味いのでは無いだろうか?

 しかも今は到着して各自散開中だし、まぁ適当に集まってるけどな。
 アリサとなのはとすずか、それに俺と美由希さんとかそんな感じに。
 保護者代わりには、美由希さんが居るとは言え…そんな事を考えてつつ恭也さん達を見て居たら。

「んー、雄介一体何処見て…あぁ」
「…なんですか美由希さん、その納得は」

 いやいやー何て誤魔化す美由希さん、誤魔化せてないし何かが言いたいというのが丸解りなんですけど。
 美由希さんは何故か一度なのは達に視線を向けて、それから俺に顔を近づけてきた。
 もの凄く、口元がニヤついてますけど。

「いやー雄介も、なのはとああいう雰囲気になりたいなーとか思ってたんでしょ?」
「…」

 …思わなかったとは言わないが、そっちがメインでは無い。
 さっきなのはを見たのは、聞かれないためか。
 ってゆーか、何を小学生に聞いてるんですか美由紀さん?

「…美由希さん、人のことより自分のほうの心配でもしたらどうですか?」
「………何か言ったかなー雄介?」
「いふぁいふぁい、ふぇふぉはなふぃてくふぁふぁい」

 今度は微妙に口元を引きつらせながら、俺の口を摘んで捻る。
 痛い、マジで痛いし。
 気にしてるのなら、誰か探せばいいのに。
 美由希さん、美人なんだからすぐにでも良い人は見つかりそうですよ。

 しばし、美由希さんに制裁を食らった後、ようやく解放してもらえた。
 口が痛いが、自業自得…か、これは?
 少しフラフラしつつ、欄干の傍で一人のなのはに近づくと、苦笑で迎えられた。

「大丈夫雄介くん? お姉ちゃんに、何か言ったの?」
「まぁ、ちょっとな…アリサ達は?」

 あっち、と言って示された先を見れば、そこではアリサとすずか、それに美由希さんが三人で固まっている。
 何をしてるんだと一瞬思ったが視線が合った瞬間、アリサの顔が笑顔になったのを見て疑問は一瞬で氷解した。
 また楽しんでるな、あんにゃろうめ。

「あっちで、何してるんだろうね?」
「…さぁな、でもそういうなのははこっちで何してたんだ?」

 俺の特に意味なんて無いはずの問い掛けに、何でか困ったような顔をするなのは。

「…んーと、ちょっと考え事、かな?」
「考え事?」

 うん、と頷いたなのはは、俺に背中を向けて欄干に両手を乗せる。
 そのまま、川の遠くの方を眺めるなのは。
 普段とは、どこか雰囲気の違うなのはに、少し疑問を覚えつつその隣へと並んだ。

 隣へと並んで、しばらくは何も言わずになのはが何か言うか待ってみるが、何も言わない。
 その横顔を見れば、視線はどこか遠くに。
 その態度は、最近のなのはの挙動不審にも通じるところがあると、何となく思った。

「…言えない、考え事か?」
「…うん、誰にも言っちゃダメだよ?」

 ズバリ思ったことを聞いた俺に、困った顔でそう言うなのは。
 誰にも言えないのに、俺にそう言ったら何かがあるのは解っちゃうぞ。
 言えない考え事か…それはつまり。

「最近、時々元気が無いのも、それか?」
「違うよ」

 はっきりと否定したなのはだが、むしろその言い方にそんな顔じゃあ信じられん。
 そんな、困った顔で言われてもな。
 相変わらず、嘘をつくのが下手だよ本当に。

「ふぅん、そうか」
「…アリサちゃん達に、言っちゃダメだよ?」

 俺が信じてないのが解ったのか、今度はそう釘を刺してくるなのは。
 さっきから終始変わらないその困った顔、そんなに深刻な問題なのだろうか?
 遠くを見るのを止めたなのはが、俺のほうへと向き直る。

「…相談、してくれないのか?」
「…うん、ごめんね相談できない事だから」

 ちょっと踏み込んだ質問は、また困った顔と声で遮られた。
 でも、相談できない事だと明かしてくれたのは、進歩と言っても良いだろう。
 今の会話で、少しは何かがあるのが解ったし。

「なぁ、なのは?」
「…うん」

 俺の呼びかけに、ちょっと表情の強張るなのは。
 喋りすぎたとか、そう思ってるのだろうか?
 俺としては、これだけ小さなことでも話してくれて嬉しいけれど、隠してるなのはからそうは思わないだろうし。
 そんな隠したがりななのはに、一言だけ言おう。

「話せるようになったら、話してくれよ?」
「…え?」

 驚いた顔をするなのは、おいおいそんなに意外そうな顔をするなよ。
 俺は、そんなに無理やり聞きだすような奴に思われてるのか?
 なのはの顔を見ながら、少しだけ笑顔を心がけつつ。

「言えないなら聞かないさ、なのはも考えての事だろ?」
「雄介くん…」

 我ながら、格好つけた物言いだ。
 単に踏み込んで聞き出すだけの、それだけの勇気が無いだけなのに。
 でも、そんな事をいう必要は無い。
 
 今必要なのは、なのはを安心させる事なのだから。
 それだったら、俺の勇気が無いことでさえ利用して、なのはを騙そう。
 痛むのは俺の良心だけで、そんなものは二束三文でくれてやる。
 そんな事を思いながら、今度は茶化すように笑顔を作った。
 
「まぁ、いつかは言ってくれると嬉しいけどな。 そうだな、友達でいる間には言って欲しいけど」
「…雄介くん、ありがとう」

 小さく微笑みを浮かべるなのはを見て、俺もまた今度は本当に笑顔を浮かべれた。
 互いに笑顔で、でもちょっと苦笑しつつ。

「お礼は良いって、それよりちゃんと教えれそうか? 俺が友達の間に?」
「うーん、どうかな~。 でも、雄介くんとはずっとお友達だから、いつか教えてあげるね?」

 多分、教える時は無いんだろうなぁなんて俺は思ってるけど、そう笑い合う。
 いや、なのははいつか言うつもりかも知れないけれど、俺は別にどっちでも構わない。
 あえて言うなら、なのはの関わってる問題がとっとと無くなれば良いなぁと思うくらいだ。

「雄介~なのは~、もう戻るらしいわよ~」

 アリサが、離れたところから呼んでいる。
 なのはと互いにまた顔を見合わせて、

「戻るか、なのは?」
「うん、そうだね」

 二人で並んで、アリサ達の方へと戻る。
 戻る先では、もうすでに恭也さんたちも集まっていて…なんか皆笑顔でこっち見てるし。
 デバガメ反対、プライバシーはどうしたんだこらぁ!!

 そして、戻る最中に内心で一人落ち込む俺。
 何故かって?
 あの最後に言った、なのはの『ずっとお友達』が、こう地味に効いてきた。
 俺としては、それ以上の関係になることを切に願う。
 うん、本当にお願いしますどこかの誰かも知らない神様。

+++

 旅館に戻った後は、まだ寝るには早いとのことで、アリサとなのはと俺とすずかの四人で、大トランプ大会となった。
 最初は和やかに進んでいたのに、アリサが途中で罰ゲームを導入したため、そこそこ激しい戦いへと変貌した。
 主に俺とアリサの間で。

 罰ゲームそのものは、『最下位の人の髪型を自由に弄る』だったのだが、俺が最下位になった途端アリサがどこからともなくリボン等を取り出したため、それ以降は俺が本気で勝ちを狙いに行き、アリサもそんなに俺を女装でもさせたいのか競り合ってきたので、激しい戦いとなった。
 途中で様子を身に来たファリンさんを巻き込んで、その戦いは午前二時まで続き、流石に桃子さんたちから怒られたので休戦になった。

 最終的な結果としては、アリサは椰子の木ヘアーで数は三つとなり、なのはは漫画とかで言うアホ毛を作られてさらに普段のツインテール状態。
 手堅く最下位を回避し続けたすずかは、三つ編みが一つだけの普通の髪型。
 そして、途中から入ったにも関わらず一番負けたファリンさんは、一度ナインテールくらいまでなったが、一度全て解かれ最終的にお団子三つに三つ編みも一つの奇怪な髪型となっていた。
 俺? …一回、なのはとお揃いにされた。
 あとは黙秘させてもらうっ!

+++

 次の日は、連休最終日と言うこともあって、旅館のほうは朝早くに出ることになった。
 明日からは学校なので、今日の昼間には家のほうに戻る予定。
 あと、昨日寝るのが遅かった所為か起きるのは俺が一番遅かった。
 なのはに起こされて寝ぼけと有頂天のダブルで呆けて、その場で着替えようとしてしまいアリサに本気で背中を叩かれたが。

 背中は痛かったが、それ以上にもの凄く恥ずかしかった。
 なのは達は顔を赤くしてそっぽ向くし、できればそのまま気にせずにして欲しかった気がしないでもない。
 それを眺めて笑っていた方々には、今度何かお礼をしてやる。
 取り合えず、美由希さんには誰か見知らぬ男の人と歩いていたとかって噂を流してやろうか!

 ともあれ、色々あったが朝食を食べて荷物を車に積んで旅館を出発。
 あ、顔に落書きは無かった。
 忘れてしまったようで、密かに安堵する。
 
「ん…」
「!?」

 左側の至近距離から聞こえた吐息に、咄嗟に小さく体が跳ねてしまった。
 ぎこちなく、ただし精一杯揺らさないようにそっちを向くと。

「…すー」

 なのはが、俺の左肩に寄りかかって眠っていた。
 間近に見える、なのはの寝顔…眠った顔も、やっぱり可愛いなぁと思った直後。
 膝枕よりも超至近距離に、俺の心臓はもう破裂した。
 いや破裂してないって、いかん思考が滅裂って言うかさっきまでの現実逃避が再開出来ない。

 何でこうなったか、俺にも良く解らない。
 原因は多分、昨日の夜更かしと今の席順。
 昨日あんなに夜更かししたから、まだ眠たかったのだろう…もう一人居るし。
 俺は昨日、昼間に気絶と言う形で寝てたから平気なんだけど。

 席順については、乗ってるのは来た時と同じで四人揃って最後尾なんだが…順番がちょっと違う。
 俺から向かって一番左から、すずか、なのは、俺、アリサの順番で並んでいるのだ。
 アリサの奴は、きっと初日と同じようにしたかったのだと思うが、なのはが先に乗り込んでしまったので俺を押し込んだんだろう。
 
「んん…」
「っ!?」

 再び聞こえた吐息、どうにか体が跳ねるのは抑えたけれど。
 またぎこちなく揺らさないように、今度は逆の右側を見れば。
 そこではアリサが、なのはと同じように俺の右肩に寄りかかって眠っていた。
 何でこうなっているか、俺には良く解らないが…取りあえず、今の俺は両側から眠ったなのはとアリサに寄りかかられています。

 本当に何でこうなったのか、帰りの車の中では行きの時ほど会話が弾んでいたわけではない。
 いや、それは皆眠たかったり疲れてたりしたからで、ぎすぎすしていたとかでは無いのだけど。
 ともあれ、人の密集率に比べてかなり静かだったのだが…

 初めに、まず俺がぼーっとしていたら、何かが俺の左肩に乗ってきたのだ。
 はて?とそう思いながら何の気なしにそっちを向いて、超至近距離にあったなのはの寝顔に心臓が止まったかと思った。
 心臓は止まらなかったが、しばし完全に体の動きは停止していた。

 何故?どうして?と疑問が脳内を大乱舞していたが、それもすぐに中断された。
 なぜならば、今度は反対側に何かが乗ったのを感じたからだ。
 驚き咄嗟にそっちを見れば、今度はアリサが超至近距離に居た。
 ってか、眠っていた。
 
「~~~っ!?」

 無論、眠っている人の近くで大声を出すわけには行かなかったので、口を押さえようとしたが両腕は動かなかった。
 動かしたら、なのは達の頭が落ちそうだったし。
 口を噤むことで、どうにか声を漏らさずにすんだけど。

 そしてそのまま、微動だに出来ず今に至る。
 いやだって動けるわけないじゃん、色んな意味で。
 向こうに着くまでこのままなのかなぁ、と現実逃避に思っていると。

 カシャ

「?」

 どこかで聞いたことのあるような、そうでも無いような音が聞こえた。
 何の音だろうと、辺りを見て。
 今度は完全に、頭の中が真っ白になった。

 カシャ、カシャ

 二度ほど、また同じ音がしてようやくもう一回頭が起動した。
 取りあえず、目の前の景色を理解しよう。
 うん、俺から見て左、すずかが携帯を構えている。
 いや、携帯のカメラ機能と言ったほうが正しいだろう…はっはっはっ。

 何やってるの、すずかさん!?

「あ、雄介くんも寝たふりしてもらって良い?」
「ノー、だ…!」

 阿呆な事を言い出したすずかに、小声で怒鳴る妙技を披露する俺。
 うーんと言いながら、さらに携帯を操作して写真を撮っていくすずか。
 やめてくれませんか、本気でやめてくれませんかすずかさんっ!?
 何撮ってるの、肖像権の侵害ですよ!?

「あ、美由希さん、私も入りたいので撮ってもらって良いですか?」
「ん? 良いよ~、じゃあほら雄介も寝たフリ寝たフリ♪」

 何を共犯者を作ってるんですか!?
 美由希さん、あんたも何その満面の笑顔!
 …はっ!? 何バックミラー越しにこっち見てるんですか士郎さん!
 もっとちゃんと運転してください、桃子さんもちらちらこっち見ないで!

「ほらー雄介も寝たフリしないと、一人だけ起きてる写真になるよ~」

 ふと気がつけば、すずかも何時の間にかなのはに寄りかかって寝たフリに入っている。
 確かにこのままだと、俺だけ起きてる写真に…!
 ええい、もうままよ…っ!

 覚えてろ、すずか…っ!

+++

 その日の夜、自分の部屋で明日の用意をしている俺にすずかからメールが届いた。
 何の気なしに開いてみれば、

「ぶっ…!?」

 添付されている写真を見て、思いっきり噴出してしまった。
 その写真にはなんと、なのはに膝枕されている俺が映っていたのだ。
 思わずその写真に見入っていると、新着メール。
 何だか嫌な予感を覚えつつ、すずかからのメールを開けば。

「…何やってんの!?」

 聞こえるわけが無いのに、思わずそう叫んでしまった。
 次の写真には、アリサに膝枕されている俺。
 さらにその次からは、帰りの車での写真。
 次々来るメールを開けば、その全てがそんな感じの写真だ。
 いそいそと保存しながら、次々に見て行き最後のメールを開けば。

『ちゃんと、保存してるよね? P.S.これは私でも、良く撮れたと思うよ♪』

 俺の行動が見透かされてるけど、取りあえず最後のメールの添付写真を開けば。
 ある意味奇跡のショットか、俺となのはが互いに寄りかかって眠っているように見える写真だった。
 内心、感動に打ち震えているとまた新着メール。

『送った奴は、ちゃんと皆にも配ってるから安心してね♪』

 へー、俺に来たのと同じ奴がなのはやアリサに?
 ははは、嘘?
 え、あの膝枕写真とかが?

 …俺、明日生きていられるだろうか?
 主に、アリサ相手に。


+++後書き
長く続いた温泉編終了、なんかこの話はなのは分が多くなったなぁ。 まぁ、なのはがヒロインだし、それが一番いいんだけどww


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