取りあえず一言、幻覚じゃなかったです。
マジでした、リアル世界樹だったようです。
風呂から出てきたら消えていたので安心してたけど、家に帰ってきた母さんの証言で多数の人が見てたのが発覚しました。
近くには居なかったらしい母さん曰く、急に街中に現れたがしばらくすると光になって消えたという。
何のアニメだと言いたい、言いたいけど現実なんだよね俺は直接見てないけど。
ただ朝から色んな局でニュースが行われているので、現実なんだよなぁ。
テレビカメラにも、しっかりと映っていたようだ。
なのはにアリサ、すずかやチームメイトの山中達も皆が見ていた。
幻覚だと、現実逃避したのは俺だけだったけど。
後、けっこう巻き込まれての怪我人も出ていたようだ。
俺達に近いところで上げれば、『翠屋JFC』のキーパーである武田と、マネージャーの内井さんが巻き込まれて、二人ともかすり傷を負って道端で倒れていたらしい。
二人曰く、拾った綺麗な石が急に光りだして、気が付いたら倒れてたらしい。
詳細を聞けば武田が朝拾った綺麗な石を、内井さんにプレゼントしようと渡そうとしたときに、それが急に輝いたと思ったらそれ以降の記憶は無く、気が付けば病院で道端で倒れていたと言われたようだ。
それとその倒れてた姿勢と言うのが、なんと武田の奴が内井さんを抱きしめてる状態で見つかったと言う話が飛び交い、現在進行形でからかわれ続けている。
前々から内井さんは武田にあれだろうと思っていたけど、実は武田も満更では無かったのかと仲間達と盛大にからかっておいた。
二人の顔が真っ赤になって怒り出す寸前に、全員揃ってサッと消えておいたけど。
男子連中の中で目指すポジションは、黒幕です。
と、話が盛大にずれていた。
いや、武田の話もそうだけどリアル世界樹も元々どうでも良いし。
現れたのには驚いたけど、消えてもう出てこないものに興味は無い。
…いや、出てこないって決まったわけじゃないけど。
ともあれ、その辺の話は別にどうでも良い。
山中が世界樹の一件で、完璧に宿題を忘れて怒られてたのよりは重要だけど。
それよりも大事な事は、あのリアル世界樹の出た次の日。
その日から、なんだかなのはの元気が無いことだ。
+++
平日の夜中、俺は自分の部屋で携帯電話を手に取った。
自分のベッドに腰掛け、短縮に登録してある番号のア行を選んで電話をかける。
すこしだけ待って、通話が繋がった。
「もしもし?」
『もしもし、ちゃんと聞けた?』
「まぁ、一応な…そっちは、やっぱり変わりなくか?」
『まぁ、そうね…今日もやっぱり、ちょっと元気無かったわ』
電話の相手はアリサ、なのはの元気の無い理由を互いに探っていて、今はその情報交換だ。
アリサとすずかがなのはを見て、俺が士郎さん達に情報収集に行っている。
役割分担については、俺の方が士郎さんたちとは親しいからこうなった。
なにせ、士郎さんとはかなりの頻度で週末に会っているし。
『で、細かいところはどうだったの?』
「あぁ、士郎さんが一緒に帰った時は普通だったらしい。 で、その後士郎さんが風呂に入ってる間にまたなのはが出かけて、帰ってきたらちょっと元気がなくてそのままだとさ」
『そう…』
傍目には普通に見えるけど、高町家の皆にはバレバレで密かに気にしているらしい。
ただし結局、何が原因かは解らずじまい。
何かがあって元気が無いのか、それすらも解らないのが現状だ。
『何か、原因があるとは思うんだけどね』
「まぁ、別れるまでは普通だったしな」
『となると考えられるのは、あの大きな樹の事件かしらやっぱり?』
「それ以外には、無さそうだしなぁ…なのはが出かけたのも、そのくらいだって話だし」
だがしかし、それならそれで一体なのはに何があったのか?
「あれで、誰か知り合いが大怪我したとかは…」
『アンタを含めて、知り合いは誰も怪我すらしてないわよ。 例外なのが、アンタのところのキーパーとマネージャーの二人だけだもの』
「だよなぁ…」
その辺は、こっちでも知り合いに怪我人がいないので解っている。
ただ、
「…あれで、俺たちの知らない友人が怪我してたりとかってのは、あると思うか?」
『…どうかしらね、無いとは断言出来ないけど。 それならそれで、帰り道に寄り道したりして、お見舞いとか行くでしょう? けど、そんな様子も無いし』
「だよなぁ」
『それに、そうだったらもっと解りやすく元気が無くなるんじゃない? なのはだったら、特にね』
「…それも、そうだよな」
割と、悩み事の類は顔に出やすいなのはだから、それも無いとは思う。
そう考えて見てみれば、そこまで深刻な感じには思えないのだけど。
悩み事と言うよりかは、何かを決めようとしている感じにも思えるし。
とは言え今回のも、あんまり親しくない人には解らないくらいの元気の無さだから断言には至らない。
『なのはが話さないのを、聞き出すって言うのもね…』
「まぁな、それになのはは結構頑固だし、言わない気もする」
『そうなのよねぇ』
一拍置いて、
「『はぁ…』」
二人揃って溜息を漏らしてしまった。
割と普段は人に譲るのに、これと決めたら譲らない強さもあるなのは。
譲らない強さと言うのは、悪く言い換えてしまえば頑固とも言えるわけだが…あえてなのはを言うならば、きっと頑固なんじゃないかと思う。
そういう場面とかを見たわけじゃないけど、そう思わせるものがなのはにはある。
「…なぁ、今回の事なのはが話してくれると思うか?」
『どうかしらね、仮に私達の知らない友達が居たとして、今回の事で話すとも思わないし』
「確かになぁ、どうしたもんか…」
どうしたものかと口では言っても、俺に出来ることなんて殆ど無い。
なのはが話すまで待つこと、それとなのはを元気付ける事。
前者は現在進行中、後者は何をすれば元気付ける事が出来るか、それが分からないので保留中だ。
『で、雄介?』
「ん?」
『すずかと考えてたんだけど…週末、誰かの家ででも遊ばない?』
それは…悪くは、無い。
元気が無いときに必要なのは、放っておくことと気分転換だ。
ここ数日は、様子見という形でほぼ放っておくことになってしまったし。
それに最近は、誰かの家に集まることも無かったからな。
「それで、なのはの気が晴れてくれれば良いわけだ」
『まぁね、でその場合アンタの家で良いかしら?』
「や、却下で」
迷わず即答。
『何でよ?』
「ハズい」
『馬鹿?』
言った俺もそう思ったけど、即答されると傷つくぞ。
まぁ、今までに四人で集まったことも何回もあるし、そう言われても仕方が無いけど。
「まぁ、それが少しの理由だとしてだ」
『別に、それが本気の理由でもいいわよ? 今度からは、なのはにそうやって言っといてあげるから』
あぁ、絶対に電話の向こうでニヤニヤ笑ってやがる。
意地の悪い顔が、ありありと想像できるのがまた悔しい。
「俺が悪かったから止めてくれ。 で本当の理由だけど気分転換するのなら、やっぱり動物の居るそっちの家のほうが良いだろう?」
『んー、確かにそうね。 じゃあ、すずかの家にでもする?』
「その辺は、お前ら二人で相談して決めてくれれば良いさ」
『そう? じゃあアンタはなのはを誘っておいてね?』
「…は?」
今の会話の流れで、どうして急にそんな事に?
むしろ今の会話の流れで言うと、そっちで決めた後にそのまま連絡する流れだろう?
どこで遊ぶかも決まってないのに、わざわざ誘えと言うのか。
『実を言うと、もうすずかと話してどっちかは決定してたのよ。 アンタには単なる確認で、反対が無かったからよろしくって事』
「…色々と言いたいことがあるが」
『却下ね、ちゃんとなのはを誘っておきなさいよ? 電話じゃなくて、口頭で』
「何でそこまで指定されるんだ!?」
『何よ、チャンスを増やしてあげてるのよ? 頑張んなさい』
そこまで言うと、問答無用で電話を切りやがるアリサ。
思わず、携帯を手に持ったまま呆然としてしまう。
チャンスってお前とか、何でそこまで気を使うんだとか色々言いたいことはあるが…全ては、俺の恋心がバレているのが原因か。
と言うか、向こうは知らないとは言え、俺は小学生に恋を応援されているのか…
「…寝よう、うん」
深く考えると、ダメージを受ける。
早々に寝て、明日起きてから改めて考えよう。
+++
朝起きたら、アリサとすずかから念押しのメールが入っていた。
アリサは『ちゃんと誘いなさいよ』と若干高圧的な感じで、すずかは『お願いするね』と優しい感じで実に個性的なメールである。
二人の友人ぶりに、思わず溜息すら出そうだ。
あと、すずかからのメールには『お昼くらいから集まる?』との追記もあったが。
「なのは、ちょっと良いか?」
「なあに雄介くん?」
学校での休み時間にて、なのはに声を掛ける。
なのはに声を掛けた瞬間、近くに居たアリサとすずかの視線が俺に集中した。
見るな、こっち見るな。
って言うか、律儀にアリサの言葉を守る俺は義理堅いのか、それともアリサには逆らえないと他人からは取られるのか、非常に気になる。
「…あーとだな、なのはは今週末に、何か予定はあるか?」
「えっと、特に無いよ?」
考える様子も無く、即答するなのは。
その様子からすると、本当は用事があるけどとか、そういうのは無いようだ。
「その、最近さ誰かの家に集まることも無かったよな?」
「…そういえば、最近は無かったかも」
「だ、だよな?」
んーと考えて見せるなのはに、勢い込んで尋ねてしまった。
イカン、もうちょっと落ち着け俺。
それとアリサ、ニヤニヤするなお前。
すずかも、そんなに心配そうな顔をしないでくれ。
逆に不安になるから、この上ないくらいチキンなんだぞ俺は。
「あーそれでだな、すずか達と話してたんだけど、今週誰かの家で集まらないか?」
「雄介くんのお家で?」
「い、いや…違う、と思うけど」
いや、呼んでも別に良いぞ?
良いけど、アリサやすずかの家と比べると圧倒的にアレだし。
遊ぶ場所とかも、家は大きめのマンションではあるけど所詮マンションなわけだし。
だから、別の場所が良いだろう、ウン。
「多分、すずかの家じゃないか?」
「すずかちゃんの?」
今日のすずかからのメールで予想すると、多分そうに違いない。
集まる時間が書いてあったし、アリサの家ならばすずかの場合、そうやってちゃんと書くだろうし。
「あぁ、それとお昼ぐらいからって話なんだけど…どうだ?」
「んー、うん! それで大丈夫だよ」
なのはは少しだけ考えるような素振りのあと、満面の笑みでOKしてくれた。
ちゃんとOKしてくれた事に、我知らず安堵の息を漏らす。
と同時に、俺たちを…と言うか俺を見守っていたアリサが、こちらの話に入ってくる。
「じゃあなのは、今週末はちゃんと予定を入れておきなさいよ?」
「あ、アリサちゃん。 うん、久しぶりだもんね、誰かのお家に集まるの」
「家にね、新しい子が増えたんだよなのはちゃん」
すずかも入ってきて、普段どおりの会話が始まる。
さぁ俺も、ともう一度入ろうとした所で、
「佐倉ぁぁぁ~」
「うおっ!?」
イキナリ、後ろから肩を掴まれた。
驚き後ろを見てみれば、そこでは山中が俺の肩を掴んでいる。
いつの間に人の背後に忍び寄りやがったんだ、コイツは!?
「頼む、今日の宿題を教えてくれ~」
何とも情けない顔で、そう言ってくる山中。
チラリとアリサ達の方を見れば、すでに三人の会話に夢中。
今からあっちに入るのは、何だか入りづらい上に、話してる時に山中に来られるのもアレだ。
「…山中、今日の宿題か?」
「お、おう? …あーいや、やっぱり遠慮してお…」
「まぁ、待て」
逃げようとした山中の肩を、ガシリと掴む。
何気に頑なに逃げようと身体に力を入れているが、そう簡単に逃がしはしない。
更に身体を捩って逃げようとするが、肩を掴んでいるのとは別の腕を首に掛ける。
その状態で自分のほうに引き寄せつつ、山中に声を掛けた。
「安心しろ、ちゃんと教えてやる…きっちりかっきり、お前が理解できるまでみっちりとな…」
「ちょ!? 何か言い方が怖いぞ佐倉!? ついでに首が絞まる!?」
安心しろ、単なる八つ当たりだ。
嫌がらせじゃあない、単になのは達の会話に入るチャンスを潰された八つ当たりだから。
だから、安心したまえハハハハ。
ってか、首はついでかお前。
「さぁ、どこまでやれてるか見せて見やがれこんちくしょう」
「わ、解ったよ…」
+++後書きとコメレス
アニメには無い部分の話、と言ってもなのはがすずかの家に遊びに行くことになった理由の説明みたいなものですが。
>たるさん
言われて見れば、話の盛り上がりとか薄いかもしれません…この話のコンセプトとしては、一番には恋愛と言うよりも、雄介の日常を眺めるのが一番かも知れません。 もちろん、雄介が恋愛を一番に考えればそうなるのかも知れませんが、今の雄介は好きだけど行動を起こせない奴、で書いています。
ただ出来る限りはもう少し話の内容を濃くしていこうとは思いますので、よろしければこれからもお付き合いをお願いします。
>文才も無い男さん
ちゃうちゃうww ロリコンやないで、だってアリサたちには欠片も興味が無いみたいだからww
雄介はきっと、『なのコン』ですなww
もちろん意味は、『なのはコンプレックス』でww