== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
背中の痛みを感じながらも、ヤオ子は里の外周を時計回りに走る。
そして、タスケの回復が早かったのは、この薬草のお陰だと再認識する。
「しかし、この薬草は動物用だったはず……。
何で、あたしにこれほどの効果が?」
人間も動物の仲間だからか?
例によって、ヤオ子のエロパワーのせいか?
「考えても分かりませんね」
走りながら激しくなった戦いの音の方に、ヤオ子は目を移す。
里の中心だった場所では、ナルトが仙人モードで口寄せ動物の蛙と共に戦っていた。
「ナルトさん……。
凄い……。
・
・
皆、頑張ってるんだ!
あたしも何かをしないと!」
ヤオ子はナルトの戦う勇姿を見ながら走り続けた。
第77話 ヤオ子の居場所・救助編
ペイン・天道の神羅天征の被害は里全体に及んでいる。
その攻撃で建物が全て瓦礫に変わり、多くの忍や一般の人々が埋まってしまっている。
「感知系の忍が居ないと探索も出来ませんね」
ヤオ子が辺りを確認しながら走っていると、瓦礫の近くで神羅天征で飛ばされたカツユの分身を見つけた。
「カツユさん!」
呼ばれたカツユがヤオ子に気付く。
カツユはヤオ子が自分の元まで来ると話し掛けた。
「無事でしたか。
大事な時に離れてしまって……」
「仕方ありません。
あれは予想できませんでした。
・
・
あたしもあたしと居た子達も、皆、無事です」
「消毒液の臭いがしますけど?」
「あたしも治療済みで……という意味です」
「大丈夫なんですか?」
「ええ。
走って来たでしょ?」
「そういえば……」
しゃべり方もしっかりしていて、何より走ってきたヤオ子に、カツユは安堵した。
ヤオ子が話を続ける。
「カツユさん、お願いがあるんです」
「何ですか?」
「カツユさんは、里の皆に付いていたんですよね?」
「はい」
「瓦礫の下になった人は分かりませんか?
救助に向かいます」
「でも──」
「危ないことじゃありません。
敵は、ナルトさんがやっつけます。
だったら、里の皆を助けるのは、あたし達の役目のはずです」
「…………」
カツユが少し考える。
「そうかもしれませんね。
戦闘でないなら、下忍も役に立ちます。
・
・
では、あちらへ」
カツユが方向を示す。
「暗部の人が救出活動をしています」
「ありがとう。
一緒に行きますか?」
「はい。
残ったチャクラを治療に回したいんで」
「では!」
ヤオ子はカツユの分身を肩に乗せると、瓦礫を飛び移りながら移動した。
…
カツユの示した場所では、面をつけた暗部の忍が指揮を取っていた。
ヤオ子は瓦礫の上から、暗部の忍の側に降り立った。
「手伝います」
「下忍か」
「動けない人の分まで頑張らせて貰います」
「今は、猫の手も借りたいとこだしな……。
さっき、小隊を分けたところだ。
君は、オレの隊に入れ」
「分かりました。
・
・
早速ですが、一ついいですか?」
「何だ?」
「忍具は足りていますか?」
「撤去作業に必要な忍具が不足している。
特に瓦礫を除去するのに必要な起爆札が……」
「分かりました」
ヤオ子は腰の後ろの道具入れから、二本目の巻物を取り出す。
そして、印を結び、口寄せした。
「手持ちの起爆札です」
ヤオ子が暗部の忍に、口寄せした起爆札を渡す。
「凄い数だな……。
それに里が破壊されたのに、何処から?」
「あたしの忍具は、里の外の森に隠してあるんです」
「そういうことか……」
「起爆札は、全部で四十六枚あります。
隊を向かわせる前に必要な道具を教えてください。
必要なものを持っているかもしれません」
「助かる……」
暗部の忍が里全体に散る前に一次召集かけると、ヤオ子の周りには他の忍達が集まり出した。
『ワイヤーはあるか?』
『ロープは?』
『ツルハシは?』
里が崩壊し、あるべきものがある場所になく、道具が揃えられない者がほとんどだった。
各々救助に必要な物を一片に口走る。
ヤオ子は注文の多さに対応しきれないと判断する。
「少し離れてください。
全部、呼び出します」
ヤオ子は印を結ぶと、巻物の"全"と書いてあるところに手を置く。
瞬間、煙と共に巻物の上に種類別にドッサリと忍具やその他の道具が現れた。
「状況に合わせて持って行ってください」
『おお!』
『これだけあれば!』
救助活動に必要な道具を各々手にすると、暫くして武器以外の物が姿を消した。
暗部の忍が手をあげる。
「準備は整ったな! 散!」
救助隊が方々に散ると、暗部の忍がヤオ子に話し掛ける。
「これで作業が加速するよ。
随分と忍具を持っているんだな?」
「全て敵から奪った悲しき遺産です」
暗部の忍が吹いた。
「お、面白い子だな……」
「行きますか?」
「そうだな。
一人でも多くの仲間を助けないとな」
暗部の忍とその部下に続いて、ヤオ子も救助活動を開始した。
ヤオ子の班は、スリーマンセルの部隊になった。
…
木ノ葉の長い一日は終わらない。
ナルトとペイン達の激しい戦いが行われる中、里の中では他の忍達も動いている。
医療忍者、救助隊、更にこの機を狙って襲われるかもしれないと警戒にあたる者……。
役割は、それぞれ多岐に渡るが誰も足を止めない。
里は壊れても、火の意志は消えない……。
ヤオ子は暗部の忍の指揮の下で救助者を探し出して行く。
「影分身の術!」
そして、救助者を影分身で仮施設に運ぶのが、ヤオ子の主な役目だった。
「下忍のクセにいい術を持っているな」
暗部の部下がヤオ子を褒める。
「ナルトさんに教えて貰いました」
「そうか……。
ナルトは下の者の面倒も看ているんだな」
「そうですね。
そして、今は里を守ってくれています」
ヤオ子は汗を拭うと、秘蔵の兵糧丸を取り出す。
「残り三つか……。
皆さん、食べますか?」
「「いただこう」」
ヤオ子達は兵糧丸を口に含む。
すると、かなり消耗したチャクラが少しずつ回復する感じがした。
ヤオ子は、更に増血丸も口に入れた。
(ちょっと無理し過ぎましたかね……)
背中の怪我で流した分の血を補給する。
(もう、血が止まってるから大丈夫ですよね?)
今まで使ったことがないから分からないため、出血している時に使うのは血が噴き出しそうで怖かったのだ。
だけど、血の止まっている今なら問題ないと、ヤオ子は判断した。
ヤオ子は、肩のカツユに話し掛ける。
「救助者は、まだ残っているんですか?」
「被害が甚大でしたから……。
しかし、救出隊の忍達は各所に散っています。
時間は掛かりますが、後は労力を掛けるだけです」
「そうですか」
「問題は、今回の被害は死者も多数出したことです。
死者だけは生き返らせることが出来ません」
「そうですね……」
「だから、今は一人でも助け出さなければいけません」
カツユの言葉に、その場の全員が頷く。
「次に行こう。
カツユ様、お願いします」
「あっちです」
カツユの指示で、ヤオ子達は次の救助場所へ移動することになった。
…
移動中、ヤオ子の背中を見た暗部の忍が話し掛ける。
「君は、怪我をしていたのか?」
「治療済みです。
アカデミーに通う弟と友人に治療して貰いました」
「もう、大丈夫なんだな?」
「ええ。
今のところ、傷が開いたりはしていません。
痛みは残ってますけど……」
「そうか……。
・
・
しかし、そのシャツの破れ方──」
「何か変ですか?」
「ウチハの家紋みたいだ……」
「…………」
ヤオ子のシャツは、見ようによっては団扇の形に見えた。
(サスケさん……)
「ちょっと、立派過ぎますね。
写輪眼も使えないし……」
「いや、似合ってるよ」
「そうですか?」
ヤオ子が照れて笑ったその時、カツユが話し掛ける。
「そろそろです」
全員が速度を落とす。
そして、見えてくるのは大きな瓦礫だった。
「辺りに人影がないということは……。
まさか……」
「瓦礫の下です」
「…………」
三人が絶句する。
瓦礫の大きさは、人の力で持ち上がるようなものではなかった。
「あの……。
起爆札は、何枚残ってますか?」
「さっき、使い切った……」
「これ影分身で増員しても持ち上がるか──」
「「無理無理……」」
部下が暗部の忍に話し掛ける。
「何か粉砕する術は?
・
・
オレは、風遁です……」
「私は、雷遁系だ……」
「あたしは、火遁……」
「「「土遁があれば……」」」
そう、土遁があれば瓦礫ごと地面を隆起させられる。
しかし、使えないものは仕方がない。
何とかならないかと、ヤオ子は巨大な瓦礫を見上げる。
「石波天驚拳で粉砕できるかな?」
「「ん?」」
ヤオ子の声に暗部の忍と部下が振り返る。
「あたしの持ち技に爆発系があるんですけどね。
それで粉砕できるかも……しれない」
「試してみるか……」
「でも……。
破壊が中途半端だと下に居る人が……」
三人が考える。
中途半端な威力ではなく、完全に瓦礫を吹き飛ばす威力の底上げが必要になる。
ただし、上げる威力に上限はない。
部下の忍が指を立てる。
「オレの風遁で強化したら、どうだ?」
「なるほど」
「君の忍術は、爆発するんだよな?」
「はい」
暗部の忍も、何か思い付いたようだ。
「要所ごとにクナイを刺す。
そこにオレの雷遁を流して切れ味をあげる」
「うんうん」
「そうすると亀裂が入るので粉砕し易くなる」
「つまり、三系統のコラボ忍術ですか?」
「そうなるな」
暗部の忍が件の瓦礫を見て回る。
「三十二本は、クナイが欲しいな」
「オレ、手持ち七本です」
「私は、八本だ」
「あたし、五十六本」
ヤオ子以外がこけた。
「何で……」
「さっき、口寄せしたでしょ?」
ヤオ子が、再び巻物を広げてクナイを呼び出した。
「便利な子だな……」
口寄せしたクナイを取ると、各々瓦礫にクナイを打ち付ける。
雷遁の放電範囲を考えて暗部の忍の指示の下、距離は密に……。
下準備が終わるとヤオ子が質問する。
「皆さんのチャクラは?」
「安心しろ」
「大分、残っている」
「分かりました。
なら、安心です。
威力不足の時のサポートをお願いします。
・
・
では、いきます!」
ヤオ子の肩から、カツユが降りる。
暗部の忍が雷の性質変化を発生させると、広範囲でクナイに帯電していく。
部下の忍が印を結び始める。
「猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子がチャクラを練り上げ、印を結び、両手に必殺技を装填する。
続いて強化したチャクラの盾を装填する。
「流派ぁぁぁ!
東方不敗がぁぁぁ!
最終奥義ぃぃぃ!」
前傾姿勢で両手を腰に置き、爆発の威力にも耐えれる姿勢を作る。
「石波っ!」
勢いよく両手を突き出し、足に強力なチャクラ吸着が発生させる。
「天驚拳!」
ヤオ子の両手で相乗効果の大爆発が起こると、このタイミングで部下の風遁の術が発動する。
突風が爆発を後押しし、酸素を多く取り入れた大爆発は、更に勢いを増してクナイを叩きつける。
風遁が火遁に変わることで、雷遁の妨げは発生しない。
クナイがスパイクになり、瓦礫に亀裂を走らせる。
止まらない爆発の威力は、皹入れた瓦礫を粉砕して吹き飛ばす。
「「やった!」」
ヤオ子は手に膝を突いて息を切らす。
そして、ゆっくりと顔をあげた先では、手が見える。
暗部の忍と部下が片手を上げていた。
それが何を意味しているのか分かると、ヤオ子は笑顔で両手をあげてハイタッチした。