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No.13840の一覧
[0] 【ネタ・完結】NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~[熊雑草](2013/09/21 23:12)
[1] 第1話 八百屋のヤオ子[熊雑草](2013/09/21 21:27)
[2] 第2話 ヤオ子のチャクラ錬成[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[3] 第3話 ヤオ子の成果発表[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[4] 第4話 ヤオ子の投擲修行[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[5] 第5話 ヤオ子と第二の師匠[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[6] 第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[7] 第7話 ヤオ子の自主修行・豪火球編②[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[8] 第8話 ヤオ子の悲劇・サスケの帰還[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[9] 第9話 ヤオ子とサスケとサクラと[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[10] 第10話 ヤオ子と写輪眼[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[11] 第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[12] 第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[13] 第13話 ヤオ子の自主修行・必殺技編③[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[14] 第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[15] 第15話 ヤオ子の自主修行・必殺技編⑤[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[16] 第16話 ヤオ子とサスケと秘密基地[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[17] 第17話 幕間Ⅰ[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[18] 第18話 ヤオ子のお見舞い①[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[19] 第19話 ヤオ子のお見舞い②[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[20] 第20話 ヤオ子のお見舞い③[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[21] 第21話 ヤオ子の体術修行①[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[22] 第22話 ヤオ子の体術修行②[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[23] 第23話 ヤオ子の中忍試験本戦・観戦編[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[24] 第24話 ヤオ子の中忍試験本戦・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[25] 第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[26] 第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[27] 第27話 幕間Ⅱ[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[28] 第28話 ヤオ子の新生活①[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[29] 第29話 ヤオ子の新生活②[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[30] 第30話 ヤオ子の新生活③[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[31] 第31話 ヤオ子の下忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[32] 第32話 ヤオ子の下忍試験・実技試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[33] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[34] 第34話 ヤオ子の下忍試験・試験結果編[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[35] 第35話 ヤオ子とヤマトとその後サスケと[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[36] 第36話 ヤオ子の初任務[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[37] 第37話 ヤオ子の任務の傾向[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[38] 第38話 ヤオ子の任務とへばったサスケ[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[39] 第39話 ヤオ子の初Cランク任務①[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[40] 第40話 ヤオ子の初Cランク任務②[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[41] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[42] 第42話 ヤオ子の初Cランク任務④[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[43] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[44] 第44話 ヤオ子の憂鬱とサスケの復活[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[45] 第45話 ヤオ子とサスケの別れ道[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[46] 第46話 幕間Ⅲ[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[47] 第47話 ヤオ子と綱手とシズネと[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[48] 第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[49] 第49話 ヤオ子と第七班?①[熊雑草](2013/09/21 21:50)
[50] 第50話 ヤオ子と第七班?②[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[51] 第51話 ヤオ子の秘密[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[52] 第52話 ヤオ子とガイ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[53] 第53話 ヤオ子と紅班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[54] 第54話 ヤオ子とネジとテンテンと[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[55] 第55話 ヤオ子とアスマ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[56] 第56話 ヤオ子と綱手の顔岩[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[57] 第57話 ヤオ子とサクラの間違った二次創作[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[58] 第58話 ヤオ子とフリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[59] 第59話 ヤオ子と続・フリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[60] 第60話 ヤオ子と母の親子鷹?[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[61] 第61話 ヤオ子とヒナタ班[熊雑草](2013/09/21 21:56)
[62] 第62話 ヤオ子と一匹狼①[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[63] 第63話 ヤオ子と一匹狼②[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[64] 第64話 幕間Ⅳ[熊雑草](2013/09/21 21:59)
[65] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[66] 第66話 ヤオ子とイビキの初任務[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[67] 第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[68] 第68話 ヤオ子の自主修行・予定は未定②[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[69] 第69話 ヤオ子の自主修行・予定は未定③[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[70] 第70話 ヤオ子と弔いとそれから……[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[71] 第71話 ヤオ子と犬塚家の人々?[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[72] 第72話 ヤオ子とカカシの対決ごっこ?[熊雑草](2013/09/21 22:03)
[73] 第73話 ヤオ子の居場所・日常編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[74] 第74話 ヤオ子の居場所・異変編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[75] 第75話 ヤオ子の居場所・避難編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[76] 第76話 ヤオ子の居場所・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[77] 第77話 ヤオ子の居場所・救助編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[78] 第78話 ヤオ子の居場所・死守編[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[79] 第79話 ヤオ子がいない①[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[80] 第80話 ヤオ子がいない②[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[81] 第81話 幕間Ⅴ[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[82] 第82話 ヤオ子の自主修行・性質変化編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[83] 第83話 ヤオ子の自主修行・能力向上編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[84] 第84話 ヤオ子の自主修行・血の目覚め編[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[85] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[86] 第86話 ヤオ子とタスケの口寄せ契約[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[87] 第87話 ヤオ子の復活・出入り禁止になった訳[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[88] 第88話 ヤオ子のサスケの足跡調査・天地橋を越えて[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[89] 第89話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ①[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[90] 第90話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ②[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[91] 第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[92] 第92話 ヤオ子のサスケの足跡調査・状況整理[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[93] 第93話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁①[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[94] 第94話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁②[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[95] 第95話 ヤオ子とサスケの新たな目的[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[96] 第96話 ヤオ子と小隊・鷹[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[97] 第97話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・マダラ接触編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[98] 第98話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[99] 第99話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・深夜の会話編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[100] 第100話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦開始編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[101] 第101話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・奪還編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[102] 第102話 ヤオ子とサスケの向かう先①[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[103] 第103話 ヤオ子とサスケの向かう先②[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[104] 第104話 ヤオ子とサスケの向かう先③[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[105] 第105話 ヤオ子とサスケの向かう先④[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[106] 第106話 ヤオ子の可能性・特殊能力編①[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[107] 第107話 ヤオ子の可能性・特殊能力編②[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[108] 第108話 ヤオ子と砂漠の模擬戦[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[109] 第109話 ヤオ子とイタチの葬儀[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[110] 第110話 ヤオ子とサスケの戦い・修行開始編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[111] 第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[112] 第112話 ヤオ子とサスケの戦い・最後の戦い編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[113] 第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[114] 第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[115] 第115話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・本戦編[熊雑草](2013/09/21 22:22)
[116] 第116話 ヤオ子の八百屋[熊雑草](2013/09/22 01:07)
[117] あとがき[熊雑草](2010/07/09 23:40)
[118] 番外編・ヤオ子の???[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[119] 番外編・サスケとナルトの屋台での会話[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[120] 番外編・没ネタ・ヤオ子と秘密兵器[熊雑草](2013/09/21 22:24)
[121] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と①[熊雑草](2013/09/21 22:25)
[122] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[123] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と③[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[124] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第1話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[125] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第2話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[126] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第3話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[127] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第4話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[128] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第5話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[129] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第6話[熊雑草](2013/09/21 22:29)
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[13840] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/21 22:00
 == NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==



 彼の近況を少し振り返る……。

 綱手から暗部の面を外すように命令され、再びヤマトの名を貰う。
 そして、尊敬するはたけカカシの班の隊長となり、大蛇丸とサスケとの戦闘。
 ほんの数日のことだが、重要性が高く激務だったと言える。
 更にはナルトを抑えるために、自分しか使えない秘伝の術まで使用した。
 彼は疲れていた。
 しかし、そんな彼には休暇中にどうしてもしなければいけないことがあった。


 「まだヤオ子に伝えてないよ……」


 ヤマト自身の急な任務とヤオ子の任務の都合で、彼等は未だ再会を果たしていなかった。



  第65話 ヤオ子とヤマトの再会



 ナルトが里に戻るまでの間、ヤマトは暗部に戻ったままだった。
 そのため、すっかりヤオ子との接点がなくなってしまっていた。
 それでも、時々届くヤオ子の差し入れから、ヤオ子の律儀さと変わらぬ尊敬の念を感じる。
 一方的に送られる品にお礼も返せない日々。
 そして、また担当上忍を離れてしまったこと。


 「第一声は、謝ることかな?」


 ヤマトは少し気を落として、ヤオ子の家をノックする。
 返事の後に現れたのは、見違えるほど成長した少女だった。
 服装も装備も変わっていない。
 しかし、ヤオ子の変化は一目で分かる。


 「……部屋を間違えたかな?」

 「合ってるんじゃないですか?」

 「そうだよな……。
  ヤオ子……なの?」

 「そうですけど?」

 「君……随分と背が伸びたね」


 ヤマトとヤオ子の視線の高さは、以前と大分違う位置にある。
 ヤオ子も視線の高さの違いを感じる。


 「遺伝でしょうね。
  うちの母親は身長だけは、十歳少し過ぎたぐらいで、
  今の身長と同じぐらいだって言ってました。
  それからエロいボディのパーツが発達したと」

 「この会話……。
  間違いない……ヤオ子だ」

 「そんなに驚くことないですよ。
  あたしも赤丸さんの成長には負けましたから」

 「それ、犬だろう?」

 「そうですよ」


 いつもの溜息が出る。


 「身長は、サクラより少し低いぐらいかな?」

 「はい。
  ・
  ・
  しかし、胸の成長は……」


 ヤオ子が自分の胸を揉み、勝ち誇った顔している。


 「話に変なものを挟まなくていいから……」

 「大事なコミュニケーションなのに~」

 「そんなコミュニケーションはいらないよ……」


 ヤマトのヤオ子に対する反応も変わらない。
 それが久々の会話でも、二人を安心させる。
 そして、ヤオ子は急に訪れたヤマトに質問する。


 「ところで。
  本日は、何しに?」

 「色々と報告をしたくてね」

 「報告? 何ですかね?
  ・
  ・
  立ち話も何ですし……。
  乙女の部屋に入りますか?」

 「言い方が卑猥だ……。
  ・
  ・
  君の部屋……危険じゃないだろうね?」

 「どういう意味ですか……」


 ヤオ子が項垂れた瞬間、部屋の中が見える。
 ヤマトの視線が部屋の中のミラーボールを捉えた。


 (乙女の部屋にあるまじき物が見えた……)

 「やっぱり危険な気がする……。
  演習場で話さないか?」

 「デートですか?」


 ヤマトはガンッ!と鉄の扉に頭をぶつけた。


 「報告だから……」

 「分かりました。
  行きましょうか」


 ヤオ子は靴に足を通して外に出る。


 「用意はいいのかい?」

 「これから修行しようと思っていました」

 「勤勉さは変わらないね」

 「もう、習慣ですね」

 「そうか」


 ヤオ子とヤマトは、演習場へと向かった。


 …


 演習場に設置されているベンチに腰を下ろす。
 風に合わせてヤオ子の髪が流れる。
 相変わらずのポニーテールだが、サクラに勧められた洗髪剤のお陰で以前よりも艶が出て滑らかになっている。
 顔立ちも幼さが残っていた二年前よりも、少し大人びて来た。
 しかし、ヤマトは知っている。
 さっきの会話で目の前の少女は、少女の皮を被った変態であると……。

 ヤオ子の会話で蘇った警戒心もあったが、律儀なヤマトは話さなければいけないことを優先するために会話を切り出した。


 「先にお礼を言っておくよ。
  色々と差し入れを入れてくれて、ありがとう。
  そして、お返しも出来ないままで、すまない」

 「気にしないでください」


 ヤオ子が笑顔で答える。


 「だって……妻だから♪」


 ヤマトが吹いた。
 隣では、ヤオ子悶えている。


 「愛するヤマト先生のために、一生懸命に尽くしました♪」

 「じょ、冗談だよね……?」

 「そう見えます?」


 ヤオ子の目は真剣だ。
 しかし、口元は緩みっぱなしだ。


 「そう見えるよ……」

 「えへへ……。
  バレました?
  ・
  ・
  でも、お料理にはしっかりと気持ちを込めていますよ」

 「ああ。
  どれもとても美味しかったよ。
  仲間内で食べて大評判だった」

 「そうですか?
  照れますね~。
  ・
  ・
  お酒は、どうでした?」

 「お酒?
  一度も届いてないけど?」

 「…………」


 ヤオ子には思い当たる節があった。
 額に手を当て項垂れる。


 「やっぱり綱手さんに頼むんじゃなかった……。
  きっと、全部飲まれたに違いありません……。
  よく考えれば、人んちの冷蔵庫から勝手にお酒を拝借するような人でした……」

 (一体、綱手様とヤオ子の間に何が……)

 「残念ですね。
  ヤマト先生だけがお酒を飲めなかったみたいです。
  イビキさんには直接渡せたんですけど、
  ヤマト先生には連絡がつかなくて手渡し出来なかったんですよね」

 (暗部の仕事は極秘だからね)

 「次の機会があれば頂くよ」


 ヤオ子は拳を握り、涙を流す。


 「やっぱり、ヤマト先生だけが普通の人です……。
  女の友情なんて上っ面だけです……」

 (今の会話の何処に感動するポイントがあったんだろう?)


 ヤマトは、ヤオ子の交友関係が凄く気になった。
 そして、その交友関係に綱手が加わっているのに一抹の不安を拭い切れなかった。
 そんなヤマトの不安を余所に、ヤオ子が本題を質問する。


 「そういえば、報告って何ですか?」

 「ああ……そうだった。
  上忍として、また任務をすることになったんだ」

 「あたしの?」

 「いや、第七班だ」

 「へ~。
  カカシさんとサクラさんですか」

 「ナルトも居るんだけど……」

 「ん? ナルトさん?
  里に戻っていたんですか?」

 「ナルトが戻ってから、もう随分と時間が経つけど……。
  ・
  ・
  そういえば、ナルトはほとんど里を離れていたね」

 「あたしも、最近は任務で里を離れていました」

 「そうだったのか。
  じゃあ、会えなくてもしかたないね。
  Dランクなのかい?」

 「いいえ。
  Cランクで長期のものでした」

 「Cランクもこなすようになったんだね」

 「ええ。
  これで8回目です」

 (あれ?
  思ったより少ないな)

 「二ヶ月ぐらい前ですかね?
  突然、綱手さんが慌ててCランクの任務を言い渡したんですよ」

 (綱手様……。
  ヤオ子のお土産を渡して貰った時に頼んだのに……。
  この前、ボクの顔を見て思い出したんだろうな……。
  あれだけ、
  『Cランクの任務を増やして
   経験を積めるにしてください』
  って頼んでおいたのに……)


 ヤマトは少し切なくなった。
 しかし、綱手もワザとではない。
 ヤオ子の処理能力が高過ぎて指名が入るため、Cランクを増やせなかったのだ。
 今や指名は、どうしても断れない大名にまで及んでいた。


 「相変わらず一人なのかい?」

 「そうですよ。
  第七班では二人欠員していたんで、よくお世話になりました。
  他にも欠員が出る度に……。
  まあ、ほとんどDランクですけど」

 「大活躍だったんだね」

 「ええ。
  里中がインフルエンザになっても、
  あたしだけは、何故か掛からなかったので、
  皆さんがくたばっている時も頑張りました」

 (あの大流行の時も平気だったのか……)

 「いっそ、あたしの血から血清が作れるんじゃないかと、話にあがったぐらいです」

 (何か怖いな……。
  実は、もう変な病気に感染しているから、
  インフルエンザにならなかったとかじゃないだろうな?)


 ヤオ子は少し遠い目をする。


 「でも、そろそろ引退も考えているんですよ」

 「は?
  ・
  ・
  引退!?」

 「ええ。
  里の力も戻って来たし……。
  貯金も貯まったし……。
  実家に戻ってもいいかなって……」

 「君は、それでいいのか?」

 「最近、思うんですよ。
  夜遅くまで仕事して……ただ寝るだけ。
  幸せって、一体、なんだろうって……」

 「何で、長年勤め上げたOLみたいになってんの……」

 「婚期とかを逃したわけじゃないんですけど……。
  ダメな上司の下で働くのが馬鹿みたいで……」

 「綱手様じゃないだろうね?」

 「どっちかと言うとシズネさん?」

 「本当に、その理由で忍者辞めるの?」

 「だって……。
  いくらDランクが安全とはいえ、
  エンカウント数が、14,273回ですよ?」


 ヤマトが吹いた。


 「どうなれば、そうなるの!?
  日数で割っても、一日二十件以上だよ!?」

 「え~と……ですね。
  出せるだけの影分身を出して、
  出来る範囲の仕事を調節して、
  一つこなすと三つ片付くようにしたりして……。
  細かい仕事を短時間で一気に片付ける?」

 「…………」


 ヤマトが額を押さえる。


 「さぞかし、お金が貯まっただろうね……」

 「ええ。
  通帳は初任給貰ってから一度も使っていないので、
  幾ら貯まっているか分かりませんが、多分、一財産作れたと思いますよ。
  だから、実家で緩く生きていくのもいいかと」

 (恐れていた事態だ……。
  忍者として働く誇りが消え掛けている……。
  ただでさえ、忍者を嫌がっていたのに……)

 「とはいえ、辞めさせてくれないだろうな……。
  シズネさんの経理も手伝わないといけないし。
  綱手さんの我が侭も聞いてあげないといけないし。
  コハルさんとホムラさんの整体もしないといけないし。
  指名の入っている任務も多いし。
  他にも……」

 「もういいよ……。
  全く忍者関係ないね……」

 「でも、辞めませんけどね。
  冗談です」

 「そうか……」


 ヤオ子の笑顔に、ヤマトは少し安心する。
 ヤオ子が左腕を指差す。


 「まだ、引っくり返っていないんです」


 ヤマトは、ヤオ子の額当てが布に包まれたままなのを確認する。


 「まだ……自分を忍者として認められないのかい?」

 「ええ。
  あたしは、ヤマト先生とイビキさんに認めて貰うまで忍者じゃないんです」

 (ふざけたところも多いけど……。
  こういうところは一途で頑固のままだ……)

 「イビキさんには実力を見せました。
  後は、ヤマト先生だけです」

 「…………」


 ヤオ子の目が、今の自分を見て欲しいと真っ直ぐにヤマトを見ている。


 「仮に……。
  ボクが認めたら、どうするんだい?」

 「守られる立場から守る立場に気持ちを切り替えます。
  ちゃんと中忍を目指そうと思います」

 「…………」

 (しっかりと決意をするために、ボクを待っていてくれたのか……。
  少し嬉しいな……)

 「分かった。
  この演習場で君の実力を見るよ」


 ヤマトが立ち上がる。
 ヤオ子の気持ちに、ヤマトは真摯に応えてくれた。


 「あたしは、いい先生を持ちました。
  本気で行きますね」

 「ああ」


 ヤオ子が足の重りと手の重りを外す。


 「ガイ先生には、
  『複数の守る人が居る時意外は外すな』
  と言われていますが……。
  あたしの真剣を見て貰いたいから」


 ヤオ子がゴトリと重りをベンチに置く。
 そして、手足をプラプラと振る。


 「久々に全力で戦えそうです」

 「ちなみに、誰かに勝った経験とかは?」

 「数えるほどしかないです」

 (ヤオ子のことだ……。
  ガイさんとの約束を守り通したんだろう……。
  だとしたら、言葉通りに信用しない方がいいな)


 ヤオ子が腰の後ろの道具入れからクナイを取り出し、ヤマトは自然体で構えている。


 「始めよう」

 「行きます!」


 ヤオ子が地面を蹴る。
 速度は、二年前と比べ物にならない。


 (ガイさんの教えか……)


 ヤマトが印を結ぼうとすると、ヤオ子はクナイを投げる。


 「これも早い!」


 ヤマトがクナイを屈みながら躱すと同時に印を結ぶ。


 「木遁の術!」


 ヤオ子も印を素早く結ぶ。


 「爆殺! ヤオ子フィンガー!」


 ヤマトから伸びる木を突き出した左手の術で強引に破壊する。


 「木の性質を考えるなら、
  火で燃やしてしまえばいいんです!」

 「強引だな……」


 ヤマトは瞬身の術で移動するが、それにヤオ子がピッタリと着いて走る。


 (移動速度……。
  投擲……。
  移動中の術の発動……。
  しっかりと身についている。
  丁寧に時間を掛けて身につけたに違いない。
  どれも基本的な動きだけど、無駄な動きや雑さを感じられない)


 しっかりと後に着いて来るヤオ子を確認すると、ヤマトは腰の道具入れに手を入れ、煙玉を取り出す。
 そして、煙玉を使用した瞬間に木分身の術を使い二手に分かれる。

 それを見たヤオ子が止まり、暫しの間、思考する。


 「無理に追っても無駄ですね。
  あたしの力を見てくれる以上、いつか攻撃して来ます。
  その回避術を見せるのもいいでしょう」


 ヤマトは茂みに隠れたまま、ヤオ子が誘っているのを認識する。


 「度胸のある子だ……。
  でも、ボクが使えるのは木遁だけじゃないんだよ」


 ヤマトの木分身が前方からヤオ子に仕掛けると、ヤオ子もクナイで応戦する。
 クナイをクナイで受けて甲高い音が響く。


 「土遁・土流槍!」


 茂みの中でタイミングを見計らった本体のヤマトが術を仕掛ける。
 すると、岩の槍が木分身とヤオ子を巻き込んで地中から生える。

 ヤオ子は、それを垂直に飛んで躱すが、同時に木分身が木に変わりながらヤオ子の足に絡み付いていく。


 「拘束する気ですね!」


 ヤオ子が手を伸ばす。
 指から伸びるチャクラ糸が、地面をしっかりと吸着する。
 だが、吸着したチャクラ糸を引き戻し、その場を離れようとするが、木が足を放さない。

 ヤオ子はチャクラ糸を切り離すと印を結ぶ。
 そして、足の裏で爆発が起こして、拘束していた木を吹き飛ばした。


 「発想の転換だな。
  手じゃなくて足で術を発動させるとは……。
  ・
  ・
  居場所がバレたみたいだ……」


 土遁の発動でヤオ子の視線が完全にヤマトを捉えていた。
 ヤオ子は拘束から解放されて着地すると、直ぐに走り出す。
 速度は中忍試験予選の時のリーの重りを外した時とほぼ同等。


 「またスピードが上がった?
  力を抑えていたのか」


 ヤオ子が印を結び始める。


 「ヤマト先生!
  気を付けてくださいよ!
  ・
  ・
  この攻撃を甘く見ると大怪我します!」

 「そうみたいだな」

 (印を結ぶのが早いヤオ子が、まだ結んでいる。
  一体、何の術なんだ?
  ・
  ・
  でも、さっきの印と似ているような……。
  相変わらずあの指の動きは読み難い……)


 印を結び終えると、ヤオ子は体術の型を取る。


 「何で、体術なんだ?」


 ヤオ子の右ストレート……ヤマトが受け止めようとして途中で止める。
 体勢を崩して無理に避けた横で爆発が起きる。


 「やっぱり……!
  拳にチャクラが練り込まれていたのは、このためか!」


 更に反転させて左の回し蹴り。
 ヤマトが後ろに飛びながら、印を結ぶ。


 「土遁・土流割!」


 地面が垂直に隆起してヤオ子の回し蹴りを防ぐ。
 しかし、土壁ごと爆発する。


 「まるで起爆札で戦っているみたいだ……」


 ヤオ子は、更に土壁の薄いところを狙って左手の掌抵打ち。
 爆発で強烈な石つぶてが発生する。
 ヤマトはバックステップしながら回避する。
 それでも数発を貰うが急所は避ける。


 「追い討ちです!」


 高速移動でヤマトに接近して、最後の一蹴りで右足の術を地面に向かって発動する。
 地面を爆発させて最後の再加速。
 ヤオ子の肘内がヤマトの鳩尾に入る。


 「…………」


 肘は完全に鳩尾を捉えている……が、ヤオ子の目に涙が溜まり始める。


 「ふふふ……。
  まさか服の下で木遁とは……」

 「だ、大丈夫かい?」

 「いった~~~っ!」


 ヤオ子が跳ね回る。
 肘打ちは、木にマジ打ちする形になってしまった。


 「道理で、クナイを投げても怒らないはずです……。
  ベストの下に木遁を使って対策していたんだから……」

 「騙すつもりはなかったんだ。
  本気のヤオ子を見たかったから」

 「ううう……。
  今度、肘でも爆発させるようにしよう……」


 ヤオ子は蹲って肘を撫でている。
 その後ろでヤマトが感想を漏らす。


 「凄い術だね。
  連続で爆破できるなんて」

 「まあ、タネがあるんですけどね」

 「タネ?」


 ヤオ子は肘を撫でながら立ち上がると、ヤマトに向き直る。


 「あれ四回しか攻撃できないんです」

 「どういうこと?」

 「両手両足に一発ずつ。
  だから、右手に二発装填することが出来ません」

 「そういう術なのか……」

 「新しい術というわけではなく、必殺技を応用しただけなんです。
  本来は、使った後に時間があれば装填して戦うんです」

 「じゃあ、何でそうしなかったんだい?」

 「下手すると死ぬんで、初見の相手にはネタをバラすことにしているんです。
  もちろん、味方オンリーですよ」

 「確かに危険極まりない攻撃術だったよ」

 「ちなみに、本邦初公開です」


 ヤマトは術の威力と連続性を頭で思い返し質問する。


 「その術って、チャクラ持つのかい?」

 「持たせるために体力をつけて来ました。
  それに相手は触れればやられるんで、短期決戦を想定しています」

 「だろうね」


 不完全燃焼のヤオ子が構え直す。


 「じゃあ、続きをしましょうか?」

 「これは組み手を出来ないよ……」

 「じゃあ、別の戦術で」

 「まだ、あるのかい?」

 「今、見せたのが攻撃方法……と言ってもとどめ用です。
  次のが、とどめに持っていくための体術です」

 「忍術はなしでいいのかい?」

 「影分身だけはいいですか?」

 「そういえば、使ってなかったね」

 「陽動掛けると危ないでしょ?」

 「まさか、手加減されてたとはね……」


 ヤマト自身もヤオ子の実力を見るために手加減をしている。
 しかし、ヤオ子も手加減していると言われると苦笑いを浮かべるしかない。


 「う~ん……言われてみればというか自分で言ってみればですが、
  さっきの術は模擬戦向きじゃありませんでしたね。
  術の威力を加減しないと模擬戦になりません」

 「術の発動は全力でやってたんだ……」

 (当たっていたら、大怪我してたな……)

 「実のところ、術を真面目に使った模擬戦は初めてで」

 「いつもは?」

 「冷やかし半分♪」


 ヤマトが額に手を置く。


 「さて、第二回戦を始めますか!」


 半ば強引に話を進めると、ヤオ子は右手を顔の前に掲げる。


 「これを使って行ないます」


 ヤオ子の指から、五本のチャクラ糸が垂れ下がる。


 「次は、鬼ごっこです」

 「君が鬼かい?」

 「はい。
  ・
  ・
  じゃあ、用意──」


 ヤオ子はピッ!と糸をヤマトにくっ付ける。


 「あ!?
  スタート前に!」

 「スタート♪」

 「何か汚いな……」

 「十数えたら、追っかけますね」


 ヤマトが林に消えると、ヤオ子は十数える。


 「さ~て、と」


 ヤオ子の指から続くチャクラ糸が反応する。


 「修行して、かなり伸ばせるようになったんです。
  ロープにすると距離は稼げませんけどね。
  ……と、そろそろ限界です」


 ヤオ子がチャクラ糸を頼りに一直線にヤマトへ向かって走り出した。
 ヤマトは足音が近づいて来るのに気付く。


 「やっぱり……。
  この糸は追跡用だ……。
  ・
  ・
  そして、本来ならバラさずにつける糸を最初からタネ明かしして見せるということは……。
  見せ付けるつもりなんだろうな……。
  ・
  ・
  本当に可愛い子だね。
  上忍相手なのに」


 ヤマトが逃走の方法を変えるため、印を結ぶ。
 チャクラ糸の付着部分から木分身が現れ、チャクラ糸を引き受けて別れる。
 それに合わせてヤオ子が反応する。


 「お?
  質量が変わった。
  分身を出しましたね?」


 ヤオ子が印を結ぶ。


 「こっちも影分身!」


 ヤオ子の影分身が、ヤマトの木分身を追う。


 「あたしは……」


 チャクラを足に集中する。


 「多分、あっち!」


 反対方向に高速移動をして、周囲に注意を向ける。
 それほど離されていないこの距離なら、追跡のための痕跡よりも動くものの感覚を捉える方が間違いない。
 空気の流れ、視覚、聴覚を振る活用し、ヤマトの姿を追う。
 そして、木の上を走る影を捉える。


 「見っけ!」


 ヤマトが顔を向ける。


 「折角、見つけたのに声を出したら、追跡しているのがバレちゃうじゃないか……」


 ヤマトは、印を結ぶ。


 「木遁・四柱牢の術!」


 追跡するために木を駆け上がるヤオ子の周りの木が牢に変わっていく。
 ヤオ子は木製の牢屋に拘束されると、すかさず印を結ぶ。


 「変化!」


 猫に変わり、格子の間を擦り抜ける。


 「お見事……。
  焦らずにいい判断だ」


 ヤオ子は変化を解いてチャクラを練り上げるとチャクラ吸着でヤマトよりも高い位置まで駆け上がり、射程範囲内に捕捉する。
 そして、真下に居るヤマトに向かって手を伸ばす。


 「伸びろ!」


 チャクラのロープが伸びる。


 「またか……」


 しかし、今度は『糸』ではない。
 チャクラがヤマトのベストに付着すると広がり、しっかりと纏わり着いた。


 「そして、こうする!」


 チャクラ吸着でヤマトを引っ張る。
 当然、体重差でヤオ子が負ける。
 そこで足のチャクラ吸着を全開にする。


 「こっちに来てくださ~い♪」


 ヤマトの体がヤオ子の居る木の上に引っ張られる。


 「ちょ!? 
  こんな強引なチャクラの使い方は知らないぞ!?」

 「そりゃそうですよ。
  木ノ葉一の馬鹿(父親)が考えたんだから」


 ヤマトを引っ張り切ると、ヤオ子はヤマトにタッチする。


 「本来は、ここで技を当てます」

 「なるほど……」

 「どうですかね?
  初見なら、結構使えると思うんですけど?」

 「ああ。
  基本的なチャクラ吸着をこういう風に使うとは思わなかったよ」

 「あたしも初めはどうかと思ったんですよ。
  でも、よく考えたら、足で吸着して木なんかに水平に立つのは、
  自分の体重を支える以上、かなりの力なんだって気付いたんです」

 「自分の体重か……。
  そうだね。
  それはかなりの力が掛かっているはずだ。
  今まで当たり前で使ってたから、気にしたこともなかったよ」

 「あたしも言われて試すまで、気付きませんでした」

 (何処からの元ネタなんだ?
  さっきの木ノ葉一の馬鹿っていう人か?
  誰なんだろう?)


 まさか、自分の親を木ノ葉一の馬鹿と例えているとは、ヤマトは夢にも思わなかった。


 「さて。
  次は、ヤマト先生が鬼です。
  ギブアップも認めますよ」

 「随分、自信があるんだね。
  休憩は?」

 「いりません。
  まだまだ、いけます」

 (全力で走っても息も上がらない……か)


 ヤマトがヤオ子の成長具合を考えていると、ヤオ子は木の上から飛び降りた。


 「にゃ~ん♪」

 「え!? ちょっと!
  下まで何メートルあると思ってんの!?」


 勝手に鬼ごっこのスタートをしたヤオ子は、両手両足で綺麗に着地すると走り去って行く。


 「……猫か」


 ヤマトは木を何回か飛び移りながら地面に下りると、ルールに従いヤオ子を追う。


 「しかし、早いな」


 かなりの速度で走っているはずだが、中々追いつかない。
 それどころかヤオ子とヤマトの距離が切り返しの度に開く。


 「何で、あそこまで直角に曲がれるんだ?」


 普通は角を曲がると少し膨らむが、ヤオ子は膨らまないで切り返している。
 じっくりと観察すると、ヤオ子は切り返しの際に指からチャクラ糸を伸ばし、吸着で両手も利用している。


 「……四脚の術か。
  何で、使えるんだ?」


 正確には四脚の術ではない。
 指からのチャクラ糸が猫のツメの役割を果たし、ガッチリと地面を捉える。
 二足歩行しながら、切り返しの際だけ四足になる。
 ヤオ子は忍猫のタスケに動きを叩き込まれている。
 今度は、木を駆け上がる時に、手からチャクラ糸を飛ばすとチャクラ吸着を利用して木に登って行く。


 「何かもう、人間の動きじゃないんだけど……。
  空中で直角に曲がるって……」


 ヤオ子の動きは、猫と人間の動きのブレンドになっている。
 ヤマトが追ってジャンプすると、チャクラの糸で別の木に角度を変えて移動する。


 「無理だ……。
  野生の動物でも追っているみたいだ……。
  これ以上やると怪我をさせて止めることになりそうだ」


 ヤマトが地面に下りて降参を合図すると、ヤオ子が真上から落ちてくる。
 そして、また音もなく着地した。


 「人間の動きをしてないんだけど……」

 「キバさんと鬼ごっこして負けてから、タスケさんに指導して貰いました」

 「キバって……犬塚一族の?」

 「そうです」

 「タスケっていうのは?」

 「猫さんです」

 「猫?」

 「猫です」

 (遂に動物の言葉を解すように……)


 タスケは忍猫で人間の言葉を話すが、ヤオ子は大事なところを省略している。


 「タスケさんは気まぐれな方なんで、最近は会っていないです。
  あたしのご飯が食べたくなったり、暇になると来ますね」

 (猫の立場の方が上なんだ……)

 「空中の動きは、アメコミのスパイダーマンを参考に……」

 「何……それ?」

 「手からピュッと蜘蛛の糸を出すんです」

 「それでチャクラ糸を……。
  ・
  ・
  君さ……。
  ちょっと見ない間にジャングルにでも住んでたの?」

 「そういうわけじゃないんですけどね。
  タスケさんに動きを見て貰ったら、基本通り過ぎるって怒られたんです」

 「猫に怒られたんだ……」

 「それで動きに動物の動きと漫画の動きを加えました」

 「かなり独特だったよ。
  やられて困ったからね。
  人間辞めたんじゃないかって思ったよ」

 「酷いですね」

 「スタミナも凄くついたみたいだね」


 ヤオ子は右腕を畳み、左腕で叩く。


 「ええ。
  多分、馬鹿みたいについてます。
  ・
  ・
  あたしの実力は、如何ですか?」


 ヤオ子は、今の自分を出し切って満足そうにしている。
 一方のヤマトは、少し複雑な顔をしている。


 「正直、困った」

 「?」

 「動きやスタミナは問題ない」

 「おお!」

 「しかし、覚悟とかそういった心情的な成長が全く分からない」

 「……同じことをイビキさんも言ってました」

 「そうか……。
  それでボクに判断が引き継がれたんだな」

 「多分、それもあります」

 「判断しかねるよ……」

 「どうしてですか?」

 「君は楽しそうにしているから」

 「真剣でしたけど?」


 ヤマトが真剣な顔で話す。


 「そうじゃないんだ。
  どう言えばいいのかな。
  ・
  ・
  ボク達の力は凶器なんだ。
  今は楽しいかもしれないけど、厳しい状況もある。
  そういうものが自分に降り掛かる時もある。
  その時に覚悟が必要なんだ。
  ・
  ・
  まあ、君に子供でいられる時間を与えたのはボクだから、
  そこを指摘するのも筋違いかもしれないが……君は見て来たはずなんだ。
  任務で辛いことがあったことも……。
  汚い仕事があったことも……。
  だから、考えられるはずだし、それに対しての思いもあるはずだ。
  ・
  ・
  そして、君を知るために、今から少し君の心を試すことにする」

 「突然ですね……」
  
 「君も大人になるからだ。
  その段階で忍として生きるなら、
  少しずつでも理解していかなければいけない。
  ・
  ・
  少し辛い質問だ。
  だけど、忍としては避けて通れない。
  だから、真剣に考えてくれ。
  これで君の忍に対する気持ちを量る。
  ……君は、人を殺せるか?」

 「状況にもよりますけど……」

 (確かに忍について回る問題です。
  でも、何で、殺される方じゃなくて、殺す方なんだろう?
  ・
  ・
  ヤマト先生の意図があるのかもしれないけど……。
  あたしの気持ちで真剣に考えよう……。
  あたしの心が試されているんだから)


 ヤオ子は考える。
 今まで人を手に掛けたことはない。
 子供ゆえの手加減知らずで、自来也を殺しそうになったがそういうことではない。
 自らの手で命を刈り取るのだ。


 「…………」


 人を殺し殺されるのは、この世界では当たり前だ。
 戦乱が続いて国というものがなかった時は、忍を雇い戦をしていた。
 国を作り隠れ里を保有するようになっても戦乱は絶えない。
 第三次忍界大戦が起きたのも遠い昔ではない。
 そして、ヤオ子達が平和に浸って生きて来れたのは、ヤオ子以外の誰かが刃を抜いて戦って来たからだ。
 その誰かは、ヤオ子の代わりに殺して来たと言ってもいい。
 その誰かに今度は、自分がなるのだ。


 「忍者は嫌なこともしなければいけない。
  今のように楽しいだけではないんだ」

 「分かります……。
  出来るなら、忍の技を使わない方がいいですから。
  ・
  ・
  今の世界が忍の力でバランスを取っている以上、あたし達は兵器や戦力として見られるはずです。
  兵器は殺すための道具です。
  ・
  ・
  あたしは誰かを守れるなら……覚悟します。
  心が壊れるかもしれないけど……」

 「忍を続けられるかい?」


 ヤオ子は、静かに頷く。


 「力を持ってしまったから……。
  力が必要なことがあることを知ってしまったから……」

 「その力……。
  何に使うんだい?」

 「もう、言いました。
  守る立場になるために使います」

 「……いいのかい?
  本当に辛いことになるかもしれないよ?」

 「イビキさんとヤマト先生の教えです。
  その教えが嫌なら、忍者を辞めてます。
  あの時、二人は守ってくれた……。
  あたしの子供でいられる時間……。
  そして、あの時に守れなかった友人が居る……。
  この力は、今度は守れる人のために使いたい……」


 ヤマトは、ヤオ子の言葉で思い出す。
 ヤオ子は子供だけど、少しだけ忍の辛い世界に踏み込んでいたことを……。
 そして、それを忘れないで未だに心に棘として残していることを……。
 心を試す最中だが、思わず言葉が漏れる。


 「ヤオ子……。
  あれは……」


 ヤオ子は首を振る。


 「投げ出せない……。
  なかったことにしたくない……。
  あたしの初めての後悔……。
  ・
  ・
  でも……。
  だからこそ憧れた……。
  イビキさんにヤマト先生に……。
  守る力の使い方を知っている二人に……」


 再び、ヤオ子の笑顔。


 「どんなに辛くても頑張りたい。
  イビキさんやヤマト先生のような優しい忍者になりたい」


 ヤオ子の答えに、ヤマトは苦笑いを浮かべる。


 「ダメだ……。
  やっぱり分からない」

 「?」

 「覚悟を聞いたはずが、答えに希望が返って来た……」

 「え?
  ・
  ・
  あーっ!
  でも、総合すると覚悟というものは
  己のしたいことから生まれるものであって──」

 「もう、いいよ……。
  そういう風に考えられるのがヤオ子なんだから。
  ・
  ・
  ヤオ子は、ヤオ子のままだった……。
  変わってないし、変わって欲しくないままだった……」

 「成長してないと?」

 「いや、素直なままだ。
  そこを無理に忍らしくという心情を知ろうとしたのが間違いだった」

 「そうですか?」

 「自分に正直過ぎる。
  掴みどころがない」

 「貶してません?」


 ヤマトがヤオ子の頭に手を乗せる。


 「ボクは、ヤオ子を忍と認めるよ。
  辛いことや悲しいことも沢山あるけど、その時は頼ってくれ。
  そして、少しずつ成長してくれ。
  ・
  ・
  だから、今度は中忍を目指して頑張ろう。
  そのために力を貸すよ」

 「ヤマト先生……」

 「まだまだ焦る歳でもないし、じっくりと腰を据えて行こう」

 「はい!」


 ヤマトが微笑む。
 そして、ヤオ子は左腕の額当てに目を落とす。


 「もう暫くこのままにしておきます」

 「そうか……」

 (ヤオ子は、いつになったら自分を認めるのだろう……。
  もしかしたら、他の誰よりも厳しい条件を付けているのはヤオ子自身なのかもしれない……。
  心配のタネは消えないな……。
  だけど──)

 「今なら、カカシ先輩がナルトやサクラを見て嬉しそうにしている理由がよく分かるな……。
  自分以外の成長が、こんなにも嬉しいなんて……」

 「えへへ……。
  また、担当上忍になって貰えると嬉しいですね」

 「そうだね。
  でも、これからどうなるか……」

 「そうですね。
  里は力を取り戻しつつあります。
  皆さん、中忍になりましたし、ネジさんは上忍にもなりました。
  あたしは新しい世代の上忍さんの下で頑張るのかもしれません」

 「ボクも、まだまだ若いんだけど?」

 「分かってますよ。
  可能性の話です」

 「なら、いいんだ」

 「案外、気にするんですね?」

 「ああ。
  新しい顔に負けたくないからね」

 「じゃあ、出る杭を叩きますか?」

 「そんなことはしないよ」

 「えへへ……。
  やっぱり、ヤマト先生ですね」

 「何がやっぱりなんだい?」

 「秘密です」


 ヤオ子は可笑しそうに笑う。
 ヤマトも釣られて笑う。
 久々の再会であったが、そこには変わらない関係があった。
 二人の師弟の関係は、時間が経っても変わらないままだった。


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