== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
ナルトと会って影分身を覚えた、次の日……。
ヤオ子は、その脅威の術の成果を発揮する。
「さあ! どっからでも掛かって来て下さい!
サスケさんが投げた手裏剣やクナイは、全て回収します!」
サスケの練習場のオールレンジの的の前で、影分身のヤオ子達が『しゃーんなろー!』と雄叫びをあげる。
そう……。
ヤオ子は脅威のエロ忍術の副産物でパシリ能力を最大限に発揮していた。
第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①
ドSの本能に従い、サスケが的確に本体のヤオ子を蹴り飛ばす。
瞬間、各的に配置された影分身は煙と共に霧散し、ヤオ子は地面に顔面から激突した。
──が、直ぐに、ヤオ子はサスケに食って掛かる。
「何するんですか!?
いきなりヴァイオレンスな!」
「何処で、その術を覚えた?」
「……ん? 術?」
「影分身のことだ」
「一楽で、ですけど?」
思い当たったように、サスケは顔を手で覆う。
「しまった……。
アイツのテリトリーだった……」
「?」
ヤオ子は首を傾げる。
「お前、オレの言いつけを破ってナルトと接触したな?」
「言いつけ?
・
・
ハァ!? 何言ってんですか!?
一楽に行ったら、師匠が居ただけですよ!
接触がどうのなんて言われても防げませんよ!」
サスケの目が座り、サスケは無言でヤオ子の襟首を掴んだ。
「何故、ナルトを師匠呼ばわりしている?」
「え?
それは……」
ヤオ子が目を逸らす。
「お前、変な術とか教わってないだろうな?」
「か、影分身の術だけです!」
「本当か?」
「…………」
サスケの無言の追求に耐え切れず、ヤオ子は両手の人差し指をチョコチョコとくっ付けて白状する。
「実は、ハーレムの術というのを……」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「……全てが繋がった。
お前、ナルトとくだらんことで結びついたな!」
「そんなことないですよ!
あたしは純粋にナルトさんの才能に惚れ込んで、弟子入りしたんです!」
「アイツの何の才能だ?」
「主にエロ関係です」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「二度と接触するな!」
「……運命の出会いは避けられない」
ヤオ子を突き放すと、サスケは溜息を吐く。
「じゃあ、これでオレは行く」
「あれ? 修行して行かないんですか?
折角、各的に影分身を配置したのに」
「もう居ねぇじゃねーか……」
「あり?」
影分身はとっくに解除されていた。
ヤオ子はチョコチョコと頬を指で掻いた。
再び、サスケから溜息が漏れ、話が再開する。
「暫く里を出ることになりそうだから、
挨拶しに来ただけだ」
「あたしごときのために、
そんなことしなくていいのに」
サスケは、メモを渡す。
「これを渡しに来た」
「何ですか? これ?」
「オレが居ない時にやっておけ」
「え?」
「じゃあな」
「待ったーっ!」
(うるせーな)
ヤオ子を置き去りに歩き出していた、サスケが振り返る。
「何で、こんなものをしなきゃならないんですか!
あたしは、一般庶民で居たいんです!」
「まだ、アイツらに仕返しをしていないだろう?」
「仕返し仕返しって……!
何なんですか!
サスケさんは、復讐したい人間でも居るんですか!?」
「その通りだ」
「は?
・
・
そうかもしれないけど!
それはサスケさんの価値観であって、
あたしには関係ありません!」
「お前は、やられたままで済ませられるのか?」
「違うんです!
アイツらは、あたしのカモなんです!」
「は?」
サスケにはヤオ子の言っている意味が分からなかった。
これ以上の被害を防ぐため、ヤオ子は正直に白状する。
「アイツらに幼い女の子を虐めたっていう
トラウマを刻んでいるんです!」
「お前……。
何考えてるんだ?」
「あたしの四十年計画の一つで、
アイツらが大人になったら、罪悪感からうちの店で野菜買わせるように仕組んでんの!」
「そんなことしてたのか……。
お前、根暗で最悪だな……」
「だから、復讐は関係ナッシング!」
ヤオ子は両手を使って大きな×の字を作った。
「まあ、いい。
ちゃんとやっとけ」
「ちょっと!
あたしの話を聞いてたんですか!?」
「やらなきゃ……焼く!」
その一言で話は終わった。
去り行くサスケを尻目に、ヤオ子が地面に手を付いて項垂れる。
「何故……」
サスケは、さっさと去って行った。
…
それから波の国へ向かったサスケの第七班は、暫く帰って来ないことになる。
木の葉からの移動日数の往復分と任務を遂行する日数が掛かるからである。
そして、その間はサスケの監視はなく、正直サスケの言いつけなど、ヤオ子はすっぽかすつもりでいた。
「何故だ……。
何故、あたしは逆らえない……」
しかし、サスケが旅立った初日。
ヤオ子は、サスケの練習場でメモ通りの修行をこなしていた。
「あのドSの命令に逆らえない……。
何じゃこりゃーっ!」
ヤオ子の体には悲しい習性が染み付いていた。
ズバリ、恐怖の対象であるサスケに逆らえない。
「あたしがトラウマ刻み付けられて、どうするーっ!」
家を焼くという恐怖は、ヤオ子が思っている以上にヤオ子に絶対的服従を刻んでいた。
四十年計画で固定客をつけようと、それなりにヤオ子は実家の店に思い入れがある。
それを燃やされせないためには、サスケの言いつけを守るしかない……。
だが、ヤオ子に刻み込まれたのはそれだけではない。
日々繰り返されるサスケの突っ込みという毒は、短期間でありながらヤオ子の体の末端まで汚染していた。
ヤオ子は頭を抱えて悶える。
「洗い流さねば!
こんな悲しい習性を刻み付けて生きていけるか!
あのドSが波の国に行っているうちにリハビリして、
綺麗なあたしに生まれ変わるのです!」
そして、ヤオ子が決意を叫んでいた頃……。
当のサスケは、ナルトに向かって『ケガはねーかよ? ビビリ君』と決め台詞を吐いていた。
…
アカデミーにも通わない庶民のヤオ子は、基本自由な時間が多い。
金銭面の理由からヤオ子の両親は、普通の学校にも通わせていない。
店番も手が放せない時だけの代理のため、時間は有り余っている。
『貧乏暇なし』ここだけが諺通りではない。
昼食後、ヤオ子は例のサスケの練習場に来ていた。
「ふう……。
基本、暇なニートだから、足がここに向いちゃう」
ヤオ子は溜息を吐く。
「サスケさんは、何で、あたしに構うんだろ?
話の流れからして、あたしはサスケさんの理想の女性で有り得るはずないのに。
・
・
ただの親切心なのかな?
でも、悪気はないよね。
いつも気に掛けてくれてるんだから。
・
・
真面目に修行しようかな」
ポケットの中から、ヤオ子はメモを取り出す。
「新しい忍術が書いてある。
『火遁・豪火球の術』か」
サスケの残したメモには、新しい忍術が印と共に書かれていた。
ヤオ子はメモを読み進める。
「ん? また、変なことが書いてある。
・
・
これ……。
この前、チャクラ練ることを覚えたあたしが出来る術なの?」
ヤオ子が顔を顰める。
「しかも、出来なきゃ家焼くって……。
また、このパターン!?
・
・
これどっちなんだろう?
本当に出来なきゃ焼くのか?
やった努力が見られなきゃ焼くのか?
・
・
あ~~~っ!
分かんないっ!
あのドSがっ!」
ヤオ子は諦めの溜息を吐く。
「どの道、努力した臭いを醸し出さなきゃいけないし、やってみるか……」
ヤオ子はチャクラを練り上げ、新しい術の印を結ぶ。
(せーの! 火遁・豪火球の術!)
「ふーっ!」
ヤオ子の口からは、息だけが吐き出される。
「ホワイ?
あたしの練り上げたチャクラは、どこいった?」
もう一度、やってみる。
「ふーっ!」
しかし、再度、息だけが吐き出される。
ヤオ子は片眉を歪め、コリコリと額を掻く。
「これってさ……。
練り上げるチャクラが足りないってこと?
・
・
でも、サスケさんの言葉を思い出せば、
『豪火球の術で家を焼く』って言ってたから、
相当な火力エネルギーが必要だって考えられますよね」
そうと分かればと、ヤオ子は両手を合わせて集中する。
頭の中でイチャイチャパラダイスの上巻・中巻のエピソードが妄想により駆け巡る。
「猛れ! あたしの妄想力!」
いつも以上に禍々しいチャクラを練り上げ、印を結ぶ。
(火遁・豪火球の──!?)
「うげ~!」
ヤオ子の口から留まったチャクラが逆流した。
「これ……何か根本から間違ってる。
だって、チャクラが火に変わらないもん……」
サスケはチャクラの性質変化の事を一切メモに書いてなかった。
そのため、ヤオ子の肺にただチャクラが留まっただけだった。
「このまま続けても、ゲロ吐く練習にしかならないよ……。
そんなもん見せたら、またサスケさんに殴られるに決まってる……。
誰か教えてくんないかな?」
ヤオ子は術の発動のヒントを求め、木ノ葉の里へと繰り出した。
…
ヤオ子は里の中を歩きながら、声を掛け易そうな忍者を探す。
キョロキョロと落ち着きなく辺りを見回し、やがて、ヤオ子が知っている人物を見つけた。
「あ! あれは、シカマルさんだ!
いきなり声掛けて、教えてくれるかな?」
シカマルは、ヤオ子の尊敬する人物である。
考えのニュアンスが自分に近いかららしいが、シカマル本人が知ったら間違いなく完全否定するだろう。
「すいませ~ん!」
「?」
シカマルは親友のチョウジと談笑している最中だった。
そこに現れたヤオ子に、シカマルは面倒臭そうに話し掛ける。
「何だ? お前?」
「八百屋の娘です」
「…………」
シカマルとチョウジが、ヤオ子を見て固まっている。
一体、八百屋の娘が何の用なのか?
この時、ヤオ子がサスケの師事を受けているなど、知る由もなかった。
「で?」
「突然ですが……。
火遁って、どうやって使うんですか?」
シカマルが面倒臭そうに話す。
「めんどくせーな。
そういうのはアカデミーで聞けよ」
「教科書には載ってなかったような……」
「そうだっけ?
めんどくせーから覚えてねー。
だから、帰れ」
(さすがはシカマルさん。
普段のあたしなら、大いに同意するところです。
しかし、今はあたしの店が懸かっているので粘ります)
「火遁を覚えないと病気の母が大変なことに……」
「はいはい。
それなら医療忍術を覚えな」
「…………」
ヤオ子は暫し考えると、出方を変えることにした。
「見返りは払います。」
「ああ? 何を?」
「体で──」
「帰れ!」
「…………」
出方を変えたのは完全な失敗だった。
当たり前だが……。
ヤオ子は縋る目でチョウジを見詰める。
すると、チョウジはヤオ子を見て、気の毒に思えてきてしまった。
「シカマル……教えてあげたら?」
「チョウジだって分かってんだろ。
チャクラの性質変化は、一朝一夕じゃ出来ねー。
しかも、本人のチャクラ性質も重要な要素だ。
ガキが覚えるなんて、まだ早ーよ」
(チャクラの性質変化?)
シカマルの今の言葉で、ヤオ子は大体理解した。
サスケは、また無茶な難題を出したのだと……。
「すいません。
あたしの我が侭でした」
「やけに素直だな?」
「あたしのチャクラ性質も知らないで、
いきなり聞いたのが馬鹿でした。」
ヤオ子が俯いてその場を去ろうとすると、シカマルが溜息を吐く。
「ちょっと待ってろ。
アスマに言って、チャクラに反応しやすい感応紙を貰って来てやるから」
「え?」
「今の時間だと、アスマは何処に居るかな?」
シカマルが、歩きながら町中に消えると、ヤオ子は首を傾げる。
それを見たチョウジが、ヤオ子に話し掛ける。
「シカマルらしいな……。
きっと帰って来たら、
『女の子に泣かれるのは面倒臭い』って言うよ」
(どういうことだろう?)
ヤオ子とチョウジが待つこと数分。
シカマルは戻って来ると、一枚の紙をヤオ子に手渡した。
「女に泣かれるのはめんどくせーからよ」
そのチョウジの予想通りの言葉を聞いて、ヤオ子とチョウジはクスリと笑い合った。
「何だよ?」
「何でもないです」
シカマルはヤオ子の持つ、紙を指差す。
「そいつを握ってチャクラを練ればいいんだと。
お前、チャクラ練れるか?」
「はい」
「じゃあ、やってみな」
ヤオ子は頷き、感応紙を握ってチャクラを練り始める。
そのヤオ子のチャクラを感じて、チョウジがシカマルに話し掛ける。
「シカマル……。
何で、この子のチャクラは禍々しいんだろ?」
「知らねーよ」
二人は知らないが、ヤオ子は精神力の変わりに妄想力を練りこんでいる。
そして、チャクラを練って数秒後……。
「あ! 燃えた!」
「性質は間違ってないみたいだな。
紙が燃えたから、お前は火の性質のチャクラだ」
ヤオ子は燃えた感応紙を見詰め、顔を上げる。
「……性質は合ってる。
で、チャクラの性質を変えるには?」
ヤオ子の質問に、シカマルが項垂れる。
「……オイ、コイツに関わるとめんどくさいことになりそうだぞ」
「簡単に出来るの?」
「出来ねーよ」
ヤオ子の質問に何だかんだで答えてくれるシカマル。
基本、面倒臭がっているがいい人だ。
ヤオ子は右手の人差し指を立てる。
「変な質問なんですけど、性質変化させた術って変化の術とかより、
やっぱり、難易度高いんですよね?」
「当たり前だろ」
「そこら辺。気合いで何とかなりませんか?」
「どうすりゃ、そういう発想に行き着くんだ?」
「チャクラ練るのって意味分からないでしょ?
それと同じで気合いで……」
「お前、気合いでやってるのか……」
「気合いです」
「…………」
場は、一瞬、沈黙しかけたが、ヤオ子は気にせず話を続ける。
「サスケさんも同じようなこと言ってましたよ?」
「サスケ?
お前、適当にあしらわれたんじゃないのか?」
「そうなんですかね?
・
・
じゃあ、質問ですけど、
精神エネルギーの蓄積されたエネルギーって説明出来ます?」
「修行や経験によって蓄積したエネルギー……だよな?」
シカマルの返答に、ヤオ子は更に続ける。
「その理論だと年取ってる方が精神エネルギーって多いでしょ?
蓄積するんだから」
「……まあな」
「歳も取ってない、あの落ち着きのないナルトさんが、
精神エネルギーを沢山内蔵してるって……気味悪くないですか?」
ヤオ子は師匠だろうと平気で貶める人間だ。
「そう言われると、教科書と一致しないな……。
ナルトのヤロウは信じられないぐらいのチャクラを持ってたからな……」
「でしょ?
あたしの勘ですけどね。
チャクラに限っては嘘ですね」
「お前、とんでもないこと言ってないか?」
「だって!
納得いかないです!」
「じゃあ、何で、嘘を教えんだよ?」
「子供を躾けるためです!」
「ハァ!?」
「忍びの里の子供なんて、
きっと、何処も手の付けれない問題児ばっかりです」
自分達のアカデミー時代を思い出し、シカマルとチョウジは苦笑いを浮かべる。
「でも、全員馬鹿だから忍者になりたい」
今の言葉で、心なしかシカマルとチョウジに青筋が浮かぶ。
「そこで、大人達は考えたのです。
馬鹿共を躾けるためにチャクラを練る説明に嘘を入れようと。
『修行や経験によって蓄積したエネルギー = 精神エネルギー』にしようと。
・
・
馬鹿達は仕方なく従います。
だって、忍者になりたいから……。
・
・
そして、意味の分からない精神エネルギーは、躾けの度に意味が変わります。
『落ち着きがないから、精神エネルギーが養われない』とか。
『大人し過ぎて元気がないから、精神エネルギーが養われない』とか。
躾ける子供に合わせてコロコロコロコロ意味が変わります」
シカマルとチョウジが額を押さえる。
「やべー……。
オレ、心当たりあるわ」
「ボクも……。
この子の例えでナルトとヒナタが頭を過ぎったよ」
「だから、チャクラの本質は気合いなので、
実は不真面目な生徒であるナルトさんみたいな生徒の方が、
チャクラを練り出す量が多かったりするのです」
「何で、オレらは、女の子の説明に納得させられてんだ?」
「さあ?」
「と、言うわけで、気合いっぽい説明で教えてください」
「…………」
シカマルが適当に答える。
「チャクラ練る時に熱い物でも、イメージすればいいんじゃないか?」
「そうだね」
「何故、投げやり?」
「オレらは火遁を、今、覚える必要ないからな」
「……馬鹿じゃないの?」
シカマルのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「お前は、教えて貰ってる立場だろ!」
「はは……。
そうでした……」
ヤオ子は笑って誤魔化すと、頭を下げる
「色々、ありがとうございました。
あたしのチャクラ性質は分かったんで、あとは気合いで何とかしてみます」
ヤオ子はシカマル達に手を振ると、走り去って行った。
残されたシカマルがチョウジに話し掛ける。
「何だったんだ? アイツ?」
「さあ?
変わった子だったね」
「名前も言わずに行っちまった」
「でも、何と言うか……」
「ああ。
頭のカワイソウな奴だったな」
シカマルの言葉に、チョウジは苦笑いを浮かべつつも納得した。
…
ヤオ子はサスケの修行場に戻ると、ポニーテールを右手で梳く。
「ふっ……。
結局、頼れるのは自分の妄想だけか……」
多分……いや、間違いなくこれからやろうとしている方法は間違っている。
元を正せばチャクラを練るところから、きっと間違っている。
「熱が必要だから、今回は少しアレンジします」
ヤオ子は両肘を腰につけるとチャクラを練る準備に入る。
「うおぉぉぉ! ←注:アレンジ
猛れ! あたしの妄想力!」
ヤオ子はチャクラを練りながら印を結び、大きく息を吸い込む。
その最中、チャクラを摩擦熱で擦るように練りこむ。
そして……。
「あっつ!
おえ~!
ゲヘッ! ゲヘッ! 中で燃えた!」
ヤオ子が喉を押さえて咳き込む。
「危ないって!
この術、危険!
練習するだけで死んじゃうよ!」
ヤオ子は水道まで走ると、数回うがいをする。
「死ぬとこだった~……。
これ本格的にあたしがチャクラを火に変えてたら、マジで死んでたよ……。
・
・
サスケのヤロウ……」
ヤオ子はここに居ないサスケに拳を握り、プルプルと震えながらメモを見る。
「この説明が悪い!
何だ! これ!
『チャクラを練る』
↓
『印を結ぶ』
↓
『息を吸う』
↓
『吐く』
『息を吸う』→『印を結ぶ』だろ!
吸った時に体内燃やすって、どんな自虐プレイだ!」
ヤオ子は、一人でもテンションが高い。
ちなみにサスケは、この手順で術が発動している。
根本的に間違って突っ走って来たヤオ子固有の問題かもしれない。
「あ~。
でも、何かチャクラが熱持ったのは確かです。
これを覚えるんですよね?
・
・
あの人さ……。
もっと危なくないヤツを自主練させてよ。
生死が付きまとう術は、手取り足取り教えてよ。
あたしが死んだら世界的な損失ですよ」
ヤオ子の愚痴は続く。
「大体、サスケさんは、いつ覚えたの?
こんな危険なのって、もっと大人になってからじゃないの?
習得にどれぐらいの期間が掛かるんですか?
・
・
やっぱ、あの人ドSだ!
その上、馬鹿だ!
何だよ、このメモの間違い!
有り得ないですよ!」
八歳児の少女は怒り狂っている。
「やめやめ!
こんな危ない術を子供は真似しちゃいけません!」
ヤオ子は修行場を後にする。
しかし、直に痙攣が始まる。
「何これ?
修行終えないで離れたら凄い悪寒がする……」
トラウマ発動である。
「ダメです! ヤオ!
この試練に打ち勝って、あのドSから離れるんです!」
しかし、足は回れ右をする。
「あ~!
あたしの裏切り者ーっ!」
ヤオ子は、体にも裏切られた。