== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
任務返し前、カカシが気を取り直す。
しかし、ヤオ子とサクラから不安を拭うことは出来ない。
(ナルトとサスケの方が扱い易かったな……。
女の子二人がチームに居ると、こうなのかな?
・
・
いや……。
イビキとテンゾウの話だと、
この子が事態を悪くする原因に違いない……)
カカシは、任務前から疲れていた。
第50話 ヤオ子と第七班?②
カカシが地図を開き、任務の詳細を話す。
「まず、地図を見てくれ」
ヤオ子とサクラが地図を見る。
「このA, B, Cのルートが、囮が通る道だ。
オレ達は、このBのルートを使う」
「三班による囮ですか?」
「そうだ。
敵を分散させて要人への敵を減らす。
出来れば近づけさせない」
「変装しないのは、木ノ葉の忍が警護させていることを印象づけるためですね」
「その通りだ」
カカシとサクラの会話を聞いて、ヤオ子は感心する。
(さすがカカシさんとサクラさん……。
阿吽の呼吸ですね。
あたしの入り込む余地なしです)
説明は続く。
「出発は、A, B, Cバラバラにする。
こうすることで、更に分かり辛くする。
まあ、あまり間隔が空き過ぎると増援され兼ねないがな」
「なるほど」
「そして、実は出発時間は既に過ぎている」
「…………」
「「ハァ!?」」
「君達が遅刻するから……」
「ちょっと!
待ち合わせ時間に居なかったのは、カカシ先生でしょ!」
「そうですよ!」
「でも、オレが来た時、誰も居なかったけど?」
「カカシさんが来るまで時間潰してたんですよ!」
「何で、そんなことするの……」
ヤオ子はカカシを指差す。
「サスケさんに聞きましたよ!
カカシさん!
あなた、三時間ぐらい遅れるのザラだったでしょ!」
「偶には時間通りだったよ」
「でも、今日も遅刻したじゃないですか!」
「十分だけだよ」
「そんなことばっかりしてるから、
狼少年のように信用をなくすんですよ!」
(何だろう? この絵面……。
大人が子供に思いっきり怒られてる……)
サクラは少し憂鬱だった。
そのサクラにカカシが訊ねる。
「サクラ……どう思う?」
「概ね、ヤオ子に同意なんですけど……」
「…………」
「まあ、いいか」
「…………」
ヤオ子はサクラに視線を向ける。
「サクラさん……。
よく頑張ってましたね……」
「分かる?」
「ええ。
これにナルトさんも加わるんでしょ?」
「そう……」
「そして、サスケさんが加わると、
ナルトさんとトラブル起こすんでしょ?」
「そう……」
「あたし、サクラさんのために頑張ります」
「ありがとう……。
でも、凄く悲しいわ……」
(何だかな~……)
この三人……一向に出発しない。
「いい加減、出発しようか?」
「そうですね」
「既にやる気ないですけど」
三人は、『あん』の門へと向かった。
…
囮のルートの距離は歩いて半日程度。
よって、リュックなどの荷物はない。
第七班(?)は、ようやく囮任務を開始する。
「カカシさん?」
「何?」
「あたしは、このままでいいんですか?
顔を思いっきり曝してるんですけど……」
カカシが写真を渡す。
ヤオ子が受け取り、サクラが覗き込む。
「それ要人」
「「全っ然! 似てない!」」
「これ、バレるって!」
「大丈夫なんですか!?」
「似てるでしょ?」
「何処が?」
カカシの指がヤオ子の後頭部を指す。
「髪型」
「「それだけ!?」」
「まあ、いいですけどね」
「いいの? ヤオ子?
言いたくないけど……。
この写真の子、凄いブスでデブよ」
「いや、カカシさんがいいって言って、
綱手さんが推薦したんだから、文句は言われませんよ。
・
・
例え、襲われなくてもね……」
ヤオ子が邪悪な笑みを浮かべる。
「あんた、作戦をなかったことにしようとしてるでしょ?」
「そうですよ♪」
「そんなに似てないかな?」
「カカシ先生、目おかしいんじゃないの?」
カカシが写真を返して貰うと、頭に手を当てた。
「すまん。
これ妹の方だ」
「「え?」」
再び、写真をチェック。
「今度は洒落になりません……。
あたしにそっくりじゃないですか!」
「本当……」
「狙われる!
狙われるって!」
ヤオ子がポニーテールの紐を解こうと頭に手を伸ばす。
「それを取っちゃダメでしょう?」
それをカカシが手を掴んで止めた。
「だって、暗殺されるって!
これ、囮じゃなくて身代わりって言うんですよ!
人身御供!」
「難しい言葉を知ってるなぁ」
「ギャグ漫画で散々使われたネタじゃないですか!」
「何で、怒ってんの?」
「死ぬかもしれないからでしょ!」
「だから、大丈夫だって」
「じゃあ、証拠見せてくださいよ!」
「証拠?」
「カカシさんが強い証拠です!」
サクラはカカシとの初めてのサバイバル演習を思い出すと、ポンとヤオ子の肩に手を置いた。
「ヤオ子……。
やめた方がいいわよ」
「何で?」
「私、最初のサバイバル演習で、酷い幻術を掛けられたわ」
「……ドS?」
「ドS」
「違う」
ヤオ子がサクラに質問する。
「カカシさんの口からでは信用出来ないんで、
サクラさんの口から、カカシさんのエピソードを教えてください」
(何で、こんなに信用ないんだろう?)
「そうねぇ……。
実力は信用していいわ」
「本当?」
「ええ。
相手が気の毒になるぐらいボコボコにするから」
「え?」
(サクラ……。
何、言ってんの……)
「だって!
普通、初見で!
女の子相手に!
気絶するような幻術掛ける!?」
「掛けるんじゃないですか?」
「え?」
(意外な反応……)
「あたしは、サスケさんとのセカンドコンタクトで、
家を豪火球の術で燃やされそうになりましたね」
「…………」
カカシとサクラが固まる。
「サスケ……そんなことするの?」
「はい。
三度ほど、燃やされそうになりました。
三度目の時は木ノ葉崩しであたしの家自体が崩壊したので、
サスケさんは家を燃やすことが出来ませんでしたが」
サクラが頭を抱える。
「私、過保護に育ったのかな……」
「いや、そんなことないと思うよ……。
それにあの演習は、サクラのことを思ってのことだよ。
現に木ノ葉崩しの時に、経験が役に立ったでしょ?」
「ええ、まあ……」
「あたしのは?」
「……ストレスでも溜まってたのかな?」
「ストレス……。
そんな理由……。
まあ、明確な理由がないのも確かだと思いますけど……」
「あんた、何かしたんじゃないの?」
「してませんよ」
こんな感じで、エンドレスで半日近く話しながら予定のコースを歩いた。
…
数時間後……。
もう直ぐ、目的地に着くところまで進んだ。
囮のルートにある最後の森が見える。
「何もなかったですね?」
「油断大敵よ。
最後の森は、待ち伏せするには最適だわ」
「そう。
サクラは、いいことを言った」
森に入り、歩いて暫くしてカカシが静止を掛ける。
「居るな……。
サクラは、ヤオ子を守って」
「はい!」
「あたしは、怯えて見せればいいんですか?」
「普通でいい」
「了解です」
「森を抜けて視界が開けるまで走るぞ」
カカシを先頭に走り出す。
左右から飛んで来る手裏剣やクナイをカカシがクナイで叩き落とすと、ヤオ子は、それを走りながら回収する(後で売るために)。
しかし、ヤオ子達に向かう投擲は最初こそ叩き落していたが、後半は、まともに手裏剣やクナイは届かない雑なものだった。
森を抜け、三人が反転して相手の出方を伺う。
「森だけじゃなく、周りにも気をつけろ」
「「はい!」」
しかし、何も起こらない。
カカシが警戒を解くと、クナイを腰の後ろの道具入れに仕舞った。
「どうやら、森の中にだけ潜んでいたようだな」
「カカシ先生。
どうするんですか?」
「このまま、少し待つ。
囮なんだから、引き付けたいしな」
「分かりました」
その相手の出方を伺う待ち時間……。
ヤオ子は拾った手裏剣とクナイを確認する。
「何か……。
この手裏剣独特ですね?」
カカシがヤオ子の手にある手裏剣を確認する。
「確かに……。
全部、種類が違う」
「もしかして、雇われた忍者がバラバラの里?」
「雇われたのなら、全員抜け忍の可能性もあるが……。
暗殺をするにしては実力が低過ぎるし、仕事が事務的だ。
・
・
これは、一杯食わされたかもしれない……」
「どういうこと?」
サクラがヤオ子に補足する。
「こっちの囮の作戦に気付いていて、
相手がワザと引っ掛かったフリをしたってことよ」
「となると……。
本隊に敵さんが大勢向かってる?」
ヤオ子の疑問に、カカシが答える。
「そういうことだ」
「応援に行きますか?」
「もう、間に合わないな……」
「任務失敗?」
「いや……。
恐らく任務の前にバレていた」
ヤオ子は今の状況を考え始めると、考えている最中に嫌悪感を感じ始めた。
嫌なはずの危ない任務なのに……。
本来なら、積極的に関わるなんてありえないのに……。
だけど、気に入らない。
まだ最善を尽くした気がしない。
そのせいで誰かが傷つくかもしれないと思うと気持ちが悪い。
言葉は、自然と口から出ていた。
「質問……いいですか?」
「ああ」
(何だ……?
雰囲気が少し変わったな)
「あの森に居る忍者さん。
他の仲間との通信手段はありますかね?」
「あるだろうな」
「ここから演技して騙せないですか?」
「ん?」
「あたし、似てるんですよね。
本隊が偽物で、こっちが本物って思わせるんです。
多少なりとも混乱しませんか?」
「そういう手もあるか……」
「もちろん。
カカシさんかサクラさんが変化して代役してくれてもいいです。
可能性が上がるなら、そっちの方がいいし」
「いや、子供の動きなら本物の子供の方が確かだ」
カカシは腰に手を当て、後方の森に目を向ける。
「ダメ元でやってみるか……」
「ダメ元って……。
カカシ先生、どうするんですか?」
「ここから、離れる時にヤオ子に倒れて貰う。
それをサクラが治療するフリをする。
オレは、サクラとヤオ子を守るフリをする。
そして、暫くしてサクラが、ヤオ子の命が危ないように叫ぶ」
「信用してくれますか?」
「やってみないと分からんな……」
ヤオ子が指を立てる。
「サクラさんが連絡用の伝書鳩を飛ばして、
リアリティを出すのは、どうですか?」
「伝書鳩なんて持ってないわ」
「影分身を一体変化させます」
「バレるんじゃない?」
カカシがサクラとヤオ子の視線に合わせる。
「カムフラージュしよう。
オレも影分身を使う。
出現の時の煙に乗じて、ヤオ子も影分身を出して変化させるんだ」
「やってみます。
変化した一体は、サクラさんの影に隠れます」
「分かったわ」
「倒れるのは毒のせいでいい。
さっきの手裏剣……二枚ほど毒が塗ってあった。
・
・
じゃあ、作戦を開始するぞ」
ヤオ子とサクラが頷くと作戦を開始する。
全員が立ち上がるとカカシ達が目的地に向け歩き出す。
そして、ヤオ子はふらふらとよろけ出しバタリと倒れた。
「カカシ先生!」
「どうした!?」
「分りません!」
「サクラ!
治療を頼む!」
カカシがヤオ子とサクラを庇うように前に出ると、印を結ぶ。
ヤオ子もそれを確認して印を結ぶ。
カカシの影分身が煙と共に現れる煙に乗じて、ヤオ子も一体影分身を出す。
影分身は、更に印を結び、伝書鳩に変化した。
(早い)
サクラは、ヤオ子の印を結ぶ早さに素直に感心する。
そして、治療を始めるフリを始める。
「カカシ先生!
毒です!
このままだと、死んでしまいます!」
「早く!
木ノ葉に連絡するんだ!」
「はい!」
サクラが伝書鳩を飛ばすと、伝書鳩は森を抜けて木ノ葉に向かう。
「後は、待つだけだな……。
こんな大声でワザと臭過ぎたか?」
ヤオ子達は、事の成り行きを待った。
…
にわかに森がざわめき出す。
そして、空に黄色い煙幕が上がった。
「掛かったか?」
森の方から声が聞こえ始め、森の中から数人の忍が抜け出してきた。
「掛かった!
サクラは、ヤオ子を背負って後退だ!」
「はい!」
サクラはヤオ子を背負うと、予想以上の重さにふらつく。
「ちょ……!
あんた、重い!」
「育ち盛りなもんで……」
「っ!
しゃーんなろー!」
サクラはヤオ子を背負って走り出した。
ちなみに……。
ヤオ子が重いのは、ガイのプレゼントした重りのせいである。
カカシが追って来た忍を次々に倒していく。
どうやら本当に配置されていた忍達は、数合わせの傭兵や賊のようだった。
(増援がこっちに少しでも来れば、本隊も少しは楽になるはずだ……。
時間を稼ぐ上にも、倒す時間をコントロールせんとな)
カカシは手加減しながら、襲い来る忍もどきを倒すように心掛ける。
一方のサクラは、カカシとの距離が開くとヤオ子を下ろし、治療を続けるフリをする。
「逃げないんですか?」
「ワザとよ。
『如何にも、今、死にそうです』って思わせるの」
「作戦でしたか」
「ほら!
死にそうなフリ!」
「は~い」
ヤオ子は、目を閉じてジッとする。
そして、後退しては治療するフリを三十分ほど繰り返した。
…
治療中のフリを続けていたサクラが、急にクナイを構えて振り抜く。
甲高い音と共にヤオ子に向かった手裏剣を弾いた。
「魚が釣れたみたいよ!」
カカシが戦っている忍もどきとは別方向からの攻撃にサクラがクナイを構える。
カカシも気付くと、今までとは比べものにならない早さで森からの忍もどきを倒し切る。
「大成功だな」
「はい」
カカシがサクラに肩を並べる。
「ヤオ子、もういいぞ。
時間的にも、呼び寄せた連中が戻る頃には終わっているだろう」
「は~い。
・
・
多勢に無勢ですね。
二十人ぐらい居ません?」
「半分は、オレが片付ける」
「じゃあ、残りの半分をサクラさんが?」
「あんたは!」
「我関せず……」
サクラのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「じゃあ、指示ください。
サクラさんの指示通りに動きますんで。
あと、あたし、まだ殺しのGOサイン貰ってないんで」
「ハァ!?」
「まだ忍者じゃないんです」
「よく分からないわね……。
じゃあ、行動不能にしなさい!」
「了解です」
ヤオ子とサクラ、カカシで二手に別れる。
カカシが忍体術や敵からコピーした忍術で戦うのに対して、ヤオ子とサクラは、アカデミーで習う基本忍術を利用して戦う。
サクラとヤオ子は囲まれないように動き、分身の術で惑わせ、変わり身で更に惑わせる。
これにより、敵が分散して囲まれない。
そして、この戦いの中、ヤオ子はサクラの戦い方に驚いていた。
(使用する忍術のチャクラに全く無駄がありません)
ヤオ子も木登り修行でチャクラコントロールは上達している。
故に無駄なチャクラは練らないように心掛けている。
しかし、チャクラを練る際には保険を掛けている。
ギリギリ過ぎて術が発動しないのでは意味がないため、発動ギリギリより、少し多くチャクラを練っているのだ。
それに対して、サクラは保険を掛けない。
精密なチャクラコントロールで無駄がない。
(適材適所で術を使う戦い方は似ています。
でも、こんなにも差があるなんて……。
サクラさんを見ると、自分の忍術が雑に見えてきます。
・
・
この人も、サスケさん達と同じです。
凄い忍者です)
ヤオ子とサクラが背中を合わせ、サクラが先に声を掛ける。
「戦い方、似てるわね」
「そう思います」
「思考は、どうかしら?」
「背中合わせるタイミングが同じところを見ると、
それほど悪くないんじゃないですか?」
「そうね!」
二人は時計回りに走り出し、同タイミングで分身を出す。
そして、翻弄させた相手に申し合わせたように回し蹴りを叩き込んだ。
これで残り八人……。
「この人達、サスケさんよりノロマです!」
「そうね!
私の回し蹴りが当たるぐらいだからね!
一人ずつ、確実に行くわよ!」
遠くでは、カカシがヤオ子達の倍の早さと強さで敵を倒していた。
「カカシさん。
本当に強かったんですね」
「ええ」
「サクラさんも」
「修行……欠かしてないから!」
サクラがクナイで敵の忍を斬り付けるも、躱され距離を取られる。
「っ!
外した!」
ヤオ子がサクラに近づくと、声を掛ける。
「やっぱり、女のあたし達には不利ですね」
「そうね。
力で、ごり押しするタイプじゃないし」
「ですよね。
倒した相手は、皆、急所狙いでしたからね」
「だとしたら……」
サクラの視線にヤオ子は頷く。
「「頭を使うしかないでしょう!」」
走って接近する敵に対し、ヤオ子がタイミングと距離を見計らって影分身を出す。
影分身に正面衝突した敵の動きが止まったところをサクラが顎の先端を狙い殴りつける。
そして、脳を揺らされ、ふらつく相手にヤオ子とサクラは顔面にパンチを叩き込んだ。
残り七人……。
「この作戦いいわね!」
「ガンガン転ばしますよ!」
ヤオ子とサクラが分身して敵に向かう。
そして、その分身の中に、ヤオ子は一体だけ影分身を忍び込ませる。
敵の忍は何度も本体を捕らえられずに苛立ちを見せ、予想外の女子二人の好戦に残った忍達がホルスターに手を掛けた。
ヤオ子はチャクラを練り上げて印を結ぶ。
「笑止! 笑止! 笑止千万!
だから、お前はアホなのだーーーっ!」
一斉に投げられる武器を、ヤオ子は必殺技の爆発で弾き返した。
(この子、何て危険な術を覚えてんのよ!)
「サクラさん! 今!」
サクラがホルスターから手裏剣を抜き取り、残った忍達に投擲する。
サクラの手裏剣は、残った七人のうち三人を仕留める。
残り四人……。
サクラとヤオ子が動き続け、残り四人を陽動する。
しかし、人数が少なくなった分だけ、逆に上手くいかない。
しかも、敵の忍二人はここに来てコンビプレイを見せる。
一人が印を結び、サクラが印を見て叫ぶ。
「火遁よ!」
敵の忍の口から、火炎が飛ぶ。
だが……。
「「小さい!?」」
もう一人の忍が時間差で風遁を使うと、炎が風の力を受けて勢いを増す。
「っ!」
「ヤオ子!
さっきの術!」
(勢いで負けます!
でも……サクラさんを信じます!)
ヤオ子がチャクラを練り上げて、印を結ぶ。
そして、影分身も続く。
「「爆殺! ヤオ子フィンガー!」」
爆発術の二連撃。
しかし、勢いは止まるが術の効果が違う。
一瞬だけのヤオ子の術に対して、敵の忍の風遁は持続時間が長い。
「まだ続いてます!」
サクラが起爆札付きのクナイを投げると、クナイは勢いが弱まった流れの側面で爆発する。
それにより、風の流れが変わり、火炎はヤオ子達を避けた。
「風を読んだんですか!?」
サクラの攻撃は、更に次に移る。
ヤオ子も続く。
(凄いです!
止まりません!
何より、次の行動への切り替えが早い!)
分身を利用しながら忍体術を仕掛け、ヤオ子もガイ仕込みの体術を仕掛ける。
サクラは綱手の攻撃を避ける訓練も始まっているため、忍体術というものに取り込みだしていた。
だから、ヤオ子の体術に、今度はサクラが驚く。
(何で、この子がここまで体術使えるの?
この動きって……リーさんじゃない!)
修行の成果は、二人とも少しずつ現れ始めていた。
「しゃーんなろー!」
サクラの拳が相手の鳩尾に入る。
残り、三人……。
「そろそろギリギリかな?」
ヤオ子の影分身が敵に抱きつき、轟音が響く。
「じ、自爆した……」
サクラは爆風を回避するため、半身になって動きを止め、その横にヤオ子が追いついた。
「これが確実に外さないんですよね。
相手の瞬身の術についていけない時もあるし」
「それはそうだけど……」
「相手も驚くんですよ。
だって、抱きつくなんて自殺行為でしょ?」
「まあ……」
「そこをついての自爆です」
「…………」
二人のくノ一の善戦に、残った敵の忍二人が固まっている。
ヤオ子とサクラが残りの忍を睨む。
「警戒されましたね」
「そうね」
一人は、頭脳明晰で成長株の少女。
敵の忍達は、サクラのヤオ子への指示と的確な動きのせいで動けない。
一人は、まだまだ発展途上だが……危ない。
自爆した……。
正直、意味不明なものの方が恐ろしい。
固まる忍達の後ろにカカシが音もなく現れると、振り向く間もなく、カカシが両手に持ったクナイで一人ずつ華麗に仕留めた。
「二人とも……。
よくやった」
余裕のあるカカシに対して、ヤオ子とサクラは息を吐き出して肩を弾ませながら返事を返した。
ヤオ子は乱れた呼吸のまま、再びチャクラを練ると影分身を三体出す。
「何するの?」
「ふん縛るんですよ。
皆、息あるんだから」
影分身達は、次々と敵の忍を縛り始めた。
「殺してないのか……。
そんな余裕があったのか?」
カカシにサクラが答える。
「無理しました。
ヤオ子が殺しをしないって言うから」
「どういうことだ?」
カカシとサクラはヤオ子に訊ねると、ヤオ子はイビキとの話を簡潔に説明した。
「なるほどね。
それで腕の額当ても隠しているわけか」
「はい」
「だったら、今回みたいな任務はやめるべきね」
「あたしも選べるなら、そうしますけどね」
「その件は、オレから綱手様に伝えておこう。
本人がそう言うなら、
無理やり召集したこっち側も責任があるからな」
「助かります」
「すまなかったな。
こういう任務に巻き込んで」
「何事もなかったからいいです」
サクラは、顎に指を置いて考える。
「でも……。
Cランクの任務をBランクに引き上げたのって、
ヤオ子本人じゃない?」
「え?」
「そういえば……。
ヤオ子が敵を呼び寄せようとしたな」
「……勢いで」
「あんた、馬鹿じゃないの?」
「言い訳できません……」
(矛盾した行動を取るなんて……。
何かあるのか?)
ヤオ子の行動は、カカシとサクラに少し疑問を残させた。
しかし、そればっかりに気を回していても仕方ない。
カカシが、次の行動を促す。
「じゃ、目的地に行って、この人達ををどうにかして貰うか」
「はい。
でも、その前に応急処置だけ。
私の手裏剣で失血死っていうのも……。
・
・
それに医療忍術の練習にもなりますし」
「そうか。
・
・
じゃあ、オレの方も頼めるか?」
「はい」
「少し張り切り過ぎちゃってな」
ヤオ子が呟く。
「カカシさんって……。
本当に相手が気の毒になるぐらいにボコボコにするんですね」
「そうよ。
分かった?」
サクラが医療忍術を掛けながら返事を返した。
「ドSだったんですね~」
「違うって……。
ちゃんと生きてるでしょ?
オレは実力差が分かってるなら、無理な殺生はしないよ」
「そうですよね。
死んでたら苦しむ顔を見れませんもんね」
「だから、そんなことしないって!
何で、ヤオ子は、オレをドSにしたがるんだ!?」
「嫌なんですか?
ドMがいいとか?」
「普通でいい……」
「なるほど……。
ただのエロでいたいんですね」
「……オレ、この子を制御しきれんわ。
ナルトだって、もう少し聞きわけがあったのに……」
「冗談ですよ?
カカシさんをからかってるだけです」
「大人をからかうな……」
「じゃあ、真面目にエロを語りますか?」
サクラの投石が、ヤオ子に炸裂した。
「語るな!
こっちは集中してんのよ!
集中力を乱すようなことはしないで!」
「少しぐらい失敗して傷が残ってもいいですよ。
女か美少年か美男子の治療をしているわけじゃないんですから」
「あんたねぇ……」
「あたしの捕食対象になり得ない野郎なんて適当でいいんですよ……適当で」
「「悪魔か……」」
脱力しながらも、サクラは治療を完成させた。
そして、目的地に向かうためにカカシの近くに全員が集まる。
「ところで……。
ヤオ子、それ何?」
両手一杯に荷物を抱えて続く影分身について、カカシはヤオ子に質問した。
「戦利品。
あの人達のホルスターと忍具と金品」
「あんた、追い剥ぎ!?」
「ふ……。
あたしに関わる悪党は、尻の毛まで抜かれて鼻血も出なくなるんです」
カカシは苦笑いを浮けべ、サクラは呆れて目的地へと歩き出した。