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No.13840の一覧
[0] 【ネタ・完結】NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~[熊雑草](2013/09/21 23:12)
[1] 第1話 八百屋のヤオ子[熊雑草](2013/09/21 21:27)
[2] 第2話 ヤオ子のチャクラ錬成[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[3] 第3話 ヤオ子の成果発表[熊雑草](2013/09/21 21:28)
[4] 第4話 ヤオ子の投擲修行[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[5] 第5話 ヤオ子と第二の師匠[熊雑草](2013/09/21 21:29)
[6] 第6話 ヤオ子の自主修行・豪火球編①[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[7] 第7話 ヤオ子の自主修行・豪火球編②[熊雑草](2013/09/21 21:30)
[8] 第8話 ヤオ子の悲劇・サスケの帰還[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[9] 第9話 ヤオ子とサスケとサクラと[熊雑草](2013/09/21 21:31)
[10] 第10話 ヤオ子と写輪眼[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[11] 第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[12] 第12話 ヤオ子の自主修行・必殺技編②[熊雑草](2013/09/21 21:32)
[13] 第13話 ヤオ子の自主修行・必殺技編③[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[14] 第14話 ヤオ子の自主修行・必殺技編④[熊雑草](2013/09/21 21:33)
[15] 第15話 ヤオ子の自主修行・必殺技編⑤[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[16] 第16話 ヤオ子とサスケと秘密基地[熊雑草](2013/09/21 21:34)
[17] 第17話 幕間Ⅰ[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[18] 第18話 ヤオ子のお見舞い①[熊雑草](2013/09/21 21:35)
[19] 第19話 ヤオ子のお見舞い②[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[20] 第20話 ヤオ子のお見舞い③[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[21] 第21話 ヤオ子の体術修行①[熊雑草](2013/09/21 21:36)
[22] 第22話 ヤオ子の体術修行②[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[23] 第23話 ヤオ子の中忍試験本戦・観戦編[熊雑草](2013/09/21 21:37)
[24] 第24話 ヤオ子の中忍試験本戦・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[25] 第25話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅護衛編[熊雑草](2013/09/21 21:38)
[26] 第26話 ヤオ子と木ノ葉崩し・自宅壊滅編[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[27] 第27話 幕間Ⅱ[熊雑草](2013/09/21 21:39)
[28] 第28話 ヤオ子の新生活①[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[29] 第29話 ヤオ子の新生活②[熊雑草](2013/09/21 21:40)
[30] 第30話 ヤオ子の新生活③[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[31] 第31話 ヤオ子の下忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 21:41)
[32] 第32話 ヤオ子の下忍試験・実技試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[33] 第33話 ヤオ子の下忍試験・サバイバル試験編[熊雑草](2013/09/21 21:42)
[34] 第34話 ヤオ子の下忍試験・試験結果編[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[35] 第35話 ヤオ子とヤマトとその後サスケと[熊雑草](2013/09/21 21:43)
[36] 第36話 ヤオ子の初任務[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[37] 第37話 ヤオ子の任務の傾向[熊雑草](2013/09/21 21:44)
[38] 第38話 ヤオ子の任務とへばったサスケ[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[39] 第39話 ヤオ子の初Cランク任務①[熊雑草](2013/09/21 21:45)
[40] 第40話 ヤオ子の初Cランク任務②[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[41] 第41話 ヤオ子の初Cランク任務③[熊雑草](2013/09/21 21:46)
[42] 第42話 ヤオ子の初Cランク任務④[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[43] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[44] 第44話 ヤオ子の憂鬱とサスケの復活[熊雑草](2013/09/21 21:47)
[45] 第45話 ヤオ子とサスケの別れ道[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[46] 第46話 幕間Ⅲ[熊雑草](2013/09/21 21:48)
[47] 第47話 ヤオ子と綱手とシズネと[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[48] 第48話 ヤオ子と、ナルトの旅立ち[熊雑草](2013/09/21 21:49)
[49] 第49話 ヤオ子と第七班?①[熊雑草](2013/09/21 21:50)
[50] 第50話 ヤオ子と第七班?②[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[51] 第51話 ヤオ子の秘密[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[52] 第52話 ヤオ子とガイ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:51)
[53] 第53話 ヤオ子と紅班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[54] 第54話 ヤオ子とネジとテンテンと[熊雑草](2013/09/21 21:52)
[55] 第55話 ヤオ子とアスマ班のある一日[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[56] 第56話 ヤオ子と綱手の顔岩[熊雑草](2013/09/21 21:53)
[57] 第57話 ヤオ子とサクラの間違った二次創作[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[58] 第58話 ヤオ子とフリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:54)
[59] 第59話 ヤオ子と続・フリーダムな女達[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[60] 第60話 ヤオ子と母の親子鷹?[熊雑草](2013/09/21 21:55)
[61] 第61話 ヤオ子とヒナタ班[熊雑草](2013/09/21 21:56)
[62] 第62話 ヤオ子と一匹狼①[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[63] 第63話 ヤオ子と一匹狼②[熊雑草](2013/09/21 21:57)
[64] 第64話 幕間Ⅳ[熊雑草](2013/09/21 21:59)
[65] 第65話 ヤオ子とヤマトの再会[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[66] 第66話 ヤオ子とイビキの初任務[熊雑草](2013/09/21 22:00)
[67] 第67話 ヤオ子の自主修行・予定は未定①[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[68] 第68話 ヤオ子の自主修行・予定は未定②[熊雑草](2013/09/21 22:01)
[69] 第69話 ヤオ子の自主修行・予定は未定③[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[70] 第70話 ヤオ子と弔いとそれから……[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[71] 第71話 ヤオ子と犬塚家の人々?[熊雑草](2013/09/21 22:02)
[72] 第72話 ヤオ子とカカシの対決ごっこ?[熊雑草](2013/09/21 22:03)
[73] 第73話 ヤオ子の居場所・日常編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[74] 第74話 ヤオ子の居場所・異変編[熊雑草](2013/09/21 22:04)
[75] 第75話 ヤオ子の居場所・避難編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[76] 第76話 ヤオ子の居場所・崩壊編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[77] 第77話 ヤオ子の居場所・救助編[熊雑草](2013/09/21 22:05)
[78] 第78話 ヤオ子の居場所・死守編[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[79] 第79話 ヤオ子がいない①[熊雑草](2013/09/21 22:06)
[80] 第80話 ヤオ子がいない②[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[81] 第81話 幕間Ⅴ[熊雑草](2013/09/21 22:07)
[82] 第82話 ヤオ子の自主修行・性質変化編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[83] 第83話 ヤオ子の自主修行・能力向上編[熊雑草](2013/09/21 22:08)
[84] 第84話 ヤオ子の自主修行・血の目覚め編[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[85] 第85話 ヤオ子の旅立ち・お供は一匹[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[86] 第86話 ヤオ子とタスケの口寄せ契約[熊雑草](2013/09/21 22:09)
[87] 第87話 ヤオ子の復活・出入り禁止になった訳[熊雑草](2013/09/21 22:10)
[88] 第88話 ヤオ子のサスケの足跡調査・天地橋を越えて[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[89] 第89話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ①[熊雑草](2013/09/21 22:11)
[90] 第90話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ②[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[91] 第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③[熊雑草](2013/09/21 22:12)
[92] 第92話 ヤオ子のサスケの足跡調査・状況整理[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[93] 第93話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁①[熊雑草](2013/09/21 22:13)
[94] 第94話 ヤオ子とサスケ・再び交わる縁②[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[95] 第95話 ヤオ子とサスケの新たな目的[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[96] 第96話 ヤオ子と小隊・鷹[熊雑草](2013/09/21 22:14)
[97] 第97話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・マダラ接触編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[98] 第98話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦編[熊雑草](2013/09/21 22:15)
[99] 第99話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・深夜の会話編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[100] 第100話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・作戦開始編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[101] 第101話 ヤオ子とサスケの奪還作戦・奪還編[熊雑草](2013/09/21 22:16)
[102] 第102話 ヤオ子とサスケの向かう先①[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[103] 第103話 ヤオ子とサスケの向かう先②[熊雑草](2013/09/21 22:17)
[104] 第104話 ヤオ子とサスケの向かう先③[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[105] 第105話 ヤオ子とサスケの向かう先④[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[106] 第106話 ヤオ子の可能性・特殊能力編①[熊雑草](2013/09/21 22:18)
[107] 第107話 ヤオ子の可能性・特殊能力編②[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[108] 第108話 ヤオ子と砂漠の模擬戦[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[109] 第109話 ヤオ子とイタチの葬儀[熊雑草](2013/09/21 22:19)
[110] 第110話 ヤオ子とサスケの戦い・修行開始編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[111] 第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編[熊雑草](2013/09/21 22:20)
[112] 第112話 ヤオ子とサスケの戦い・最後の戦い編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[113] 第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[114] 第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編[熊雑草](2013/09/21 22:21)
[115] 第115話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・本戦編[熊雑草](2013/09/21 22:22)
[116] 第116話 ヤオ子の八百屋[熊雑草](2013/09/22 01:07)
[117] あとがき[熊雑草](2010/07/09 23:40)
[118] 番外編・ヤオ子の???[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[119] 番外編・サスケとナルトの屋台での会話[熊雑草](2013/09/21 22:23)
[120] 番外編・没ネタ・ヤオ子と秘密兵器[熊雑草](2013/09/21 22:24)
[121] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と①[熊雑草](2013/09/21 22:25)
[122] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と②[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[123] 番外編・没ネタ・ヤオ子と木ノ葉と砂と③[熊雑草](2013/09/21 22:26)
[124] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第1話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[125] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第2話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[126] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第3話[熊雑草](2013/09/21 22:27)
[127] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第4話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[128] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第5話[熊雑草](2013/09/21 22:28)
[129] 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険  第6話[熊雑草](2013/09/21 22:29)
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[13840] 第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/21 21:47
 == NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==



 木ノ葉への帰宅の途……。
 帰りは行きと違い、静かだった。
 ヤオ子は、一言も話していない。
 そして、半分以上の道のりを歩き切ったところで、ヤオ子はようやく重い口を開いた。


 「ヤマト先生……。
  任務失敗ですね」

 「どうして?」

 「…………」


 ヤオ子が言葉に出さずとも、ヤマトには察しがついた。
 今まで掴みどころのない女の子と思っていたヤオ子だが、芯の部分は責任感が強い子だった。
 今回の任務では、それがよく分かった。
 ヤマトは歩きながら、ヤオ子に話し掛ける。


 「今回の任務を、ボクは失敗とは思わない」

 「どうしてですか?」

 「君の友達が亡くなったのは悲しいことだけど、
  君のお陰で他の村の子供達は救われるはずだ」


 ヤオ子は少し間を空け、呟く。


 「……あたしじゃないです」

 「違うよ。
  君も頑張った。
  ・
  ・
  あそこに居た人達で手を抜いていた人が居たのかい?」

 「……いません」

 「だったら、皆の成果だろう?」

 「……そうなのかもしれない」


 あの色々と失った日……。
 自分は未熟だった。
 そう感じたのは、自分が取り組んでいた日々の姿勢のせいでもあった。

  忍者になりたくない。

   危険なことはしたくない。

 そのせいで忍としての修行を何処かで手を抜いていたのではないか。
 そのせいで大事な友達を失う結果になったのではないか。

 だけど……。
 あの時、あの場に居た時に手は抜いただろうか?
 全力を尽くさなかっただろうか?
 いいや、全力だった。
 それだけは嘘じゃない。


 「目的の薬売りは捕まえた。
  成果も、ちゃんとあったんだ」

 「そう……ですね。
  成果も皆で半分こですね」

 「そうだ。
  出来なかったことを受け止めるのも大事だが、
  出来たことに胸を張れなければいけないと、ボクは思うよ」

 「ヤマト先生……。
  ありがとう」


 ようやく気が緩んだヤオ子を見て、ヤマトはヤオ子に微笑んだ。



  第43話 ヤオ子の初Cランク任務⑤



 ヤマトとヤオ子は行きと同様に途中で夜を明かし、明方、木ノ葉に到着した。
 そのまま任務の報告へと足を向け、紹介場ではコハルが待っていた。
 任務の報告を受け、コハルはヤオ子に話し掛ける。


 「辛い任務であったな」

 「はい」


 ヤオ子はコハルに普段通りの声で返し、この時には落ち込んでいる素振りは見せなかった。
 コハルとヤマトは、それが気持ちを建て直そうとするヤオ子の見えない無理あることは薄々気付いていた。


 「今日は、ゆっくりと休め。
  明日からまた、いつも通りの任務を言い渡す」

 「はい」

 「では、下がってよい。
  ヤマトは残るように」


 ヤオ子はヤマトに小さく頭を下げる。


 「では、ヤマト先生。
  お先に失礼します」


 コハルはヤオ子の後姿を見送ると、ヤマトへ訊ねる。


 「お前の報告書に指示があったから、休暇を一日だけにしたが……。
  いいのか?
  明日から、任務をさせて」

 「体を動かさせてあげてください。
  ヤオ子は、その方が楽なはずです」

 「そうか……。
  お主達の任務の成果は、後日、結果が出る。
  今は各村に医療部隊を回らせておるからな」

 「はい」


 コハルが座り直す。


 「さて、もう一つの方だ。
  ヤオ子の能力は、どうだ?」


 ヤマトは右の掌を返す。


 「かなりのものだと思います。
  本人はチャクラの量や体術の欠点をあげていますが、
  比較対象は、うちはサスケのようです」

 「それでは無理があるはずだ。
  あやつは、中忍試験の本戦まで残った奴だぞ」

 「はい。
  実際、アカデミーで習う術は習得済みでしたし、
  それ以外の術も習得しています。
  それだけでなく、本人は自分の属性を理解して術の習得もしていました」

 「大したものだ」

 「しかも、オリジナル忍術まで開発して」


 ヤマトの言葉にコハルが思い出したように話す。


 「そこら辺は、母親譲りだな」

 「母親?」

 「くノ一だったのだ。
  里の『きょうき』と呼ばれたな」

 「それは……自来也様では?」

 「木ノ葉の都市伝説の方だ」

 「都市伝説?」

 「狂った姫と書いて『狂姫』として伝わっておる。
  悪い噂八割で、良い噂二割だ」

 「……気になりますね」

 「まあ、今となっては、
  尾ひれがついて全然違うものになっているがな」

 (どんな親子関係なんだろう?
  遂に親の二つ名まで出て来ちゃったよ……)

 「報告は、以上か?」

 「いえ、もう一点。
  ヤオ子には忍者としての欠点がありました。
  心の部分の成長が技術に伴っていないのです」

 「忍びとしての覚悟のことか?」

 「いいえ……。
  純粋に子供であるということです」

 「子供か……」

 「我々は大きな勘違いをしていました。
  彼女の子供らしからぬ知識や行動から、肝心なことに気付かなかった。
  そして、それはじっくりと育ててあげなければいけないことです。
  何故、忍が必要なのか?
  何故、武器を握るのか?
  彼女が子供だからこそ、しっかりと覚えさせなくてはいけません。
  彼女はアカデミーにも行っていないので、認識も成長も中途半端です」

 「そうだな……。
  未来を担う忍になるなら、しっかりと理解させないといけないな」

 「はい。
  だから、彼女には任務をさせながらも、もう暫く子供でいる時間を与えてください。
  次の段階に進む時は、ボクが判断します」

 「うむ……。
  よく分かった。
  ・
  ・
  他は、ないな?」

 「はい」

 「では、また暫く暗部に戻って貰うぞ」

 「分かりました」


 ヤマトが退室すると、コハルは椅子の背にもたれて呟く。


 「一体、どんな忍になるのか……。
  母親のようにだけはならないで欲しいものだ」


 コハルは溜息を吐いた。


 …


 任務の報告を終えたヤオ子は自宅に帰らず、そのままの足で木ノ葉病院を訪れていた。
 何故かサスケに無性に会いたかった。
 口では悪く言っても、何だかんだで最後に頼りにするのはサスケだった。

 そして、ヤオ子はサスケの病室へと歩いて行く。
 今日は面会謝絶の札は掛かっていない。
 中を見ると、寝たきりのサスケ以外誰も居なかった。

 ヤオ子は隣の面会謝絶の札を勝手にサスケの部屋の扉につけると扉を閉め、サスケの近くの椅子に座った。


 「サスケさん……。
  そのままでいいんで聞いてください」


 ヤオ子は寝たきりのサスケに懺悔をするつもりで面会謝絶の札を掛けたのだった。


 「あたし、Cランクの任務をして来ました。
  そして……。
  初めての同い年の子と友達になったんです。
  直ぐに……亡くなっちゃったんですけど」

 「…………」

 「その時、犯人を殺そうとしました。
  復讐です」

 「…………」

 「許せなかったんです」

 「…………」

 「サスケさんは、こんな辛い思いを背負っていたんですか?
  一族全員だから、もっと辛いんですか?」

 「…………」

 「あたしは復讐できませんでした。
  今でも胸には、何か晴れない気持ちが残っています」

 「…………」

 「でも……。
  きっと、この気持ちとは向き合えると思うんです。
  ヤマト先生やイビキさんと半分こしたら、少しですが楽になりました。
  一人では抱えきれなくても、あたしには一緒に向き合ってくれる人達が居るからです」

 「…………」


 ヤオ子は目を擦る。
 そして、暫く何も言わないサスケを見つめる。


 「えへへ……。
  話したら楽になりました。
  地面に穴掘って叫んだ人みたいに。
  ・
  ・
  サスケさんの気持ちも誰かと半分こ出来れば、
  きっと、少しは楽になれるのに……。
  ナルトさんやサクラさんじゃ、ダメなんですか?」

 「…………」

 「いっそのこと、カカシさんを騙して復讐する仲間に取り入るとか?」

 「…………」

 「そういうタイプじゃないですね。
  ありがとうございました。
  あたし、行きます」


 ヤオ子は窓際を見つめる。
 そこには一輪の花が花瓶に飾られていた。


 「お花がある……。
  誰かがお見舞いに来ているんですね」


 ゆっくりと立ち上がり、ヤオ子はサスケの足の方に移動する。


 「数日振りなので、インクが薄くなっているかもしれません。
  書き直しますよ~」


 ヤオ子は勝手にサスケの足の裏を確認する。


 「思ったほどでもないか。
  でも、一応。
  ・
  ・
  え~と……ヤ──」


 ヤオ子がマジックで前回の文字をなぞろうとした時、サスケの踵がヤオ子の口に突っ込まれた。


 「んむぅ!」

 (何これ!?
  起きてる!?
  起きてるって! 絶対!
  サスケさん、意識覚醒してます!)


 ヤオ子がサスケの踵を吐き出し、足の裏に目をやる。


 「ひィィィ!」


 涎で擦れた文字が『ヤオコラブ』から『ヤオコロス』に変わっていた。


 「何これ!?
  ワザと!?
  偶然!?」


 訳が分からない状態で、ヤオ子は慌ててサスケの足の裏を雑巾で拭き取る。


 「こわっ!
  何か怖い!」


 ヤオ子は、一目散でサスケの部屋を逃げ出した。
 そして、その後に訪れたサクラが数分の間だけ席を外したうちに面会謝絶の札が下げられ、パニックを起こしたとか起こさなかったとか。


 …


 数日後……。
 ヤオ子は、普段通りのDランクの雑用任務をこなしていた。
 そして、今日は任務報告を終え、久々の午後の早引きをしていた。


 「毎週金曜はケーキ屋さんのアルバイトみたいですね。
  あそこの店長、いつ自立できるんだろう?」


 ヤオ子の手には大き目のケーキの箱が二つ握られている。


 「帰り際に医療部隊の人には差し入れしたからOKでしょ。
  あたしの掴んだ情報だと、この通りをヤマト先生とイビキさんが──。
  ・
  ・
  あ! 発見!」


 ヤオ子は街道を歩くヤマトとイビキに駆け寄り、元気よく声を掛ける。


 「こんにちは!」


 ヤオ子の声に二人が振り向く。


 「どうしたんだい?」

 「えへへ……。
  ちょっとね。
  ・
  ・
  何ですか? イビキさん?
  あからさまに嫌そうな顔して」

 「これが普段の顔だ」

 「そうですか」

 (このガキ、何しに来たんだ?)


 ヤオ子に関わった下忍の試験以来、イビキは未だにヤオ子に苦手意識を持っていた。
 例え、ワンクッション挟んでヤオ子の違う一面を垣間見たとしても、それは簡単に拭い去れるもではなかった。

 そのイビキの胸中など知ることなく、ヤオ子は笑顔で持っていた白い箱を差し出す。


 「はい。
  こっちがヤマト先生。
  こっちがイビキさん」


 ヤオ子に手持ちのついた白い箱を手渡されると二人は疑問符を浮かべ、ヤマトがヤオ子に訊ねる。


 「何これ?」

 「あたしの気持ちです。
  この前、ありがとうございました」


 ヤオ子がヤマトとイビキに微笑みながら頭に手を当てる。


 「お礼は、前にも言ったんですけど、形でも渡したいな……なんて思って。
  任務で行ってるケーキ屋さんの店長に頼んで、職場と材料を借りて作りました」

 「手作りケーキか」

 「オレは、こういったものは……」


 イビキは複雑な顔をしていた。


 「はは……。
  イビキさんは、そういうの食べなさそうですもんね。
  でも、そうじゃないかと工夫しました。
  イビキさんの箱には『苦い』と『甘い』が両端についてるでしょ?」

 「ああ」

 「チョコレートケーキの甘味が違うんです。
  真ん中が普通。
  大人の男の人でも大丈夫だと思いますよ」

 「気を遣って貰って悪いな……ありがとう」


 イビキの微笑む顔を見て、ヤオ子は顎の下に指を当てる。


 「へ~。
  イビキさんって、そうやって笑うんですね」

 「まあな。
  それにしても……こんなに食べれんぞ?」

 「部隊の皆さんで食べてください」

 「ああ。
  ありがたく頂くよ」


 ヤマトも複雑な顔をして、ヤオ子に訊ねる。


 「ヤオ子……。
  ボクは、この量をどうしろと?」

 「カカシさんとか試験の時のお仲間が居るでしょ?
  種類が全部違うから、皆さんで、どうぞ」

 「そうするかな?。
  そうなるとアンコさんに頼まれてた団子は、どうしよう?」


 ヤオ子はヤマトに指を立てる。


 「あたしの勘ですけどね。
  買った方がいいですよ」

 「どうして?」

 「『団子は、別腹』って言って文句言います」

 「…………」

 「ヤオ子に従おうかな」


 そんな会話をして、三人は笑いあった。
 ヤオ子は振り返りながら手を上げる。


 「じゃあ、これで」

 「「ありがとう」」

 「どういたしまして。
  ・
  ・
  あ! ヤマト先生!」

 「うん?」

 「年上もいいもんですね!」


 ヤオ子は笑いながら大きな置き土産を残して去って行った。


 「何だ? 今のは?」


 首を傾げるイビキの横で、ヤマトは額を手で覆う。


 「しまった……。
  捕食リストにエントリー権が立った……」


 ヤマトがイビキに捕食リストの話をすると、イビキは苦笑いを浮かべた。
 しかし、ヤオ子にいつも通りの明るさが戻って来たので、ヤマトとイビキに悪い気はしなかった。


 …


 追伸1:
 その後、尋問部隊でチョコレートケーキのビター風味が流行った。

 追伸2:
 やはり、アンコは『団子は、別腹』と言い切った。
 そして、ヤオ子の通うケーキ屋に上忍の常連さんが少しだけ増えた。


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