== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
日暮れ時の川沿いの道……。
時刻は、サスケと初めて会った日とほぼ同じ。
ヤオ子は腕を組み、仁王立ちでサスケを待つ。
「フッフッフッ……。
サスケさん、今日があなたの命日だ」
ヤオ子のテンションは、昨日から無駄に高いままだった。
第3話 ヤオ子の成果発表
川沿いの道で、ヤオ子がサスケを待って三十分経った頃……。
サスケはポケットに手を突っ込んで、歩きながら姿を現わした。
そのサスケをヤオ子が指差す。
「遅い!
レディを待たせるとはモラルに欠けてます!」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「昨日、約束を堂々とすっぽかしたお前が言うな!」
「ううう……。
それはそうなんですけどね……」
ヤオ子は蹲りながら指を立てる。
「あと……待ち合わせするなら、時間決めましょうよ」
「それもそうだな。
オレの予定に合わせろ」
「命令形?」
「オレは任務もこなしているんだ」
(そんな当然みたいな顔されても……。
そもそも、サスケさんの我が侭に
あたしが付き合ってるんじゃないですか)
ヤオ子の反論のある顔を無視して、サスケは続ける。
「ちゃんと読んで来たか?」
「バッチリです。
しっかりと読みましたよ」
ヤオ子のチョキを見て、サスケは頷く。
「よし。
じゃあ、チャクラとは?」
「『身体エネルギー』と『精神エネルギー』を練り上げたものです」
「よく出来た」
「えへへ……。
いや~、それほどでも」
ヤオ子はクネクネと悶えて喜んでいる。
「じゃあ、チャクラの練り方を教えてやる」
「……は? 教えてやる?」
ヤオ子は呆然としている。
「どうしたんだ?
チャクラの練り方だ」
「いや……。
教科書見てチャクラを練るんですよね?」
サスケは腰の左に手をあて、溜息を吐く。
「何を言っているんだ。
あんな教科書を読んで分かるわけないだろう」
「へ?
・
・
で、でも! サスケさんは、教科書読んでチャクラを練れって!」
「それは、お前が不真面目だから、
そうしないと読まないと思って言ったまでだ」
「が……!
じゃあ、家焼くって言うのは!?」
「教科書を読んだ努力を見せなかった時だけだ」
「……家焼くのは冗談じゃないんだ」
ヤオ子が項垂れる。
「大体、教科書の説明を読んで、
チャクラが何かって分かったのか?」
「正直、全然……。
精神エネルギーなんて言われても、得体がしれないだけでした」
「当然だ。
普通は教師の口から感覚などを説明されて、
手とり足とりで教えて貰うんだ」
ヤオ子は地団太を踏む
「それ早く言ってくださいよ!
凄い大変だったんですよ!」
(大変だっただと?)
サスケは少し驚いた顔でヤオ子に訊ねる。
「お前、チャクラを練れたのか?」
「ええ、まあ。
独自解釈で何とか」
(コイツ、意外と優秀なんじゃないか?)
実は、サスケの解釈は半分正しい。
ヤオ子は八歳でありながら、イチャイチャパラダイスを読むことが出来る。
自分の欲望のために漢字を覚え、意味を理解して十八禁のエロ小説を楽しんでいる。
頭のスペックは高いと言っていい。
しかし、そのスペックの半分以上は、頭のカワイソウな子で支配されている。
サスケが軽く右腕を挙げ掌を返す。
「やってみてくれないか?」
「いいですよ。
きっと、サスケさんは『ぎゃふん』と言います。
何故なら、あたしは変化の術を昨日の晩に成功させたからです」
(本当かよ……。
もう、アカデミーのカリキュラムの後半じゃないか)
ヤオ子は『ふっふっふっ』と不気味な笑い声をあげると、チャクラを練る体勢に入る。
腰を落とし、人差し指と中指を立てて両手を組む。
「猛れ! あたしの妄想力(精神力)!」
ヤオ子は、( )内の言葉と叫ぶ言葉をデフォルトで間違える。
そして、その言葉に腕組みをして見ていたサスケが盛大に吹く。
妄想力を身体エネルギーと混ぜ合わせ、ヤオ子がガンガンとチャクラを練っていく。
(何て禍々しいチャクラを練り込んでやがるんだ……)
ヤオ子のチャクラにサスケは嫌悪感を浮かべる中、ヤオ子はゆっくりと印を結び始めた。
(本当に印を結んでいる。
術の印も、ここまでは間違いない)
ヤオ子が目を見開く。
「変化!」
ヤオ子の体がボンッと煙に包まれた。
そして、晴れた煙から現れたのは……。
「うっふ~ん☆」
全裸のセクシーギャルだった。
「ナルトのおいろけの術じゃねーかっ!」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「ぎゃふん!」
サスケのグーにより、ヤオ子の変化の術が霧散して解けた。
「何するんですか!
うっかり、あたしが『ぎゃふん』って言っちゃったじゃないですか!」
「このウスラトンカチ!
何を考えてやがる!?」
「何って……。
サスケさんが見たいって言ったんじゃないですか!」
ヤオ子の襟首を持って、サスケが縦に振りまくる。
「お前って奴は……!
お前って奴は……!
お前って奴は───っ!」
「褒めてくれないんですか!?
こんなに頑張ったのに!」
「褒める気が失せた!」
「何で?」
「おいろけの術なんて使うからだ!」
「やだなぁ。
サスケさんだって、思春期男子の真っ只中でしょ?
本当は、こういうの好きなクセに♪」
襟首を捕まれてぶら下がったまま、ヤオ子は『このオマセさん』とサスケの胸にのの字を指で書く。
瞬間、サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「オレの前で、二度とするな!」
「……はい」
ヤオ子は、ぶっ飛ばされて痙攣しながら返事を返した。
「ところで、サスケさん」
(復活早いな……)
「何だ?」
「何で、変化の術に『おいろけの術』なんて、別名称があるんですか?」
「お前と同じウスラトンカチが、もう一人居るんだ。
そいつが名付けたんだ」
「まさか、あたし以上の天才が居たなんて……」
「変態な……」
「これは強敵と書いて親友と読む、ライバル的な予感がしますね」
「お前、ナルトと絶対接触するな」
ヤオ子は笑って誤魔化している。
そのヤオ子の成果を純粋に喜べず、サスケは溜息を吐く。
「変化の術は、ちゃんと機能しているんだろうな?」
「どういうことですか?」
「あんなもんにしか変化出来ないってことはないんだろう?」
(ナルトみたいに……)
「ええ、バッチリです。
とりあえず、昨日の夜は変化の術で
色んなものに変化して遊びましたから」
「遊ぶな……」
「憧れのセクシーギャルに化けて……」
「オイ」
「憧れのセクシーナースに化けて……」
「オイ!」
「憧れのセクシー教師に化けて……」
「…………」
「憧れのセ──」
サスケのグーが、ヤオ子に炸裂する。
「全部、あんなもんじゃねーかっ!」
「そして、最後にサスケさんに変化しました」
「…………」
「今までの例の後にオレの名前を入れられると、
穢れた住人の一人にされた気分だ……。」
サスケは額を手で押さえ項垂れる。
「どうやら、別のことでサスケさんに
『ぎゃふん』と言わせられたようです」
「もう、今日は帰る……」
「そうですか?」
項垂れて帰るサスケに対して、ヤオ子は最近耳にしたお気に入りの言葉を叫ぶ。
「しゃーんなろー!」
その言葉を聞いて、更にサスケの気分は悪くなった。