== 番外編・実験ネタ・混ぜるな危険 第2話 ==
学園都市の学舎の園の外の学生寮の208号室……。
黒子は、自分の椅子に座り、ヤオ子は、床に正座している。
ヤオ子が指を立てる。
「すいません。
ここは、何処ですかね?
あたしは、男子の独身寮の前に居たはずなんですけど?」
「何故、そのようなところに?」
「ちょうど、資源ごみの日でしたので、
究極のエロ本を求めて捨てられたエロ本を漁っていました」
「変態ですの……」
「そうしたら、時空間忍術の空間から先ほどの本が……」
「それで?」
「穴が閉じようとして……。
身の危険を感じて穴に飛び込みました」
黒子は、額に手を置く。
「その時、手を放すという選択肢はありませんでしたの?」
「ありませんでしたね。
逆に立場が逆でしたら、どうですか?」
「逆? つまり、私が引っ張られる方の立場?
・
・
確かに飛び込むしかありませんわね」
「でしょ」
そんなわけない。
ヤオ子は、溜息混じりに腕を組む。
「しかし、困りましたね。
あれが時空間忍術の穴なら、何処かに飛んだことになります。
しかも、術を使わずに勝手に開いたようですから、
術を解するだけでは戻れません」
「時空間忍術?
一体、何の能力ですの?」
「はて? 時空間忍術を知らないんですか?」
「ええ……。
それより、気になっているのが忍術という言葉なのですが」
「忍術を知らない?
しかし、窓から見える風景を見る限り、
都会である木の葉の里よりも都会のように見えるんですけどね?
忍術を知らないような田舎のようには……」
「ここは学園都市。
科学の街ですわ。
里などという言い方の方が田舎者の気がしますけど?」
「う~ん……」
ヤオ子は、眉間に皺を寄せる。
「住所とか分かります?
ここは、火の国ですか?」
「火の国? 日本ですけど?」
「……日本」
(昔に読んだ漫画の中にそんな言葉が……。
いや、待て……)
ヤオ子は、更に記憶を掘り起こす。
(日本という国が存在するなら、
あたしがゴミ捨て場から拾って来た漫画とエロ本の出所……)
ヤオ子は、黒子に質問する。
「ここって、漫画とかエロ本売ってます?」
「売ってますわよ」
「そうですか……。
少し納得がいきました」
「と、言いますと?」
「先ほど、言っていた穴なんですけど、
時々、開いていたんですよね。
その穴から、漫画やエロ本を回収していたんですよ。
そして、その繋がり先が日本だったと記憶しています」
「なるほど……。
そこまでは理解しました。
しかし、信用出来ませんわね」
「信用って、何の?」
「一つ目、穴が開いたということ。
二つ目、別の国に繋がっていたということ。
三つ目、忍術という言葉」
「あたしが別の国の人間であることを証明すれば、
一気に解決出来そうですね」
「一気に解決します?」
「はい。
先ほどから気に掛けている忍術を使って見せれば、
あたしのことを信用して貰えるのではないでしょうか?」
「そうですわね」
「え~と……。
漫画の中では、普通の日本人は火を吹けないはずです」
「それは、ちょっと……」
「何でですか?」
「この学園都市は、総人口230万人で8割が学生。
そして、学生のほぼ全員がなんらかの超能力に目覚めています。
その内の6割弱は無能力者(レベル0)ですの。
だから、火を使えるところを見せられても証明になりませんわ」
ヤオ子は、がっくりと手を突いた。
「どうしました?」
「230万……。
あたし達は、10万で戦争って言ってたのに……。
ほとんどが能力者……。
戦闘員が10倍以上……。
・
・
あたしの世界が壊れていく……」
「お話を続けていただけませんか?」
「すいません……。
何をすれば忍術の証明になりますか?」
「私に聞くのですか……」
「そもそも超能力って、何ですか?
それの定義が分からないと、
あたしの忍術の違いを比較出来ません」
「一理ありますわね。
簡単に言うと……見せた方が早そうですわね」
黒子は、右手の『お姉さまのHimitsu♪』を左手にテレポートさせる。
「分かりまして?」
「時空間忍術……。
マダラさんと同じ?」
「これは超能力です」
「一応、理解しました。
見せて貰って、明らかに忍術と違います」
「そうですの?」
「はい。
黒子さんは、チャクラを練っていませんでした」
「チャクラ?」
「はい。
あたしの里では忍術を使う時、チャクラを練る必要があるんです。
簡単に言うと術を使うエネルギーです。
そして、それに必要なのが体力と精神力なんです。
体力と精神力を練って、チャクラを作るんです」
「では、今度は、八百屋の……さん?」
「ヤオ子でいいです」
「そうですか?
では、ヤオ子さんが忍術を見せてくださいまし」
「分かりました。
人差し指に注目してください」
ヤオ子が人差し指を差し出す。
チャクラの性質を火に変えると小さな炎が灯る。
「パイロキネシス……」
「あたし達は、これを火遁の性質変化と言います。
チャクラを性質変化させたんです。
この火が灯っている時、チャクラが流れています。
エネルギーを生成していると言ってもいいかもしれません」
「興味深いですわね」
(それなりの研究施設に渡した方がいいのかもしれませんわね……)
黒子の学園都市での役割など知らずに、ヤオ子は、黒子に話し掛ける。
「それで、信じて貰えました?」
「え? ええ、まあ」
「で、どうします?」
「そうですわねぇ……」
「どこぞの施設に連行なんて嫌ですよ?
あたしから見たら、この街は未来都市に見えて怖いんです。
捕まったら、改造手術とかされそうで」
(その可能性も有り得ますわね……)
「とはいえ、怪しい人物を匿う訳にもいきませんの」
「230万も居るんでしょ?
一人ぐらい怪しいのが居ても問題ないですよ。
それに、もう匿ってる人も居るんじゃないですか?」
「居ませんわよ」
「じゃあ、黒子さんが原因かもしれないじゃないですか?」
「じゃあ、って……。
何故、私が原因なんですの?」
「さっきの能力です。
何かを転送するんでしょ?
あたしがここに転送されたということは、
黒子さんの能力に原因があるかもしれないじゃないですか?」
「それは有り得ませんわね」
「何で、言い切れるんですか?」
「私の能力では知らないところから、物を持って来ることは出来ません。
また、学園都市では、個人の能力がデータバンクに登録されていますから、
私の能力が先ほど見せたものしかないことも証明出来ます」
「黒子さんの能力が進歩したとかは?」
「能力は、急に上昇しませんわ」
「原因不明ですか?」
「そうなりますわね。
さて、お話はここまでに致しましょう」
ヤオ子は、首を傾げる。
「貴女を然るべき所に連れて行きます」
「……どうしても?」
「どうしてもです」
ヤオ子は、溜息を吐くと立ち上がる。
そして、腰の道具入れと両足のホルスターを外して、黒子の机に置いた。
「大事なものです。
黒子さんを信頼する証拠に置いて行きます。
その然るべきというのが終わったら、取りに来ます」
「分かりましたわ」
黒子は、第177支部へと連絡を入れた。