== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
次の試験は、木ノ葉の演習場で行なわれる。
かつての死の森よりも広大な面積の森を使用するここで、試験官をするのは砂隠れの里のテマリだ。
「第二試験の試験官の砂隠れのテマリだ。
早速だが、試験の説明をさせて貰う」
そして、試験官の説明を聞く13チームの中で、既に1チームが思いっきりやる気をなくしていた。
第114話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・サバイバルレース編
試験の説明が終わると直ぐ、ヤオ子が文句を言う。
「何? あのルール?
まるっきり、あたし達を受からせる気ないじゃん?」
「まったくだ……」
「そんな気落ちすんなよ。
何とかなるって」
ヤオ子とサスケがナルトを睨みつける。
そして、ヤオ子がテマリを指差して、ナルトに怒鳴る。
「あのエロボディのドS教官の話を聞かなかったんですか!」
テマリの投石がヤオ子に炸裂した。
しかし、ヤオ子は無視する。
「あの人、ここからゴールまで約二十四時間掛かるって言ってて、それを順位のいい順でスタートさせてんですよ!
しかも、次のチームのスタートは一時間後!
あたし達は、十二時間後にスタート!
更に、上位六位までが合格!」
「そ、そんなこと言ってたな……」
「まだ言いますよ!
今の時点で諦めて棄権したチームが3チーム!
でも、その分、前倒しされないから、十二時間後のスタートは変わらない!
これがプレイなら大喜びですけど、あのドSは前倒しを許さないんですよ!」
テマリの投石が、ヤオ子に炸裂した。
しかし、ヤオ子は無視する。
サスケが溜息を吐きながら腰に手を当てる。
「とは言え、どうする?
十二時間──いや、六位までなら七時間か。
その差を埋めなければダメだ」
サスケが演習場の地図を広げると、ナルトが意見を言う。
「なあ。
もしかしたら、何とかなるんじゃないか?
確かトラップや敵の忍を想定した中忍が配置されてんだったよな?
先に行った連中がトラップとかを解除してるんだから、その分、楽に進めるはずだ」
「だが、逆にそいつらがトラップを仕掛ける可能性もある」
「そっか……」
ヤオ子が地図を見ながら、正ルートを指す。
「多分ですけど、正規のルートは、比較的トラップや配置された中忍の人が少ないんですよ。
だから、後から出発したチームは、
この蛇行した正規ルート以外の何処かをショートカットしなければいけないんです」
ヤオ子は地図の蛇行部分が近づく幾つかのポイントを指で差す。
「なるほどね。
じゃあ、ショートカットすればいいじゃん!」
「当然、そこにはトラップてんこ盛りでしょうけどね……」
「じゃあ、どうすんだ?」
「選択の余地はない……」
「「え?」」
サスケが地図を指で叩く。
「オレ達のハンデの時間が大き過ぎる。
ショートカットするところなんかない」
「と、言うと?」
サスケがスタートからゴールまで一直線で指をなぞる。
「真っ直ぐ進まないと逆転できない……」
「「マジで……」」
サスケが頷くと、ナルトとヤオ子が溜息を吐く。
「仕方ありませんね」
「……だな」
「あと十一時間ぐらいありますよ?」
「オレは寝る」
サスケは近くの木にもたれ掛かった。
ナルトが頭を掻く。
「オレも」
ナルトは木陰のある地面にバッグを枕にして横になる。
ヤオ子はテマリを見る。
「時間になったら、起こしてね」
ヤオ子は、その場で体育座りのような格好で眠り出した。
テマリが呆れる。
「この危機的状況に、なんて余裕のある奴等なんだ……」
半ば諦めもあるのかもしれない。
…
テマリが溜息を吐くと、仕方なくヤオ子を突く。
「……ん?」
「そろそろ時間だ」
「ああ……そっか」
ヤオ子がサスケとナルトを起こすが、全員が少し寝ぼけている。
「どうしましょうか?」
「あっちだっけ?」
「確かな」
「違う! あっちがゴールだ!」
サスケ達は、テマリに進路を修正して貰う。
「どうします?」
「う~ん……」
「時間的にも、かなりのスピードで走らないと追いつけないからな……」
「あ。
あたし、いいこと思いついた」
「じゃあ、ヤオ子に任す……」
「オレもそうする……」
(コイツら……。
やる気あるのか?)
テマリが合図を出す。
「時間だ!」
ヤオ子はチャクラを練り上げると、印を結ぶ。
更に血継限界で土遁の術の威力を底上げする。
「土遁・土流割!」
ヤオ子が両手を地面についてチャクラを流し込むと、試験場の地面が隆起し割れた。
思わず飛び退いたテマリの目には、数百メートル先まで破壊尽くされた森が写った。
「試験場壊して、この割れ目から一気にゴールすればよかったんですよ」
「「そうか」」
試験場を破壊して進む……。
最悪の発想だった……。
ヤオ子に注意を入れるはずのナルトとサスケの思考回路は寝起きで回復しておらず、試験官のテマリが注意をしようと駆け寄ろうとした時には、三人が動き出してしまっていた。
身体能力では及ばないテマリが三人に追いつけるわけもなく、無常にも遠くの方で試験場が壊れる音が響いていく。
「拙い!」
テマリは無線を使って、試験場の忍達に緊急回避の連絡を入れた。
…
かつて、木ノ葉の死の森よりも広大な面積を有する森の試験場があった。
今は土遁で破壊尽くされて、柔らかい土がそこら中に顔を出す畑のようになっている。
その畑に突き刺さる大木や倒木に紛れて、トラップも途中で配置された中忍も受験生も埋まっている。
ゴールで待っていた試験官のシカマルの額に青筋が浮かぶ。
「お前ら……何しやがった!!」
サスケとナルトがヤオ子を指差す。
「「ヤオ子がやった……」」
「だって~。
こうしないと試験に落ちちゃうんだもん」
「『だもん』じゃねー!
どんだけの怪我人が出たと思ってんだ!」
「医療忍術があるんだからいいじゃん。
死ななきゃ治る」
「そういう問題じゃねーんだよ!
しかも、アレを見ろ!」
試験場は破壊尽くされ、ここが第四次忍界大戦のあった場所じゃないかと思わせる変わりようだった。
「ルールに試験場を壊すなって載ってなかった……」
「屁理屈を捏ねるな!」
「うっさいですね……。
もういいですよ。
・
・
あたし達は、合格? 不合格?」
シカマルは、イラつきながら額を押さえる。
「コイツらを絶対に試験を受けさせちゃいけねぇ……。
・
・
だけど、ルール上は合格だ……」
「やったってばよ!」
「あたしのお陰ですね」
「今になって罪悪感が出て来た……」
項垂れるシカマルに、ナルトがシカマル声を掛ける。
「また振り落としの試験するのか?」
「しねーよ……。
今回は、少し多めに中忍を輩出する予定だから、三日後の本戦だけだ」
「じゃあ、これで終わりか?」
「ああ。
帰っていいぞ」
「ん?
綱手のばーちゃんから、面倒臭い話を聞かなくていいのか?」
「チームごとにゴールする時間がバラバラだから、今回は、オレが連絡を伝えて終わりだ」
「そっか。
じゃあな」
ナルト達は踵を返し、帰ろうとする。
しかし、シカマルがヤオ子の肩を掴んだ。
「お前は、残れ」
「へ?
何で?」
「壊した試験場を元に戻すんだよ!」
「え~~~っ!」
「口答えするな!
全部、掘り起こして森も作っていけ!」
「いや、あたし木遁使えないんで……」
こうして、サスケ達の第二試験は終わった。
そして、後始末にヤマトが借り出されたのは言うまでもない。