== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
六道仙人の御伽噺とは違う結末……。
うちはマダラが語った最後とは反対に、ナルトとサスケは背を向けずに背を預けあった。
この二人が第四次忍界大戦を終わらせたのは誰もが知っている。
動き出した手を携え合う道。
第四次忍界大戦後の中忍試験は、各国の交流を深める場にもなった。
そして、世界を救った英雄二人が下忍であったことも世界にバレた……。
第113話 ヤオ子とサスケとナルトの中忍試験・筆記試験編
木の葉のアカデミーの一室……。
ここ中忍試験の試験会場では、第四次忍界大戦を終わりに導いた二人と変態一人に視線が集中していた。
サスケが項垂れる。
「まるっきり好奇の目で見られている……」
ナルトは笑いながら答えを返す。
「仕方ないだろ……。
今や、オレ達有名人だしよ。
・
・
オレ、さっきサイン頼まれちゃった♪」
その後ろで、少し伸びた髪を束ねたヤオ子が声を掛ける。
「あたしは見られると興奮するタイプです」
サスケは溜息を吐く。
(人選間違えたんじゃねーか?)
多分、間違えている。
属性で分けるなら、ナルトとヤオ子は間違いなく同じボケに分類される。
せめて、中立な立場か同じツッコミの人間を仲間に引き入れて、数で対等以上にしておくべきだった。
そんなサスケが後悔する中、アカデミーの教室を利用した試験会場に森乃イビキが現れた。
「前、受けた時と変わってねーってばよ」
「そうだな」
「お二人は、二回目ですもんね」
受験生が席に着くと、イビキの簡単な自己紹介が始まる。
そして、その後に発表される試験課題は最悪を告げるものだった。
「では、筆記試験を始める。
筆記試験は、三人の合計点で順位のいいチームから順に、次の試験に反映される。
当然、落第点もある」
ナルトが余裕で話す。
「へ~。
筆記試験か。
変わってねーな。
芸がないってばよ」
しかし、筆記試験と聞いたサスケの顔は険しい。
サスケはナルトの襟首を掴んだ。
「お前、あれから少しは、頭の方も鍛えてあるんだろうな?」
ナルトは目を逸らす。
「バ、バッチリだってばよ……」
「目を見て話せ……」
サスケとナルトのやり取りを見て、ヤオ子は首を傾げる。
「どうしたの?」
「コイツは、筆記試験が最大の弱点なんだよ!」
「そうなんだ。
でも、合計点でしょ?
大丈夫じゃないの?」
サスケは手を緩める。
「……そうだな。
前回のことを考えれば、ただの筆記試験ということはない。
何か別の要素が隠されているはずだ」
森乃イビキが最後の注意をする。
「では、各自個室で試験を受けて貰う」
「「「が……」」」
カンニング不可、完全な筆記試験だった。
…
筆記試験を終了してから、三十分……。
答案の採点をする者を多く増やし、採点にかける時間を短縮して発表が行なわれる。
アカデミーの廊下に張り出される採点表。
その順位結果を見て、サスケがヤオ子の点数に呆れる。
「お前、どうすればこんな点数になるんだ?」
「満点。
一位です」
ヤオ子はチョキをサスケに向けた。
「おかしいってばよ……。
二位が七十六点だから、絶対に解けない問題があったはずなのに……」
「これもサスケさんのお陰です」
「オレが?
何かしたか?」
「何を言ってるんですか。
サスケさんが読ませたんじゃないですか」
「読ませた?」
「そう。
昔、大量に本を持って来たでしょ?」
「……あれ、本当に読んだのか?」
「?」
冗談半分で読ませた本だったが、ヤオ子は全部読んだらしい。
サスケは誤魔化すために、自分の点数を読み上げる。
「オレは七十点だから、順位的には六位だな」
「じゃあ、オレは?」
ナルトの名前を探す。
三人は張り出された上から下まで目を通す。
「…………」
見つからない。
「ありませんね?」
「張り忘れか?」
ナルトの試験結果が見つからず、途方に暮れていると、廊下を歩くイビキをヤオ子が見つけた。
「イビキさーん!」
声を上げながら手を振るヤオ子に、イビキが気付いた。
「ナルトさんの試験結果がないんですけど」
「張り忘れか?」
あっけらかんとしているナルトに、イビキの顔が引く付いている。
「どうしたの?」
ヤオ子の問い掛けに、イビキは無言で採点表の欄外を示す。
『※一名名前なし … 0点』
サスケとナルトとヤオ子が石になった。
…
サスケとヤオ子がナルトを問い詰める。
「何をしてんだ!
このウスラトンカチ!」
「そうですよ!
試験受ける前から、落第じゃないですか!」
「違うって!
オレは、ちゃんと名前書いたんだってばよ!
・
・
ホラ!
問題に答えの写しも書いてあるだろ!」
ナルトは試験の問題用紙を見せ、サスケとヤオ子が問題用紙を見る。
「これ見たって名前書いたか書いてねーかなんて、分かんねーよ!
・
・
しかも、ほとんど間違ってるし……」
イビキが手に持っていた書類からナルトの解答用紙を取り出すと、サスケ達に向けて見せる。
そして、サスケとナルトとヤオ子の視線が一点に注がれる。
「ホラ!
ここ!
ちゃんと名前を書いてある!」
「「違う!」」
「へ?」
「それはサービス問題です!」
「名前のところは空白じゃねーか!」
「え?」
『名前:____________
第一問:
第四次忍界大戦において活躍した木ノ葉の仙術を使う忍を答えよ。
答え:うずまきナルト 』
「引っ掛けか!」
「「違う!」」
サスケ達は、ナルトのせいで落第の危機に直面していた。
…
ヤオ子がグループごとの順位を確認する。
「拙いですよ!
これ落第点喰らったんじゃないですか!?」
「兎に角、探せ!
・
・
あった!」
『合格:13チーム中 … 13位 うちはサスケ・うずまきナルト・八百屋のヤオ子』
「「最下位だ……」」
「よかったってばよ……」
ヤオ子がキレる。
「よくないですよ!
何で、あたしは一位の成績取ったのに、最下位のチームに居るんですか!」
「そうだ!
それに次の試験に順位が関係するって、試験官が言っていただろう!」
「う……」
ヤオ子は、バリバリと頭を掻く。
「ナルトさんと一緒のチームになるんじゃなかった!
ナルトさんが居なければ、余裕で一位通過なのに!
しかも、ナルトさんは勝手に自滅して、
本戦にも出れないから競争率が下がったのに~~~っ!」
「ヤオ子……。
姑息だってばよ……」
「こんな体動かすしか能がない忍者が、中忍になるなんてあっていいの!?
これでナルトさんが中忍になって、あたしが落ちたら……ナルトさんを殺す!」
「物騒だな……」
アカデミーの一角で珍事が起きている。
それをイビキは笑って見ている。
ナルトかヤオ子……どっちか居れば、荒れることは分かっていた。
それが一緒のチームに組み込まれれば、当然のことだった。