== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
大蛇丸のアジトの一つで、サスケとヤオ子の修行が開始される。
そして、数日が過ぎればヤオ子も小隊・鷹の立派な一員になっている。
アジトの中は……。
「ヤオ子だらけだな……」
香燐の呟き通り、ヤオ子の影分身達が忙しなく駆けずり回っていた。
第111話 ヤオ子とサスケの戦い・修行編
ヤオ子の雑務能力は極めて高い。
そのせいで、影分身は要所ごとに割り当てられている。
ヤオ子の影分身は、多大な種類で開発されたザクのようになっている。
家事専用ヤオ子。
掃除専用ヤオ子。
炊事専用ヤオ子。
洗濯専用ヤオ子。
鍛冶専用ヤオ子(水月の首切り包丁修復中)。
性質変化修行用ヤオ子。
術習得用ヤオ子。
etc...。
そして、本体は、更なるチャクラ量を捻出するため泥臭い模擬戦をサスケとしている。
香燐の隣で、水月も呆れてサスケとヤオ子の模擬戦を見ている。
「ボクさ……。
最近、分かったことがあるんだよね」
「何だ?」
「サスケとヤオ子って絶対に交わらない水と油だと思ってたんだけど、
一点だけ共通していると思うんだ」
「ウチも分かる……」
「あの二人さ。
修行に関して、妥協って言葉を知らないんだよね」
「ああ……」
「まず、あれが拙かったよね。
ヤオ子の方が、サスケよりもスタミナがあったこと……」
「サスケは負けず嫌いだからな」
「その次にサスケが千鳥を体に流せて、ヤオ子が雷遁の鎧を扱えないこと……」
「ヤオ子も負けず嫌いだからな」
「そのせいであれだよ……」
香燐と水月の前で、サスケとヤオ子の動きが段々と悪くなってくる。
そして、同時に力尽きるとバッタリと倒れた。
水月が腰を上げる。
「だから!
力尽きるまで張り合うなって、何回言えば分かるのさ!」
ヤオ子がサスケを睨む。
「サスケさんが止めないから……」
サスケがヤオ子を睨む。
「このウスラトンカチに負けるわけにはいかない……」
水月が額を押さえる。
「違うタイプの忍なんだから、少しは譲り合いなよ!」
「「……ここだけは譲れない」」
水月は溜息を吐くと、香燐に振り返る。
「香燐。
午前中の修行は終了。
手伝ってくれよ」
「はいはい……」
香燐は溜息を吐くと、サスケの方に向かう。
これだけは譲れないらしい。
午前中一杯、サスケとヤオ子が力尽きるまで模擬戦をするのが通例になって来ていた。
他のメンバーはサスケのスピードについていけず、水月、香燐、重吾で模擬戦をする。
また、二人のスタミナが上がる度に昼食は遅れていくので、他のメンバーは迷惑をしていたりする。
…
午後は、個人修行に入る。
基本、サスケが、水月と香燐と重吾をドS的に扱く。
ヤオ子は木ノ葉でサスケのドS的洗脳が完成しているので、サスケの指示で修行を繰り返している。
そして、この修行方法は、実は注文が多い。
カカシとヤマトから教えて貰った術に、更に精査をして各系統の術を選び抜いている。
「印を使わないで、自分の精神力で形態変化を作る……。
・
・
何で、こんな逆のことをやらされるんだろう……。
余計に大変なんだけど……」
ヤオ子は、サスケの考えが分からなかった。
「でも、サスケさんが無駄なことをするとは思えないし……。
それに……。
・
・
えへへ……。
あの男が初めて頭を下げて頼んだんですよ。
いや~。
気分がよかったです。
・
・
しかし、『お前の時間をくれ』って、プロポーズみたいな頼み方ですよね?
あはぁ~……♪」
ヤオ子は、そんな理由で意味が分からなくても修行をすることを了承したらしい。
そこは父親の血が禍しているのかもしれない。
「期待には応えないとね~♪」
ヤオ子の修行は、方向性も分からないまま進行していた。
…
大蛇丸のアジトは、広くて何でもある。
そして、その一角に鍛冶場もある。
そこでヤオ子の影分身は、日々、剣を作っている。
今、研磨し終わった大剣を水平に持ち、出来を確かめている。
「また駄作か……」
そこに水月が顔を出す。
「出来た?」
「まだです」
「まだ!?
一体、いつになったら、ボクの首切り包丁は直るのさ!」
「これを見てください」
ヤオ子が『凶』と彫られた大雑把な作りの大剣を渡す。
「いい出来じゃないか?」
「本当にそう思いますか?」
「え? うん」
「僅かに配分が狂っています。
もっと粘りのある製鉄が出来ない以上、首切り包丁を超えた首切り包丁は完成しない!」
「ヤオ子……。
何を目指しているのさ?」
「新たに生まれ変わる首切り包丁は、今の首切り包丁を超えなければならない!」
「誰も、そこまで望んでないよ……」
「それまで、その駄作で我慢してください。
重さは同じにしてあります」
「僅かな期間でここまで作ってくれて文句も言えないよ」
水月は、バスターソードを振る。
「これ洋剣?」
「FFⅦの主人公が初期装備で持っているものです」
「あ、そう……。
全然分かんないや」
「兎に角!
納得の行く一振りが仕上がってから、首切り包丁を修繕します!」
「……なるべく早くしてね」
「はい!
慌てず急いで正確に造ります!」
水月は、鍛冶場を後にする。
「あの子、頭おかしいよね?
一体、何を造る気なんだろう?」
鍛冶場からは、早速、鉄を打つ音が響く。
「この前のドラゴン殺しとかってのは、既に首切り包丁の切れ味超えてたし……。
まあ、首切り包丁は、長年整備されてないから仕方ないんだけど……。
・
・
ヤオ子って、本当に忍者なのかな?」
水月はバスターソードを担いで、重吾との模擬戦に向かうのであった。
…
大蛇丸のアジトの別の部屋……薬房。
ここではヤオ子の影分身が、大量に仕入れた薬草、薬品、治療道具を使って忍界大戦に必要になる道具を用意していた。
作っているのは、兵糧丸、増血丸、緊急医療パックである。
緊急医療パックは、カカシの所持していた使い込まれたものを参考にしている。
これを作れるだけ作っている。
そして、緊急医療パック作成の手伝いをさせられている香燐が、ヤオ子に訊ねる。
「なあ。
こんなに大量に薬品類を作って、どうするんだ?
戦場で売るのか?」
「そんなわけないでしょう。
無償で配るんですよ」
「意味あるのか?
医療忍者も山ほど投入されるんだろ?」
「そうですけど……。
医療忍者の方々が、暗部の人と同等の動きを出来るかは疑問です。
多分、戦争で戦地の奥まで──マダラさんのところまで辿り着ける医療忍者の数は少ないと思います。
そうなると、薬品が足りなくなると思うんです」
「そういうことか……。
でも、それをウチらが考えることか?
材料費だって自腹なんだろ?」
「はい。
でも、お金なんてあっても使わないし。
この戦争に負ければ、お金の価値もなくなるから、全部使っても構いませんよ」
「まあ、お前の生活力なら金銭の必要性はないからな。
・
・
それに月の眼計画だっけか?
無限月読とかっていうの。
あれを使われたら、確かに金なんて何の価値もないからな」
「はい。
・
・
でも、恐いのって、それだけじゃないですよね?」
「例えば?」
「あたし達、女の子には死活問題です」
「女?」
「マダラさんの幻術に掛かったままトイレに行きたくなったら、どうなるんだろう?」
「は?」
「あたし、絶対にイヤですよ!
人前で用をたすなんて!」
「……お前、そんなことを考えてたのか?」
「そうですよ!
考えてもみてくださいよ!
危険極まりない術ですよ!
幻術で地上の全ての人間をコントロールするんですよ?
人間の脳が、そんな膨大な個人個人の制御なんて出来ると思いますか!?」
「想像すると頭が破裂しそうだな……」
「絶対に使ったら最後、使用した人の脳の許容範囲を超えて制御できないですよ」
「どうなるってんだ?」
「まず、使って暫くして、マダラさんの脳が焼き切れる」
「自爆かよ……」
「そして、地上に残った人は幻術に掛かったまま動けないで死んでいく……。
正にVガンダムのエンジェル・ハイロゥ!」
「何だよ……それ?」
「ザンスカール帝国が建造した巨大サイコミュ兵器です。
強力なサイコウェーブで地球上の人間に闘争心を忘れさせることにより眠らせ、退化させるんです」
「よく分からん兵器だな?」
ヤオ子が指を立てる。
「いいですか?
生き物は腐るんです。
これを使うと人は眠ったまま腐るんです」
「怖っ!
何だそれ!?」
「怖いでしょ?
同じことが起きるんです」
「ダメだ!
阻止だ!
絶対に阻止だ!」
「やる気、出て来たでしょ?」
「俄然!」
半分以上はヤオ子の妄想であるが、香燐には、結構、効果があったらしい。
翌日からの修行への打ち込みようの変貌振りにサスケ達は首を傾げた。
…
こうして時間は流れていく……。
ヤオ子の能力はサスケに開発され、雑務能力では鍛冶能力が飛躍的に向上する。
そして、サスケの能力は新たに得た万華鏡写輪眼により、イタチの瞳力が加わることで更なるうちはの高みへと昇華される。
物語は、最後の戦いへと向かう。