== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
サスケが帰還して数日後……。
ヤオ子は項垂れている。
「ヤオ子です……。
幻術が夢にまで出て来て眠れません……。
・
・
ヤオ子です……。
サスケさんが大量の本を持って来ました……。
いくらあたしでも、三日で読破は出来ません……。
・
・
ヤオ子です……。
最近のサスケさんのドSっぷりに手が付けられません……。
任務の内容が納得いかないからって、
あたしに当たるのはやめてください………。
・
・
ヤオ子です……。
ヤオ子です……。
ヤオ子です……」
ヤオ子は項垂れている。
第11話 ヤオ子の自主修行・必殺技編①
最近のヤオ子は、少しオーバーワークで修行をしている。
波の国から帰って来たサスケは、二日間ほどは気分が良さそうだった。
きっと、波の国で十分な成果を得て帰還したからだろう。
しかし、木ノ葉に帰って来て、任務をこなし始めるとどんどん不機嫌になっていった。
どうも波の国での経験以上の成果がない任務に苛立っているようだ。
そして……。
その分の成果を得ようと自主的な修行の方に力が入る。
「サスケさ~ん……。
もう無理~……。
チャクラが練れないから、幻術を解けな~い……」
「ヤオ子!
情けないぞ!」
「そりゃあ、この修行は相手が必ず必要ですから、
あたしの存在が有用なのは分かりますよ。
でも、あたしはサスケさんほど体力ないから、
身体エネルギーが底ついちゃうんですよ。
精神エネルギーは妄想力を使うから有り余ってんですけど……」
「チッ!」
サスケが舌打ちする横で、ヤオ子は仰向けで息を切らしている。
(それにしても……。
お昼から、ぶっ続けですよ?
この人、どんな体力してんの?)
日が沈み夕闇に染まりだした森の修練場で、ヤオ子は空を眺める。
「サスケさん……」
「何だ?」
サスケが不機嫌に聞き返した。
「何で、そんなに強くなりたいんですか?
あたしから見れば、波の国から帰って来たサスケさんは、
凄い進歩を遂げて帰って来ましたよ?
それこそ、たった一ヵ月で」
「足りないんだ……。
まだ、これじゃあ足りないんだ!」
「…………」
(男の子って、これだから……。
もっと、別のことにも目を向けて欲しいもんです)
サスケは、俯いて何かを呟いている。
それに特に耳を傾けることなく、ヤオ子は立ち上がる。
「あたしは、足手まといみたいですね。
別々に修行しませんか?」
「何?」
「サスケさんに新しく与えられた課題も消化しなきゃいけないし、
何より、あたしの面倒なんて見てたら、サスケさんの修行の邪魔でしょ?」
「…………」
「ただし、幻術の修行だけは付き合います。
あれだけは、相手が必要なんで」
サスケが苦虫を潰したような顔で頷く。
彼自身もヤオ子に構う余裕のない自分の不甲斐なさに苛立ちを募らせているようだった。
少しだけ気を利かすつもりで、ヤオ子は話し掛ける。
「サスケさん。
こんな話を知っていますか?」
サスケがヤオ子を見る。
「煮詰まった時には、あえてその事象から離れるんです。
効果は頭を冷やすこととその事象に対する欲求を高めることです。
煮詰まっている時は、大抵が頭に血が上っている時です。
だから、少し離れて落ち着きます。
次にお預けをして、その事象に対する欲求を高めるんです。
そうすると冷静な頭で欲求を求めるんで、
無駄なことを省いて事象に集中出来るんですよ」
サスケは、一瞬固まると頬が緩む。
「まさか、ヤオ子如きに説教されるとはな」
「失礼ですね。
これは、あたしの読んだ漫画から得た貴重なアドバイスですよ?」
「ふ……。
漫画かよ」
「おかしいですかね?」
「いや……。
煮詰まっているのは確かだ。
明日からは、夕方だけにしよう」
「分かりました。
じゃあ、あたしはこれで」
片手をあげると、ヤオ子は走って去って行く。
「チャクラを練れないとか言ってる割に
意外と元気じゃねーか……。
・
・
アイツ、時々ガキとは思えない言葉を使うんだよな。
何処で覚えて来るんだ?」
主にイチャイチャ系のエロ小説からです。
そして、サスケの苛立ちが治まることはなかった。
実は、この会話は難癖をつけたヤオ子のサスケ回避だったりする……。
…
ヤオ子は家に帰ると夕飯を平らげ、お風呂に入り、弟に五十二の関節技を掛けてストレスを解消する。
最近、人間の道を踏み外し始めた姉に、弟は本当の恐怖を感じ始めていた。
その後は、自分の部屋に閉じ篭り、サスケの持って来た大量の本の消化を続ける。
「この量って、本当に洒落にならないんだけど……。
サスケさんは、全部読んだのかな?
何か……中には、ほとんど新品の本が混じってるんですよね。
まあ、イチャイチャパラダイスの表現に比べたら、
こっちの方が幾分か表現が軟らかいから読めるんですけど」
普通は、そんな事はない。
妄想を必要としない本は、ヤオ子に取ってワンランク下の本に格下げされているだけである。
「これ以外にもやることがあるんだよね。
・
・
木登りとか……。
あれ結局、凄い間違いだったし……。
やっぱり、何事においても例とか見本は大事だって、
あらためて感じましたね。
・
・
手裏剣術も練習しないと……。
練習サボると途端に命中率下がるからなぁ……。
きっと、筋力が落ちて狙いがずれるに違いないです。
・
・
そもそも体力ないから、チャクラを練る限界が来るし……。
そう考えるだけでも修行をサボれないですよね」
ヤオ子の頭から忍者になりたくないという考えが、最近、抜け落ち始めている。
ドSのサスケのせいで感覚が麻痺して来たのか?
ただ単に忘れているだけなのか?
何にせよ……ヤオ子は健康的な忍者ライフが体に馴染んで来ていた。
「そして、本日、サスケさんから解放されました!
あれは完璧な幼女の体力を無視したオーバーワークの原因ですからね。
よく考えれば、幼いあたしがドSに付き合って修行するなんて凄くない?
これで、あのことを実行できます!」
あのこと……。
それは……。
「あたしだけの必殺技を作る!」
夢見がちな子供の考えそうなことである。
「あたしの性質は火だから、
それに合った技を考えないとね♪」
ヤオ子はベッドで体勢を変える。
「明日は、久しぶりに秘密基地に行こうっと!」
一時間後、ヤオ子は読み掛けの本を読破すると眠りについた。
…
翌日、ヤオ子は木ノ葉の近くの森をうろついていた。
サスケの修行場とは違うここで、午前中は手裏剣術とチャクラコントロールの木登りをする。
そして、お昼時……。
「お腹減ったな。
持って来たおにぎりを秘密基地で食べよ」
ヤオ子は、森の奥へと入って行く。
辺りをキョロキョロと見回し、古い巨木の穴に手を突っ込む。
そして、中にある紐をグイッと引っ張ると巨木の幹に隙間が出来た。
「ふっ……。
手先の器用なあたしの手に掛かれば、この程度の細工など……」
ヤオ子は巨木の隙間に手を突っ込み、幹を上に押し上げて中に入ると入り口を閉める。
そして、巨木の中に作った階段を上がり窓のカーテンを開ける。
「全部、木ノ葉の里を回って回収して作ったんですよね~。
主にゴミ捨て場を……。
この窓なんて力作ですよ」
ヤオ子が自作の窓を撫でる。
そして、振り返る。
窓から差し込んだ光が巨木の秘密基地の中を照らし出す。
「えへへ……」
秘密基地の壁には色んな女性の写真の切抜きが張り巡らされている。
そして、夥しい数の本の山。
6:4=漫画:エロ本である。
カーテンをしてあったのは、何気に本の日焼け防止である。
「あたしの宝物♪」
貧乏な家のヤオ子は、新品を買うことなど出来ない。
全て木ノ葉の里を回って回収した。
木ノ葉の里にゴミが少ないのは、ヤオ子の成果も大きい。
何気にエコ。
無駄なエロ。
「さて、どんな必殺技にしようかな?」
ヤオ子は漫画を読み始める。
結局のところ、開発するのではなくパクるのだった。