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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   37話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:a11fdd2d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/07 23:00
DQD   37話

第二試練の課題について、少し思うところがあって用紙を読み返してみた。
内容についてはやはり明確な指示があるのは『ルラムーン草の採取』で、そのために『ルラムーン草』のある場所が示された地図が渡された。
通常なら普通に取りに行けばいいのだろうが、第一試練の時のように簡単な方法があるのではないかと考えてしまう。
例えば店で売っているのを買えばいい、などだ。ただそれでは採取と言えないのではないかとも思えた。

そういう訳もあり、翌日、その辺りの事で3人に聞きに言った。ルイーダ、グランマーズ、ヒュンケルだ。

ルイーダは『ルラムーン草』のことは知っているが、そもそもそれ単体で市場に出回るような品ではなく、普通の道具屋にはまず置いていないだろうと言われた。
街中を探せば売っている店もあるだろうが、そこに行っても直ぐに売ってもらえるのか分からない。
大抵その様な店は一見さんお断りで、誰かの紹介がないと売ってくれない事が多いからだ、との事だった。

グランマーズには、競技会関係については答えられないと言われた。
トルネコ商会とは古い付き合いであり、この競技会についてのことは一切占いはしないとの約束事がされているらしい。当然参加者や試練の内容についても知っているので、トールが競技会の参加者である事も知っていた。
結局、『ルラムーン草』については教えてもらえなかったが、グランマーズ個人の助言として、『トルネコ商会が望む冒険者がどういうものかを考えて行動すればいい』と言われた。

ヒュンケルにはあっけなく「知らん」と言われた。
そもそもヒュンケルはトルネコ商会との関係は薄い。この街にいて冒険者をやっていたため多少の関係はあるが、ヒュンケル自身はトルネコ商会からの援助を受けることなく冒険者をやっていた。そのため競技会に参加した事はなく、深くは知らないらしい。
そして『ルラムーン草』についてだが、存在は知っているし採取もしたことはあるらしいが、それは貰った地図が指し示す場所にある『ルラムーン草』ではなく、他の大陸にある『ルラムーン草』の群生地で採取したらしい。
仮に今その場所に行ったとしても、時期的にみて何もないだろうとの事だ。『ルラムーン草』は地域によって繁殖する時期が違うらしいのだ。
今の時期に『ルラムーン草』が繁殖しているのはこの島の群生地なのだろう。
ヒュンケルからは「無駄に考えすぎだ」とも言われた。普通何処かで買ってくることを採取してくるとは言わない。馬鹿みたいな猪突猛進も駄目だが、変に考えすぎるのも駄目だ。
ヒュンケルに言われて確かにそうだと思った。
第一試練がミスリードを誘うような書き方がされていたため、ついつい第二試練もそういうところがあるのかもと思ってしまったのだ。



とにかくまずは地図の場所に行ってみる事にした。トルネコ商会が競技会を開く目的は、援助をするに足る冒険者を見つけるためだ。
それならば裏などを考える暇があれば、与えられた『クエスト』を素早く、そして完全にクリアーする事の方が大事だろう。そうなれば、後は行動するのみだろう。

トールはそう判断すると、行動を開始する事にした。


****


街の外へ出るのは思えば初めてのことだった。
一年ほどこの街にいながらも、トールは今まで一度も外に出たことはなかった。
もっともこれはこの世界の者にとって不思議な事ではない。一生を生まれた街や村から出ないで過ごす事など良くある事なのだ。
ただ初めて外に出る理由が競技会というイベントのためだというのが、何となくおかしく感じた。

持って行くものは、街で買った一週間分の食料に水、寝る時に使う毛布などのほかに、この世界に来ると持ってきていた懐中電灯やナイフ、腕時計に方位磁石などだ。
こんな時に『大きな小袋』の有り難味が分かる。無限に持てるわけではないが、冒険者の必需品であることに間違いはない。というよりこれがなければ荷物の量は膨大になっていただろう。

後は旅のお供にスラきちをつれていく。
ドランはやはりおいていく事にした。初めは愚図って嫌がったドランだったが、スラきちが何とか説得してくれたようだった。
ビアンカ達もドランの面倒を見ることを承知してくれた。
トールの乗る自転車には驚いたようだったが、トールの持ち物と分かると何となく納得したようだった。

ビアンカ達の見送りを受けてトールは旅立った。

ゴッドサイドからは北、西、南東の方角には港町があり、街道はその港町に向かって延び、途中に宿場町も存在している。
地図に示された『ルラムーン草』の群生地へ行くには、北の街道をまず上っていくことになる。

とりあえず地図の通り進んでいく。
石で舗装された街道に沿って進んでいくだけでいい。ゴッドサイドと港を繋ぐ道のためしっかりとしたものだった。
街の外壁の周りは田畑があり、農家の人が作業している姿も見える。
ゲームだと街の外は直ぐモンスターが徘徊する危険地域のようだが、実際は場所によって違う。
森の中の村落などでは村の外へ行く事は実際危険らしいが、ゴッドサイドのような大きな街にはモンスターたちも滅多に近づかない。魔よけの結界を施したりしてモンスターが近づかないようにしているのだ。例え来たとしても、そのための警備兵がいるのだ。



自転車に乗るトールを珍しそうに見る農家の人を横目にトールは走り抜ける。
しばらくすると木の柵が見える。多分畑を囲んでいるのだろう。柵を越えるとその先には平原が広がっていた。
建物は何もなく、遠くに山々が連なって見える。
何故だか背中がゾクリとした。感じたのは開放感ではなく、孤独感だった。

この広い世界で一人、地図だけを頼りに目的地までたどり着けるのか。
元の世界ではこんなにも見渡せる場所に縁はなかった。舗装された道に立ち並ぶ家々、郊外には山などもあったが、それでも何かしらの目印はあった。
今ここに見えるのは石舗装の道と遠くの山だ。地図を見れば途中に川や特徴的な岩や木があるようだし、森もあるようだが本当なのか不安に感じてしまう。

「トール、ドウシタ?」

モンスター袋からスラきちが顔を出す。その声を聞いてトールは少し落ち着いた。まだ一人じゃないと思えたからだ。
それにもしもの時のための『キメラの翼』の事も思い出した。何かあればこれで帰ってくることも出来るのだ。

「何でもないよ。じゃあ出発だ」

「オウ」

トールは勢いよく自転車のペダルを漕ぎ出した。


****


ある程度街から離れると、周囲に広がる平原の中をただひたすらに走る事になる。
それでも街の方向は良く分かった。天へとそびえ立つ巨大な塔『天の塔』はこの島の何処からでも見える。それは方角を知る目印になっていた。
街道を通ってはいるのだが、時折『天の塔』の方角、方位磁石、地図など見比べる。トール自身は間違っていないつもりだが、何分初めてのことだ。距離的なことも分からない。注意しすぎると言う事はないだろう。

とりあえずの目的地としては川を目標としている。地図が確かなら、街道をこのまま進んでいけばそれなりに広い川へ行き着くはずだ。それによって目的地の場所までの距離や時間の目安がつくだろう。

世界地図から見たゴッドサイドの大きさは、この世界が元の世界の地球と同じぐらいの大きさと仮定すると、南北の長さは日本の本州ぐらいの大きさで、東西の幅は南北の距離の半分くらいの大きさだ。形はいびつなクローバーの形で中心あたりにゴッドサイドの街があると思ってもらっていい。

街中にいる時は気がつかなかったが、こうして実際に旅してみると、島とはいえゴッドサイドは広く感じる。いや実際に広いのだろう。
ゲームの中の世界はあくまでディフォルメされたため簡略化されたものなのだ。何と言ってもDQ3では日本は数マス分しか存在しないのだから。
トールは改めて世界の大きさを感じた。



その後、夕方頃に川の場所についた。街を出たのが昼ごろであり、途中休んだ時間を抜くとここまでに4時間ほどかかっている。腕時計で時間を確認したから間違いはないだろう。
昔とさほど漕いでいるスピードは変わらないと思うため、時速は20キロほどだと思う。多分今日だけで80キロは進んだだろう。地図が間違っていなければこれで行程の4分の1ほどの距離のはずだ。
何事もなければ思ったより早く終われるかもしれない、トールはそんなことを思った。

とりあえず今日はここまでにする。これから暗くなる中を進んでいく勇気はない。何も知らない場所なのだ。出来るだけ周りが分かる明るい時に動いた方がいいだろう。
川の側で水があるのも都合がいいと思う。余分に持ってきたが補給できる時には補給した方がいいだろう。

そうとなるとまずは火の確保だ。周りから枯れ木を集める。この時はスラきちも小さい身体ながら頑張って集めてきてくれる。
集め終えた木に火をつけるのには『まどうしの杖』を使う。メラの効果があるこの杖は、キャンプでも非常に役立つ。
ただこの時直接枯れ木に使うは駄目だ。木が直ぐに消し炭になってしまうからだ。まずは地面にメラを放ち、少し燃えているところに木をくべていけばいい。
これで火の確保は出来た。ヒャド系の効果のある道具もあれば水の心配もしなくていいのだが、それはないものねだりというものだろう。

後の用意としてはあたりに聖水を振り掛ける事だ。これでモンスターたちは寄りがたくなる。そして『トヘロス』の呪文をかける。これで絶対安全とは言い切れないが、随分とマシになっているはずだ。
自転車で移動中にもこの二つは併用しながら移動していた。自転車に乗りながら戦えるほど器用な真似は出来ないからだ。
問題はモンスターではない野生の動物だ。この辺りの区別は非常にあいまいだが、人を襲うものは総じてモンスターとしている。
まあ、野生の動物に聖水はほとんど効かないが『トヘロス』は効果がある。
モンスターは魔王や邪神がその存在に関係しているため、『聖水』の聖なる力によって近づいてこないが、野生の動物はそうではないため『聖水』はほとんどきかない。ただ『トヘロス』は術者自身の力、威圧感によって遠ざける効果があり、基本強者に逆らわないモンスターや野生の動物は近づかないのだ。

これで何とか準備は出来たと思い、トールは一息つく。
いつの間にかあたりは薄暗くなり、もう少しで真っ暗になるだろう。そうなれば焚き火だけが光源になるだろう。
腰を下ろして『大きな小袋』の中からパンや干し肉を取り出す。何か料理ができればいいとも思ったが、本格的に旅をするならともかく、今回は数日だけの事なのであまり気にしないことにしたのだ。

少し火で炙ってから食べる。後は小鍋で水を温め白湯にする。何か味をつけるわけではないが、ただ暖かいだけでもホッとするものだ。
スラきちにもパンや干し肉をあげた。

「ふう」

なぜか独りでにため息が出た。
見上げれば満天の星空。街中で見たときも思ったが、たった一人でこんな場所で見ているとあらためて凄いと思う。
ただそれ以上に圧倒的な孤独感を感じる。スラきちを連れてきて本当に良かったと思う。一人では圧倒的な星空と孤独感に押しつぶされていたのかもしれない。

とりあえず食事が済んだ以上後はもう寝るしかない。トールは毛布を取り出すとそれに包まった。何もする事がない以上、早く寝て早く起きて行動するしかないだろう。

「じゃあ、スラきち頼んだよ」

「ワカッタ」

それだけ言うと、トールは瞼を閉じた。
夜にスラきちに番を頼むのは決めていたことだ。これはスラきちも承知している。そのため昼間はモンスター袋の中で寝ていたのだから。それでも一匹で寝ずの番をさせるのは、罪悪感がある。ドランがいれば二匹で任せられたのになあと思うが、連れてこられない以上しょうがないだろう。

そんなことを考えているうちに、ふと脳裏に思い浮かんだ事があった。
『魔法の筒』を使えば良かったんじゃないかと。
今まで使う必要がなかったため、すっかりその存在を忘れていたが、『魔法の筒』さえあれば、ドランを連れてくる事も可能だった。
ほんの少し後悔したが、忘れていたものはしょうがない。今回の事が終わったら早速手に入れる事を決めた。

とりあえず、『魔法の筒』についてはこれ以上考えても仕方ない事だ。
今はこれからの旅のことを気にするべきだろう。

(明日中には途中の宿場町までは行きたいなあ)

そんなことを思いながらトールは眠りについた。


****


朝起きたときに感じたのは、身体の引きつるような痛み。身体を少し動かしただけでも感じる鈍痛。

(何だこれは)

はじめはそう思ったが、すぐにこの痛みが何なのか思い出した。
筋肉痛だ。
長時間自転車に乗ったせいか、普段使わない筋肉を使ったせいなのかは分からない。よく考えればいつもは宿の回復魔法の結界のおかげで体調に問題はなかった。だが昨日は何もせずにそのまま寝てしまった。思えば『ベホイミ』くらい使っておくべきだったのかもしれない。

とにかく思い出したのなら、直ぐに『ベホイミ』を自分に使う。身体の引きつった感じが何とか治まる。
全く違和感がないとはいえないが、普通に動くのには問題はないだろう。
軽めの朝食を取り、再び自転車に乗る。
地図を見るとゴッドサイドから川までと、川から宿場町までの距離を比べると川から宿場町までが少し長い。
ただ地図の縮尺が正確ならば、今日一日あれば宿場町までには着けるように思える。もっともその地図の縮尺がどれだけ正しいのかが分からない以上、過度に信じすぎるのも駄目だろう。
ただ目標として進むのはいいかもしれない。
トールは行動を開始した。



旅路は何事も進んだ。
時折馬車や旅人たちともすれ違うが、物珍しそうに見られるだけだ。
この世界には空飛ぶじゅうたんや、空飛ぶベッドなんてものも存在しているらしい。あるいはそれと同類のものと思われているのかもしれない。
ただ乗合馬車を利用する手もあったのかとも思ったが、自分の自由で行きたい場所にいけるわけでもないことを考えると、これでいいと思えた。

数度休憩を取りながら、夕暮れ前には宿場町に着いた。
ゴッドサイドと港をつなぐこの街はあまり大きくはない。それでも宿場町だけあって、宿屋は多く存在する。
そのうちの一つの宿に入る。一階が酒場兼食堂になっている宿屋だ。

「いらっしゃいませ。一泊10G、食事は別ですが、よろしいですか?」

カウンターで中年の男が入ってきたトールに気づき声をかけた。

「ああ、いいよ、一泊お願いする。ところで下の食堂は直ぐにでもいいのかい」

「軽いものなら直ぐにお出しできますが、ちゃんとしたものですと今は仕込み中なので無理ですね」

「どれぐらい?」

「あと一時間は欲しいですね」

「分かった。じゃあ後で利用させてもらうよ」

それだけ言ってから、カウンターに10Gを置いた。

その後案内されたのはベッドと机とイスの一式がある部屋だった。ダンカン亭で初めに使っていた部屋に似ていた。
自転車を部屋においてきてから、街に出る。夕食までの暇つぶしだ。
ゴッドサイド以外での初めての町だから、少しわくわくしているところがある。といっても何があるか分からないため、帯剣はしておく。

元々旅の中継点でしかないため観光できるようなところはない。それでも人がいるところというのは、なんとなくほっとしてしまう。
大通りの道具屋などを見て回る。武器の類はやはりゴッドサイドの方が充実しているが、道具屋の類はあまり変わりがない。やはり薬草などは旅の必需品となっているからだろう。特に買うようなものはなかったが、見知らぬ街を歩いているだけでも楽しいものだった。その内に日も暮れて、空に星が見えてきた頃、トールは宿屋に戻った。



カウンターで食事を食べながら、この辺りの事をウェイトレスやバーのマスターに聞いてみる。歳の若いトール一人旅をしている事に興味が出たのか、いろいろな事を話してくれた。
話によるとこの宿場町に泊まらず、そのまま出て行った冒険者が4組ほどいるらしい。余程の急ぎではない限り、宿泊するはずがそのまま通り過ぎていったため覚えているとのことだ。

後、北西の森は危険のため用がない限り近づかない方がいいとも言われた。
そもそもこのゴッドサイドの島の街道にはある種の魔よけの効果があり、モンスターが街道付近に近づくことは少ない。モンスターよりも山賊といった人間の方に注意しなければいけないほどだ。
これは実際に街道を通ってきたトールにも良く分かる。ここに来るまでモンスターの気配を一度も感じなかった事からも明らかだろう。
ただそうでない場所、特に森などには凶暴なモンスターが存在している。ここでは北西の森が特に危険なのだ。
それにこの時期は狼たちの繁殖期らしく気が立っているため、危険なのはモンスターだけではないため、尚更近づかない方がいいと念を押された。

だが地図で『ルラムーン草』があるのはその森の中で、ぽっかりとあいたところであるため、行かないでおくという選択肢はなかった。ただ何も知らずに行くよりは注意していけるため聞いてよかったと思えた。
話を聞いた後は、チップを渡すとトールはそのまま部屋に帰った。そして疲れていたのだろう。そのまま直ぐに眠りについた。


****


三日目。この日も宿での朝食を食べおわると、出発した。
時間に余裕はあると思うが、世の中何が起こるか分からない。なるべく早く終わらせた方がいいに決まっている。
今日は街道ばかりを進むわけには行かない。途中から街道を逸れて『ルラムーン草』の群生地へ向かわなければいけないのだ。

双子岩といわれる特徴的な二つの連なる岩が東に見えてきたところで、西に進路を変える。そのまま行けば森が見えてくるはずだ。その森の中に『ルラムーン草』が生えている場所があるはずなのだ。

街道から逸れてどのくらい経っただろう。草原から木々数が少しずつ増えていったころだった。
今まで迷宮探索で培ってきた感覚が何かいると告げてきた。
何処にいるかは分からない。ただ見られている。そんな感じがした。
だが、気のせいかもしれないという思いも微かにあった。緊張のための疲れが感覚を狂わせている可能性もある。
どうするか。
このまま止まって様子を見るか。それともスピードを上げて振り切る事を考えるか。
そう思ったとき、草むらを掻き分け木々の間から何かが襲い掛かってきた。
驚きはしたが予感はしていたため、固まらないで済んだ。ペダルを漕ぎスピードを上げ何とか回避する。だが問題はこれからだ。
振り向けば出てきたのは襲い掛かった一匹だけではない。他にも数匹が木々から出てきた。
『オーク』、槍を持った猪面の獣人だ。
逃げるという考えは直ぐに放棄した。追われるのを気にしてはこの先安心して進めないからだ。
ただ自転車に乗ったまま剣で戦えるほど器用ではない。それでも戦う方法は考えてあった。

「ライデイン」

振り向いたまま後ろに向かって呪文を放つ。魔法なら自転車に乗っていても使えるのだ。
放たれた雷撃が『オーク』たちを貫き身体が硬直する。
その隙に自転車から降りると剣を抜き『オーク』たちに斬りかかった。
『ライデイン』の雷撃ですでに虫の息に近かった『オーク』たちは、大した反撃も出来ずそのままトールに斬り倒された。



死んだ『オーク』を目の前にしてトールは何ともいえない表情をする。あの迷宮以外のモンスターは死んだからといって消えるわけではない。苦悶の表情をしたまま屍をさらしている。
本来冒険者は、こういったモンスターの死体から皮や牙などを取る事が生計を立てる手段の一つだが、トールはモンスターの解体の仕方は知らない。というより二足歩行のモンスターは解体する気になれないというのが本音だろう。
それでも何かの足しになるかも知れいと、オークの使っていた槍だけは手に入れておいた。

石のやり(攻+8):7個

とりあえずこの死体はこのまま放っておくしかない。その内他のモンスターが死体を食べて処理してくれるだろう。

それにしても死体を見ても何も感じず、普通の受け止めている自分はやはり変わってしまったのだと感じた。
このままここで死体を見ていてもしょうがない。
血の臭いは新たなモンスターを呼び寄せるかもしれないのだ。
トールは死体を一瞥した後自転車に乗ると、すぐにその場を走り去った。



その後何度かモンスター(オーク、おおくちばし、ビックホーンなど)に襲われる事になった。やはり街道から外れると、そこはモンスターたちの生息区域なのだ。

拾った宝 : 石のやり(攻+8)2個、かぜきりはね(3個)、やわらかウール(3個)

聖水や『トヘロス』も全く利いていないわけではないのだろう。ただここがそれだけの危険地帯なのだ。用がなければ入り込まないというのも分かる気がする。

森と言っても木々の間は自転車で通れるくらいはあるが、モンスターに襲われる可能性があると知れば周囲にも気を配るようになる。そうすると自然にスピードも落ちていくことになった。
予定よりも進みが遅い。この分だと森の中で一夜を過ごすことになりそうだった。

そしてその予感は当たった。
森の中ゆえに日の光が途切れるのは予想以上に早かったのだ。
そのため少し開けた場所を見つけると、早めに夜営の準備を始める事にした。小枝を集め、火を焚き周りには聖水を撒き、『トヘロス』を使う。やっていることは初日と同じだが、場所が場所だけに緊張感が違う。
だがそれでも、食事をして腹が膨れると、昼間の疲れのせいか、眠気が襲ってくる。
うつらうつらしては、周りの微かな音に目を覚ます。
スラきちを信頼していないわけではないが、それでも心配してしまうのは仕方がないだろう。
そんな事を何度か繰り返した後、爆発のような音にトールの眠気は一気に吹っ飛んだ。

剣を手に取り周りを見渡すと、木々の隙間から明かりが見えた。
距離にして200m以上はあるだろう。
火か?山火事?それとも戦闘?
ならばどうするべきか。このまま放っておくか。様子を見に行くか。ここから逃げるか。
この距離は遠いようで近い。人の足でも走れば一分はかからないだろう。
思考は一瞬、どうするか決める。
様子を見に行くことに決める。でなければ安心できない。
そうと決まれば、まず焚き火に砂をかけて火を消す。今更遅いかもしれないが、向こうからこちらの明かりを見つからないようにするためだ。
それから方位磁石で明かりの方角を確認してから、ゆっくりとなるべく足音を立てないようにして向かった。
スラきちは腰のモンスター袋に既に入っている。
ここからは何があるか分からない。モンスターとの戦闘を前提に用意は万全にしておく。

「ピオリム」「スクルト」

自分とスラきちで補助魔法を何度か重ねがけしておく。そして最後に『マホステ』の魔法をかけ、呪文対策をしておく。
これで防御面に対してはほぼ大丈夫のはずだ。
あとは息などの対策にいつでも『海波斬』で対抗できる心構えをしておく。

近づけば近づくほど、明かりの強さは増す。それに伴いパチパチと何かが弾ける音がする。そして熱気。
火だ。森が燃えているのだ。そして明らかな闘争音。
あの火の側で誰かが戦っているのだろう。

ざわめきそうになる心を落ち着かせる。まだ何が起こっているのかは正確に把握していない。
慎重に歩を進める。
そこでトールの目に入ってきたのは、倒れている白い狼とその側にいる子供の狼、その二匹を守るようにいる二人の少女、それを襲うように取り囲んでいるのは木のモンスターである『じんめんじゅ』や『ウドラー』、そして顔に羽がついた虫のモンスターである『しびれあげは』の群れだった。
二人の少女は懸命に戦っているようだったが、多勢に無勢。次々と集まってくるモンスターに何とか対応するだけで精一杯だった。
それを見て放っておけるほど冷血漢ではない。
トールは走り始めた。それに伴いまず先制の攻撃を放つ。

「ライデイン」

雷がモンスターに降り注ぐ。そして次は少女たちのところまでの道を切り開く。燃え盛る火は行く手を遮る障害でしかない。

「海波斬」

剣から放たれる衝撃波が火を裂き、モンスターも切り裂く。
開けた道をトールは『闘気法』で身体能力を向上し一気に駆け、少女たちの下にたどり着く。

「手伝おう」

トールは短く簡潔に言う。
二人の内でツインテールの少女は驚いたようだったが、すぐに現状を把握したのだろう。

「お願い」

こちらもまた簡潔に返事をした。

『ライデイン』の一撃もあり、モンスターたちの動きも緩慢なものになっていた。そうなればモンスターたちを片付けるのも楽なものだった。トールと少女たちの武器と呪文はモンスターの群れを葬っていった。



倒し終わったのはいいが問題はまだある。この火だ。このまま放っておけば燃え広がる事になるだろう。
ドランがいれば『こごえるいき』で何とかなったかもしれないと思ったが、二人の少女たちの内の一人が『ヒャダルコ』の呪文を使う事が出来たようで、周りに使う事で吹雪が巻き起こり何とか鎮火する事が出来た。

二人の少女は姉妹のように見えた。
一人はポニーテールでもう一人がツインテール、背はツインテールの方が少し高いが、何よりの違いはそのプロポーションだろう。ポニーテールの少女も悪くはないが、ツインテールの少女と比べると見劣りしてしまう。何と言ってもボン、キュッ、ボーンだ。ある意味マーニャに匹敵する。いや、バストだけなら勝っているかもしれない。歳はポニーテールの少女はトールよりも少し若く、ツインテールの少女がトールより少し年上のように見えた。

「ありがとうございます。助かりました」

話しかけてきたのはツインテールの少女だった。

「たまたま近くで夜営をしてたからね。偶然だけど何とかなってよかったよ。でそっちはどう?」

トールの言うそっちとは、倒れている白い狼の事だ。ポニーテールの少女が手当てをしていたようだった。

「子供のほうは無事だけど、親のほうは多分……」

「そうか……じゃあ、連れて帰ってお墓でも作るのかい」

「えっ?」

「君たちが飼ってたペットじゃないの?」

トールの言葉にツインテールの少女は首を横に振る。

「違うわ。たまたまあの子、バーバラがあの子狼見つけたのよ。初めは群れからはぐれたのかとも思ったんだけど、何処かに私たちを連れて行きたそうにしてたのよ。それでついて行ったらあの親狼が倒れていたの。普通なら治療なんてしないけど、あんまりにもその子狼が懸命そうに見えたから、助けようと思ったんだけどね。直後にあのモンスターたちが来たのよ。そうなればさすがに治療する余裕なんてなくなるわ。何とか抵抗しているところにあなたが来たのよ」

「そうか」

「あの狼は可哀想な事になったけど、こればっかりはねえ……」

「じゃあ、とりあえず埋めといた方がいいのかなあ」

「そうね。助けることは出来なかったけど、放っておいて死体を荒らされるのは気分がよくないわね」

二人は倒れた狼の方へ向かった。

「どう?バーバラ」

降り返ったポニーテール少女はゆっくりと首を横に振った。

「駄目よ。あのまま何事もなければ助けられたと思うけど」

「そう」

「あっ、そっちの人ってさっき助けてくれた人よね」

「そうよ。彼は……ごめんなさい。そういえば自己紹介もしていなかったわね。わたしはゼシカよ。助かったわ。ありかとう」

「わたしはバーバラです。助かりました」

「僕はトールだ。まあ、たまたま近くにいて気づいただけだからね。偶然でも……あれっ、偶然……じゃないのか?」

余程の事がなければ立ち入らない森の中で全くの他人が出会う。
即ちここにいる者は、この森に用があるからいるのだ。そして今この森に用がある者が誰なのか、トールには思い当たった。
よく考えれば、今この森にいる可能性があるのは、トールと同じ理由をもつ者しかいないだろう。

その答えにたどり着いたのは彼女たちもだった。

「……もしかして、競技会の……」

ゼシカの言葉はトールの考えが正しい事を示していた。
三人はなんとも微妙な顔で見つめ合うしかなかった。




――― ステータス ―――
トール  おとこ
レベル:31
職:盗賊
HP:293
MP:95
ちから:98+5=103
すばやさ:78+60+25=163(+10%)
みのまもり:41+5=46
きようさ:88+20+40=148(+10%)
みりょく:50
こうげき魔力:38
かいふく魔力:49+8
うん:81

・装備
頭:しっぷうのバンダナ(守+11、速+20、回魔+8)
身体上:銀のむねあて(守+25)
身体下:ブルージーンズ(守+11)
手:あおのグローブ(守+5、器+40)
足:ちんもくのブーツ(守+9、素+5)
アクセサリー: スカウトリング
武器:光の剣(攻+70)【錬金】
盾:ライトシールド(守+10)

こうげき力:211
しゅび力:122

言語スキル:4(会話2、読解2、筆記)【熟練度:31】
盗賊スキル:8(索敵能力UP、すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト、ピオリム、しのびあし、盗人斬り、ボミオス、すばやさ+50、とうぞくのはな)【熟練度:79】
剣スキル:9(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード、はやぶさ斬り、剣装備時攻撃力+20、会心率UP、魔神斬り)【熟練度:84】
素手スキル:2(未装備時攻撃力+10、あしばらい)【熟練度:85】
ゆうきスキル:6(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス、べホイミ、ライデイン、いなづま斬り、マホステ、消費MP4分の3)【熟練度:34】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)、スカウト、アバン流刀殺法(大地斬、海波斬、空裂斬、アバンストラッシュ(偽)、常時ちから+5、常時身の守り+5)

経験値:184263




――― 仲間のステータス ―――
スラきち  ?
レベル:24
種族:スライム
HP:27
MP:36+15
ちから:13
すばやさ:39
みのまもり:25
かしこさ:49
うん:51
こうげき魔力:9+15
かいふく魔力:9

装備: モンスター袋の中にいるためアクセサリーのみ:ソーサリーリング(攻魔+15、MP+15)

こうげき力:12
しゅび力:24

言語スキル:1(会話1)
スライムスキル:4(自動レベルアップ、ホイミ、スクルト、ルカナン、リレミト、メラミ)



ドラン  ?
レベル:16
種族:ドラゴンキッズ
HP:126
MP:0
ちから:87
すばやさ:71
みのまもり:53
かしこさ:36
うん:59
こうげき魔力:4
かいふく魔力:4

装備:
武器:魔よけのツメ(攻+43)【4000G】
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)

こうげき力:130
しゅび力:74

言語スキル:0
ドラゴンキッズスキル:5(自動レベルアップ、ひのいき、つめたいいき、あまいいき、おたけび、かえんのいき、こごえるいき、やけつくいき)



所持金:21725G (預かり所:280000G)

Gコイン:26570


・持ち物『大きな小袋』
道具:やくそう(20個)、上やくそう(11個)、特やくそう(17個)、毒けし草(31個)、上毒けし草(5個)、特毒けし草10個、まんげつそう(2個)、きつけそう(11個)、おもいでのすず(5個)、せいすい(16個)、いのちのいし(6個)、まほうのせいすい(35個)、けんじゃのせいすい(2個)ばんのうくすり(3個)、ゆめみの花(5個)、キメラの翼(1個)いのりのゆびわ(3個)、ドラゴンシールド(守+25)1個、毒針(攻+1)、プラチナソード(攻+51)、かくれみのふく(守+20、避+5%)1個、ちからのルビー(攻+9)1個、まよけの聖印(守+6、即死無効)、命の指輪(守+6、自動回復)
石のやり(攻+8)9個、かぜきりはね(3個)、やわらかウール(3個)

大事な道具:モンスター袋、従魔の輪、リリルーラの粉、オクルーラの秘石、自動地図、鍵1個


所持金:18052G (預かり所:280000G)

Gコイン:26770


・預かり所:変わらず



――― あとがき ―――

お久しぶりです。
風邪で体調を崩したり、リアルの方で忙しかったりして随分と間が空いてしまいました。


さて、トルネコ商会主催の競技会の第二試練半ばです。
次回で何とかこの試練も終われると思います。


それでは、また会いましょう。


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