DQD 33話
四ヶ月ほど時が過ぎた。
トールがこの世界に来て、もう一年が過ぎている。
身体中に傷跡ができたし、背も随分と伸びた。成長期なのだからそれも当たり前のことだろうが、元の世界に戻った時すんなりと自分だと理解してもらえるのか、そんなどうでもいいことを考えてしまう。
もっともまだ元の世界に帰る目途は立っていない。
それにしてもこの一年、様々なことがあった。これまでの人生に勝る密度の出来事、死ぬような目にもあっている。 長いようであっという間のような気もする。
元の世界でただの一般人であったはずの鳴海徹が、この世界で一端の冒険者としてトールを名乗っている。
トール自身にとってもそれが不思議でたまらなかった。
この四ヶ月の間で迷宮の第3層である15階までをクリアーし、第4層である16階に足を踏み入れるまでになった。
16階への階段は五日ほど前に見つけてあるが、変化期も近いためそれが過ぎるまでは探索に入るのは止めている。
探索しても変化期が来れば、構造がリセットされるのは分かりきっている事だ。それならばレベル上げの期間と割り切ってモンスターを倒したり、探索していない場所に行くほうが良いと思えた。
迷宮探索自体は『オクルーラの秘石』のおかげで随分と楽になった。
階層の途中からでも探索を始められるのは、その行程を省略できるため時間の短縮に役立った。だがその分迷宮も広くなったため、時間と苦労はそれほど変わらないように感じるのは気のせいではないだろう。
『オクルーラの秘石』に関してはは気をつけなくてはならない事がある。それは変化期が近くなった時、『オクルーラの秘石』を設置する場所も良く考えなくてはいけない事だ。
考えなしで設置すれば『オクルーラの秘石』は迷宮の変化に巻き込まれて壊れてしまう。
迷宮の中には階段室と同じように、決して動かず変化せず、モンスターも立ち入らない場所がある。
そういう場所には壁に女神や龍のレリーフが描かれているため、大抵はその場所に『オクルーラの秘石』を設置するのがよいのだが、必ずしも変化期でその場所に通路が繋がるわけでもないのが困ったところだ。
下手をするとその場所だけが周りから隔離されてしまう場合もある。
この場合『リレミト』や『おもいでのすず』がないと迷宮内に取り残されることになってしまう。ない場合は死につながる。
『オクルーラの秘石』が使用された当初はこういう事故もあったらしい。最も確率的に言えば非常に低く、そんな事になるのは余程運が悪いということだろう。
だがそんな事を聞いてしまえば気にもなってしまう。
結果、変化期がまだ来ないと思える日ならばいいが、ある程度の日数を過ぎると『オクルーラの秘石』を置く場所は階段室になっていた。
それでも『オクルーラの秘石』がなかった時のことを考えると行程自体が楽になっているのは事実だった。
迷宮も第3層になると変化が出てくる。
広くなるのはもちろんだが、一方通行の扉や毒などのダメージを受ける場所など、今までと違い罠と言える仕掛けもあり、ただ進むことだけを考えていては駄目になっていた。
こういう時『盗賊』の職は役に立つ。
勘が働くのか、索敵能力の一種なのか、何となく怪しいと思える場所分かるのだ。特技『とうぞくのはな』を覚えてからは、それを使うことによってより正確に分かるようになった。
ゲームのように1フロアーすべての宝箱の個数が分かるわけではないが、半径100mほどの範囲内の事が宝箱だけではなく毒床など怪しい場所の有無が分かった。その何かが遠くにあるか、近くにあるかで感じる感覚に変化があるのだ。これによって怪しい場所は回避しながら、時にはダメージを覚悟しながら進んでいった。
モンスターにしても多種多様のモンスターが様々な攻撃で行く手を遮ってきた。
12階には『スライムナイト』、『ミイラ男』、『しにがみ』、『ドラゴンキッズ』、新たなモンスターに『ビッグアイ』と『かまいたち』がいた。
『ビッグアイ』は大きな一つ目が特徴で全身を剛毛に包まれたモンスターだ。膝を抱えて座り込んでいるような格好をしている。
一箇所からあまり移動せず、ボーッとしていることもあるが、その巨体ゆえに力も強く『つめたい息』も吐き、傷つけば『ベホイミ』を使って回復もしてくる。ただ一体でいることが多いため、気をつければそれほどの相手ではない。
『かまいたち』は竜巻のような風を身に纏うモンスターで、なんとも憎たらしい顔をしている。
『バギ』や『かまいたち』といった風系の攻撃を行い、しかもその動きもすばやく、集団で行動していることが多い。連続で『バギ』などを使われたときは、『海波斬』で切り裂いて対抗するか、盾などで身を固めて耐え切るしかない。
防御力はあまり高くないため、索敵能力で先制攻撃をして一気に片付けてしまうのが一番良い方法だった。
13階には『スライムナイト』、『ビッグアイ』、『かまいたち』、新たなモンスターに『パペットマン』、『ドラキーマ』、『くさった死体』がいた。
『パペットマン』は人型で泥人形のモンスターだ。
強さだけで語るならそれほどの強いモンスターではない。力があるわけでも守りが堅いわけでも魔法を使うわけでもないが、厄介な行動をする。
それが『ふしぎなおどり』だ。身体をくねらせる奇妙な踊りをして、こちらのMPを吸い取っていく。しかも集団で現れることが多い。
一応MPは『まほうのせいすい』や『いのりのゆびわ』で回復できるが、それでも鬱陶しい存在に違いはなかった。
結局のところ先手を打って、相手が行動するより前に壊滅させるのが一番だった。
『ドラキーマ』はドラキーやタホドラキーといったドラキー系の上位モンスターで黄色の体色をしていた。
『ラリホー』でこちらを眠らせてから攻撃してくるが、『ドラキーマ』自身の攻撃力はそれほど高くない。ただ他のモンスターと組まれると厄介なことになる。後『ホイミ』も時々使うが、基本的に自分だけにしか使わないため、それほど気にしなくてもいいだろう。
『くさった死体』はその名のとおりゾンビ系のモンスターだ。
HPもあり力もそこそこあるため攻撃力は高い。時折毒攻撃もしてくるが、動きは鈍いためそれほど厄介ではない。
ただそれは戦うだけならば、だ。
何より厄介なのはその見た目だ。腐り爛れた肌に垂れ下がった眼球、明らかに人間の死体であったと思われるその容姿には、嫌悪を感じずにはいられない。
集団で相対するとゾンビ映画を思い出さずにはいられなくなる。噛まれたりしてもゾンビの仲間入りするわけではないのは助かるところだろう。
強い弱いではなく、トールにとってあまり戦いたくないと思わせるモンスターだった。
14階には『パペットマン』、『ドラキーマ』、『くさった死体』、新たなモンスターに『アローインプ』、『ひとつめピエロ』、『マンドリル』がいた。
『アローインプ』は『どくやずきん』の上位モンスターだ。
集団で現れ遠距離から矢で攻撃をしてきて、時折眠り効果のある矢も放ってくる。更に『さみだれうち』という連続で矢を放つ特技を使ってきたり、仲間を呼び寄せたりしてくる。
防御力はそれほどでもないし、近接攻撃もほとんどしてこないため、素早く近づきしとめるのがいいだろう。
『ひとつめピエロ』は赤いガチョウハットに赤いローブ、杖を持った一つ目の小人の魔法使いのモンスターだ。
『イオ』、『ヒャド』の呪文を使ってくるが、MPが少ないのか一度しか使ってこない。だが集団で襲われると、その一度だけがとてつもなく厄介なことにもなるのも事実だった。出来れば呪文を使う前に倒すべきだろう。
『マンドリル』は巨大な猿のモンスターだ。
猿型のモンスターらしく素早さがあり、加えて力もHPもある。『ちからため』で攻撃力をあげるなどして真っ向からぶつかってくる。
『海波斬』や呪文などの遠距離攻撃でしとめられるなら、それがいいだろう。
15階には『アローインプ』、『ひとつめピエロ』、『マンドリル』、新たなモンスターに『ドロヌーバ』、『さまようよろい』、『メタルスライム』だ。
『ドロヌーバ』は泥の不定形モンスターだ。
移動するときに泥の塊になって床をすべる様に移動するため、薄暗い迷宮内では見えにくいときがある。索敵能力を使って位置が分かったとしても、姿を捉えられない時があるという困った存在だ。
それほど強くはないが出会い頭に『おたけび』をくらうと、一瞬身体が硬直してしまい相手の攻撃をくらってしまうことになる。気をつけなければいけない。
『さまようよろい』は鎧に兜、手には剣と盾を持った人型のモンスターで、見た目は兵士の姿のようだがその中身は空っぽだ。
剣と盾を使い巧みに攻撃してくる。その痛恨の一撃は強烈だ。しかもホイミスライムを呼んで、傷を回復したりもする。
小細工なしで真っ向から戦うか、『大地斬』を駆使して鎧や盾ごと斬り裂いていくのがいいだろう。
『メタルスライム』はメタルに輝くスライムで経験値の塊でもある。
レベル上げの定番モンスターでもあるが、現実はそんなに簡単ではない。
その素早さはかなりのもので、普通に出会えばまずは逃げられる。ではどうするのかというと、こんな時『盗賊』の索敵能力は役に立つ。相手の行動を予測し、息を潜めて待ち伏せをするのだ。
相手が近づいてきたら、剣スキルで覚えた『魔神斬り』で一気に決める。
『メタル斬り』も覚えてはいるが、大抵は仕留める前に逃げられてしまう。それならば一か八かの『魔神斬り』の方が倒せる確率は高いのだ。
『メタル斬り』はこのスキルを持つ者が2人以上いるなら使ってもいいと思えるが、一人ではあまり使える技ではなかった。
基本的に一対一では負けることはない。トールはもしも独りになっても大丈夫なように、念には念をいれてレベルやスキルを上げてから進んでいるのだからそれも当然だろう。
本来第3層はレベル15~20ほどの冒険者がパーティーを組んで進むぐらいで丁度いいのだ。
もっともそのレベルに至れる者は全体の5%ほどしかおらず、トールのレベルはその上をいっている。だがレベルが上だからといって安心も出来ない。
どれほどレベルが高くても油断をすれば傷を負うのがこの世界の現実だからだ。
ゲームのようにレベルが上がれば、勝手にダメージを軽減するわけではない。戦いによって鍛えられた肉体は、確かに常人とは比べられぬほど強靭となるが、それでもモンスターの鋭い爪や牙を弾く事はできない。戦うという意志が生命力を強固な鎧に替えるのだ。
だからこそ慢心などせず、レベルやスキルが上がり新たに特技や呪文を覚えたなら、それがどのような時に使えて、どのような効果があるかを知る必要がある。トールは実戦の中でそれを確かめていった。
『大地斬』『海波斬』、『空裂斬』の修得に関しても、モンスター相手の実戦で使用して戦っていたこともあり、ぎこちなさはなくなったと思う。咄嗟の判断で無意識に使えるという段階にはまだまだ至らないが、普通に使う事なら出来るようになったと言える。
ただこれら三種の技も『闘気法』を併用して使用する技であることには間違いない。つまり『闘気』を少なからず消費することになる。となると使えるからといってむやみやたらに使いまくるのではなく、使うべき時に使うのがいいだろうとトールは思っている。
もっとも慣れれば慣れるほど『闘気』の消費も抑える事が出来るようになるだろうから、使えるべきところはどんどん使って慣れるようにもしなければいけないだろう。
まあ、時と場合を考えて使っていくしかないだろう。
自分専用の必殺技についても日々考えながら試行錯誤しているため、少しずつ形になってはいるが、まだまだといったところだ。こういうものは焦っても碌なことにならない。
一歩一歩しっかりと進んでいくことしかないだろう。
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探索の日々はトールに様々な糧をもたらした。
『ぬすむ』で得たもの、モンスターが落としたもの、そして迷宮のあちらこちらに点在する宝箱の中のものだ。
『盗む』:スライムゼリー10個、鉄の剣(攻+27)13個、よごれたほうたい11個、ターバン(守+6、功魔+3、回魔+3)3個、絹のローブ(守+3、攻魔+3)6個、とんがりぼうし(守+9、功魔+6、回魔+4)2個、せいすい9個、まほうのせいすい9個、やくそう36個、竜のうろこ(守+5)2個、まじゅうの皮11個、おおきづち(攻+10)1個、はやてのリング(素+20)3個、こうもりのはね8個、きんのゆびわ(守+2)1個、毒けし草11個、皮のぼうし(守+3、回魔+2)6個、レザーマント(守+8)1個、力のきのみ1個
『落とす』:スライムゼリー3個、鉄の剣(攻+27)3個、よごれたほうたい3個、ターバン(守+6、功魔+3、回魔+3)1個、絹のローブ(守+3、攻魔+3)4個、せいすい4個、やくそう20個、竜のうろこ(守+5)1個、まじゅうの皮15個、おどりこのふく(守+13)1個、こうもりのはね5個、毒けし草4個、力のゆびわ(攻+4)1個、皮のぼうし(守+3、回魔+2)5個、まほうのせいすい3個、とんがりぼうし(守+9、功魔+6、回魔+4)1個、鉄のよろい(守+18)1個、
宝箱:やくそう8個、上やくそう2個、まんげつそう8個、まほうのせいすい6個、命の石2個、ひらめきのジュエル(攻魔+2、回魔+2)1個、あおのグローブ(守+5、器+40)1個、鉄のむねあて(守+16)1個、くさりかたびら(守+11)1個、やすらぎのローブ(守+9、攻魔+5、回魔+5)1個、きんのかみかざり(守+11、攻魔+12)1個、鉄のひざあて(守+9)、シルバートレイ(守+6)2個、金のロザリオ(守+2、回魔+7)1個、あくまのタトゥー(素+8)1個、いかずちのたま2個、こうりのけっしょう3個、ようがんのかけら2個、てっこうせき6個、まりょくのつち4個、さとりそう3個、きよめの水5個
鍵つき宝箱:けんじゃのせいすい2個、ちいさなメダル6個、ひかりの石2個、ピンクパール(守+3)1個、いのりのゆびわ3個、プラチナ鉱石2個、ルビーの原石4個、ドクロの指輪(守+6)、聖者の灰2個、ヘパイトスの火種1個、まどうしのつえ(攻+7)1個、毒針(攻+1)【鍵残り1個】
『盗人斬り』が使えるようになったため、モンスターからアイテムを盗みやすくなった。
武器を持たずに素手で『盗む』が出来るのは、モンスターが一体だけの時など条件が厳しいが、『盗人斬り』は攻撃と『盗む』が同時のため、いつでも行える利点がある。もちろん『盗む』が光点に触れなければいけないように、『盗人斬り』も同じように光点へ斬りつけなければならないが、『空裂斬』の気配を探る修練の成果がこちらにも出てきているのか、以前よりも光点を感じやすくなっていた。
宝箱の中身も第三層になって変化が出てきた。鉱石や魔法物質の類の素材が入っているようになってきた。他にも薬草類などが生えている場所も出てきた。
トールからすればそれらは『錬金釜』の素材でしかないが、本来は鍛冶屋や錬金術師が使うものであり、それらの人たちに素材を売ることによりお金に替えたり、渡すことによって新たな道具を作ってもらうのが本来の使用法なのだ。そうする事によって、店に売っていない武具防具等を得る事ができるのだ。
真っ先に『錬金釜』で使う事を考えたトールの方がこの世界ではおかしい。
迷宮内で手に入れることの出来る素材は、純度が高いらしく『クエスト』として収集を募っていることも多い。
トールにとって素材は『錬金釜』で使うことにこそ意義があると思っているし、物によっては『錬金釜』で造れないようなものを欲しい時に、鍛冶屋や錬金術師に頼むにも素材は必要だろうとも思う。
それを考えると、余るような事がは殆ど無いと思えるためクエストを受けるようなことはないだろう。
『錬金釜』は200,000G以上をトルネコ商会に貯金したことによって『ゴールド』クラスになり、3種合成の『錬金釜』が使えるようになった。
ただ3種合成の『錬金釜』は、出来上がるまでの時間が2種合成の『錬金釜』よりも長い。およそ24時間、つまり一日かかるのが使いにくくさせていた。
錬金釜:
3種
【破邪の剣・ひかりの石・せいすい → ひかりのつるぎ(攻+70)】1個
【やくそう・どくけしそう・まんげつそう → おかしなくすり】3個
【いかずちのたま・こおりのけっしょう・おかしなくすり → せいれいせき】1個
【特やくそう・いやしそう・まんげつそう → ばんのうぐすり】3個
【きんのロザリオ・せいすい・いのちのいし → まよけの聖印(守+6、即死無効)】1個
【てつのつるぎ・てっこうせき・ようがんのかけら → はがねのつるぎ(攻+35)】1個
2種
【鉄のむねあて・シルバートレイ → 銀のむねあて(守+25)】1個
【ドクロの指輪・聖者の灰 → ソーサリーリング(攻魔+15、MP+15)】1個
【ちからのゆびわ・ルビーの原石 → ちからのルビー(攻+9)】1個
【やくそう・やくそう → 上やくそう】35個
【やくそう・上やくそう → いやしそう】 10個
【上やくそう・上やくそう → 特やくそう】 15個
【やくそう・どくけしそう → 上どくけしそう】 20個
【上どくけしそう・上どくけしそう → 特どくけしそう】 10個
【上やくそう・まんげつそう → きつけそう】 5個
【いのちのいし・いのりのゆびわ → 命の指輪(守+6、自動回復)】1個
謝礼金:『ひかりのつるぎ』23500G、『せいれいせき』1500G、『まよけの聖印』6000G、『銀のむねあて』5500G、『ソーサリーリング』19000G
『ゴールド』クラスになった事により今は『錬金釜』の使用料はいらなくなっていた。
ただ、二種合成の『錬金釜』は何時でも使えるが、三種合成の『錬金釜』はいつでも使えるわけではない。なんといっても一度錬金を始めると出来上がるまでに約一日かかる。そういう事もあって、『ゴールド』クラスで週に3回までしか使えない決まりとなっていた。
『シルバー』クラスでは週に一回しか使えず、使用料も取られた事を考えると随分と良くなったといえるだろう。
500,000G以上貯金すれば『プラチナ』クラスとなり、三種合成の『錬金釜』も無制限で使えるようになるとのことだった。
今は三種合成が出来る素材をそれほど持っているわけではないので、さほど困ってはいないため問題は無いだろう。
問題と言えば、新たなレシピの発見によりロクサーヌに驚きと不信の目を向けられることだが、これはもうどうしようもない事だ。
なかなか発見されないはずのレシピが見つかる、それも同一人物のよって、となればおかしいと思うのも当然だろう。
これに関してはトールはほうっておくしかない。レシピはこれからも発見することになるだろうから、「トールだから仕方がない」と思われるようになるしかないだろう。
疑いの目で見られるのは心苦しいが、これはもうしょうがない事なのだと思うしかなかった。
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ここに来て宝箱から『ちいさなメダル』が手に入るようになった。
そうとなればメダル王やメダルおじさんのような人もいるのかと思い、ルイーダに聞いてみると案の定いた。というより以前、トールから元の世界の硬貨を買い取ったのがこの人とのことだった。
西区の一角にあるその屋敷は『メダルの館』と呼ばれており、その中には様々な種類のメダルや、そのメダルを使って作られた美術品などが飾ってあった。
そしてそこにその人はいた。
人呼んで『メダル館長』。恰幅のいい白髪の老紳士がタキシードにシルクハットをかぶり、右目にはモノクルをつけていた。
渡したメダルの数に応じてご褒美の品をくれるのは、ゲームと変わりない。
『ちいさなメダル』自体は普通に道具屋などでも引き取ってもらえるが、1枚100Gであることを考えると、売るよりもメダル館長に渡した方が良いように思えた。
トールにしてみればわざわざ『ちいさなメダル』を集めるメダル館長の気持ちはまったく分からないが、人のこだわりというものは、他人にはなかなか理解できないものなのだろう。
まずは8枚渡すと一つ目のご褒美がもらえるらしいので、集めるのも悪くはないと思えた。もっとも『ちいさなメダル』が手に入るかは運しだいであるため、とにかく宝箱を見つけるしかないだろう。
現在の『ちいさなメダル』:6枚
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四ヶ月の間戦いつづけたことにより、随分とレベルもスキルの上がった。装備品も『錬金釜』や店で見つけた有用な物などに換えている。これだけでも随分と強くなっているだろう。
トールだけでなくスラきちやドランも随分強くなった。
スラきちは『メラミ』も覚えた。MPのこともあり頻繁には使えないが、今までただ守られるだけだったスラきちにも攻撃手段が出来た。
それに言語スキルも上がり、「ハラ、ヘッタ」とか「ネムイ」など片言だがしゃべるようにもなった。まだ言語スキルの低いドランの通訳もしてくれるようになった。
ドランにしてもは様々な特技を覚え、トールの事をよく援護してくれて助かっている。
『渡り人』としてトールは、この世界の人よりもほんの少し強くなりやすいが、それでもこれだけ強くなっているのは、本人の努力があるからだ。これは決して間違いではなかった。
――― ステータス ―――
トール おとこ
レベル:30
職:盗賊
HP:279
MP:92
ちから:93+5=98
すばやさ:75+60+25=160(+10%)
みのまもり:40+5=45
きようさ:85+20+40=145(+10%)
みりょく:48
こうげき魔力:37
かいふく魔力:47+8
うん:75
・装備
頭:しっぷうのバンダナ(守+11、速+20、回魔+8)
身体上:かくれみのふく(守+20、避+5%) → 銀のむねあて(守+25)
身体下:ブルージーンズ(守+11)
手:たびびとのてぶくろ(守+4、器+30) → あおのグローブ(守+5、器+40)【宝箱】
足:エンジニアブーツ(守+6) → ちんもくのブーツ(守+9、素+5)【1200G】
アクセサリー: スカウトリング
武器:プラチナソード(攻+51) → 光の剣(攻+70)【錬金】
盾:ライトシールド(守+10)
こうげき力:208
しゅび力:121
言語スキル:4(会話2、読解2、筆記)【熟練度:18】
盗賊スキル:8(索敵能力UP、すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト、ピオリム、しのびあし、盗人斬り、ボミオス、すばやさ+50、とうぞくのはな)【熟練度:47】
剣スキル:9(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード、はやぶさ斬り、剣装備時攻撃力+20、会心率UP、魔神斬り)【熟練度:58】
素手スキル:2(未装備時攻撃力+10、あしばらい)【熟練度:85】
ゆうきスキル:6(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス、べホイミ、ライデイン、いなづま斬り、マホステ、消費MP4分の3)【熟練度:6】
特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)、スカウト、アバン流刀殺法(大地斬、海波斬、空裂斬、アバンストラッシュ(偽)、常時ちから+5、常時身の守り+5)
経験値:158149
――― 仲間のステータス ―――
スラきち ?
レベル:23
種族:スライム
HP:26
MP:34+15
ちから:12
すばやさ:37
みのまもり:24
かしこさ:47
うん:49
こうげき魔力:8+15
かいふく魔力:8
装備: モンスター袋の中にいるためアクセサリーのみ:ソーサリーリング(攻魔+15、MP+15)
こうげき力:12
しゅび力:24
言語スキル:1(会話1)
スライムスキル:4(自動レベルアップ、ホイミ、スクルト、ルカナン、リレミト、メラミ)
ドラン ?
レベル:15
種族:ドラゴンキッズ
HP:120
MP:0
ちから:85
すばやさ:68
みのまもり:53
かしこさ:35
うん:58
こうげき魔力:4
かいふく魔力:4
装備:
武器:てつのツメ(攻+17)→ 魔よけのツメ(攻+43)【4000G】
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)
こうげき力:128
しゅび力:74
言語スキル:0
ドラゴンキッズスキル:5(自動レベルアップ、ひのいき、つめたいいき、あまいいき、おたけび、かえんのいき、こごえるいき、やけつくいき)
所持金:37322G (預かり所:250000G)
Gコイン:26350
・持ち物『大きな小袋』
道具:やくそう(8個)、上やくそう(11個)、特やくそう(17個)、毒けし草(31個)、上毒けし草(5個)、特毒けし草10個、まんげつそう(2個)、きつけそう(11個)、おもいでのすず(5個)、せいすい(25個)、いのちのいし(6個)、まほうのせいすい(28個)、けんじゃのせいすい(2個)ばんのうくすり(3個)、ゆめみの花(5個)、いのりのゆびわ(3個)
大事な道具:モンスター袋、従魔の輪、リリルーラの粉、オクルーラの秘石、自動地図、鍵1個
素材:おかしなくすり(2個)、ようがんのかけら(1個)、きよめの水(5個)、まりょくのつち(4個)、こおりのけっしょう(2個)、いかづちのたま(1個)、よるのとばり(1個)、ひかりの石(3個)、鉄鉱石(6個)、プラチナ鉱石(2個)、ルビーのげんせき(4個)、こうもりのはね(13個)、まじゅうのかわ(23個)、スライムゼリー(22個)、へびのぬけがら(2個)、げんこつダケ(1個)、さとりそう(3個)、よごれたほうたい(17個)、聖者の灰(2個)、ヘパイトスの火種(1個)
装備品:
頭:バンダナ(守+1)1個、皮のぼうし(守+3、回魔+2)12個、ターバン(守+6、功魔+3、回魔+3)5個、とんがりぼうし(守+9、功魔+6、回魔+4)3個、きんのかみかざり(守+11、功魔+12)1個
身体上:布のふく(守2)1個、絹のローブ(守+3、攻魔+3)7個、たびびとのふく(守+4)1個、レザーマント(守+8)1個、角つきスライムアーマー(攻+8、守+25)1個、やすらぎのローブ(守+9、功魔+5、回魔+5)1個、くさりかたびら(守+11)1個、おどりこのふく(守+13)1個、鉄のよろい(守+18)1個、かくれみのふく(守+20、避+5%)1個
身体下:あつでのズボン(守+3)、けいこぎズボン(守+5)、鉄のひざあて(守+9)
手:布のてぶくろ(守+1、器+5)、たびびとのてぶくろ(守+4、器+30)1個
足:皮のくつ(守+1、避+1%)1個、皮のブーツ(守+2)1個、エンジニアブーツ(守+6)
アクセサリー:竜のうろこ(守+5)5個、スライムピアス(守+4)、きんのゆびわ(守+2)3個、きんのブレスレット(守+3)3個、ちからのゆびわ(功+4)、金のロザリオ(守+2、回魔+7)2個、あくまのタトゥー(素+8)2個、ひらめきのジュエル(功魔+2、回魔+2)2個、はやてのリング(素+20)3個、ピンクパール(守+3)1個、ちからのルビー(攻+9)1個、まよけの聖印(守+6、即死無効)、命の指輪(守+6、自動回復)
武器:毒針(攻+1)、ひのきのぼう(攻+2)1個、銅の剣(攻+7)1個、まどうしのつえ(攻+7)1個、ブロンズナイフ(攻+10)1個、おおきづち(攻+10)1個、てつのツメ(攻+17)、鉄のつるぎ(攻+27)15個、はがねのつるぎ(攻+35)1個、プラチナソード(攻+51)
盾:ドラゴンシールド(守+25)1個、シルバートレイ(守+6)2個
――― あとがき ―――
おひさしぶりです。
今回は幕間となります。前回より四月が過ぎてトールがどうなったかが今回の話です。
トールは相変わらずの探索続きで結構強くなっております。
次回は人間関係についてです。
それでは、また会いましょう。