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No.1380の一覧
[0] 青畳の上で[三六十八](2006/04/08 14:25)
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[1380] 青畳の上で
Name: 三六十八
Date: 2006/04/08 14:25
 街から少し離れた高台、その上にあるのは県立立花高校・・・。スポーツ、学力共に平凡で唯一女子バレー部が去年県でベスト4に残っただけである。しかしながら、何故か「かわいい女子」が多いとかでそれを目当てに受験する学生は多い。そして今日はその立花高校の入学式、傾斜のややきつい坂道の脇には桜が咲き誇っておりたまにヒラヒラと花びらが舞っている。そんな坂道を登っていく新入生の中に、周りよりやや小さい男子とそれとは対照的に頭ひとつ分大きい女子がいた。

 「で、チビ平。あんた高校でもバレーすんの?」

 少し茶色がかったショートカットの女子は目線を下げながら口を開いた。彼女の名は小林志保(こばやし しほ)、中学時代から名の知れたバレーの選手。その長身から繰り出されるスパイクを武器に全国大会にも出場した。またそのルックスからバレー専門雑誌でも度々取り上げられていた。

 「さぁな。第一、入部させてくれるかどうか・・・。」

 一方の男子、名前は大平進(おおひら すすむ)。彼も中学時代にバレー部に所属していたが男子バレー部は弱く、彼の知名度は低い。なお、名前に反して背の小さい進に「チビ平」というあだ名をつけたのは他でもない志保であった。

 「入りなよ、バレー部。あんたならレギュラー取れるって。」
 
 志保は、ふて腐れた様に歩く幼馴染を励ますように微笑みながら言った。だが、進のほうは聞く耳を持たずと言った感じで歩いていく。志保はため息を一つ吐くと進と並んで歩き出した。しばらく沈黙が流れたが、不意に進が志保を見上げながら言った。

 「でもよ、何でお前立花高校にしたんだ?もっと強いとこからも誘われてたんだろ?」
 
 確かに、志保は全国大会の常連校からも誘われてはいた。周囲も疑問に思ってはいたが、まさか進が立花に行くからとは言えない・・・。そんなことを知ってか知らずか、進は小学生とも思えるような幼い顔をじっと志保の方へと向けてくる。

 「べつに、どうだっていいでしょ!!」

 頬を赤らめながらそっぽ向く志保を疑問に思いながらも進は前を向いた。そして、そこには立花高校の校舎があったのだった・・・。

 「・・・え~、ですから。」
 
 校長の長ったらしい挨拶が始まって早十数分・・・、最初はじっと聞いていた進も限界のようで大きなアクビを一つすると、周囲を観察し始めた。緊張した面持ちの生徒が多く、中には自分と同じようにアクビをしている者もいたが少数であった。式が終わるとそれぞれの教室に移動、自己紹介やクラス委員の選出らを経て本日は午前中だけで終了した。

 「ふぁ~・・・っと、帰るか。」

 席を立ちながら背伸びをした進はかばんを肩に掛けると校舎の外へと出た。そこでは、新入生を待っていたように各部活の勧誘合戦が行われており結構ガタイのいいやつはいろんなところに捕まって困っているようだった。幸か不幸か、進には声を掛けてくるのはあまりなかった・・。

 「さてと・・・、男子バレー部はどこだ?」

 一応男子バレー部を探してみる進。あたりをキョロキョロしていると、視線の先に目的の物があった。意気揚々と歩き出す進。だが、今日の進の運勢は最悪であった・・・。

 ドン!!

 進の肩に何やら衝撃が走った。恐る恐るその方を見てみると、絶滅危惧種(?)と思われるほどの立派なリーゼントをしたいかにも怖そう~な方が立っていた。

 「痛って~な~。こら坊主、どこに目ぇつけて歩いているんだ?」

 そのリーゼントの人は因縁をつけるかのように進の方を睨んでくる。周囲も何事かと静まりかえって此方を見ている。リーゼントの人は一向に視線を逸らす気配も無く進を睨んでいる。
 
 「すいません、これから気をつけます。」

 確かに自分に非があるので、進は素直に謝るとスタスタとバレー部の方へと歩いていった。一件落着かと思われたが、そのリーゼントの人は進の学ランを掴むとグイっと自分の方へと引き寄せた。そして、先ほどよりもさらに威圧するように言い放った。

 「誤って済むなら警察はいらねぇんだよ。それより、どうすんの?これ多分折れちゃってるよ?」

 そう言ってリーゼントの人はいかにも折れてますといったふうに手をプランプランさせている。

 「・・・はぁ?何言ってんの?」

 バカバカしいと思った進は怯む様子も無く言い放った。だがそれが相手の逆鱗に触れたのか、リーゼントの人はプルプルと振るえながら進を話すと大きな声で叫びながら拳を振り上げた。

 「このガキがぁぁぁ!!」

 誰もが可哀想にと思っていた次の瞬間、進の顔めがけて飛んでくる拳を誰かが止めた。

 「やめないか、こんな所で。」

 その人はスポーツ刈りのよく似合うさわやかな長身の人だった。この人も勧誘らしく、胴着を身にまとい手には「ようこそ柔道部へ!!」と書かれたプラカードを持っっていた。

 (柔道・・・?)

 進はその長身の人を見上げながらぼんやりと思った。そして、逆上したリーゼントの人がさっき折れたとか言っていた腕を振り上げると、その長身の人に殴りかかった。

 「あぶない!!」

 進は反射的に叫んだ。だが、心配は無用だったらしくその人は拳をすばやくしゃがんで避けるとその腕の袖を掴み、脇にもう一方の腕を入れると腰に担ぎ勢いよく投げた。それは大技中の大技、「一本背負い投げ」であった。

 ズダァァァン!!

 リーゼントの人は呆然としたように空を眺めている。そして、ハッとしたように立ち上がると長身の人を睨んだ。

 「てめぇ・・・、何者だ!!」

 リーゼントの人が叫ぶと、その長身の人は良くぞ聞いてくれましたとばかりに大きな声で名乗りを上げた。

 「立花高校2年2組、出席番号1番、柔道初段、相原健太(あいはら けんた)だ!!ちなみに彼女募集中!!」

 「この・・・、覚えてやがれぇ!!」

 そう言い残してリーゼントの人は校舎裏の方へと消えていった。暫く進はそのほうを眺めていたが、その相原という人の方を向くと頭をバッと下げながら言った。

 「あ、あの、どうもありがとうございました!!」

 相原は進の肩をポンと叩くと、微笑みながらやさしく語りかけるように言った。それはさながら韓国のイケメン俳優の様でもあった。

 「俺は当然のことをしたまでだ。それより、これからは気をつけるんだよ。」

 「は、はい!!」

 そして相原は爽やかに笑いながらその場を去っていった。騒ぎを聞きつけたのか、進の方に志保が息をきらしながら走ってきた。 

 「チビ平、あんた何したの?」
  
 心配そうに話す志保をよそに進は相原が去っていった方をぼんやりと見つめていた。志保が呼びかけるものの耳に入ってない様子で、志保がだめだこりゃと思っていると進は少し感動したような様子で口を開いた。

 「柔道って、すげぇ・・・。」

 「は?」

 その言葉の意味のわからない志保はただただ間抜けな声を出すのであった。一方、同じころ校舎裏では・・・、

 「いててて・・・、さすがに校庭はキツかった・・・。」

 先ほど進に絡んできたリーゼントの人が背中を抑えながらしゃがみこんでいた。そしてそこへ歩み寄る一つの影。それはまさしく進を助けた相原であった。

 「ご苦労、ご苦労。お前の演技も中々だったぞ。」

 その言葉を聞いてそのリーゼントの人は恨めしそうに見上げ、頭に手をやるとその立派なリーゼントをはずした。どうやらカツラだったらしく、その内側にはバーコードが貼ってあった。そしてリーゼントではなくなったその丸刈りの人は立ち上がると腰を叩きながら言った。

 「えめぇ・・・、本気で投げやがったな~?」

 「しょうがねぇだろ、じゃんけん負けたの直樹じゃん。」

 詰め寄られた相原はしれっと答える。そう言われると何もいえなくなる直樹と呼ばれた人。水島直樹(みずしま なおき)、相原と同じく2年。相原もさすがに悪いと思ったのか、相原は買ってきたジュースを渡す。

 「ほれ、ポカリ。」

 「あ、ああ。サンキュ。」

 丸刈りの人はふたを空けると口に持っていった。ゴクゴクとのどを鳴らしながら飲んでいく丸刈りの人。それを見ながら相原はまたまたしれっと言った。

 「あ、でもそれお前の財布から取った金で買ったから礼にはおよばんよ。」

 それを聞くと、水島は口のなかのポカリを一斉に吹き出すと相原の方をキッと睨んだ。そしてその相原は舌をペロリと出すと無表情で言った。

 「嘘だぴょ~ん。」
 
 「て、てめぇ!!!」

 裏で、こんな工作活動が行われているともつい知らず進はさっきの相原がやった技のことが頭から離れなかった。そして、進の高校生活はここから大きく変わっていく・・・。 


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