多くのファンタジーゲームと同様に、[D&D]にも多くの魔法があります。
そのため、[D&D]の魔法は大きく分けると2系統に分類されます。
魔法使い系か、僧侶系。
わたしが使っているのは、もちろん僧侶系になります。
当然、アイテムなんかを使わない限り魔法使い系は使用できません。
で、僧侶系の魔法は、分野というかジャンル毎に種類分けされています。
[スフィア(領域)]と呼ばれるものです。
スフィアは、キャラクターが信仰する対象によって決められます。
わたし、[ノア]が得意とするスフィア(領域)はこんな感じ。
■使用可能スフィア(領域)
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・オール(すべての僧侶が使用可能)
・エレメンタル(精霊)
・プラント(植物)
・アニマル(動物)
・ヒーリング(治癒)
・ネクロマティック(生命)
・プロテクション(防御)
・サン(太陽)
・ウェザー(天候)
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精霊信仰(アニミズム)が教義のハーフエルフ[ノア]。
やっぱり自然系の魔法に偏っています。
けど、得意なスフィアがあれば、苦手なスフィア(領域)もあるわけで――
■使用不可スフィア(領域)
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・アストラル(異世界)
・チャーム(魅了)
・コンバット(戦争)
・クリエーション(創造)
・ディビネーション(予言)
・ガーディアン(守護者)
・サモニング(召還)
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「[サモニング(召還)系]が使えてたら――」
実は、日本に帰れる可能性の魔法があったんです。
[サモニング(召還)]は他の場所、他の次元から、何かを呼び出すもの。
このスフィアの最強魔法として、[ゲイト【魔導門】]という魔法があります。
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・[ゲイト【魔導門】] LV7スペル
現在キャラクターがいる世界と、使い手が指定する世界の間に、
超次元的な連絡路(ゲイト)を開くことができる。
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「こうなると、[ディビネーション(予言)]が無いのも痛いなあ」
[ディビネーション(予言)]は反則級の魔法が多い。
困難時に安全な方法、隠れた物の探知、長く失われた知識を得たりすることが可能な魔法が揃っています。
最強レベルの魔法だと、未来予知も可能になったりします。
まさにゲーム進行役のダンジョンマスター泣かせ。
で。
結局、[ディビネーション(予言)]系の魔法は、プレイヤーキャラクターでは使用禁止になりました。
それは別に困らないし、納得できます。
だって展開がわかるゲームなんて、誰もやりたくないと思う。
ただ、今、何も手がかりが無い状態では、これほど頼れるスフィアもありません。
「あと考えられるのは……
……
……[ウィッシュ【願い】]……」
魔法使いの最大にして最強の魔法。
それが[ウィッシュ【願い】]です。
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・[ウィッシュ【願い】] LV9スペル
何を願ったにせよ、願った通りのことが大抵はかなえられる。
この呪文をかけたものは5歳だけ年をとる。
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なんていうか、存在が反則な魔法です。
ただ、[ウィッシュ【願い】]は、使用には注意が必要な魔法になります。
例えば「他の生物の死」を願ったとします。
すると、願ったキャラクターが「他の生物」の寿命で死ぬ寸前にワープ。
こんなことだってあり得るのが[ウィッシュ【願い】]なんです。
「とりあえずっと。
当面の目標は[ゲイト【魔導門】]と[ウィッシュ【願い】探しかなあ」
この世界、どれだけの人が魔法を使えるんだろ……?
正直、あまり多くないと思う。
しかも、僧侶、魔法使い最強レベルの魔法を使える人なんて――
[最強レベル魔法の使い手捜し]
これはかなり難易度の高いクエストになりそうです。
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008 魔法
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「魔法日和の良い天気!」
今日も、雲一つ無い晴天!
今、わたしは[ドルーアダンの森]に来ています。
なんでって?
それは魔法を使うためです。
朝、これからのことを考えていたら、ちょっと魔法を使いたくなっちゃいまして。
魔法を使う場所に[ドルーアダンの森]を選んだのは、村の方々をびっくりさせない為です。
魔法によっては危険なものもありますし、ね。
「よいっしょっと」
わたしは肩に背負っていた木製の樽を地面に置きました。
樽は、宿屋のマスターからお借りしたものです。
「むっふふーん。この魔法も試してみたかったんだよね~!」
ワクワクが止まらないです、ストップ高ですよ!
「最初はっと、水を樽の中に入れてっと」
LV1魔法[クリエイト・ウォーター【水を作る】]を唱えます。
魔法が発動したら、ぷかぷか浮いた水をそっと樽の中に入れました。
「次に、金属の欠片っと」
続いてわたしはダガーを取り出します。
今回のために、一度、熱湯で殺菌をしています。
「さってと、初呪文かあ。上手くいくといいなあ」
わたしは目を閉じて、これから発する魔法を意識する。
口から自然と言葉が発せられる。
ダガーの刃先に手を添える――
「めいっぱい冷たくなって~!
[チル・メタル【金属冷却】]!」
魔法の詠唱後、ダガーの金属部分から白いもやみたいな物が発生してきました!
「やた、手応えあり!」
急いで、わたしは樽の中にダガーを入れます。
ダガーは樽の底に沈んでいきました。
1分、2分ぐらい経過した頃でしょうか?
ダガーが氷に包まれて、水面にぷっかりと浮かんできました。
「わあ! きたあ!!」
さらに数分もする頃には、樽の中の水すべてが氷になりました!
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・[チル・メタル【金属冷却】] LV2スペル
金属を冷やすことができる。
冷却状態の金属に触れたものは2~8日間手足、1~4日間身体の使用が不可になる
逆呪文は[ヒート・メタル【金属加熱】]
この場合には金属を熱することができる。
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[チル・メタル【金属冷却】]は、通常、金属の鎧を着ている敵に使う魔法だと思います。
この場合には鎧を脱ぐ前に、凍傷で死んでしまう程のダメージになります。
逆呪文の[ヒート・メタル【金属加熱】]は、数分で、相手を大やけどさせます。
これ、かなり惨い魔法ですよね……
「この時代に氷が作れるのは、なんか夢が広がるな~!」
たしか昔って、地域によって氷は貴重品だったと思います。
そうですよね、暑い場所で簡単に作れませんし。
「では、さっそく次はっと~♪」
わたしは100kgはあるだろうと思われる氷の樽を抱えます。
全然、重く感じないです。
すごい、今のわたしってば。
○
「マスター、これ味見してくれませんか?」
わたしは完成した「ソレ」を、食器を拭いていたマスターに差し出しました。
「ん、なんだいノアさん。これは?」
「あは、自信作なんで、自慢したくなって」
「はは、なんだかすごそうだなあ。
それじゃご相伴にあずかるとしようか」
微笑しながら、マスターはカウンターの席についてくれた。
うぅ、お仕事じゃましちゃってごめんなさい。
でも、これ、今しか食べられないから~!
「あー、な、なんだこりゃ!? 冷たいし、甘い!?」
「疲れが一気に無くなりますよ」
わたしが作ったのはかき氷!
シロップは[グッドベリー【おいしい果物】]をかけた、いろんな果物の果汁を使いました。
本当にびっくりするぐらいの果汁です。
冷たい氷と魔法シロップの奇跡のハーモニー!
体力が回復できるかき氷の発明は、人類史上初の快挙だと思います!
「これは、すごい! なんなんだ、これは!?」
マスターが珍しく興奮してくれています。
この地域では氷が珍しいからなのかな?
味に驚いてくれていてくれたら、嬉しいんだけどな。
「かき氷っていう、えーと、わたしの故郷の食べ物です」
「カキゴオリか……
ってことは氷をコナゴナに砕いたものか……!?」
いや、どうやってこんな時期に氷なんて!?」
「あは、それは企業秘密ってやつです」
「キギョウ?
キギョウがなんだかわからないが……
ドルイドあたりの間で伝わるハーバリストの秘伝か何かなのか?
いや、それにしても、これは美味しいし、スッキリする感じだ」
不思議そうにしながらも、マスターは全部を食べてくれました!
「氷と、その上にかかっている甘い液体「シロップ」はいっぱいあるんで、
よかったら、マスターに差し上げます」
「え!? そんないいのかい、ノアさん!?」
「一人じゃ氷なんて使いきれませんし、溶けちゃうのも勿体ないですから」
氷に関しては何も苦労していないんです、マスター。
強いて言えば、シロップのための果物集めぐらい。
でも、それも、今のわたしの趣味みたいなものですしね!
○
今日の[森の木陰亭]の酒場。
酒場なのに一番出たオーダーは「カキゴオリ」でした。
みんな驚いて、で、笑顔で食べてくれました!
う~、何、このむずむずするけど、なんだか楽しい気持ちってば!
魔法って楽しい!
明日は[ヒート・メタル【金属加熱】]を使って、熱いお風呂にでも入ろっと!
★
「若草物語」のような生活感ある文章を出したい!