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No.13727の一覧
[0] 【習作】 英雄たちのその後って? 【現実→AD&Dっぽい異世界】【チート能力】[ぽんぽん](2013/07/06 08:18)
[1] 01 TRPG[ぽんぽん](2011/01/03 07:02)
[2] 02 現状の確認[ぽんぽん](2011/01/08 18:19)
[3] 03 準備[ぽんぽん](2011/01/15 10:10)
[4] 04 森からの脱出[ぽんぽん](2011/01/30 10:42)
[5] 05 森からの脱出02[ぽんぽん](2011/02/11 08:35)
[6] 06 ウォウズの村[ぽんぽん](2011/03/05 18:23)
[7] 07 夜の酒場[ぽんぽん](2011/03/19 18:09)
[8] 08 魔法[ぽんぽん](2011/03/26 15:54)
[9] 09 治療[ぽんぽん](2009/12/13 09:46)
[10] 10 想い[ぽんぽん](2009/12/13 09:55)
[11] 11 正体[ぽんぽん](2009/12/19 14:04)
[12] 12 黒聖処女[ぽんぽん](2010/02/28 09:03)
[13] 13 葛藤[ぽんぽん](2009/12/27 09:16)
[14] 14 来訪[ぽんぽん](2009/12/30 11:51)
[15] 15 引き渡し[ぽんぽん](2010/01/02 14:51)
[16] 16 旅立ち[ぽんぽん](2010/01/11 12:04)
[17] 17 城下町エドラス[ぽんぽん](2010/01/16 14:11)
[18] 18 戦乙女[ぽんぽん](2010/01/23 16:57)
[19] 19 冒険初心者[ぽんぽん](2010/01/31 11:59)
[20] 20 見極め[ぽんぽん](2010/02/28 09:01)
[21] 21 戦闘[ぽんぽん](2010/02/19 06:00)
[22] 22 ただいま勉強中[ぽんぽん](2010/02/28 11:38)
[23] 23 ハイローニアスの使い[ぽんぽん](2010/03/14 11:45)
[24] 24 依頼[ぽんぽん](2010/04/11 07:59)
[25] 25 地下墳墓(カタコンベ)[ぽんぽん](2010/04/17 09:01)
[26] 26 地下墳墓(カタコンベ)02[ぽんぽん](2010/04/25 18:01)
[27] 27 地下墳墓(カタコンベ)03[ぽんぽん](2010/05/09 10:22)
[28] 28 地下墳墓(カタコンベ)04[ぽんぽん](2010/05/23 10:00)
[29] 29 地下墳墓(カタコンベ)05[ぽんぽん](2010/06/06 10:06)
[30] 30 地下墳墓(カタコンベ)06[ぽんぽん](2010/06/27 17:24)
[31] 31 タエ[ぽんぽん](2011/02/26 04:35)
[32] 32 思い[ぽんぽん](2010/07/18 12:09)
[33] 33 海沿いの街・セーフトン[ぽんぽん](2010/08/01 11:10)
[34] 34 海沿いの街・セーフトン02[ぽんぽん](2010/08/15 12:04)
[35] 35 海沿いの街・セーフトン03[ぽんぽん](2010/08/29 11:00)
[36] 36 戦乙女(ヴァルキュリア)[ぽんぽん](2010/09/26 16:41)
[37] 37 戦乙女(ヴァルキュリア)02[ぽんぽん](2010/10/03 11:24)
[38] 38 戦乙女(ヴァルキュリア)03[ぽんぽん](2010/10/16 20:28)
[39] 39 告白[ぽんぽん](2010/10/31 10:40)
[40] 40 またね[ぽんぽん](2010/11/14 10:23)
[41] 41 白蛇(ホワイトスネイク)[ぽんぽん](2010/11/27 18:26)
[42] 42 サーペンスアルバス[ぽんぽん](2010/12/11 19:27)
[43] 43 日常[ぽんぽん](2011/02/26 04:36)
[44] 44 日常02[ぽんぽん](2011/01/08 18:22)
[45] 45 3ヶ月[ぽんぽん](2011/01/22 18:11)
[46] 46 イル・ベルリオーネ[ぽんぽん](2011/02/26 04:41)
[47] 47 顔合わせ[ぽんぽん](2011/03/19 14:08)
[48] 48 旅の準備[ぽんぽん](2011/03/19 14:09)
[49] 49 ケア・パラベルへ[ぽんぽん](2011/04/09 10:28)
[50] 50 ケア・パラベルへ02[ぽんぽん](2011/04/02 18:00)
[51] 51 ケア・パラベルへ03_カスピアン[ぽんぽん](2011/04/23 17:48)
[52] 52 ケア・パラベルへ04_ソランジュ[ぽんぽん](2011/05/03 17:57)
[53] 53 ラクリモーサ[ぽんぽん](2011/05/14 17:56)
[54] 54 ケア・パラベルへ05_待ち伏せ[ぽんぽん](2011/05/28 17:51)
[55] 55 ケア・パラベルへ06_芽生え[ぽんぽん](2011/06/11 20:15)
[56] 56 旅の少女[ぽんぽん](2011/06/26 07:08)
[57] 57 確信[ぽんぽん](2011/07/16 18:51)
[58] 58 痴漢[ぽんぽん](2011/08/06 07:42)
[59] 59 兄妹[ぽんぽん](2011/08/15 04:15)
[60] 60 強くなるために[ぽんぽん](2011/08/27 16:49)
[61] 61 蠢動[ぽんぽん](2011/09/10 17:52)
[62] 62 開幕[ぽんぽん](2011/10/01 15:44)
[63] 63 前哨戦[ぽんぽん](2011/10/15 17:36)
[64] 64 決意[ぽんぽん](2013/03/02 06:41)
[65] 65 回顧[ぽんぽん](2011/11/19 17:17)
[66] 66 一騎当千[ぽんぽん](2011/12/10 16:57)
[67] 67 一騎当千02[ぽんぽん](2011/12/29 15:53)
[68] 68 想い交錯[ぽんぽん](2012/01/15 12:40)
[69] 69 英雄への想い[ぽんぽん](2012/02/26 07:14)
[70] 70 急転[ぽんぽん](2012/02/26 08:43)
[71] 71 防衛[ぽんぽん](2012/03/10 11:33)
[72] 72 反撃[ぽんぽん](2012/03/31 19:58)
[73] 73 魔王[ぽんぽん](2012/04/21 11:33)
[74] 74 魔王と白蛇[ぽんぽん](2012/05/20 12:37)
[75] 75 チート[ぽんぽん](2012/08/17 11:06)
[76] 76 決着[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[77] 77 黒い悪魔[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[78] 78 黒い悪魔02[ぽんぽん](2013/03/02 06:50)
[79] 79 黒い悪魔03[ぽんぽん](2013/03/02 06:51)
[80] 80 黒い悪魔、白い騎士[ぽんぽん](2012/11/03 10:19)
[81] 81 悪を討つ一撃[ぽんぽん](2013/03/02 06:55)
[82] 82 援軍到着[ぽんぽん](2013/03/02 06:57)
[83] 83 妙子と勇希[ぽんぽん](2013/03/02 06:58)
[84] 84 愛しさ切なさ悲しさ[ぽんぽん](2013/04/29 12:19)
[85] 85 異様過ぎる何かとの遭遇[ぽんぽん](2013/06/23 09:03)
[86] 86 異様過ぎる何かとの遭遇02[ぽんぽん](2013/06/23 09:10)
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[13727] 55 ケア・パラベルへ06_芽生え
Name: ぽんぽん◆d1396e89 ID:9fc8f5b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/11 20:15
微生物の呼吸すらも感じることができない程の静寂。
風すらも動くことを許されない。

ヒステリックに叫んで指示を出していたトスカン、
先程まで雄叫びを上げていた20人の兵士、
そしてルイディナ達も同様だ。

全員が、彫像のように固まって微動だにしない。

今、世界の全ては、絶対的な沈黙の支配下に置かれている。
当然である。

時が止められたのだから――


「さて、ホントどうしようかなあ……?」


そんな世界で、一人だけ動いている人間がいた。
時を止めた男であるイル・ベルリオーネである。



-----------------------------------
・[タイム・ストップ【時間停止】] LV9スペル

10メートルの球体状空間内の、時の流れを停止させる呪文である。
使い手は空間内を自由に行動できる。
使い手が球体の外にでると、呪文の効果はその時点で終了する。
この呪文には触媒も動作も必要なく、詠唱だけで発動する。

デミゴット(半神)以上の存在には効果がない。
また、効果範囲外から見ると、球体内が一瞬輝くように見えるだけである。

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イルは腕を組み、うろうろしながら悩んでいた。

トスカン達をどのように対処するかである。
(容易に殺すことは可能だが)さすがに殺すという選択肢はない。
だが、何もしないという選択もない。
それでは、彼らは反省しないだろう。
ソランジュや、今回の件でルイディナ達もだが、またチョッカイを出してくる可能性がある。

イルの理想としては、[ソランジュ達に手を出す気が起きない程度に反省してもらう]である。

だが、それが存外難しい。
彼らを懲らしめる手段が無いのではない。
ちょっとしたことで、相手を過剰に殺戮してしまいそうだからである。
今回、魔術師系の大呪文である[タイム・ストップ【時間停止】]を使用したのは、
考える時間が欲しかったからである。


「まいったなあ……」


モサモサのあご髭を撫でながら、イルは自身の戦力を改めて考え直してみる。

[錬金術アイテム]はどうだろうか――?

[アルケミス・ファイヤー]じゃ木っ端微塵だ。
[アルケミス・フロスト]は氷の彫像ができてしまう。
[サンダーストーン]にいたっては論外だ。

自身で作成した所有の[錬金術アイテム]を考えて、イルは溜息をついてしまう。
半端無く高いレベルのイルが作成したアイテムは、全ての効果が強すぎるのだ。
これはモンスター達に使用して確認済みである。

では、[所有しているアイテム]から考える――

が、すぐに諦めた。
生活消耗品などを除くと、現在所有しているアイテムは全てマジックアイテムである。
ちょっとしたアイテムでも、マジックアイテムの特殊効果で低レベルの生物は死に至る。

では、魔術師の本業である呪文では――

攻撃系は全て微妙だ。
直撃したら、間違いなく死亡だからだ。
仮に使用するとしたら、呪文を放つ方角をあさっての方角に向けなければならない。
呪文の効果範囲ギリギリの端あたりで――


「いやいや――」


イルはかぶりを振る。
武器による攻撃と違って、[D&D]の呪文攻撃には手加減なんてなかった。
呪文は[1]か[0]、[YES]か[NO]、[有り]か[無し]かのどちらかだ。
ルール上なかった行為が、特訓も無しに今の自分に行えるとも思えない。


「イル・ベルリオーネのコンセプトを誤ったかな……」


イルは思わずぼやいてしまう。
[精神操作系]の呪文は殆ど所有していなかったからだ。
これはイルが、攻撃に特化した魔術師をロールプレイしていたためである。
TRPG初心者だった[乃愛]と[妙子]がいるのに、精神系の駆け引きをメインとするのはどうかと思ったからだ。
ゲームを楽しく簡単に遊ぶためのプレイヤーとしての判断だった。
([乃愛]と[妙子]がゲームに慣れた頃からは、そういった遊び方は[勇希]が担当してくれた)

ちなみに[終演の鐘(ベル)]の由来にもなった、[死]に直結する魔法は殆ど持っている。
[終演の鐘(ベル)]とは、相手の人生の終幕を告げる鐘なのだ。


「となると、これぐらいしか手はないか――」


ひとまず、イルは固まっている兵士達に向かっていった。
その中で、一人だけ魔術師然とした姿の男がいた。
ソランジュが鞭打ちを受けた時にもいた時にもいた男である。

イルは、その男の手に握られているスタッフを見て頷く。


「よかった。ただのスタッフだ。
 これ使えば、オーバーキルしないですむかな?」


確認すると、イルは[バッグ・オブ・ホールディング]から小瓶を取り出した。
小瓶には漢字で「油」と書かれていた。
イルはスタッフを握っている男の手に、小瓶から「油」をかけた。
男の手がヌルヌルになったことを確認して、イルはスタッフを引っこ抜く。
時間を止めると、相手が所有しているものを奪うのも一苦労である。

そしてイルは呪文の詠唱を開始した。





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055 ケア・パラベルへ06_芽生え

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そして時計の針は動き始める。


「あ、あれ?
 俺のスタッフが……
 ……って、ジジイ、なんでお前がいつの間に持ってやがる???」


トスカンのお抱えである魔術師から、突如、怒声があがる。
魔術師である自分の命とも言えるスタッフが、それもつい先程まで握っていたものが無いのだ。
しかも、気がつかない間に、目前の老人が所有しているではないか。
声を張り上げるのも無理はない。


「はあ?
 ジジイだから杖ぐらい持ってるだろ。
 お前こそ耄碌したんじゃねえの?」


だが魔術師の言い分に、周囲の仲間の兵士達から嘲笑が巻き起こった。
兵士達には、老人がタダの杖を持っている姿にしか見えない。


「い、いや、そ、そんな、ば、馬鹿なこと……!?」


魔術師の男はわけがわからなかった。
が、何か酷く、嫌な予感がしてならなかった。


「お前等、いいかげんにしないか!
 とっとと、僕に対して無礼を働いたそこのじじいを殺してしまえ!
 48番以外の女達は好きにしていい!」


笑っている兵士達と狼狽する魔術師に対して、トスカンより命令が下された。
さすがにトスカンに雇われている兵士達である。
主の言葉には逆らわない。
ざわめきは沈黙となり、ぎらついた目でイル達を睨み付ける。


「させない、イルマさん――!」


兵士達の様子に、ルイディナは慌ててイルの前に出ようとするが――


「へ? い、イルマさん……?」


ルイディナに対して、背を向けたまま手を横に伸ばす。
前に行かせないためだった。


「大丈夫だ。
 ルイディナ、何も心配することはない。
 私に任せるといい」


ルイディナからは、イルの表情は見えなかった。
だが、その背中がとてつもなく大きく見えた。
それはまるで、ずっと小さい子供の頃に見上げていた父親のように――


「は、はい……」


ルイディナは顔を真っ赤にして、構えていたレイピアを降ろしてしまった。
なんだか、もう、全身に力が入らない。
腰も砕けそうである。


「行け――!」


トスカンの言葉に、3人の兵士がイルに対して突進してくる。


「イルマさん!」
「イ、イルマさん……!」
「じっちゃん!」
「イルマさん!!」


ルイディナ、ファナ、ソランジュ、ガストンから悲鳴に近い声が上がる、
その瞬間だった。
スタッフを構えていたイルの姿が消える。


「なっ――!?」


3人の兵士達の声。
その刹那、イルは隙を逃さない。
いつの間にか、イルは3人の懐に潜り込んでいた。


「遅い」


イルはスタッフを振るう。
1人の兵士は、スタッフで足払いをされて倒された後に、スタッフで鳩尾を突かれた。
1人の兵士は、剣を持つ右腕の肘を的確に打ち据えられた。
1人の兵士は、喉仏をスタッフで軽く叩かれた。
瞬く間に3人は無力となった。
胃液をはき、右肘を破壊され、咳き込んでしまった。

全く相手にならない。


「な、なんだって……!?
 ぼ、僕の兵士がこんなに簡単に!?」


トスカンは困惑しきりである。
当然だ。
ただの老人と思われた人物に、屈強なデュクドレー家の兵士が叩き伏せられたのだから――


「ちょ、イルマさん!?」
「すごい、すごい……!」
「す、すげ、じっちゃん!?!?」
「おいおい、マジかよ……」


驚いたのはルイディナ達も同様である。
イルの動きに開いた口がふさがらない。


「にゃー(さすが、わたしのイルです!)」


今、冷静に、事の成り行きを見守れているのはクロコぐらいだろう。
「ぽふぽふ」と肉球で拍手を送っている。


「簡単ではないんだけどな。
 むしろ難しいぐらいだ。
 手加減がね――」


ぼやきの言葉を残して、イルは再び姿を消した。





「ば、馬鹿な、馬鹿な……!?」


トスカンには現実に起こったこととは思えなかった。
悪夢である。
なぜなら、自分達の兵士達が瞬く間にやられてしまったのだから。
いまだ意識があるのはトスカンと、
スタッフを奪われて戦闘に参加できなかった魔術師の2人しか残されていない有様である。


「ジジイ、お前はなんなんだよ……!
 いつの間にか俺の杖持ってるし、
 素早いなんてもんじゃない。
 あれは瞬間移動だ!?」


お抱えの魔術師は腰を抜かして、もう泣き出しそうな勢いである。
悪い予感は当たってしまったのだ。

トスカンと魔術師の男の言葉に、イルはモサモサの髭を撫でながら告げる。


「では順を追って説明しようか。
 君のスタッフは時間を止めて拝借させてもらったんだ。
 [タイム・ストップ【時間停止】] だね。
 君達をコテンパンにできたのは、[テンサーズ・トランスフォーメーション【魔術師テンサーの肉体強化】]。
 これも、時間を止めている間に詠唱しておいた。
 攻撃力では遠く及ばないけど、命中判定は[キース・オルセン]と互角の勝負ができるぐらいだ。
 攻撃を外すということは、今の君ら相手には無いよ。
 あとは瞬間移動か。
 これは大したことないんだ。このマント[ケープ・オブ・ザ・マウンテン(山師のケープ)]のおかげだね。
 普通は攻撃された時に使うんだけど、こっちから攻撃するのに使用したんだ」


イルの説明を聞いて、魔術師は顎が外れんばかりに口を開けてしまった。
そして、下腹部が熱くなり、彼のローブにシミが広がる。
オシッコを漏らしてしまったのだ。



-----------------------------------
・[テンサーズ・トランスフォーメーション【魔術師テンサーの肉体強化】] LV6スペル

この呪文をかけると、使い手の身体は英雄体型に変化する。
使い手のHP(ヒットポイント)は倍増され、AC(防御力)も向上する。
また、使い手は同レベルのファイターのごとく命中判定を行うことができる。
使用可能武器はダガーかスタッフのみではあるが、
ダガーでの攻撃は手数が2倍となり、スタッフの場合には命中判定とダメージにボーナスが付く。

-----------------------------------

-----------------------------------
◇[ケープ・オブ・ザ・マウンテン(山師のケープ)]

特性
この絹の深緑でできたマントを着れば、危害を避けて通ることができる。

パワー
・[即応]、[対応]
 使用者は戦闘中に5マスの瞬間移動をして、敵対者に対して戦術的優位を得る。

------------------------------------



「ば、ば、ばかな!?
 タイム・ストップに魔術師テンサーの呪文だと!?
 あ、ありえねえ!?
 う、嘘をつくな!
 そ、そんなの、で、伝説上の呪文じゃねえか……!?」


腰を抜かした魔術師は、手の力を使って必死に後ずさりをしている。
そんな姿を見て、イルは溜息をついた。


「私も、今の自分が普通とは思わないよ。
 けど、まあ。
 日本人からみたら、君達のソランジュに対する行動の方が普通じゃないんだけどな」


言い終えると、イルは姿を消した。
[ケープ・オブ・ザ・マウンテン(山師のケープ)]のパワーである。
そして現れたのは、呆然としているトスカンの元である。


「ヒッ――!」


突如現れたイルに、トスカンはガタガタと震えることしか出来なかった。
トスカンには先程のイルの説明は、完全に理解できたわけではない。
だが、今の自分が窮地に立っていることぐらい理解はできる。

そんなトスカンに対して、イルは告げる。 


「ソランジュと、ルイディナ達には二度と手を出さないでくれるかな?
 今回と同じような事をしたら――」


イルは言葉を止める。
トスカンは口の中に溜まったつばを「ゴクリ」と飲み込んだ。


「し、したら……?」


震える声で、トスカンはイルの先の言葉を促した。
それを聞いたイルは、何も言わずに、手にしていたスタッフをやり投げのように放り投げた。
[テンサーズ・トランスフォーメーション]の効果もあり、スタッフは恐ろしい勢いで空高く上昇していった。


「定比例
 倍数比例
 混成
 増加
 消滅
 質量は保存されず――[エンラージ【大型化】] 」


イルは瞬時に詠唱を完成させる。
と、投げられたスタッフは空中で膨張した。
そして6メートルもの長大なサイズとなり、「ズドン」と音を立てて地面に突き刺さった。


「まあ、素敵なことになるだろうね」


イルの言葉に、トスカンは首が取れんばかりの勢いで縦に振った。



-----------------------------------
・[エンラージ【大型化】] LV1スペル

この呪文は、クリーチャーや物体を瞬時に大型化する呪文である。
対象は一体のクリーチャーや、一つの物体である。
対象物は使い手のレベル当り10%まで重量、高さ、幅の各々について巨大化/成長する。

逆呪文の[リデュース【小型化】]は、[エンラージ【大型化】]の効果を打ち消すか、
対象を小型化することができる。

-----------------------------------





「いやったあ~♪」

「よかったね、ソラちゃん!」

「あ、ああ!」

「冒険者とは聞いていたが、
 まさか、イルマさんが魔術師だったとは……」


這々の体で逃げ出していくトスカンを見て、ルイディナ達は大はしゃぎだ。
ルイディナは飛び上がって喜びまくっていた。
ファナとソランジュは抱き合っている。
ガストンは「やれやれ」といった体で、麦わら帽子を脱いで髪の毛をかいていた。

そんな中、イルは照れくさそうにモサモサの髭をなでながら戻ってくる。
そしてソランジュの前に立った。


「もう君は自由だ。
 ソランジュ。
 これからは、思った事、感じた事、何でも良い。
 好きなことをやって欲しいな」


いつもと同じ口調の優しい声だった。
そっとソランジュの頭を「ぽふぽふ」と叩きながら髪を撫でた。


「じっちゃん……!」


ソランジュは顔を真っ赤にして、イルの腰に抱きついた。
そしてソランジュは大声で泣いた。
今までずっと我慢し続けていた少女は、ようやく本来の少女に戻れた。





イルの腹部に顔を埋めて泣いているソランジュを、
ルイディナは指を咥えて、ファナは頬をピンクに染めて見守っていた。


「ね~、ファナ」

「なあに、ルーちゃん?」

「たはは、その、なんというか――」


思った事を、すぐに口に出してしまうルイディナにしては珍しい光景だった。
モジモジと何かを言いづらそうにしている。
そんなルイディナに、ファナは小さく微笑んだ。


「うん、わかってるよ」

「へ?」


ファナに「わかってる」と最初に言われて、ルイディナは不思議そうな顔をする。


「ルーちゃんも好きになったんだよね?」

「ファ、ファナ~!?」


ルイディナの顔が「ぽん!」と真っ赤になる。


「一緒に行こ、ルーちゃん。
 ソラちゃんに負けちゃうよ!」


ファナはルイディナの手をぎゅっと握る。
ルイディナは一瞬だけ呆気にとられてしまった。
だが、ファナの笑顔を見て、ルイディナは大きく頷いた。


「そうね!
 協力してイルマさんをメロメロにしちゃうわよ~!」

「わ、わわ!」


ファナに握り締められた手を、ルイディナは逆に握り替えして引っ張るようにして走り出す。
向かう先は、勿論、イルとソランジュの所だ。


「逃がさないんだからね、イルマさん~♪」


ルイディナとファナは、イルとソランジュの2人に向かって飛びついた――





■■■


漆黒のドレスを纏ったラクリモーサの全身が震える。
息も荒く、頬も紅潮し、心臓が跳ね馬のように鼓動する。
今、間違いなく、ラクリモーサは欲情していた。

ゆっくりと、一歩、一歩、ラクリモーサは歩く。
巨大な水晶柱に向かって。


「お、お嬢様……!」


背後から、イエリチェ、フェーミナ、ミト、ヨツハの声がかかる。
だが、言いかけた言葉を、ラクリモーサは止めた。


「貴方達はそこで待機なさい。
 それと、大声を出すのはよしなさい。
 失礼ですわよ。
 これから[終演の鐘(ベル)]に謁見させていただくのですから――」

「し、失礼いたしました!」


氷のように冷たいラクリモーサの言葉に、4人のダークエルフの少女達は恐縮する。
4人の反応を見たラクリモーサは満足げに頷くと、改めて、水晶柱の前に立った。


「お会いできて嬉しいですわ。
 初めまして、イル・ベルリオーネ様……」


ラクリモーサは、水晶柱に向かって完璧な一礼をしてみせる。
否、水晶柱に向かってでは無い。
水晶の中にいる[人]に向かって、だ。


「突然の来訪、申し訳ございません。
 そして、ここまでお呼びいただきましてありがとうございます。
 代表してお礼を述べさせていただきますわ」


そしてラクリモーサはゆっくりと、水晶に手を触れる。
ヒンヤリとした感触が、火照った身体に心地良かった。
それだけで達してしまいそうな程に――


「アァ……
 何て罪作りな殿方なのでしょうか……」


燃えるような朱色の外套に身を包み、
黒鴉の頭が彫りつけられたスタッフを持ち、
水晶の中に立ち尽くす【青年】は何も語らない。
意志の強さを感じさせる瞳が、全てを見通しているかのようにラクリモーサを貫くのみ。


「イル様、早く私をメチャクチャにしてくださいませ」


ラクリモーサは、舌を伸ばして「チロチロ」と水晶を舐め始めた。 
 






おじいちゃん編終了です。
「明るく、楽しく、ハーレムでおじいちゃん無双」は達成できたでしょうか?

このコンセプトでは「ハーレム」というのが最大の難関でした。
やっぱりハーレムものって、女性キャラクターに魅力が無いと面白くないと思っています。
必死に、ルイディナ、ファナ、ソランジュは書かせていただきました。
少しでも気に入っていただけると嬉しいのですが……いかがでしたでしょうか?



そして、ようやくバラバラになった4人のキャラクター紹介編が終了です。

以前にも全く同じ文章を書いたような気がしますが、正直、ここまで書けるとは思いませんでした!
稚拙な文章ですが、読んでくださった皆様のおかげです。
本当に、本当にありがとうございます!




さて、最初に出会うのは誰と誰なのやら?w


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