第八話 蝶と嵐と瓢箪ずっと出番が無く、只飯を喰らっているみたいで居心地が悪い。ヤン・ウェンリーの図太さが羨ましい。これまでは、演習をして何とか日々を費やしていたが先日の事で演習を出来なくなった。そんなこんなで無為に日々を過ごしていた俺は、統合作戦本部に呼ばれた。俺を呼んだのは統合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥だ。「実は、君に行って来て貰いたい所があるのだが・・・・」「私は軍人です。行けと言われれば何処にでも行きます。」つい、調子に乗ってウランフ提督の様に返事をしてしまった。「そうか。では、ヤン・ウェンリー少将の指揮する第13艦隊と供にイゼルローン要塞攻略に参加してくれ。」呆気にとられる俺。「しかし、イゼルローン攻略はヤン提督の第13艦隊のみで行う予定では・・?」「予定ではそうだったのだが、実は・・・」シトレ元帥が難しそうに口を開く。簡単に説明するとこうだ。ヤン提督が第13艦隊(半個艦隊)のみでイゼルローン要塞攻略を任された。この事を知った第2艦隊の社長(パエッタ提督)が「ヤン提督は同盟に無くてはならない人材だ」、「その貴重な人材をこのような無謀な作戦で散らすのか!!」と猛抗議をシトレ元帥にしたらしい。また、今回のイゼルローン攻略作戦は奇襲を前提としているらしく少数の艦隊で行うのがベストだが、一個艦隊くらいの追加なら大丈夫じゃね?って事で、「艦隊一個追加でよろしく」って事になったらしい。そして、どの艦隊を一緒に出撃させるかとの話題になった時、「それなら、第11艦隊のペトルーシャ・イースト中将が適任と思います。」byパエッタ提督「第11艦隊のペトルーシャ・イースト中将でお願いします。」byヤン・ウェンリー「演習が大好きのペトルーシャ・イースト中将が適任だな。」byアレックス・キャゼルヌで俺の艦隊に出番が回って来た。今回の出兵は対外的には訓練と言う事で出発をするらしく、俺の艦隊は演習大好き(別に好きでは無いが)で周囲にとおっているので「演習大好き艦隊」と「新規編成艦隊」の合同演習と言う名目で出兵すれば良いカムフラージュになるのでこの様な結果になった。「余計な事しやがってあいつら、特に社長(パエッタ)と恐妻家(キャゼルヌ)。」と思う半面「やっと出番が来た。」とホッとしていた。楽勝だろ?今回は。その後、ヤン・ウェンリーと初対面し簡単な自己紹介をするとイゼルローン攻略についての基本となる作戦を二人で練る事になった。俺は「1.5個艦隊だけでは正面からは無理。」「内部から攻め落そう。」「そうだ、ローゼンリッター連隊に帝国軍に化けてもらって内部に侵入して貰うのが良い。」と原作の丸パクリ作戦を提案しヤン提督もそれに賛成という形で基本作戦は決定した。この作戦を、「イゼルローンの船」作戦と命名した俺。ちなみに作戦名の元ネタは「トロイの木馬」から来ている。その事についてヤン提督に説明した所、メチャクチャ食い付いて来た。確か歴史家を志望していたんだっけ?それから、例の「スノマタ」作戦の元ネタについても説明した所、これにも食い付いて来た。こんな風に食い付いて来ると、こっちまでテンションが上がって来る。お互いにテンションが上がり、歴史談議に華を咲かせた。俺が知ってるのは、日本の戦国時代と中国の三国志の辺りと偏っているが秀吉の墨俣以外のエピソードや、様々な武将の細かいエピソードなどを面白がってくれたようだ。その結果、ほとんどが作戦会議とは名ばかりの雑談になってしまった。結局、イゼルローン要塞の攻略担当は、ヤン提督の第13艦隊。俺の、第11艦隊の役割は第13艦隊の護衛になった。要塞駐留艦隊と戦う方が、要塞とガチでやるよりは楽だろ。ヤン提督は今回の作戦について、「成功すればラッキー、普通は失敗する。」と考えているようだ。俺もヤン・ウェンリーを見習って失敗したときには第13艦隊を援護して素早く撤退できるように準備をして置く事にする。実際、要塞駐留艦隊司令官のゼークト提督がオーベルシュタインの進言を一つでも取り入れたらこの作戦は失敗するからな。さっきまでは「原作通り楽勝だろ?」って思っていたがヤン・ウェンリーと話していると危険な賭けの様な気になって来た。備えあれば憂い無しだ。とにかく、準備だ。(主に精神的な)それから、しばらく経った。俺とヤン・ウェンリーはお互いに出征前の準備に急かされていた。ヤンは優秀な副官が付いたので少しは楽を出来ている様だが俺の副官は緑ヶ丘(ヤン嫁)さんに比べるとちょっと見劣りしてしまう。それに、参謀のラップ中佐(昇進した。)が現在ハネムーン中なのでその分、俺が頑張らなくてはならない。ああ、そう言えばジャン・ロベール・ラップ中佐は少し前にジェシカ・エドワーズさんと結婚した。結婚式には俺やヤン・ウェンリーとその他の愉快な仲間達が招待された。ヤンはその結婚式でスピーチを行ったが流石のヤンも親友の結婚式でのスピーチは二秒で終わらせなかった。貴重なものを見れたな。その後、俺はラップとジェシカさんに挨拶した。ジェシカさんは結構普通な感じの美人だった。「あなたは今、何処にいます!!」とか「居るべき資格の無い場所から出てお逝き!!」って言われないか内心ではビクビクしていたが杞憂だったようだ。その後、俺はラップに無理やり休みを取らせるとハネムーンに送り出した。で、そのツケが今の俺に廻ってきているという訳だ。だって、しょうがないじゃん。ジェシカさんって怒らせるととても怖そうなんだもん。少しは機嫌を取って置かないとね。・・・・続く