第六話 アスターテ会戦とその後 帝国軍ラインハルト艦隊赤毛「星を見ておいでですか?」金髪「ああ、星は良い。 いつの時代、何処の社会でも人は幼い頃には夜空の星を見上げて それを取ろうと手を伸ばす。 そして、やがて自分の腕が星に届くほどには長くないのだと知るという。」 この台詞はアスターテ開始の時報のような物だと思う。・・・ 中略・・・金髪「一つ問題があるとすれば、敵にあの男がいるかどうかだ。」 赤毛「かつて第3次ティアマト会戦の英雄と呼ばれた男。ペトルーシャ・イースト中将。」・・・・・・・・・・いませんでした。 同盟軍第2艦隊「パエッタ司令、如何でしたか?」ヤン・ウェンリー准将の問い掛けに対に静かに首を横に振るパエッタ提督。「ヤン・ウェンリー准将、パストーレ中将もムーア中将も当初の包囲殲滅作戦に固執し私の進言には耳を貸そうとはしない。こうなっては仕方が無い。勝つ事は出来ずとも、せめて負けない様にする事は出来るはずだ。ヤン・ウェンリー准将、君の事だ。既に策を考えてあるのだろう?」「はい、こちらをご覧ください。」彼はパエッタ中将に作戦案を提示した。彼の考えた「負け難い作戦」と「敵の取ると予測される作戦とそれに対する作戦」を。アスターテ星域会戦の序盤戦はほぼ原作通りの展開だった。同盟軍は帝国軍を三方からの包囲殲滅を目標としたが帝国軍のラインハルト艦隊はまず三方に分かれた同盟軍の第4艦隊を撃破、次に第6艦隊を撃破し最後にパエッタ中将率いる同盟軍の第2艦隊を殲滅しにかかったが、同盟軍第2艦隊は予想以上に頑強に抵抗し、帝国軍は決定打を与えられなかった。その後、調子に乗っていた金髪が同盟軍を一気に粉砕しようと中央突破戦法を使いそれを読んでいた同盟軍第2艦隊は中央突破戦法を逆手に取り第2艦隊を二つに分け中央を突破された様に見せかけ高速で敵の側面を逆進し背後に回り込む事に成功した。背後を取った同盟軍第2艦隊はラインハルト艦隊を攻撃した。これによって帝国軍のエルラッハ提督とフォーゲル提督を戦死させた。これに対し、ラインハルトは時計回りに前進し同盟軍第2艦隊の背後に回り込もうとした。この結果、同盟軍と帝国軍は互いを尻尾から飲み込もうとしている蛇の様な陣形になってしまいこれ以上、戦い続けても意味が無いと判断した双方の司令官がお互いに呼吸を合わせて撤退した。以上がアスターテ会戦の全容だ。パエッタ中将とヤン・ウェンリー准将らの活躍で原作より被害を抑え、帝国軍には原作以上の損害を与えたようだ。そして、パエッタ中将も健在だった。それから、ラップが俺の指揮下の第11艦隊に配属されている為死なずにすんだので、慰霊祭でラップの婚約者ジェシカ・エドワーズによるトリューニヒト弾劾事件は発生しなかった。また、ヤン・ウェンリー准将では無くパエッタ中将が『アスターテの英雄』と呼ばれる様になり連日、テレビで報道されている。この前のニュース番組(半バラエティ化)「お目覚めハイネセン」では時期元帥間違い無しと特集を組まれていたが半分以上はパエッタ中将の部下のヤン・ウェンリー准将に関する事だった。流石、マスコミの英雄だ。(※アスターテ会戦開始時に『第3次ティアマト会戦の英雄』に気を取られていたラインハルトは 第2艦隊には、かつて『エルファシルの英雄』と呼ばれていた 人物がいた事に気付いていなかった。 また、第2艦隊攻撃開始時に第3次ティアマト会戦の英雄は 今回の会戦に参加していない事を知ったラインハルトに油断があった為 中央突破を見破られたと悟るのに原作以上の時間を必要とした。) アスターテ後の俺も第11艦隊も相変わらず訓練三昧だ。この前、後方勤務本部長に呼び出され俺の艦隊の訓練によって消費される弾薬や燃料が他の艦隊より多いので自重する様にとの事だった。この時の俺は「確かに消耗品は大切に使わなくてはなりませんね。軍隊における消耗品、即ち弾薬燃料と兵士ですね。小官としては兵士という消耗品を大切に使う為に、弾薬燃料という消耗品を効果的に使っているつもりなんですがいけませんか?」とつい、皮肉で返してしまった。最近、俺に新たな渾名がついたらしく『ぼやきのペトルーシャ』と呼ばれ無くなっているらしいのでここらで色々とぼやいておく必要があると感じていた為にこんな対応をしてしまった。もちろん、すぐに謝って置いたし「自重します」と答えておいたので問題ないはずだ。それから、ヤン・ウェンリー准将は少将に昇進し新設される第13艦隊の初代司令官に任命された。パエッタ中将がアスターテ会戦における彼の作戦を高く評価した為である。他にもシトレ元帥やその他の提督達(俺も)が彼を高く評価していたからだ。しかし、自分の艦隊の結成式に遅刻するってどう言う事だ?集合時間の五分前、重要な事なら三十分前大作ゲームなら前日からって相場が決まってるだろ?おまけにあのスピーチは何だ?「うまい紅茶を飲めるのは生きている間だけだから、みんな死なない様に戦い抜こう。」byヤン・ウェンリー紅茶嫌いやコーヒー派にケンカを売っている様にしか思えない発言だ。国防委員長閣下などはヤンを危険視しているんじゃないのか?「まあ、遅刻はともかくスピーチに関しては誰かさんと大差ないんじゃないか?『うまい夕飯を食えるのは一生懸命働いた人だけだから、みんなで一生懸命訓練しよう。byペトルーシャ・イースト』。」「ふん。夕飯が嫌いな奴は余程の変人かダイエット中の奴だけさ。」俺に対し相変わらず毒舌で返す友人にそっぽを向いて対する俺。「お前さんはコーヒー派だから紅茶派の人間が憎いんじゃないのか?」「別に、コーヒー派って訳じゃない、紅茶も好きだ。アルコールは嫌いだがな。それじゃ失礼する。」キャゼルヌのどうでもいい質問に素っ気無く返すと、カップに残っていたコーヒーを飲み干し席を立つ。意味も無くカフェに長居するとよからぬ輩が寄って来るからな。アッテンボローとか、アッテンボローとか、アッテンボローとか。アイツは平気で人にたかるからな。他の奴らに真似されたら困る。この前も知らない奴らが俺にたかりにきやがった。少し睨んでやったら顔色を変えて逃げてったが。俺は会計を済ませるとキャゼルヌに軽く手を振りカフェを後にした。