外伝 三姉妹編 第二話 ベーターカロチンは皮のすぐ裏側にあるのであって皮にある訳ではない。※この物語は『第一話 見切り発車』の約3年前の物語です。俺の家では家事は基本的に当番でやっている。ただ一つ、料理を除いては。俺は、最初から彼女達は料理が苦手だと知っていた訳ではなく年端の行かない子供に火や刃物を使わせるのは危険だと思ったからだ。だが、先日の様な事をこの先も繰り返されてはかなわない。将来、彼女達が挟む物が得意になってしまったり暗黒物質を量産してしまうような事が無い様にしなくてはならない。と、いう訳で暇な時に料理を教える事にした。もちろん、俺が。婆さんに叩き込まれた料理スキルがこんな所で役立つ事になるとは。「と言う訳で、これより第一回お料理教室を開催します。」パチパチパチ・・・。高らかにお料理教室の開催を宣言する俺に三姉妹は社交辞令程度の拍手で答える。「料理の基本は卵料理である。今日は卵料理を作ります。」一同「タマゴ?」「そう、タマゴです。ゆでたまご、卵焼き、目玉焼き、オムレツ、スクランブルエッグなどなど。 今日は作れるだけ卵料理を作って行きましょう。」作りすぎても大丈夫だ。残飯処理係を呼んであるからな。そろそろ来る頃だ。ピンポーン。お、呼び鈴が鳴った。来たか。「今日はご馳走になります。」「今日『も』だろ?とりあえず、料理が出来るまでは、これでもつまみながら あっちでテレビでも見ててくれ。」「何ですか?これ。」「お前の好物だろ?」怪訝な顔をしているアッテンボローに予め作っておいたつまみを渡すと俺はキッチンに戻った。お前好きだろ?厚めに切ったジャガイモの皮。(一応、軽く揚げて塩を振っておいた。)「まず、卵を割る所から始めます。」「全自動卵割り機を使うんですか?」「カリンちゃん・・・、その・・全自動卵割り機って何?」「この前、道端で変な格好をしてるおじさんが売っていました。 『主婦の味方』、『将来は一家に一台』って言って・・・。」カリンの言葉にうんうん、と相づちを打つアメークとベルナデッド。「・・・・。」駄目だこいつ等、早く何とかしないと。そして、決意を新たにした俺による料理教室が行われた。で、出来た料理はタマゴオンリーだ。目玉焼き、卵焼き、ゆでたまご、オムレツ、スクランブルエッグなどなど。三姉妹は不器用では無く、俺の教えた事を見る見るうちに吸収して行った。しかし、このタマゴのパレードは残飯処理係の力を持ってしても処理し切れない。仕方ない。余ったやつは明日キャゼルヌに持って行ってやるか。それから、このタマゴの殻もただ捨てるのは勿体無い気がするな。そうだ。良い事思いついた。タマゴの殻 → カルシウム → 怒り易い人にプレゼント → KOOLになるタマゴの殻、食えない事も無いだろ?こ○亀の両さんも食ってたし。早速、明日持って行ってやるか。次の日、俺は統合作戦本部に残った卵料理を詰めたタッパーと包装したプレゼント用の箱を持って行った。ターゲットのデスクに誰にも気付かれない様に接近し(もちろんターゲットが席を外している時)プレゼント用の箱を設置した。メッセージカードを付け、俺が置いたと気付かれない様に細工をする。『これを食べて、お仕事頑張って下さい。 あなたを愛する一人の女の子より』これでよし。箱の中は女の子じゃないけど、きっと気に入ってくれる筈だ。(ほうっ)プレゼント用の箱の設置が済むと、俺は気付かれない様に素早くその場を移動した。その後、タッパーをキャゼルヌに渡しに行った。「アッテンボローから聞いたぞ。昨日は凄かったそうだな。」「ええ、タマゴオンリーだからな。しばらく、卵は観たく無い。 そういえば、さっき救急車が来ていたみたいだが・・・何かあったのか?」「ああ、その事か。何でかは分からないが、倒れた奴がいたらしい。」「倒れた?誰だそいつは。」「名前は忘れたが、アッテンボローの一年後輩で士官学校で主席だった奴らしい。」「ふーん。」「不思議な事があるもんだな。」この世には不思議な事など何も無いのだよ、キャゼルヌ君。