第四十二話 慢心は死を招く。変態じゃないよ。たとえ変態だとしても、変態と言う名の戦士だよ。 ただの変態 小君・クマアムリッツァ星域会戦、並びにそれに先立って行われた帝国領侵攻作戦。これ等の戦いの勝者は、同盟軍と帝国軍のどちらか?この問いに対して後世の歴史家の評価は大きく二つに分かれる。同盟贔屓の者達は『同盟軍の勝利である』と主張し、帝国贔屓の者たちは『帝国側の勝利である』と主張する。前者の主張の根拠は『戦死者数』であり、後者の主張の根拠は『艦艇損耗数』である。同盟軍の艦艇損耗数、約40,000隻。戦死者及び行方不明者数は約3,200,000人。帝国軍の艦艇損耗数、約32,000隻。戦死者及び行方不明者数は約3,500,000人。この様な艦艇損耗数と戦死者数の逆転は、他の会戦ではあまり見る事の無い珍しい現象だ。この現象を発生した原因はアムリッツァ前哨戦で発生した大量の負傷者をイゼルローンに輸送した為に起きた艦隊運用人員不足と人員不足を解消する為にペトルーシャ・イーストが急編成した無人艦隊の存在だ。そして後世の歴史家の中で、同盟贔屓でも帝国贔屓でも無い比較的中立な立場の者たちは『帝国側の勝利』と主張している。根拠は艦隊損耗数でも戦死者数でも無く『同盟軍の撤退』である。第2次ティアマト会戦終了時に当時同盟軍第8艦隊司令官だったファン・チューリン中将が「彼等は去り、我々は残った。一般的にはこれを勝ったと言うのではないかな。」と語ったと云う。後世の歴史家の評価はともかく、当事者達の評価は一致していた。自由惑星同盟側は自分達の敗北だと思っていた。いや、そう主張していた。軍人達はこれ以上無益な出兵を避けるため、そして国防委員長だったヨブ・トリューニヒトは今回の出兵に賛成した最高評議会メンバーを引き摺り降ろす為に。銀河帝国側は自分達の勝利だと主張していた。ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥はこの勝利の功績により宇宙艦隊総司令官に就任した。本来ならば余程の勝利を収めない限り、この様な昇進は在り得なかったのだが帝国軍艦隊がアムリッツァからオーディンに帰還する途中に銀河帝国皇帝フリードリヒ4世が死去した。フリードリヒ4世は次期皇帝を決めぬまま死んだ為、3名の皇帝候補とそれぞれの擁立者が争う三つ巴になった。一人目はブラウンシュヴァイク公爵の娘で皇帝フリードリヒ4世の孫娘にあたるエリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク。二人目はリッテンハイム侯爵の娘で皇帝フリードリヒ4世の孫娘にあたるサビーネ・フォン・リッテンハイム。三人目はフリードリヒ4世からは直系の孫にあたるエルウィン・ヨーゼフ2世。エリザベート、サビーネの両名の擁立者は父親であるブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯であった。三人目のエルウィン・ヨーゼフ2世の擁立者は、国務尚書であるクラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵だ。皇帝の外戚による帝国の私物化を快く思わないリヒテンラーデ侯は、強力な外戚の居ないエルウィン・ヨーゼフ2世を擁立したのだがリヒテンラーデ侯は独自の兵力を持っていなかった。そこで、リヒテンラーデ候はラインハルト・フォン・ローエングラム元帥と手を結ぶ事で強力な軍事力を手に入れる事に成功した。そして、宇宙艦隊司令長官だったグレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥はこれから起こるであろう内乱に巻き込まれる事を嫌い退役してしまった。ラインハルトは空位になった宇宙艦隊司令長官に収まる事になったが、彼自身はこの待遇を素直に喜ぶ事は出来なかった。同盟軍を追い払う事には成功したが、味方の損害は予想以上に大きく、敵に与えた損害は思いの他少なかった。今回の宇宙艦隊司令長官への昇進は、自分の上げた功績の結果では無く、リヒテンラーデ候がこれから起こる内乱を自分に有利に進める為の布石。その事をラインハルトは屈辱と感じたが、今後の展開を有利に進める為に彼はそれを受けざるを得なかった。。ちなみに、ラインハルト貴下の提督たちの中でウォルフガング・ミッターマイヤー中将、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将、カール・グスタフ・ケンプ中将、ヘルムート・レンネンカンプ中将の四名は、大事な局面での失敗により戦局を不利にした。追撃に失敗したケンプ中将、レンネンカンプ中将へのラインハルトの怒りは大した事は無かった。元々は自分の戦術ミスが原因だった為である。ただ、無謀な追撃でいらぬ損害を出したミッターマイヤー中将へのラインハルトの怒りは凄まじく、キルヒアイスもミッターマイヤーへの弁護を出来ずにいた。が、ミッターマイヤーの能力は疑いようの無いものであり、最終的な処分は一時的な謹慎及び、減俸で済んだ。このミッターマイヤーへの処分もこれから起こるであろう内乱時に、一人でも多くの優秀な提督を必要とするラインハルトの打算があった事は否めない。最後にフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将への処分は口頭での注意で済んだ。ビッテンフェルトが敵の第11艦隊司令官ペトルーシャ・イーストから送られて来た通信文をラインハルトに見せた所ラインハルトの『ペトルーシャ・イースト恐怖症』が再発し、オーベルシュタインが必死になだめる事になり結果としてビッテンフェルトの失敗は有耶無耶になってしまった。以後、第11艦隊から送られて来た通信文について語る事はラインハルト貴下の艦隊ではタブー(禁則事項)となった。我輩は、ペトルーシャ・イースト准将である。二階級降格した。新任地の知らせはまだ無い。久しぶりに家でゆっくりしているとアメークちゃんが進路の相談をして来た。「私、将来は料理人になりたいんです。」「なれば良いじゃん、なれるよ、きっと。」「はい、きっと提督のような志の在る料理人になってみせます。」「いやいやいや、色々とオカシイですよ?アメちゃん。」「?」「何で俺の志が料理人なの?」「え?だって、ユリアンとアッテンボローさんが言ってましたよ。」「・・俺の料理はあくまで実益を兼ねた趣味、それ以上でも以下でも無い。」「趣味で古い文献でしか残って無い料理を復活させているんですか?」「まあ、そんな所。特許は取って無いから、将来アメちゃんの開いたお店で使っても良いから。」「そうですね、使わせて貰います。」とりあえず一安心?どっかの誰かさんみたいに『軍人になりたい』とか言い出したら如何しようかと思ったが大丈夫なようだ。今俺はハイネセン記念病院にいる。目的はカリンの母親ローザのお見舞い・・・では無く、担当医から大事な話しがしたいとの申し出があったからだ。ローザの病状が悪化しているらしい。直ぐにでもに手術し、心臓の破片を取り除かなければ命の保障は無いと担当医に説明された。そこで俺は覚悟を決めた。今日こそ、なにが何でもローザを説得する。絶対だ。只今より、この両足は不動の地点だ。俺は一歩も引かない。この身は刃と化し、この地は死地となる。我が背後は如何なる敵の手も届かぬ所、我が懐は如何なる婦人の手も届かぬ所。「イーストさん、次の患者が控えていますので変なポーズを取ってないで診察室から出て行って貰えませんか?」「はい。」決意を新たにし、俺はローザの病室に向かい説得を開始した。「ローザ、手術を受けてくれ。」「いやです。」「何故?金ならある、一回だけ、一回だけで良いから。」「そう云う問題ではありません。」「大丈夫、怖くないから。痛いのは最初だけ、直ぐに気持ち良くなるから。」「別に怖がっている訳では無いです。」「本当はやりたいんだろ?わかってるって。」「知りません。」「いやいや、本当に何もしないから、絶対に。」「・・・。」「黙って天井のシミを数えている間に終わるから。」「・・・。」何故だ!!何故上手くいかない。おかしい、こんなのおかしいですよローザさん。「可笑しいのはペトルーシャさんです。」ヤベ、声に出てた?まあ、冗談はこれ位で。「本当の所、何で受けてくれ無いの?」「これ以上貴方に迷惑は掛けられません。」何時もこれだよ。仕方が無い、今日はここで引く訳には行かない。正面が駄目なら側面から攻めよう。「迷惑は掛けられ無いって言ってるけど、ここでローザに死なれた方が迷惑だぞ。 ああ、きっとカリンは俺の事を恨むだろうな、お母さんを助ける事が出来たハズなのに、お金をケチって手術代を出さず死なせたって言われるな。 俺の心も傷つくし、ローザは一生消えない心の傷を俺とカリンに負わせる事になるのか。」「カリンはそんな子じゃありません!!」「そんな子じゃ無いって、じゃあどんな子なんだ。何だかんだ言ってもアイツはまだ子供なんだよ。 頭では俺は悪くないって理解していても、感情を持て余すって事だ。」「・・・。」「そんなに迷惑掛けたく無いなら、早く元気になってあいつ等の面倒をみてくれ。」「・・・どうして、そこまで。」「ローザはカリンの母親だ、俺はカリンの父親みたいなものだろ?つまり、俺達は義理の夫婦だろ。」「ふふ、何ですか義理の夫婦って。」「俺もよく分かんない。で、お受け頂けますか?」「はい、喜んで。」ついに俺の努力が実った。俺は担当医を手術日程の相談をする為に病室から飛び出した。しかし、そこには顔見知りになった病院の看護婦さん達がニヤニヤしながら待ち構えていた。「外まで聞こえてましたよ。(ニヤニヤ)」「おめでとう御座います。(ニヤニヤ)」「結構情熱的ですね。(ニヤニヤ)」お前ら、何かを思いっきり勘違いしてるだろ。・・・・つづく。 豆 「私も最近、自分の作品に自信を持てる様になりまして。」黒猪「おのれ、エセ小説家野郎!!いつから、フィッシャー少将の真似をして、台詞を言う様になりやがった。」豆 「猪に読ませるには、私の書いた作品で充分だ!!」金銀「貴様も言う様になったな。」豆 「金銀妖眼がなんの様だ?今の私は無敵だぞ!!」金銀「貴様の鼻っ柱をへし折りに来た。『SS捜索掲示板 』を見てみろ。」豆 「どれどれ『銀河英雄伝説のSSで、戦記や戦争物を探しています。』・・・・・!!」金銀「そうだ、この作品が紹介されて無い。貴様の実力などその程度だ!!」豆 「すみませんでした、調子に乗ってました。」