第四話 家に帰るまでが第3次ティアマト会戦で敗走する第11艦隊の殿軍とつとめた俺は、ロイエンタールの罠に掛かり(※違います)敵の包囲網の中で絶体絶命に陥った。さっきまで、この艦から様々な指示を各艦に出していた。帝国軍でもそれらの通信を傍受し、すでに気が付いているはずだ。単艦突出して来たのが旗艦でも何でも無い艦なら問答無用で撃沈されていただろう。だが、分艦隊とはいえ旗艦であるなら話は別だ。と俺は思う。当初、一個艦隊に蹂躙されその危機を救ったのがラインハルトの艦隊。いわゆる、生意気な金髪の孺子に助けられて愉快なはずが無い。追撃による功績で名誉挽回しようとしたミュッケンベルガー達帝国軍諸提督の思惑を目の前にいる分艦隊の旗艦により阻止されたのだ。帝国軍の宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は自分のプライドを満足させるべく目の前の敵に降伏勧告を行うことにした。彼らしく、堂々と。とりあえず、降伏勧告が来たので通信画面に出してみる。「私は帝国軍宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥である。汝の艦は完全に我が艦隊の包囲下にあり、これ以上の抵抗は無意味である。降伏されたし。」生ミュッケンベルガーだ。本当に堂々としているな。モニターには複数の通信画像が出ている。こいつ等が帝国軍の提督達か。おっ、隅っこに金髪と赤毛を発見。こいつ等がラインハルトとキルヒアイスか。「返答は如何に!!」うわっ。怒鳴られた。俺も軍人だ。覚悟は出来ている。「汝は武人の心を弁えず、我生きて汚辱に耐えるの道を知らず、死して名誉を全うするの道を知るのみ。この上は国防委員長閣下の恩顧に報い、全艦突入して玉砕あるのみ!!」俺の返答に軽く頷くと攻撃命令を下すミュッケンベルガー元帥。中には、俺に向かって敬礼する提督もいた。帝国軍の艦隊より無数のビームが放たれ、同盟軍第11艦隊の分艦隊旗艦を貫き、爆沈する。・・・・・・・・・・・・が「ふっははははははははは。」旗艦爆沈後も俺の姿は通信画面に残り笑い声が各艦に響き渡る。唖然とする帝国軍の提督たち。おっ、金髪、赤毛も驚いてる。「ふっははははははははは、俺は初めからそっちにはいねぇんだよ」(※さっきまでいました。)笑い転げる俺。唖然としている所に、ビュコック提督及びウランフ提督の艦隊の攻撃を受けさらに混乱が帝国軍に広がった。その隙に第11艦隊の残存艦隊は安全宙域まで撤退し、俺の第3次ティアマト会戦は終了したはずだった。しかし、この時に気を抜いた事を俺は後に後悔する事になる俺は現在、ハイネセン記念病院に入院中だ。無事に戦場から撤退できたのでテンションが上がりブリッジでパラパラを踊ったのが良くなかった。(後悔中)つい足を滑らせて階段を転げ落ちてしまった。一応、戦傷扱いになったらしい。家に帰るまでが、第3次ティアマト会戦だって小さい頃習ったのに。(※習ってません)俺はテレビ(お目覚めハイネセン)の「緊急企画第3次ティアマト会戦の英雄」を見舞いに来てくれた友人、後輩と一緒に見ていた。「で、本当の所はどうなんだ?」この後方勤務に定評のある友人は俺がどうやって敵の包囲網から逃げ出してきたのか興味津々のようだ。軍事機密なのでテレビでは放送できないが、こいつ等は軍人だから言っても問題ないな。「トリックは簡単ですよ。艦を乗り換えて旗艦をその艦に変更しただけです。例の擬似突出作戦に失敗して、咄嗟に後退して行く他の艦にシャトルで乗り付けた。(もちろん総員退艦で)それだけですよ。敵艦隊への通信は情報部出身の部下(ナオオ・B中尉)にハックしてもらいました。」素直に感心するお二人さんに「こんなの、邪道中の邪道ですよ。戦闘中に旗艦を乗り換えるなんて。アッテンボロー、お前はこんな策を使うなよ。」不機嫌そうに返答する俺。例の擬似突出作戦は失敗、結構巧くいくと思ってたのに。アレじゃ自分から死地に飛び込んで行ったようなものだ。偶然、思いついた策がうまくいったからよかったが一歩間違っていたら今頃は、あの世か捕虜収容所行きだったな。第3次ティアマト会戦以来、マスメディアはこぞって俺を英雄扱いしているし親類縁者が大量に発生している。(我が身を犠牲にし味方の撤退を支援した英雄)それが今の俺の肩書きだ。「でも、結構良い戦法だったと思いますよ。例の擬似突出、戦力の差がそう無ければ敵も追撃をためらったでしょうし。」ケンカの準備が大好きな後輩がフォローを入れてくれたりする。お前は良い奴だ。この毒舌家と違って。「戦力の圧倒的差があった時点であの戦法を使った俺に問題があったんだ。戦法自体には何の問題も無い。なんならあの戦法、好きに使ってくれていいぞ。特許はまだ取ってないからな。」「やれやれ、お前さんがヤンみたいな事を言うとはな。」エルファシルの英雄か。「で?アッテンボローはともかく、ギャゼルヌ少将閣下は一体何の御用でいらしたのですか?今頃は戦後処理や失った艦隊の再編で忙しいと思われますが?」「いえいえ、これも戦後処理の一環ですよ。第11艦隊の司令官ペトルーシャ・イースト中将閣下。」憎まれ口を叩く俺に、憎まれ口で返してくる恐妻家。どうやら、俺は中将に昇進、第11艦隊の司令官にも抜擢されたそうだ。ビュコック提督とウランフ提督が俺の擬似突出作戦を評価してくれたらしい味方の撤退を援護しただけでなく、俺の作戦と演技に気を取られていた敵に損害を与える事が出来たとの事だった。以上の功績を持って昇進。「つまり、面倒くさい艦隊の再編や上官の失敗を部下に押し付けようって事だろ?」さらに、憎まれ口で返す俺だが、心の中では小躍りしている。ヤバイ、テンション上がってきた。「まあ、そんな所だ。用意する物資があったり遠慮なく言ってくれ。袖の下無しで話にのるぞ。」袖の下無しでってのはコイツの得意ゼリフだ。確かヤンにも言っていたし俺も何度か聞いたことがある。自分では面白いと思ってるのか?「優秀な人材が欲しい。分艦隊指令でも作戦参謀でも何でもいい。とりあえず、優秀な奴が欲しい。」とにかく、まずは人材。アンドリュー・フォークは要らないぞ。主席で優秀だが奴は要らない。そうだ、ジャンがいるじゃん。ジャン・ロベール・ラップをくれ。優秀だろ。後は、アッテンボローお前も来い。それからヤン・ウェンリーとエドウィン・フィッシャー、チュン・ウー・チェンだ。これだけ、人材がいれば我が第11艦隊は最強だ。・・・二人とも、何なの、その目は。そんなこんなで時は過ぎ、無事退院できた俺。ジャン・ロベール・ラップ少佐は第11艦隊に配属になったが残りの人物は駄目だった。退院して直ぐに、ウランフ提督とビュコック提督に挨拶に行った時についでに、第2艦隊の社長(パエッタ提督)にも挨拶をし、ヤンを下さいってお願いしたが断られた。艦隊の再編については今の所順調に進んでいる。従来より工作艦を多めに配備しその運用には徴兵されてきた元民間技術者を多数配置した。(この辺りの作業は事務処理能力に定評にある友人に丸投げ)餅は餅屋だ。技術は技術屋に任せる。なぜ工作艦なのか?理由は簡単だ。ヤンがアルテミスの首飾りを破壊した時に使ったアレ(ドライアイスの塊にバサードラムジェットをつけた奴)を使えば楽に勝てるんじゃね?俺天才?と考えたからだ。でもラップ少佐にこの話をしたら「動かない要塞なら兎も角、動く艦隊に効果があるとは思えません。また、持ち運びも不便です。」と反論された。だが、この程度で俺は諦めない。いつか、一夜でイゼルローン要塞を建設出来る位の立派な技術者を育ててみせる。と、決意を新たに俺オリジナルの新作戦を考えるぜ。作戦名「スノマタ」日本の戦国時代、織田信長に仕え後に天下を取った武将「豊臣秀吉」彼が、墨俣に一夜で砦を建て当時の人々を大層驚かせたらしい。この、エピソードをヒントに俺が考え出した要塞建設作戦「スノマタ」敵の目の前で要塞を作れば当然妨害される。ならばどうする?簡単だ。別の場所で要塞を作り一旦分解してから要塞配置地点まで運びそこで素早く組み上げる。流石に要塞は無理だが、この程度の作戦なら一夜で作れる。・・・・・・・駄目?作戦を書いた紙を丸めゴミ箱に捨てようとした所に、アッテンボローが入室して来た。ノックくらいしろよ。で、何しに来たんだ?「私の所属する第2艦隊の出征が決まったんで挨拶にと思いまして・・・所で何ですか?今先輩が持ってる紙。」丁度、紙を捨て様として振りかぶった状態で止まっている俺。かなり、恥ずかしい。「没にした作戦だ。」ぶっきら棒に答えるとアッテンボローにその紙を投げつける。投げ付けられたそれを受け取ると「拝見させて頂きます。」丸められた紙を伸ばし、読み始める。勉強熱心なのは良い事だ。それにしても、もう第4次ティアマト会戦か。前回の第3次ティアマト会戦から半年も経ってないのに本当によくやるな。ちなみに、今回は第11艦隊の出番は無い。再編についてはほぼ終了しているが、まだ訓練不足だと俺は認識している。周囲からは、「もう充分です。」との声が聞こえてくるが俺は慎重(心配性)な人間なのだ。出来る事はやっておくに越した事はない。第4次ティアマト会戦についても、幾つか布石?を打って置いた。第2艦隊のパエッタ提督と一緒に昼食をとった時に「惑星レグニッツァの大気は水素とヘリウムだから核融合ミサイルを打ち込むととんでもない事になりますね。」「敵の艦隊が横腹を見せたら、とりあえず撃っておけば良いんじゃね?」って言って置いたし第2艦隊の分艦隊司令やパエッタの幕僚達には5,6回同じ事を言っておいたから大丈夫だろ。パエッタさんは、実は優秀らしいからな。原作ほど酷い事にはならないはず。ただ、その時パエッタさんには「いきなり、何言ってんのコイツ?」的な顔をされ幕僚や分艦隊の指令達には「またかよ、コイツいい加減にしろ。」って顔で睨まれた。「スノマタ作戦ですか?結構興味深い作戦ですね。何か問題があるんですか?」さっと目を通すと、俺に質問をして来たアッテンボロー君。少しは自分で考えろよ。(※お前もな。)「目の前で組み立てるより、最初から作って置いた要塞を持って行った方が安全だろ。」なるほど、と頷くアッテンボローに後は同じ艦隊の説明好きの非常勤参謀殿に講義してもらえ。アッテンボローを帰した後、いつ出撃命令がきても大丈夫なように訓練を実施しようと決意する俺。あとがき(言い訳)ご愛読ありがとうございます。いつもノリで書いてしまい後から後悔している状態です。三話を書いている時もノリで書いていたら最後に詰んでしまい何とかこのピンチを切り抜けさせようと作者の脳細胞をフル活用したのですがこの様な展開になってしまいました。また、今後もあり得ない作戦を使ったり、一部のキャラが不当な扱いを受けるといった事があると思いますがご容赦の程よろしくお願いいたします。※一部変更しました。(情報部出身の部下の名前追加、など)