第二十二話 逆襲のフォーク 同盟軍の帝国領侵攻作戦が開始されてからしばらく経った頃、イゼルローン要塞に駐留している俺の所に帝国領に先行した六個艦隊が無事に最初の星系(有人の奴)を占領した。先行艦隊からの報告によると、今の所は敵の抵抗は無く駐留部隊も居ないとの報告だった。そして、予想通りに物資や食料も引き上げられていた。その為、当初の作戦通りこれ以上の進攻をせず様子見で行く事になった。もちろん、占領地に餓えた民衆がいる以上食料を配らなくてはならないが、六個艦隊もいるし占領地も一つだけなら何とかなるだろ。後、第7艦隊には農作業に詳しい技術将校のカミーユ(仮)少尉がいた筈だ。しばらく経てば自給自足出来る様になる。『魚をあげるな、釣り方を教えろ』だ。金髪「同盟軍め、やってくれる。焦土作戦を逆手に取られてしまった。これはやはり『あの男』の仕業か。」赤毛「ペトルーシャ・イースト中将。」金髪「・・・このまま辺境の人民を餓えさせる訳には行かない。だからと云って、物資食料を積んだ輸送艦を各星系に送れば間違い無く敵の手に落ちる。 これが、恐らく、いや間違い無く奴の手だ。このまま食料の無い辺境地域を放置すれば、辺境地域に住む民衆の支持を失うのは 彼らから物資食料を引き上げた我々帝国軍だ。キルヒアイス頼めるか?」赤毛「はい、ラインハルト様。」金髪「ペトルーシャ・イースト。恐ろしい奴だ。」赤毛「はい、ラインハルト様。」こうして、ジークフリード・キルヒアイスは大艦隊を率いて、物資を引き上げたが同盟軍が進攻して来なかった星系に食料物資を配って歩く事になった。同盟軍の艦隊が帝国領に進攻し、最初の星系を占領してから少し時間が経った頃。同盟の首都星ハイネセンでは一人の人物が暗躍していた。その人物の名は『アンドリュー・フォーク』予備役准将。彼は自分を落し入れ自分の地位を奪った男に復讐し、再び元の地位・・いや、元以上の地位を得る為に自分の持っている私的なルートを使い、最高評議会議長であるロイヤル・サンフォード議長に面会しある主張をした。「では、君は第11艦隊司令官のペトルーシャ・イースト中将が同盟軍の一部の上層部と結託し、君を落し入れ作戦参謀の地位を奪い、更にその地位を利用し一部の企業と結託し その企業に利益のある作戦案を提案し実行していると言うのかね?」「その通りです、議長。詳しい状況については現在調査中ですので、近日中に特定企業との癒着の証拠を提出できると思います。それに帝国軍が焦土戦術を使ってくる証拠などありません。 現時点で敵の抵抗が無く占領に成功しているのは、帝国の民衆が我々同盟軍に進んで協力している結果に過ぎません。」「なるほど、調査の方は君に任せる。・・・しかし、それが本当だとなると現在行っている『帝国領進攻作戦』の訂正が必要になるな。」「議長、その事に関しては小官が考えた作戦案が御座います。現在こそ、帝国に対して大攻勢にでるチャンスです。」アンドリュー・フォーク予備役准将。彼は自己の才能を示すのに実績では無く、弁舌で示す人間であった。しかも、その弁舌とは他者を貶めて自分を偉く見せるものであった。その論法により、ペトルーシャ・イーストを貶める主張をするフォーク予備役准将と、その主張を信じてしまうロイヤル・サンフォード議長。冷静に考えればフォーク予備役准将の主張は憶測に憶測を重ねただけの物であった。だが、人は信じたいと思っている事を信じてしまう。少なくともフォーク予備役准将は心の底からこの主張を信じていた。サンフォード議長が今回の出兵に求めた物は帝国軍に対する軍事的勝利であり、それが政権維持に必要なものであった。しかし、現在の同盟軍の出兵は帝国領の一部を占領しているものの、軍事的衝突は一度として発生していない。そして、同盟軍もその占領した地域に留まり、それ以上深く帝国領に進攻していない。その事に対し、サンフォード議長を初めとする多くの議員が不満に思っている。中には、マスコミを煽っている者までいる始末である。そして、好戦的なマスコミにサンフォード議長も突き上げを喰らっている状態であり、議長自身も現状を何とかしたいと思っていた。(もちろん、支持率アップの為に)そこに、フォーク予備役准将の自信満々な主張を受けた為、議長はフォーク予備役准将を信じ、彼が再び提出した『帝国に対して大攻勢に出る作戦』を最高評議会で決議する事に決めた。身辺の整理をしていた時、俺はある事に気づいた。俺の持って来たオヤツの中に俺のでは無いオヤツが3個混ざっていた事だ。女の子の好きそうなキャラクターが描かれているパッケージでおまけが付いているお菓子だ。俺のでは無いが、俺が買った奴だ。俺がオヤツを買う時、一緒に三姉妹と行ったのだが俺一人お菓子を買うのは気が引けたので、三姉妹にも『好きな奴を好きなだけ買って良いよ』と言った。それを聞いた三姉妹は俺の押すショッピングカートに、それぞれ好きなお菓子を大量に放り込んでいた。その中の一つだったのを覚えている。量が量だからな、きっと持って行くのを忘れてしまったんだろう。それで、如何しよう。このお菓子。俺が食べるのも変だ。 選択肢① とって置いて帰ってから三姉妹に渡す。② ハイネセンまで宅急便で送る。‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 選択肢①の場合副官「イースト提督、我が艦隊はすでに敵の包囲下です。」俺 「最早、ここまで・・か。」副官「!!直撃、来ます!!」 チュドーーーン!!!!俺 「グハッ、もう・・お前達に・・このお菓子を・渡す事が・・出来ない俺を・許してくれ。」・・・・その時、ペトルーシャ・イーストの時は永遠に停止した。 選択肢②の場合副官「イースト提督、敵は我が方のおよそ4倍です。敵将ジークフリード・キルヒアイスの名で降伏勧告が来ています。いかが致しましょう。」俺 「俺は無能者と言われるのには耐えられるが、卑怯者と言われるのには耐えられない。・・・降伏は出来ない。」副官「!!直撃、来ます!!」 チュドーーーン!!!!俺 「グハッ、お前達に・・渡した最後の・・・プレゼントが・・あんなお菓子・・だったとは・・もっと良い物・・送れば良かった・・不甲斐ない俺を・・許してくれ。」・・・・その時、ペトルーシャ・イーストの時は永遠に停止した。そして、ペトルーシャの帰りを待つ三姉妹の所に宅急便でお菓子が届いたのと、ペトルーシャ元帥の戦死の報が届いたのは、ほぼ同時だった。‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐何か今、頭の中で物凄く嫌な感じがした。・・・このお菓子の事は後で考えよう。ペトルーシャ・イーストが紛れ込んでいた三姉妹のお菓子の処遇について悩んでいた頃、自由惑星同盟の最高評議会である作戦案が決議され、・・・・そして、採択された。・・・つづく。今回の事は歴史の修正力とかでは無く、作者がアムリッツァ前哨戦とアムリッツァ会戦を書きたいが為にこの様な事になりました。