第十九話 自業自得?損? ドワイト・グリーンヒル総参謀長の執務室で卒倒したアンドリュー・フォーク准将。彼を診察した軍医によるとヒステリーとの診断だった。「治すためには敵も味方もフォークの望みをすべてかなえて彼を満足させる必要がある。」by軍医この診断をグリーンヒル総参謀長、及びヤン・ウェンリーと一緒に聞いていた俺は「帝国軍にお願いしてみますか?諸事情を話し・・・。 選挙の為と作戦参謀の自尊心を満たす為に負けたフリをして下さい。お願いしますって。」と、提案したがグリーンヒル総参謀長と軍医殿の判断でアンドリュー・フォーク准将は病気療養で予備役になってしまいました。(めでたし、めでたし)フォーク予備役准将に対する処置が済むと俺とヤンは、グリーンヒル総参謀長に向き直り何故執務室に俺達が呼ばれたのか尋ねた。グリーンヒル総参謀長によると、今回の出兵に先立って第1艦隊司令官のクブルスリー中将が大将に昇進し第1艦隊司令官から宇宙艦隊総参謀長に栄転する事が決まったそうだ。そして、第2艦隊司令官のパエッタ中将が空白になった第1艦隊司令官に移動。第2艦隊は解散し、それぞれ第11艦隊と第13艦隊に割り振られる事になったそうだ。原因は俺がもうすぐ大将になるかららしい。はっきり言って、俺は一部の上層部の連中に受けが悪い。特にロボス元帥には嫌われていると思う。なので、俺が大将になり艦隊司令官からその他の要職に昇進するより先に適当な奴を昇進させて一つでも役職を確保しておこうと云う事だと思う。特に今回の出兵では、成功しようが失敗しようが、席が一つ空く予定になっている。統合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥は出兵が成功した場合は勇退、失敗した場合は引責辞任と云う形で退役し宇宙艦隊司令長官のロボス元帥に統合作戦本部長の地位を譲る事になるらしい。 現在の同盟軍偉い順番№1 統合作戦本部長 シドニー・シトレ元帥№2 宇宙艦隊司令長官 ラザール・ロボス元帥№3 統合作戦本部次長 ドワイト・グリーンヒル大将現在は、こんな感じグリーンヒル大将にいたっては統合作戦本部次長の他に宇宙艦隊総参謀長も兼任しているのでその一つをクブルスリー大将におすそ分けするという事らしい。 出兵作戦終了後の同盟軍偉い順番(予定)№1 統合作戦本部長 ラザール・ロボス元帥№2 宇宙艦隊司令長官 ドワイト・グリーンヒル元帥№3 統合作戦本部次長 クブルスリー大将で、将来はこんな感じにするらしい。こういうのを順送り人事の員数合わせって言うのか?まあ、こんな事を考えるより先に俺にはやるべき事が出来たのでそっちを優先する事にした。旧第2艦隊から第11艦隊に約4000隻が編入される。なので、艦隊の再編や新しい分艦隊司令官を決めないといけない。そうだな。アイツにやらせて見るか。俺は艦隊の再編の事を考えながらグリーンヒル大将の執務室を後にした。「今回、色々あって第2艦隊が解散する事になった。 それに伴って、我が第11艦隊に約4000隻が新たに加わる事になった。 で、新たに必要になった分艦隊司令官の席の一つを貴官に勤めてもらいたい。 マルコム・ワイドボーン少将。」「はっ、光栄であります。」俺の目の前にいる人物はマルコム・ワイドボーン少将。銀河英雄伝説の二人の主人公であるヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムの双方に負けた唯一の人物である。ヤンとは士官学校の同期で、その時の戦略戦術シミュレーションで負けた。(敗因は補給を無視して果敢にヤンを攻め立てた所為で物資不足になった為。)原作では第6次イゼルローン攻防戦でラインハルトにやられて戦死している人物なのだが何故か生きている。第11艦隊に初めて配属されて来た時に思わず、「生きてたの?」って聞いてしまった。この時、ワイドボーンから「はっ、閣下のお陰を持ちまして。」と、返答され困惑したのはいい思い出だ。後になって調べて分かったのだがどうやら、第6次イゼルローン攻防戦で俺が偶然に命を救ったらしい。第6次イゼルローン攻防戦時に、少将になったばかりの俺は2000隻ほどの分艦隊の指揮を任されていた。この戦いで帝国軍にラインハルトが参加しウロチョロしている事を知っていた俺は積極的な攻勢に出ず、周辺宙域をウロチョロし戦闘中の味方を見つけては援護のために敵に遠距離からの攻撃を仕掛け、嫌がらせをしていた。この時、偶々ラインハルトに攻撃されているラムゼイ・ワーツ少将が率いているワーツ分艦隊を助けその結果、ラムゼイ・ワーツ少将の参謀のワイドボーンも一緒に助けていたという事だった。ちなみに、帝国軍ではペトルーシャ・イーストが率いていた分艦隊を『小賢しい虻(アブ)』と呼び、忌み嫌っていた。この戦いの時に、ペトルーシャとラインハルトは味方よりも敵に評価されていたと云う点に置いては同じだった。同盟軍がラインハルトの分艦隊を殲滅する為に作戦を立てたように、帝国軍も虻(ペトルーシャの分艦隊)を殲滅する事に躍起になった。多くの参謀や提督が虻を駆除する為の作戦を立てたが結局は、この害虫を捕まえる事は出来なかった。なぜなら、その害虫は『虻』ではなく『銀バエ』だったからである。そして、この戦いには後に第11艦隊司令官になるウィレム・ホーランド少将も分艦隊を率いて参加していた。もし、この時に同盟軍が『自称先覚者』より『銀バエ』を評価していたら歴史は変わっていたかも知れない。艦隊の再編については、大丈夫だと思う。マルコム・ワイドボーンは士官学校では『10年に一人の逸材』と呼ばれていたくらいだし俺はそんなに心配はしていない。人柄も、そんなに酷いとは思わない。以前、俺の前では猫を被っているのでは?と思い(ヤン曰く、ワイドボーンは同級生や下級生には受けが悪い。俺は一応、上官で先輩に当たる。)同じく第11艦隊の参謀で、士官学校の同期のジャン・ロベール・ラップにコッソリと尋ねた事があったが「多少はありますが、以前に比べれば遥かにマシです。 一度、死に掛けて人生が変わったんじゃないでしょうか?」との事であった。なので、今は安心している。そんな俺の所に、統合作戦本部から一つの通達が届いた。『本日付でペトルーシャ・イースト中将を 第11艦隊司令官 兼 帝国領出兵における作戦参謀『代理』に任命する。』え?何なの?作戦参謀『代理』って作戦主任参謀の間違いじゃないの?疑問に思った俺はキャゼルヌの所に確認しに向った。本当はグリーンヒル大将の所に行こうと思っていたんだがこないだの事件の所為で顔を合わせ辛いので今回はキャゼルヌの所にした。「キャゼルヌ、作戦参謀『代理』って何さ?」挨拶もそこそこに、陽気に問いかけた俺に対し処理している書類の山から顔を上げずに俺の問い掛けに答えるキャゼルヌ。「分かりやすく言うと、フォーク准将を病院送りにした張本人に責任を取らせようと言う事だろうよ。」「だったら、何故作戦主任参謀じゃないんだ。」「それは、ロボス元帥がお前さんの事を嫌いだからだ。 だから、責任は取らせるが地位は与えたくないんだろうよ。」「ふーん、俺はそんなに嫌われてるのか。」「当たり前だ、ロボス元帥は自分の優秀な手駒を二人も お前さんに潰されたと思っているからな。」「二人?フォークと・・・誰だ?」「第11艦隊の前の司令官ウィレム・ホーランド提督だ。」「なるほど、・・・・優秀な?」「この際問題なのは、お前さんが優秀と思うかでは無く ロボス元帥が優秀と思っていた、という事さ。」「で、作戦参謀『代理』って結局、何をすればいいんだ?」「それは知らん。シトレ元帥にでも聞くんだな。」「そうか、分かった。忙しい所を邪魔したな。」会話の最中に一度も此方を見ずに、書類の処理をしているキャゼルヌ。流石に、これ以上邪魔するのは不味いの思った俺はキャゼルヌの執務室を後にした。・・・・・つづく『虻』と『銀バエ』の違いについて虻は血を吸うけど、銀バエは排泄物や死骸にたかる。つまりは、銀バエは危険な事はしないという意味合いで出しました。けっして、第6次イゼルローン攻防戦で罠にかからなかった主人公が第6次イゼルローン攻防戦でヤンの罠にかかったラインハルトより優秀だという事では無いです。そろそろ、タイトルを考えた方が良いですか?