第十一話 永遠と乙男と愛犬家「敵が予想していた宙域に現れました。」「そろそろ、囮に気付く頃ですね。」「予定通りだな、監視衛星はどうだ?」「今の所は順調に機能しています。」俺は副官とJ・R・L(ジャン・ロベール・ラップ)からの報告を受けた。現在俺の第11艦隊は敵に見付からない様に隠れている最中だ。敵の位置などは、先ほど設置して置いた監視衛星からのデータでほぼ把握している。「敵艦隊からの砲撃で監視衛星が破壊されました。」「全てか?」「いえ、破壊されたのは目立つ様に配置してある衛星のみです。」「予定通りだな。」目立つ配置をしてあった監視衛星だけを破壊した後要塞駐留艦隊はイゼルローン要塞に帰還すべく移動を開始した。「よし、そろそろだ。ジャミングを始めろ。工作艦以外は駐留艦隊の背後を襲う。工作艦は例の作戦を実行せよ!!」敵艦隊が此方に背を向け移動を開始した時点で俺は全艦に指示を出した。予め作戦内容は全艦に知らせてあった為、特に混乱も無く作戦行動を開始する第11艦隊。繰り返された演習のお陰だな。「これは!!」「どうした!!敵か?」「いえ、大規模なジャミングです!!レーダーが使えません。」「何?」「閣下、これは敵襲です。」「そんな事は言われんでも判っておる!!」ゼークト提督が陰気な幕僚に八つ当たりで怒鳴った瞬間要塞駐留艦隊の後方に敵からの砲撃が突き刺さった。「ええい、敵は後ろか。全艦回頭せよ!!」「いけません、閣下。ここは時計回りに前進し・・「黙っておれ!!!!」」そして、歴史は繰り返された。今、俺の第11艦隊に背後を襲われている帝国軍要塞駐留艦隊が敵前回頭をしている。あれは、死亡フラグが立ったな。心の中で「愚かな、死ぬ気か?」と呟きながら俺はJ・R・L中佐に問いかけた。「敵の取った行動(敵前回頭)についてどう思う?」「正気の沙汰とは思えません。敵の司令官は、余程頭の逝かれたヤツです。それで無ければ何を考えているか分からない変態です!!」「・・そうか。」いつもの温厚なラップ君とは思えない程に激昂している。敵前回頭がそんなに嫌いか?(好きなやつはいない。)自分の死因だからか?俺はこれ以上深く考えないようにして目の前の敵に意識を向けた。回頭している敵を次々と此方の攻撃が貫き轟沈していく。だが、いつまでも此方のワンサイドゲームと云うわけにはいかなかった。元々、艦隊の絶対数では敵の方が数が多く無事に回頭した敵艦が反撃をして来たからだ。「一旦、敵から距離を取れ。」俺は全艦に後退する様に指示を出した。今現在の艦隊の数ではこっちが有利だ。正面から当たれば間違いなく勝てる。ラインハルト曰く「単なる数の計算だ。勝つのが当たり前ではないか。」である。しかし、正面決戦をすれば味方にも少なからず被害が出てしまう。その為、俺は現時点での積極的な攻勢は控えていた。(味方に被害が出ない時は別。※敵の回頭中とか)「提督、何故全面攻勢を掛けないのですか?あのままの勢いで勝つ事も出来たと思われますが?」「今回の目的はあくまで敵の足止めだ。駐留艦隊に勝つ事では無い。それに壊走した敵が真っ先に向うのはイゼルローン要塞だ。そこには、要塞攻略中の第13艦隊がいる。奴らが要塞攻略に集中出来る様に気を使っている訳さ。」副官の疑問に答えている俺。それに、今ここで敵を殲滅してしまっては現在進行中のもう一つの作戦が無駄になってしまうからな。そろそろ、第13艦隊が要塞を落としている時間だな。(原作どおりならば)俺の第11艦隊は先ほどから攻撃をしながら少しづつ後退し、敵が攻撃をしながらそれに合わせて前進して来ている状態だ。流石のゼークト提督も自分達よりも数の多い敵に対して無意味に突撃して来る様なアホでは無かった様だ。原作での要塞突撃は、難攻不落の要塞を落とされたショックとヤン提督からの通信のから受けた二重のショックが原因だった様だ。それに、現時点では要塞の状態を知らないゼークト提督は自棄になっていない為この様な事になっていると思う。さっきまでは、「突撃してきたら如何しよう?」と結構悩んでいた俺だったりする。もっとも、此方の後退に合わせてジリジリと前進して来る様では無能と云うしかない。俺だったら敵の後退に合わせずに逆に後退して要塞まで退却するのに。それとも、並行追撃を警戒しているのか?確かに、並行追撃などされたら要塞司令官のシュトックハウゼンは前任者の様にいや・・、嬉々として敵ごとゼークト提督を要塞主砲のトールハンマーで吹き飛ばすだろう。それを、警戒しているのか?「提督。予定の宙域に到達しました。」「工作艦の準備は?」「完了してます。」「よし、では作戦開始。」予定の宙域に到達したので、俺は空かさず作戦開始の命令を出した。ペトルーシャのもう一つの作戦とは?ゼークトとオーベルシュタインはどうなるのか?そして、第13艦隊の要塞攻略作戦の行方は?次回へ続く・・・。※言い訳もう一つの作戦とはスノマタ作戦ではありません。期待して頂いている方、申し訳ありません。