第十話 会議と紅茶と妄想と現在、同じ議題の会議が二つの場所で行われていた。会議の議題は「イゼルローン攻略の基本作戦について」である。会議の行われている一つ目の場所は同盟軍第13艦隊の旗艦ヒューベリオンである。第13艦隊の司令官ヤン・ウェンリー少将とその幕僚が最終打合せの為の会議を行っている。もう一つ、同じ議題で会議を行っている場所があった。第11艦隊司令官ペトルーシャ・イースト中将の脳内である。俺1「これより、イゼルローン攻略作戦会議を開始します。皆さんのご意見をお願いします。」俺2「イゼルローン要塞だろ?正面からは無理だな。」俺3「スノマタ作戦はどうだ?分解した要塞を持っていって速攻で組み立てる。」俺2「馬鹿か?貴様は。それなら、造ってある要塞をそのまま持っていった方が早いし安全だろ。」俺4「だが、如何せん我が同盟には移動可能の大型要塞が無い。これから造るにしても、経済状況も芳しくない。困ったものだ。」俺1「つまり、スノマタ作戦及び、要塞作って持ってくよ作戦は現状では無理と言う事ですか。他に何か有りませんか?」俺5「こんな作戦は如何でしょう?ドライアイスにバサードラムジェットを取り付けて、イゼルローン要塞にぶつけるというのは?」俺4「なるほど、それは良い作戦だ。ドライアイスの代わりに岩や小惑星でも代用がきく。」俺6「確かに、有効だ。しかし、それでは要塞が壊れてしまう。」俺3「別の要塞を持って来れば良いではないか。」俺2「さっきの話を聞いていなかったのか貴様は、代わりの要塞は同盟には無い。 まさか、帝国に『イゼルローン要塞を壊してしまったのでガイエスブルグ要塞を貸して下さい』と頼むつもりか?」俺3「なんだと、貴様!!!」俺7「静かにせよ、見苦しい。」俺6「要塞が無ければ我が同盟軍も帝国領への進入は容易になるが、逆に帝国側からも同じ状況になる。」俺4「だから今回は要塞を奪取し、それでイゼルローン回廊に蓋をする、と言う事か。」俺8「ぶっちゃけ、今更やっても間に合わないし。」一同「それを言っちゃ、お終いよ。」俺9「仕方ないさ、この会議の本当の目的は暇潰しだし。」一同「・・・・・。」優雅な俺「意見が纏まったようだな、ペトルーシャ諸君。まずは、紅茶でも「では、今回の方針はヤン提督にお任せ作戦でよろしいですね?」一同「異議なし!!」・・・・。」俺8「あーあ、終わった、終わった。この後どうする?キャンディの掴み取りでもやるのか?」俺9「それなら、オンディを呼んでこないと駄目だろ?」・・・・こうして、脳内会議は無事に終了したのである。作戦名「ヤン提督にお任せ」中国の漢の時代、。劉邦に仕えた武将「韓信」彼が、河を背に陣を構え相手を油断させ城から引っぱり出す事に成功し別働隊で空城を乗っ取る事に成功した。この、エピソードをヒントに俺が考えた要塞強奪作戦「ヤン提督にお任せ」(※考えていません)イゼルローン要塞はお前に任せる。俺は要塞駐留艦隊の足止めや戦闘を担当する。俺の中での作戦会議(暇つぶし)の方は無事に終了した。俺が第11艦隊の艦隊副司令の時に使っていた艦(初代アバイ・ゲゼル)は帝国軍の攻撃で爆沈してしまったので今は違う艦に乗っている。俺としては、新しい艦は最新のトリグラフが良かったのだがまだ、テスト中と云う事で駄目だったのでよく分からない改造戦艦が俺の旗艦になってしまった。そういえば前に一度、俺の考えた新構想戦艦を設計部の方に提案しに行った事があった。ヤマト級戦艦艦首に巨大な主砲を取り付けたタイプの艦で主砲はトールハンマー並みの威力。得意げに俺は設計部の連中に説明をしたが「そんな威力の主砲を撃つと艦自体が吹っ飛びますよ。と言うか、1艦だけの出力ではそんな威力の主砲は無理です。」と、断られたのは良い思い出だ。後で、ウチの艦隊の技術者連中にこの事を話したら大笑いされた。脳内会議の後に回想をして時間を潰している俺。今頃第13艦隊の方ではヤン提督が「今、私の家に14歳の男の子がいるがその子が戦場に引き出されるのは見たくない。」と会議をしめに入っているのかな?本来ならば階級の上の俺の艦で第13艦隊の司令部と合同で作戦会議しなくてはいけないのだが事前の打ち合わせで「要塞攻略についてはヤン提督に全面的に任せる。」って事で決着している。俺の艦隊は要塞駐留艦隊の相手でもしていればいい。大丈夫だろう。あの、エルファシルの英雄と薔薇の騎士なら。現在、第11艦隊はティアマト星系でデコイの設置、及び無人の監視衛星の設置を行っている。既に別れた第13艦隊は要塞の攻略に当たっている筈だ。後は、俺の艦隊が設置したデコイに釣られて敵がやって来るのを待つだけだ。「デコイ及び監視衛星の設置が完了致しました。」「早いな。流石我が艦隊の技術陣は優秀だな。」「しかし、提督。監視衛星など設置してもやって来た敵に破壊されてしまうのでは?」「確かに目立つ配置をしてある奴は破壊されるだろうな。だが、偽装してある奴は大丈夫だ。敵が何処にいるか分からない様な状況で、在るかどうかも分からない監視衛星を一々探す馬鹿などいない。(と、思う。)」副官のフック・カーン中尉からの報告を受けつつ彼の疑問に答える俺。「さて、設置が済んだらさっさと移動して隠れるぞ。」第13艦隊の作戦成功を祈りながら、俺は新たな指示を出す。同盟軍第11艦隊、第13艦隊がそれぞれの作戦を開始し、しばらく経った頃要塞を出撃し敵を探し回っていた要塞駐留艦隊の司令官ゼークト提督の元に一つの報告が届いた。「閣下、前方ティアマト星系、第四惑星アニシャルの周回軌道上に敵艦隊らしき反応があります。」「よし、直ちに向かえ。」部下からの報告を受け、迷う事無くゼークト提督は決断する。要塞司令官のシュトックハウゼンや自分の幕僚のオーベルシュタインの慎重論に反抗するような形で出撃して来た彼にはどうしても敵が必要だったのだ。だが、要塞駐留艦隊がその宙域に到達した時敵反応だと思っていた物が、敵の設置した囮だと気付いた。敵の策に嵌った事に気付いたゼークト提督は元々多い血の気が更に頭に上り冷静な判断が出来なくなっていた。(元々出来ていないが)彼は憂さ晴らしに目立つ箇所に設置したあった敵の監視衛星の幾つかを破壊するように命じ、その命令が実行され僅かながら気を落ち着けると直ぐにイゼルローン要塞に引き返すよう全艦に命令した。次回へつづく・・・・。