風鳴りが-----------聞こえた。耳のほんの僅か傍、風が切り裂かれた。奴の持つあの槍、閃いたときにはすでに致死。今の一撃、躱せたのはただの偶然。僅かな人生の延長。「避けたか。意図的にではあるまい。生きようとする意思か、それとも」男は掠れた声で呟く。「次は命まで届く」刹那、魔槍の一撃。肘から先が------------無かった。「あはああはっつ」擦り切れた声が喉から漏れる。痛みは無い。ただ熱い。再び風が鳴る。一瞬の空白。躯がバランスを手放し倒れ込む。左足、踝から先が消失していた。流れ出す体温と血液。流れ込む死の気配。僕はただ----------------死にたくなかっただけだ。