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No.1340の一覧
[0] 黒に侵される日常[田んぼ](2005/11/29 22:30)
[1] 始まり[田んぼ](2005/12/10 01:35)
[2] 私は健全男子です[田んぼ](2006/01/13 19:39)
[3] 日常会話[田んぼ](2006/01/22 11:05)
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[1340] 黒に侵される日常
Name: 田んぼ 次を表示する
Date: 2005/11/29 22:30
 はじめまして、田んぼといいます。
 結構な駄作ですが読んでいただければ嬉しいです。(感想をいただければもっと嬉しいです。)
 なにしろ作品を人に見てもらうことが初めてに等しいので至らないところだとは思いますがなにとぞよろしくお願いします。
   プロローグ
 遠くで何か虫の鳴き声が聞こえる、いつもと変わらずジイジイと微かに、その鳴き声は何故かとても懐かしく感じとても心地よい、虫の少ない都会では決して聞くことのできない音色。
 
 その音色が聞こえるのは夏の季節なのだから今の季節は夏、なのに何故こんなに寒いのだろう、まるで体温が体から出て行ってしまったかのように思える、そしてその寒さで目が覚めた。
 
 目を開けると同時に顔に痛みが走った、目も開けづらくて薄くしか開けられない、口の中は傷だらけのようで血独特の鉄臭い味がしてとても不快に感じた。

 視界には薄暗い風景、右に広がるフローリングの床、右に床が見えるということは今僕は床に横になって倒れているということをおぼろげながらも理解できた。

 大きく息を吸おうとしたら体の中がひどく痛んで思わずむせてしまった、そしてそれが息を吸った以上の痛みを体の中に与えた、ひゅうひゅうと必死で呼吸を整え痛みを減らそうとしたなかでゆっくり小さな呼吸ならば体の中は痛むがなんとか耐えられそうと思い小さな小さな呼吸を繰り返した。
 
 体に力が入らない、まるで体を動かすガソリンが切れてしまったかのように、とりあえず立ち上がろうとして力を込めて首を上げようとしたのだが床と頬か何かで張り付いているようでなかなかあげられない。

 仕方がないので両腕に力を込めて体を立てようとしたが、途端に両手の手の平に激痛が走った、目と左手だけ動かして左手の手の平がどうなっているのかを確かめた、すると手の平にはおそらく肉厚の刃物で刺されたような傷、いや穴があった、肉厚の刃物で刺されたためか手の平の向こう側がその穴から見えた、おそらく右手も似たようなことになっているのだろう、考えただけでも口から嗚咽が漏れそうになるが必死に耐えた。

 もう一度、今度は痛みを覚悟して両腕に力を込める、途端に両腕にいや全身に激痛が走るが必死に堪えて体を起こすぺりぺりと音を立てながら床と体を貼り付けていたもの、たぶん血が固まったもの、それが剥がれていった。
 両足に力を込めると同時にまた気の遠くなるような痛みが走った、それでも何とか力を込めて立ち上がり壁に身を預け、そこで初めて今の自分の身体を直視した。

 思ったことはひとつだけ なんでまだ僕は生きているのだろう?

 全身に刺し傷がいくつもあった、たぶん殺すためではなくただ傷を与えるのを愉しみ苦しむところでも見ようとしていたかのように、脚は手と同様に肉厚の刃物で突き抜かれたかのような傷、たぶんほとんどの血が流れ出てしまったのか傷からはあまり血は流れていない、人は体内の血の三分の一がなくなったら死ぬと聞いたことがあるがコレは明らかにそれを越えているだろう。

 いや、たぶんもうすぐ僕は死ぬだろう、だって今こうしている間にも生きるために必要な何か、物質ではない何かが徐々に崩れていくような感覚がしている。

 それでは僕は何故今こうやって死に贖っているのだろう?ふと思い出す、誰かは思い出せないが確かその誰かと約束したのだ、絶対守ると、死んでしまってはその約束は守ることは出来ない、だから無駄だとどこかで理解していながらこうやって足掻き続けているのだろう。

 壁にもたれながら歩く、辺りを見るとここはどうやら自宅のリビングらしい、薄れていく意識の中で電話の場所を思い出しながら電話のあるべきところに少しずつ進んでいく、動けば動くほど激痛が身体を走り残り少ない血が流れ出ていくのが分かる。

 その途中でふと奇妙なものを見つけた。

 それは大きなマリオネットだった、糸が切れたかのように四肢を投げ出している、それはなんだかとても気持ちが悪くなる、顔は見えない、だけどあまりにも人間じみていて生理的嫌悪を感じずにいられない、だけどコレは人間ではありえないだろう、なぜならその四肢は人間ではありえない方向に曲がり捩じれ拉げている、そして首の関節は壊れていた。   

 もしコレが人間だったのならば全ての関節という関節が外されないとこんなふうにはならないだろう、それに服から出ている素肌はこの薄暗い中でもいっそう目立つほどの漆黒、だがそれにも関わらずその肌は生々しさを感じさせる、もしこの肌が肌色だったのならば僕はコレを死体だと思ったに違いない、それほどまでにこの人形は生々しすぎるのだ。
 
 その人形は電話の近くにあった、何とかその人形から視線をそらし壁沿いに進んでいく、必死の思いで何とか電話までたどり着き、壁にもたれかかりながら電話の受話器を取った。

 おぼつかない指で必死に109を押し受話器を耳に当てた、受話器の向こう側から人の声が聞こえるなんだか違う世界のように思えた、からからの口を必死に動かして声を紡いだ。

 途端に、喉の奥から鉄臭く粘つくものがこみ上げ、ごぼっと音を立てて零れた、その音を聞いたせいか受話器側の呼びかけが激しくなった、血のせいで口の中か粘つくが少しながら口の中が湿りそのおかげで少し声が出やすくなった、掠れた声で救急車と住所を何とか伝えて、相手の返事を聞く前に受話器を持ったまま床に倒れこんだ。

 電話の本体も大きな音を立てて落ち、受話器は手から離れ落ちた、たぶんこれで数分後に救急車がここに来るだろう、自分に出来ることはここまで、あとは意識を保ち続けることぐらいしかないだろう、そしてふと視線をずらすと目の前には先ほどの気持ちの悪いマリオネットの顔があった。

 それは本当に生々しく嫌悪感をもたらした、この薄暗い中でもいっそう黒い漆黒で、眼球だけが白かった、時折見える眼球の血管と白目を向いているため微かにしか見えない本来の黒目があるはずの部分は血のように赤かった、口はだらしなく開き唾液がたれ流れている、そして僕はこの顔をどこかで見たことがある気がした。

 誰だったっけ、こんなに黒い顔をした知り合いはいないはずだ、いや黒さは考えるな、顔の造形だけで考えろ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、これは誰だ、そして唐突に一人の親友の顔を思い出しそれと同時にこれまでのことをすべて思い出した。

 そう目の前にあるのはマリオネットではなく親友だった  の死体だ、そして  を殺したのは他でもない  ではないか、が今はそんなことより重要なことを思い出した。

 これが現実ならば先ほどのあれも現実なのだろう、そうしてもう動かないはずの身体を必死で動かし始めた。

 這い蹲ってこの壊れた身体を必死に進める、身体の感覚はなくそれでもまるで何かに突き動かされるかのようにして前へと身体を進め、また別の死体を見つけた、その死体も親友の死体の様に全ての関節が外され首の関節は壊されていた、もう驚かない、これらをこんなにした奴は 
 ということも理解しているしまだまだあることも知っている。それらも  にヤラレタノダカラ、また進み、また見つけ、また進み、また見つけ、また進み、また見つけ、また進み、また見つけ、それを何度も繰り返し遂に目的の場所へたどり着いた。

 そこで見たものは今までの死体とは別の意味で目を背けたくなるような死体だった。

 それは元はとても愛らしい少女だったのだろう、いや、だったのだ。それが今では陵辱の限りを尽くされ投げ出されている、まだ未成熟だったと思われる性器は剥き出しにされピンク色で濁った液体が滴っている、全身に白濁した液体をかけられとても直視できない、そしてまだ不完全な胸のふくらみの隣には肉厚のナイフが深々と刺さっていた。

 その光景を見て自分が約束を守れなかったことを知った、彼女は僕が最も愛し、大事に思い、そして守ると誓った人だった、僕を初めて受け入れてくれて、僕の心に一番に入り込み、僕の居場所になってくれた、一緒に笑い、一緒に泣いて、片方が怒り、片方が謝った、彼女と今まで一緒に暮らしてきて本当に幸せだった、その彼女のその無残な姿を見てたまらず彼女に這いずり寄りまだ彼女がかすかに生きていることに気づいた。

 しかし彼女はあと少しで死ぬだろう、いや、生きたとしてもあんな残酷なことをされたのだもうすでに心が死んでいてもう治らないだろう、ならばこのまま死んだほうが幸せなのかもしれない、それに僕ももう死ぬ、だけどたまらずその少女の唇に口付をして、僕という存在は急速に崩れ始めた。

 今までのことが急速に思い出されていく、楽しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、嬉しかったこと、怒りたかったこと、泣きたかったこと、笑いたかったこと、叫びたかったこと、やりたかったこと、伝えたかったこと、そしてなりより彼女のそばに居たかったこと、そしてこのとき虫の鳴き声と救急隊の声を聞きながらこの僕という存在はこの世からなくなったのだ。

 最後に聞いた虫の鳴き声は僕の日常が脆く崩れ去ろうともいつもと変わらなく、何故かとても懐かしく感じとても心地よかった。


 ここで一人の少年と少女の人生という短く儚い物語が終わった。
この二人の物語の終わりはこの世界という物語の一つに大きな影響を与えるであろう。

これより物語は幕を開ける。
物語が大きく動き始めるのはこれより数年先のことになる。


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