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No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
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[1318] 遠い国から 第九話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/05/01 04:03

爵位授与にはタキシードを仕立てて出た。
正直、ドワーフの礼服が俺に合わなかった、合ったら合ったで悲しかったりするが。

そこで仕立て屋と試行錯誤しながら仕立ててもらった。
もっとも、この頃仕事もスーツでこなしてるので違和感も少なくてなかなか良い。

「まあ、いざとなったら故郷の正装と言う事でごまかそう」


田中敬一郎23歳、メイドさんが居る人生を謳歌してます、うらやましくてもやらんぞ、コレは俺のもんだ。


「さて、ドワーフのお偉いさん方と顔合わせだな、壮大な政治ショーの開幕だ」


遠い国から 第九話 「混乱」


実際、準男爵位の授与といっても名誉以外はなにもない、別に手当てや年金が出る訳ではないのだ。

実はこの下に勲爵士と言うのがあったりする、完全に一般人だと先にこちらが来る事になる。

違いは世襲制か一代限りの違いぐらいだ、基本的に魔術師は各国で勲爵士扱いされるので授与される事は無い。

まあ、貴族の方々から言わせれば「非常に名誉」な事だろうが現代日本に貴族制度は無い、正直よくわからん。

ま、どちらにせよ金をケチった国のご褒美だと受け取る方がいいだろう。


「後は何らかの思惑が有る、と言う事だな・・・・」


ドワーフ氏族連合国は全部で五氏族からなる、ドワーフ五部族の連合国家である。
日本で言う国会、最高意思決定機関は「氏族長会議」と言われる。五氏族の長が集まり会議、議決を行い

国内外の政策を決定するのだ。
会議の議長は五氏族の長の中から二十年単位で選ばれる、あくまで議長でしかなく、議決権に影響やその他の

権力的優位は何も無いのだが対外的には「王」として認識されている。
大陸では四大強国の一つとして数えられる氏族連合だが、百年ほど前、エルフを除く国全てを巻き込み、各国に

損害しかもたらさなかったと言われる「ピロール領紛争」で受けたダメージを回復しきれていないのが実情だった。
そしてこの日行われている会議も紛糾していた。紛争終結後、ほぼ儀式の様に毎回繰り返されている光景である。


「で、問題はこの頃首都を騒がせてる人間の商人だが」
中央を治めるミエレフ氏族の長、コーレンは言った。
「そうでもなかろう、今は南部の復興に力を注ぐべき、人間一人で騒ぎ立てるほどではあるまい」

北の地方を治めるホニング氏族の長はモナリンと言う、この二人は二期ほど前から良く衝突する。
発端は議長選挙の時だと言われているがはっきりしない、ま、対立しがちなのは確かである。

「人間人間とバカにして、百年ほど前に痛い目に合った事をもうお忘れかね?」
この頃,、個人的理由からコーレンに着く事が多い西部のトリアン氏族、ボバルトーだった。

前にある陶器のジョッキは既に二杯目、長の中では一番酒豪と言われている。
「それで結局南部の問題は棚上げか」

ひたすら机の上のチーズを口に入れる東部ニカトム氏族の長、エラストーだった、実は一番酒に弱いと噂されている。
「・・・・・」
最後の一人、南部のラムタ氏族長バナリーは一人目を瞑り黙り込んでいた。


全ての原因は先のピロール領紛争がきっかけだった。
領地の後継者争いが発端のこの紛争は、情勢不利になった長男バルビトールが隣国に支援を要請した事から
泥沼の様子を呈し始める。

領土拡張の絶好の好機と見て取った神聖帝国側が、義勇軍の名の下に少数ながら傭兵を派遣した事から
王国側の本格的介入が始まり、相互に小競り合いを繰り返しながら投入戦力を拡大し続けた。

投入戦力の量から考えると信じられないほど小規模の小競り合いが続き、関わってる全ての者が
「この戦争に終わりはあるのか?」
と考えていた紛争も、とある事がきっかけで急速に進展し始めた、崩壊へと、である。

王国暦610年、大陸を小麦の不作が襲う。
平時で有れば問題は何も無かった、小麦の値段が2倍ほどになるかもしれないが、そこで終わったはずだった。

しかし、都合10年ほど軍を貼り付けていた両国に、軍と民を維持し続ける体力は無くなっていた。
王国の首脳部は決断を下した、もうのんびり「戦争もどき」を楽しんでいる暇は無い、と。

先手を打ったのは王国だった、王国各都市の衛兵まで掻き集めた王国軍総勢4万は全軍で突撃を開始した。
「小麦収穫の為」と言う、実にその時代らしい理由で兵力の半分を後方に下げていた神聖帝国側の前線は瞬時に崩壊した。

王国側は当初の紛争地であるピロール領を瞬く間に制圧、神聖帝国領に侵入した。
当初の予定以上に順調に侵攻した王国側は国境から二日の地点で始めて組織立った反撃に遭遇する、それがドワーフだった。

当時、主に地政学上の要因から神聖帝国と同盟を結び、参戦したドワーフ達は政治上の問題で後方に展開していた。
帝国はドワーフの部隊にも後退を指示したのだが、結果から言うと結局、その命令はドワーフ達に届かなかった。

結果、ドワーフ達は当初の命令の「当地の確保」の命令を守り、王国軍の攻撃を三日間押し止め玉砕した。
ドワーフの部隊は通常部族毎に編成される、当時一番規模が大きかったのは海上貿易で富んでいた南部のラムタ氏族だった。

神聖帝国は戦線の北もしくは南からの迂回突破を危惧していた為、それぞれの戦線後方にニ部族の部隊を貼り付け、
中央の戦線後方には一番有力なラムタ氏族のみに任せる事にした。

無論最前線に貼り付けなかったのはドワーフ、神聖帝国両方が望まなかったからだ。


紛争の結果は誰にも不満だけが残るものになった。
ラムタ氏族の部隊が壊滅するまで時間を得た神聖帝国は、領地内に侵入された事に危機感を覚え、虎の子の帝国騎士団を
派遣、王国側の北方部隊を撃破し戦線を押し戻した。

そしてピロール領中程までに兵を進めた後停止した、攻勢限界に達したのである。
神聖帝国の前線付近は一時的とはいえ王国側に占領された為徹底した略奪を受けており、また王国側も国力以上の兵員を

維持する為に翌年の種付け用の小麦を取り崩す所まで消耗していたのである。
こうして足掛け十年程になる紛争は双方に大きな爪後を残し終結した。

ピロール領は二分されそれぞれの領主によって統治された、共に領主による統治が十年持たなかったのは皮肉である。
王国は翌年、翌々年に渡る小麦の不作により経済が混乱、紛争の論功行賞はろくに行えなかった。

後にその事に不満を持った各領主の起こした反乱を鎮圧、それを持って論功行賞を行い事を収めた。
本末転倒とも言える内容だった。
神聖帝国側もタダではすまなかった、新たに版図に加えられたピロール領の半分が宗教上の理由から騒乱を起こす。

編入されたピロール領最大の都市、ソルティルで騒乱鎮圧の為に派遣された帝国騎士団が虐殺を行い、ピロール領の人的、
経済的破綻を決定づけた、以降百年に渡り、編入された領地は辺境の荒野と化す。

又同盟国であった氏族連合に十分な報酬も渡せず、同盟は翌年「発展的解消」の名で消滅する事になる。


ドワーフ氏族連合も酷かった、被害は壊滅したラムタ氏族に留まったが、軍が文字道理消滅したラムダ氏族は混乱する。
壮年の働き手の五割を一挙に失い、指導者まで戦死したのだ、混乱しない方がおかしい。

人間以上に人口増加が遅いドワーフにとっては致命的な出来事となり海運、中核工業、商業が壊滅、氏族連合の各地に
経済難民が発生し各氏族は対応に苦慮する事になる。

百年たった今、一応の落ち着きは取り戻しているものの、小麦や大麦の一次産業以外は育たず、経済的には中央の半分以下
と言われている。
戦前、氏族の中で一番豊かと言われていたのがこの状態であった。

当初、経済発展を内心うらやんでいた他氏族も、不幸を他人事としていられた期間は非常に短かった。
難民、経済破綻、それに伴う相対的な氏族連合自体の国力の大幅な減退に頭を悩ませているのが実情であった。




「あの人間が氏族なんざ関係なく雇っているので首都は落ち着きました、の言い間違いじゃないのかね?」
モナリフがコーレンの方を見ながら言った、彼の領地ではいまだに難民に苦慮しているのである。


むろん雇っている本人にそんな考えは毛頭ない、これ以上引き抜くと問題になるので無職の者を雇っただけである。


「無職の難民は減り経済は上向いている、文句のつけようがないじゃないかね」
エラストーはモナリフに同調して言った、コーレンは首都を抱えていて余裕があるのだ、それをごまかそうとしてるに違いない。

「そのキーを握っているのが人間だと言う事が問題なのだ、コントロールが聞かなくなったらどうする!」
ボバルトーは二人に向かって言った、この頃神聖帝国の動きがきな臭い、西だけの兵力では話にならない。

北は一連托生だが東の兵力は時間が掛かりすぎる、中央とのパイプは太くしなければいけなかった。
暫く話し合いと言う名の会議は平行線をたどった、それに終止符をつけたのは何時も黙っているバナリーだった。

「そんなに心配なら鈴を付けたらどうじゃ?」
と、他の四人に向けて唐突に言った。
「・・・その鈴と言うのはいったいなんだ?南の?」

コーレンは注意深くバナリーに話しかけた、彼と関わりすぎるのは問題だが、関わらないのはさらに問題だからである。
「相手が唯の魔術師だったら動きを止めようが無い、奴らを縛るのは契約だけだ、すんなり契約を結んでくれるタマには見えんしな」

そう言って今日始めてのエールに口をつけた、四人は黙って続きを待った。
「なにせ誇りだけしか売り物の無いエルフを使用人にするんじゃ、落ち目のドワーフなんざ買い叩かれるのがオチじゃろうて」

そう言うと空にしたジョッキを勢い良く机に戻した。

「ならば正式の契約でもなくて良い、ある程度奴に責任を押し付けてしまえば良いんじゃ」
いまだに内容を把握して無いのであろう、怪訝そうな四人の長に姿勢を正して言った。

「氏族長会議議長として正式に要請する、魔術師ミツクニ氏に勲爵士、いや準男爵の爵位授与を」
そして周りの長にもう一度順番に視線を向けて言った。
「わが国の貴族の一員になればそう勝手な行動は取れんじゃろう?」




「此処に氏族長会議議長バナリーの名の下に宣言する、魔術師ミツクニ氏に準男爵の位を授ける!」

式典と言っても大した事は無い、唯の準男爵位だ、いくらこの頃首都の住人の耳目を集めてると言っても、だ。

皆の目当てはその後のパーティで俺と繋ぎを作っておく事だろう、俺もそうだし。
「つまり効率的な経営には必ず記帳と言う作業が必要になります、記録に使う羊皮紙は安いものでは有りませんが必ず
それ以上の利益を得ることが出来ます」

俺はパーティで経営の基礎について語っていた、つーか原価の管理ぐらいしろよ、おまえら。
長いパーティの間で話題は経営だけでなく多岐に渡ったが、そこは現代の知識でカバー、そつなくこなして言った。

その日はそうして存分に語り、話題について鋭いツッコミをする者をチェックしていった。後々重要だろう。
「しかし大分と利益を上げられていますが、次の事業のご計画は?」
一人のドワーフの貴族が聞いてきた。

「ええ、故郷に帰って魔術の研究をしたいと思っております」
周りの皆が驚いた表情をしている、俺、なにかまずい事言ったか?
「しかし、今行われているご商売は?」
「信頼できるものに任せて故郷に戻ります、魔術の奥義を極める、魔術師の悲願でありますからな」

一応付け足しておいた、だから何でそんな驚いた表情するのだこいつら?


氏族長会議で決められた思惑はあっさり崩れ去った、バナリーは遠くからその様子を見ながら思った。
「また緊急の会議だな・・・・・」
目を向けると他の氏族長も驚愕の表情を浮かべていた。
「長い夜になりそうだ・・・」


バナリーはため息と共にポツリとつぶやいた。



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