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No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
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[1318] 遠い国から 第十七話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/11/20 11:37
帝国の中部にウイルメックと言う町がある。帝国内でも租税の納付額が大きい事で有名な(つまり豊かな)
地方の中心となっている町である。この町には領地と領主の権勢を示すような大きな城砦が有る。
しかし、現在の持ち主は領主ではない。教会が10年前に領主から譲り受けたのだ。
そして今では大量の捕虜を収容している。紛争が始まってから捕虜となった王国貴族、騎士が捕らわれていた。
普段は教会の関係者しか訪れないこの城砦に珍しい訪問者が訪れていた。

捕らわれてから一度も部屋から出る事ができず、くさりきっていた部屋の主は初めての訪問者に驚愕した。
「バーバル先生…」
「久しぶりだね、クルック君」
驚愕の余り固まっている部屋の主を無視し、建前上はこの国のNo.2の地位に有る男はゆっくりと椅子に腰掛けた。
「さて、君の本当の雇用主として今の君の状況について、説明を受ける権利が私には有ると思うのだが?」
「せ、先生、これにはいささか難しい事情がございまして…」
「安心したまえ、急を要する問題は特に無い。ここの坊主にも話は通してある、説明したまえ」
それでもなかなか話を進めない魔術師に痺れを切らした宰相は少し怒気のこもった声で言った。
「良いから話せ、お前がどう話そうとこの状況は変わらんのだ。それとも、少々不便な部屋にでも移りたいのかね?君は」
声の中の本気を感じ取ったのだろう、クルックは重い口を開いた。今の境遇には満足してないが、それでも一般の騎士と
比べると段違いの環境である。そんな羽目にはなりたくなかった。

「つまり話をまとめると、本来の目的とはまったく関係の無い事に手を出して失敗した。そう言う事かね」
頭が痛くなる内容だった。弟子の中では一番魔力が強い男だったのだが、どうも知性の方に問題が有るのかもしれない。
「しかし先生、名を上げて信用を得る為にはしかたがない事だったのです」
「お前は…魔術師として名を上げる為には、戦争で名を上げなければならないと本気で考えているか?」
戦場での魔法使用は禁止、という原則すら覚えてないのだろうか。もしかすると人選に大きな間違いが有ったかもしれない。
不服そうに黙り込んだクルックを見ながら考えた。しかしこの男ぐらいの魔力がなければ、短期間に相応の地位に就く事は
出来なかっただろう。この男にはもう少し役立ってもらわなければ困る。
「…三日後この城の警備隊長が君を狩に誘う予定になっている。狩に出たら私の手配した使いの者と合流し王国へ逃げろ。
話はつけてある」
「おお、ありがとうございます先生!」
先程までの表情を一気に変えたクルックが言った。
「お前が欲しがった英雄の称号も、これでお前の物だ。しかしこれが最後だ、次にしくじったらわしもしらん。慎重に動け」
最後まで話を理解したのか不安が残るが、いまさら他の候補を送り込む余裕もない。
最悪、次の決戦まで持てば良いと考えておけばよかろう。部屋を出る時に振り返りもう一度言った。
「よいな、今回が最後だぞ」


「マスター、朝食の準備が整っております。ご準備下さい」
エマの呼ぶ声で目が覚めた。いつもの朝の風景と言えばそれまでなのだが、日本にいた頃では考えられない
素晴らしい環境だと言えるだろう。だが、不満が無い事も無いのだ。
「エマ、前にも言ったとおり、朝起す時はメイドさんVerだけでなく妹Verや幼馴染Verとか、
どうせ寝る時は一緒なんだから有閑マダムVerとか混ぜてくれると嬉しいな、と言っているではないか」
「…他のメイドにしめしがつきません。」
「違う、違うぞエマ!しめしやもやしの問題ではない!漢の夢の問題だ。全国6千万の漢が、一度は夢見る
理想郷なのだ!!」

田中敬一郎二十代後半、たとえ電気や水道が無くても夢を追い続ける漢。




「では、お食事の用意が整っておりますのでお早めに」
「…」

そんな彼は現代人だったのです。






遠い国から 第十七size=6>話 「転用」




「やっぱ政治家なんぞ営業するもんじゃねえなあ、こう不便だと割が合わんぞ」
馬車に揺られながら、前の座席に腰掛けてるエマに話しかけた。
「政治とは貴族の義務であると思うのですが、マスター?」
エマはそれが当然だと思っているのだろう、不思議そうな表情で俺を見た。
「俺にはそれがもう一つ理解できん、趣味ならともかく世襲なんて最悪じゃないか」
だから貴族というものが概念はともかく、実際にごっそりといるこの世界に違和感を感じてしまう。
あ、そういや俺も一応貴族だっけか?
「おまけに今回みたいに巡察に行くにしても、根回しに一月必要だなんて悪い冗談みたいだ」
金髪エルフ襲来に伴い変化した対外情勢に対抗するため、この一月駈けずり回っていたのだ。
今回の南部再訪もその一環である。
「お言葉ですがマスター、今この国で一番の重要人物は貴方です。もう少し身の回りに気を配ってください」
まー、難民が増えてる昨今、そういう危険も増えているとは思うが…
「時期が時期だからな、平和になったら善処しよう」


ドワーフ領南部最大の港町ドナイア、今回の紛争で一番忙しくなった町である。
紛争前はここ10年新造船など一隻もなく、修理だけで細々と運営されてきた大陸最大の造船所だが
新たな宰相就任と共に国から大量の船の一括生産を受注した。
働けるものは子供から老人まで、女性も帆の縫い合わせの為にかき集めた。
現在この町は、日本のバブルも真っ青な好景気の只中に有った。
「親方ー、宰相様が来ましたぜー」
商船6隻の建造を同時進行させ、かつ監督している造船所のトップは現役の船大工である。
ここ数十年で一番忙しい時を過ごしていた男は、弟子の声に顔を上げた。
「かまわん、ここに通せ」
船の受注の際に注文内容で3日程揉めた事がある。宰相と呼ばれている人間の性格は把握しているつもりだった。
「久しぶりだな、親方。元気そうでなによりだ」
相変わらず船底のフジツボみたいに引っ付いて離れないエルフ女をつれて、どこか抜けた様な表情を浮かべた人間が来た。
無論警戒は怠らない。顔に似合わず知恵も知識もある難物である事は、最初の取引で思い知らされている。
「どうした宰相殿、納期はそんなに遅れちゃいねーぜ」
大きさから装備までまったく同じ船を20隻作れ、と言う実に面白くない注文を出した人間を見上げて言った。
「すまんな親方、今日は謝りに来たんだ。例の奴だが、荷物を載せるのは戦争が終わった後になる」
「なに?」
例の船、寂しいを通り越して無残と言う他がないドワーフ海軍の実に100年ぶりの新造戦闘艦だ。
帳簿上の発注金額は大量生産している船と似たような物だが、実際は1隻あたり10%程の予算をごまかして
浮いた予算を久しぶりの戦闘艦につぎ込んでいるのである。
この工作に気がついている者は皆無だろう。船の大きさなどは商船と似たような物だから誰も気付いていない。
積載する「荷物」に莫大な予算が食われたので、船としては商船と余り変わり無い構造だからだ。
「どういう事だ?大きさや重量の問題が有るから、全部乗せるまで上甲板が張れんぞ?」
「それは分かっている、だから進水式も戦後になる。それと今使ってるテスト用の荷物も持っていかせて貰う、すまんな」
「テスト用まで…、わかっとるのか?そこまでしたら訓練もなにもできなくなる。船の戦力化は大きくずれ込むぞ!」
「ああ、分かってる、分かってるつもりだ。だがそこまでやらなきゃ勝たせてもらえそうにないんでな」
今まで扱ったことの無い武器を扱うには練習が必要だ。だが、まず陸で勝たなきゃ話が始まらない。
「そうか、そこまできびしいか…」
「呼んでない奴がパーティに参加しようとしてるみたいでな、今のままじゃ酒が足りそうに無い」
「…分かった、ただし戦闘の始まった時点で国内にある「荷物」は全部もらうからな」
予定では「荷物」と呼ばれる新兵器は、しばらくの間国内の鋳物職人総がかりで生産される。
「ああ、分かっている。これが命令書だ」
そう言うと人間は懐から封をした羊皮紙の筒を手渡した。
それを見た親方は一瞬固まった後、顔に苦笑いを浮かべつつ言った。
「…食えない奴だよ、アンタ」
「遺憾ながら、この頃よく言われる」

命令書を渡し、造船所内の「荷物」を根こそぎ馬車に積んで宰相閣下は首都に戻っていった。
例の船の建造に携わってた職人達は、多少の怒りを覚えていたが(自分の仕事が他人の横槍で大きな
影響を被ったのだ、喜べるはずが無い)めったに見せない笑顔を浮かべた親方を見て驚いた。
しばらく職人達の間で目線だけの激しい応酬が繰り広げられ、結果その場で一番若い職人が恐る恐る聞いた。
「親方、何がそんなに楽しいんで?」
「おそらく、この戦争には勝てるという事に確信が持てたから…かな」


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