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No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
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[1318] 遠い国から 第十四話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/07/11 14:03
レーヴェ神聖帝国、グドランド大陸の西側半分を統治するこの帝国は現時点で大陸最強として知られている。
しかしどの時代、どんな国でもまったく国内問題を抱えていない国家など存在しない。
国家として隆盛を誇っている場合はその問題が目立たないだけなのである。
そしてこの法則は大陸すべての国にも当てはまる。
家臣の忠誠を得るため時として必要以上の報奨を与え、結果王家の影響力が失われつつある王国。
前回の戦闘で一部族の兵すべてを失い、国内の混乱と国力低下を招き、種族的制約から国力が回復していないドワーフ。
分裂戦争以降軍事行動を起さず、大陸全ての国から忘れられつつある、もしくは無視される国となったエルフ。
そしてこの帝国にも重い問題があった、ある意味四カ国の中で一番重大な問題と言えるかもしれない。


「そうか、騎士団は勝利したか」
兵からの報告にほっとした顔でつぶやいた男がいる、神聖帝国皇帝クレスト・アルバ三世だった。
「これで一息つけますかな、西部諸侯の兵も後一月もすれば前線に着きますれば」
顔の半分が長い髭、いかにもファンタジーな魔術師といった風の男が言った、帝国宰相バーバル・ノード公爵と言う。
今年で八百歳ほどになると言われるこの男は宮廷魔術師も兼任している。
「それに二百ほどの捕虜、それも騎士ばかりを得たのは非常に大きいですぞ陛下、麦の値段も上がっておりますからな」
戦場の捕虜は身代金と交換で開放される、今回戦ったのは神聖帝国騎士団で教会の兵だが帝国の兵でもある。
通例では身代金の半分は国に納められる事になっていた。
一瞬言いよどんだ兵は顔を伏せ言った。
「閣下、今回の戦いで得た捕虜なのですが教会から通達が有りました。「今回の戦いは国の力を借りず我が騎士団が神の
ご加護だけで勝利した戦いである、よってこの戦いで得られた物は全て神に捧げるものとする」との教皇様のお言葉です」
しばらくの間謁見の間は重い沈黙に満たされた、数分ほどしてその沈黙を破ったのは皇帝自身だった。
「ご苦労、下がってよい、皆も下がれ、ノード公、貴公には少し話がある」
そうして謁見の間には皇帝と宰相だけが残った、見張りの兵も全て下げ静かになった部屋に怒気のこもった声が響いた。
「今までの取り決めでは足りないと言うのか、あの破戒僧どもが!!」
「…の、ようですな」


その頃、ドワーフ氏族連合首都ポルソールの郊外ではこの半年ですっかり恒例となった音が響いていた、発砲音である。
「おお、この間よりもさらに射程が延びたな」
視察の名目の温泉旅行から戻った後、すぐに見に行ったのは量産型の試作である種子島の出来具合だった。
「前回の物より射程は5割増しとります、これで兵が持ち歩く程度の弓に撃ち負ける事は無いでしょうな」
自慢げに答えるのは半年前まで鎧職人だったガブソン・モラットと言うドワーフだった。鉄砲を作るのに引き抜いた人物である。
この国の職人は総じて腕が良いのだが融通がきかない、そこで彼の元に出向き実験名目で鎧を一つ買ったのだ。
で、その後店の裏庭で鎧に9mmを撃ち込んだ。後は早かった、国の為に鉄砲を作ってくれないか頼むと二つ返事だった。
…そのうち刺されるかもしれんな、俺。
「各氏族から来た腕利きも鉄砲鍛えるのに慣れてきた、鉄をまきつける芯棒も良いのがそろった、これで量産も利くじゃろうて」
そう言うと射撃場でまた発砲音がとどろいた。


田中敬一郎二十五歳、今では閣下と呼ばれる違いのわかる漢。だが彼は…


「ふふふ、これで我が国は後十年戦える」


オタクだったのです。



遠い国から 第十四話 「因果」



前述したようにどんな国も国内問題を抱えている、矛盾した制度、権力者の為に存在する国内法、
自浄と言う言葉が無い官僚機構、富の偏在、悪しき習慣、レーヴェ神聖帝国も同じである。
昔大陸を制覇していた王国は君主制度に特有の問題が発生した、無能な国王の登場である。
能力は無いが権力だけは有る国王は自分に付き従う者を厚く遇した、が、反発する者などは遠ざけた。
王国首都のある大陸東方部から開拓途上の大陸西部などに領地変えを行ったのである。
必然的に大陸西部は反国王派の巣窟となり王国に反旗を翻した、王国暦197年、分裂戦争である。
そして翌年に建国されたレーヴェ神聖帝国も君主制の国として誕生した、だが数代後に問題が発生した。
無能な皇帝の登場である。
だが、王国の頃と違い横には敵対する国があった、その為に決定的な反乱までにはならなかったのである。
しかし無能な皇帝に国をまとめる事は出来ない、代わりに国を導いたのが国教たるレーヴェ教会だった。
教会がイニシアチブを取り国内の諸侯をまとめて王国と対したのである、むろん教会が力を発揮できたのには理由がある。
教会の長である教皇は各教会管区の長による投票で選ばれた、限定的ではあるが民主主義に近かったのである。
必然的にあまりに無能な者は淘汰され、一定の能力を持った者が教皇として君臨した。
無論弊害も有った、権力が帝国中枢から教会中枢に移動していったのだがそれを管理する者がいないのだ。
そうして権力を握ったが為に教会上層部にも徐々に問題が顕在化する、だが諸侯が気がつく頃には手遅れとなっていた。
教会が事実上帝国を運営し、強大な権力を握るとその権力ゆえに組織は腐敗していったのだ。
信徒からの寄付金を別にして国税の半分を得、帝国最強と言われる騎士団を擁する教会に対抗できる者はいなかった。
それでも国がまとまっていたのは幾たびも剣を交えた敵国が存在したからに他ならなかった。
教会は権力を得たが、既得権益を守る為にも王国に負ける訳にはならないからだ。
誰もが破滅は近いと確信しながらも有効な手を打てなかった、王国に負けるのは論外だが王国を倒したらどうなるのか?
帝国は崩壊への坂道を転がり落ちていた、崖はそう遠くないだろう。



「ノード公、何か良い手はないか?このままでは帝国は王国より先に崩壊してしまうぞ…」
疲れきった表情で皇帝は傍らの宰相に話しかけた、いままで何度同じ事を聞いただろうか、数えることすら億劫だった。
「残念ながら現時点で教会に対して強硬手段は取れませぬ、王国人が大喜びするのが関の山でしょう」
答えた宰相の方も疲れきった表情を浮かべていた、彼も何度聞かれたか覚えていない、三百年ほど前までは覚えているが
それ以前は彼自身が教会と争っていたのだ。
当時権力を握ったばかりの教会は、勢力を強めるためになりふりかまわない増強策を行っていた。
騎士の登用、身分の低い若手官僚の取り込み、魔法の才能が有る人物を神父として引き抜く、などだ。
当時、帝国魔術院で後進の指導にあたっていたノード公は弟子の引き抜きの攻勢にまともにさらされた。
なんとか弟子を守ろうとなれない政治闘争に明け暮れたが、気がつくと帝国内で教会に逆らうものは誰もいなくなっていた。
宰相の位に就いたのも教会に対抗せんが為だったが多勢に無勢、思うように事は運ばなかった。
「前にも話しましたが王国を取るまでは動けませぬ、王国を占領した後の混乱を利用しなければ、兵力が…」
しばらくの間沈黙が部屋を包んだ。先々代の皇帝の時に動き出したこの計画は占領した旧王国領に教会が兵力を割き、
大陸西方が手薄になるのが前提だった。
「どちらにせよ大勢死ぬな…」
椅子に深く腰掛けた皇帝は呟いた。
「魔術師は万能ではありませぬ、人の心を操る術は教会の方が一枚上手でございますればさらに…」
その言葉を聞いた皇帝は椅子から立ち上がると窓の近くに歩み寄り、外の景色を眺めた。子供の頃からこっそり外の町に
出かけるのが楽しみの一つだった、が、今の帝都は活気がない。国の経済が厳しくなると教会は贅沢品や酒、不謹慎である
と教会が一方的に定めた物を厳しく取り締まった。帝国や教会の悪口を言ったものは全て背教者として投獄された。
密告を恐れた一般人は必要な事以外何も話さなくなっていた。
「負けるわけにはいかぬ、帝国の為、民の為にもだ」
皇帝は小さいが力の篭った声で言った、幼い時、平民の子供の服を着て歩いた帝都は今は無い、威勢だけは良い街頭商人の
呼び声、少し怖いが果物を買うと必ず干菓子をおまけしてくれた露天商の女主人、共に今はいない。
帝都を騒がせるとして教会の取締りで一掃されてしまったのだった。
「…陛下、今回捕虜になった騎士たちと話をする許可を頂きたい、今は無理でも将来何かの役にたつやも知れませぬ」
「分かった、お前の好きにするが良い」
「ありがとうございます、今回の捕虜の中に気になる名前が入っておりました、坊主どもが気づいてなければ少々期待できると…」
「祖父の代から進めてきたのだ、いまさら少々遅れても気にはせん、存分に働け」
その言葉を聞いた宰相は深々と腰を折って退出した、それを見届けた皇帝は誰に聞かせるでもなく呟いた。
「お飾りの皇帝とロートルだけでは何もできんと高をくくっている様だが、今にみていろ寄生虫共が」


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