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No.1295の一覧
[0] ようこそ木魂屋へ[カムカム](2005/08/16 04:51)
[1] Re:ようこそ木魂屋へ[カムカム](2005/08/16 05:15)
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[1295] ようこそ木魂屋へ
Name: カムカム 次を表示する
Date: 2005/08/16 04:51
プロローグ
雨から逃げるように少女が走っていた。着ている藍色の制服(ちなみにブレザーでネクタイではなくリボン)から高校生のようだ。雨に濡れて制服は肌にぴったり張り付き、肩の辺りで揃えられている髪は首筋に張り付いている。辺りには彼女以外で傘を持っていない人は居ない。


はあ、一緒に傘入れて貰えば良かった・・・


すれ違う人たちを見ながら十分ほど前のことを思い返し後悔をする。学校が終わり放課後、傘を持ってきてない人は持っている友人に入れてもらっていた。そんな中、友達の少ない彼女は親しい友人全員が帰ってしまい、誰にも一緒に入れてと頼むことが出来ず雨が止むのを期待して下校時刻まで学校に残っていた。結局止まずに雨の中をこうして走る羽目になったが。
しかし、今は後悔している場合で無いと考え直し、地面を蹴る足に力を注ぎ込もうとしたところで何かに気付いたように辺りを見回して立ち止まった。
「ここ何処?」
おそらく道に迷ったらしい。
見覚えの無い場所だ。おかしい・・・いつもの帰り道だったはず・・・・いつの間に道を間違えた?
そう考えて、とりあえず来た道を戻ろうとしたとき、
「いらっしゃいませ。何をお望みですか?」
すぐ横から声がかかってきた。思わず声のしてきた方を向くと黒髪の若い男性が、釣りに行くときに持っていくような椅子に座って此方を見ていた。
「え?」
何この人?
それよりいらっしゃいませって?
突然かけられた声に驚き、言葉の意味に困惑しながら男の周りに目をやる。
椅子に座っている男の前にはギターケースが開けて置いてある。上に無色透明なビニールシートがかけられている。しかし、ギターが無い。ストリートライブをしているわけではないようだ。かといってホームレスには見えない。というかどこかで見たことがあるような気もする
少女が訝しげな顔をして自分を見ているのに気付いたのか男は
「指輪にネックレス、腕輪にロザリオ、イヤリングにブローチ色々あるよ」
とにっこり笑いながら中指と薬指に鈍く光る銀の指輪をした右手でギターケースの中を指し示した。アクセサリーの露天商かと少女は納得した。その男の顔は笑っているが眼は何かを見極めるような眼差しで、さらに雨で濡れた髪が張り付いて微妙に怖かった。だが不思議と惹かれるものを感じて少女はギターケースの中を覗き込んだ。中には様々な指輪が並んでいた。いや、指輪だけでなく男の言う通りネックレスなどもあった。ほとんど指輪だったが。少女はその中でも特にシンプルな指輪に目がとまった。その指輪が何故か無性に気になって他の品物を見ずにそれだけを見ていた。指輪が自分を語りかけてくるような気がする、気のせいかもしれないが『やっと見つけた』そういってるような気がする・・・
まるで運命の人と巡り会ったかのような眼で指輪を見つめる少女を見ていた男は
「お決まりですか?」
と尋ねると指輪を見ていた少女は顔を上げ
「これ、ください」
と値段もサイズのことも忘れて答えていた。いや、忘れたのではなく≪この指輪≫が欲しいと思った。男はケースからその指輪を取り出し
「どうぞ」
と袋に入れずに手渡す。指輪を受け取った少女はあわてて
「お、お幾らですか?」
と訊くと男は首を振り
「どうぞ差し上げます。」
微笑ましいものを見たときのような、少し緩んだ笑顔で言った。
「い、良いんですか!?」
「ええ、気に入ったようですから。」
普段の彼女なら怪しんだりしただろうが、今の彼女は指輪が手に入ることで頭が一杯だった。そのまま受け取り、まるではめる場所が最初から決まっているかのように、期待に満ちた顔で左手の中指にはめた。彼女自身特に意識せず左手にしたのだが・・・。驚くことにまるで予め彼女の指に合わせて作られたかのようにピッタリのサイズだった。彼女はそのことに驚きながらもサイズが合っていたことが嬉しいのか顔を綻ばせた。
「毎度あり!」
彼女が笑顔を浮かべた途端、大きな声で言った。その声がなんだか愉快で少女は軽く噴出してしまった。
「わ、笑わないでくださいよ」
少し恥ずかしげな声で講義したが少女の笑顔を見て
「大事にしてくださいよ?世界にたった一つのものですから。」
何かおかしな言い方だなと引っかかるものを感じたが、少女は
「もちろん、一生大事にしちゃうよ!」
と自分自身、大げさだと思いながらも答えた。
それを訊き男はもう一度
「毎度あり」
と商売用の笑顔とは違った笑みを浮かべて言った。少女は少し顔を赤らめてそのまま来た道へと帰っていった。いつの間にか雨は止んでいた・・・














「まさか、うちの学校に気に入られるやつがいる何てなあ」
少女が去り誰も居なくなった通りに向かって誰ともなしに独り言を男がつぶやく。
『灯台下暗しってやつジャン?』
右側から男の子とも女の子とも区別のつかない子供の声が独り言に答える。
「まさか空野が気に入られるとは全然思っても見なかったよ」
『ていうかマスターあの子のこと見て鼻伸ばしてたでしょ!』
周囲には男以外に人影は無い。だが今度は左側から先ほどの声とは違う若い女性の不満そうな声が聞こえてくる。
『かわいいし、スタイルいいし、服透けてたしね、ご主人♪』
「・・・見てない」
『まあ、それはともかく良かったですな、鋼一殿。適合者が見つかってこれで残すところ我ら除いて2つ、もう一息ですな。』
先ほどの女性の声とは違う女性のからかうように明るい声が、続けて地震を連想するような低い男の声が聞こえてきた。
「まあ、気長に頑張るさ。」
男が自分の手に向かって言った。正直、知らない人から見れば変人にしか見えない。
だが
『今日はもう帰ろうよ、僕疲れたよ』
「今日はお前働いてないだろ・・・」
先ほど聞こえた子供の声が手、いや指輪からしてきた。
そして男は呆れを多分に含んだ返事をその指輪に返していた。
「でもま、今日は流石に来ないだろ。帰るとしますか。」
『そうね』『さんせ~い♪』『御衣』『かえろ、かえろ~』
声色の違う四種類の声が同時に賛成してきた。男の手をよく見ると両手に二個ずつ指輪をしていた。それぞれ、これらから響いているようだ。
「さて店じまい、店じまい。・・・ん?」
椅子を畳んでギターケースを閉じようとしたとき、最近使い始めた画用紙に書いただけの看板が表を下にして倒れているのに気付いた。それも忘れずに持って帰ろうと拾い上げた。
そこには
骨董品屋こだま 臨時出張販売
と書かれていた。


木魂 綱一
18才
特技 空手
趣味 読書 店の手伝い(店長代理)
職業  表 学生
裏 精霊使い
体質 精霊に好かれやすい及び憑かれやすい
座右の銘 無し


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