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No.12812の一覧
[0] 中の人などいない!!【王賊×オリ主】[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:42)
[1] あ、ありのまま(ry なプロローグ[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:11)
[2] 勢い任せの事後処理編[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:18)
[3] 【人財募集中!!】エルスセーナの休日1日目【君も一国一城の主に!】[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:23)
[4] ドキッ! 問題だらけの内政編。外交もあるよ ~Part1~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:15)
[5] ドキッ! 問題だらけの内政編。外交もあるよ ~Part2~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:16)
[6] 【過労死フラグも】エルスセーナの休日2日目【立っています】[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:17)
[7] ドキッ! 問題だらけの内政編。外交もあるよ ~Part3~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:18)
[8] 【オマケ劇場】エルスセーナの休日3日目【設定厨乙】[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:19)
[9] 婚活? いいえ、(どちらかというと)謀略です。[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:20)
[10] いきなり! 侵攻伝説。[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:21)
[11] 始まりのクロニクル ~Part1~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:22)
[12] 始まりのクロニクル ~Part2~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:23)
[13] 始まりのクロニクル ~Part3~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:24)
[14] 始まりのクロニクル ~Part4~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:25)
[15] 始まりのクロニクル ~Part5~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:26)
[16] 始まりのクロニクル ~Part6~[ムーンウォーカー](2010/08/15 13:22)
[17] 始まりのクロニクル ~Part7~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:29)
[18] 始まりのクロニクル ~Part8~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:39)
[19] 始まりのクロニクル ~Last Part~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:40)
[20] それは(ある意味)とても平和な日々 ~Part1~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:44)
[21] それは(ある意味)とても平和な日々 ~Part2~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:44)
[22] 【休日なんて】エルスセーナの休日4日目【都市伝説です】[ムーンウォーカー](2010/06/27 18:15)
[23] 動乱前夜 ~Part1~[ムーンウォーカー](2010/05/16 17:46)
[24] 動乱前夜 ~Part2~[ムーンウォーカー](2010/05/23 12:27)
[25] 動乱前夜 ~Part3~[ムーンウォーカー](2010/06/07 00:10)
[26] 【公爵家の人々】エルスセーナの休日5日目【悲喜交々】[ムーンウォーカー](2010/06/13 13:19)
[27] 【誰が何と言おうと】エルスセーナの休日6日目【この人達はモブな人】[ムーンウォーカー](2010/07/18 20:18)
[28] 【意外と】エルスセーナの休日7日目【仲の良い人達】[ムーンウォーカー](2010/07/18 20:17)
[29] 面従腹考[ムーンウォーカー](2010/12/12 10:00)
[30] 合従連衡[ムーンウォーカー](2010/08/15 13:35)
[31] 伏竜鳳雛 ~part1~[ムーンウォーカー](2010/08/29 12:19)
[32] 伏竜鳳雛 ~part2~[ムーンウォーカー](2010/12/12 10:43)
[33] 伏竜鳳雛 ~part3~[ムーンウォーカー](2010/12/12 10:43)
[34] 伏竜鳳雛 ~part4~[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:33)
[35] 伏竜鳳雛 ~part5~[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:01)
[36] 登場済みキャラクターのまとめ その1(始まりのクロニクルLastPart終了時点)[ムーンウォーカー](2010/05/23 12:49)
[37] 【あとがき的な】各話後書きまとめスレ【何かっぽい】[ムーンウォーカー](2011/01/23 20:02)
[38] 生存報告[ムーンウォーカー](2011/03/14 20:34)
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[12812] ドキッ! 問題だらけの内政編。外交もあるよ ~Part2~
Name: ムーンウォーカー◆26b9cd8a ID:0c92d080 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/16 17:16


 さて、謁見の間に来たはいいんだが、入室と同時にものすごい勢いでガンつけてくる幼女がいるんだが……。あぁいや、歳の頃からすると幼女というのはギリギリ違うか?
 あの年頃でここにいる事からしてまず皇族なんだろうが……、とりあえずスルーだな。

 で、正面にいるおっさんが皇帝か。原作で倒れるの倒れないのと言ってた割にはちと若くねーか?
 こっから歳をとればどうなるのかっつー問題もあるけど……。
まぁいいや、とりあえず平伏平伏。





















「本日は陛下に拝謁する栄誉を賜り、誠にありがとうございます。私はエルト王国に仕えます貴族が一人、セージ=リトリーと申します」

「うむ。噂には聞いていたが、やはり僅か10歳とは思えぬな……。楽にするがよい」

「はっ! ありがとうございます」


 やはりアレだな、俺としては丁寧に丁寧にと心掛けて普通に挨拶してるだけなんだが、10歳という年齢補正が偉大過ぎる。
 そりゃあ、いくら貴族の家に産まれたからってたかだか10歳のガキがしっかりとした口上で挨拶するなんて事はそうそうできる事じゃないとは思うんだけどな。

 うーむ、チート万歳。

 で、さっきからガン飛ばしてる子は目を丸くしているな。まぁ、無理も無いが……。



 しかしこの程度で驚く幼女はただの幼女だ。
 全く驚かない幼女は良く訓練された幼女だ。
 ホント謁見は緊張するぜぇ! フゥーハハハァー!!



 サーセン、ネタに走ったけどマジで驚かないチート幼女に隣に居て欲しいかも。内政外交の場面じゃムストタンが頼りになりすぎるんだぜ。


「して、ムスト殿の紹介状まで持ってこちらへ来たという事は、それなりの事を申すつもりなのだな?」

「その通りでございます。婉曲に申しましても時間の無駄ですので単刀直入に申し上げますと、これから私の領地で起こす事業への援助をお願いしたく参りました」

「なるほど……。しかし、字面だけを聞くと実に奇妙な話だな。それならばまずそちの主に話を持って行くのが筋では無いか?」

「確かに陛下のおっしゃる事も正しいのでございますが、少しばかり事情がございまして。奈宮皇国にこの話を持ち込んだ理由をこれより説明したいと存じます」

「よかろう、話してみよ」


 よし、とりあえず門前払いだけは無くなった。後は理詰めで話を詰めていけば興味くらいは引けるはず。
 気合い入れて行けよ、俺……!


「まず事業に付いての説明を致しますが、これは簡単な話でございます。私の領内を通りますマックラー・エルストーナ間を結ぶ街道をエルスセーナ近郊から分岐し、ヌワタ地方内の街道へと繋げます。それも、2頭立ての馬車が楽にすれ違えるほどには広い道にするつもりです」

「つまり、主要街道並の街道を新たに敷設するという事か。
 しかし、それならばなおさらまずロイア伯爵殿辺りにその旨を申してみるべきではないか? 我が国の領内にも関わる話であるから無論こちらでも対応はするが……」

「それでもよろしいのですが、残念な事に我がエルト王国と奈宮皇国とでは国力に圧倒的な差がございます。そして、投下される資金力はそのまま工事期間の長短に繋がります。
 もちろんそのような事は陛下には興味が無い事と存じますが……、この新たな街道が奈宮皇国に新たな富をもたらすとすれば話は変わりましょう」

「ほぅ……」

「少し話が変わりますが、現在のヌワタ地方に関していささか他の地域に比べて税収が少ないとお考えではありませんか?
 ここ皇都から離れているとはいえ、ここに来るまでの道中で観察した限りでは少し他の地域より見劣りする点も見受けられましたが」

「確かにそちの言う通り、彼の地の税収はそう多くは無い。まぁ、彼の地にはこれといった産物も無いからな。ビルド王国やエルト王国、神楽家領国と接する地方だという事以外に何ら見るべきものは無い地域ではあるが……。
 しかし、我が皇国には他に豊かな地がいくつもある。それで困るという事は無いぞ」

「確かに、皇国は広大で豊かですからね。ですが、ヌワタ地方も秘めたポテンシャルは小さくはありません。仮に、ヌワタ地方の税収を1年か2年、街道建設に振り分けた場合の事を論じましょう。

 ――まず、新たな工事を行う事によって人足として出稼ぎに来る者が増え、一時的に様々な物品の消費量が増える事となります。それに伴い、商人たちが新たな商売の機会と捉えて彼の地に集まり商売を始める事でしょう。
 ……この時点で、少しばかりヌワタ地方の税収が増加します」


 これはある程度分かりやすい話だ。
 しかし、これだけではメリットにはならない。
 税収が一時的に増えただけでは投下した資金を回収しきれないからだ。


「続いて、街道を敷設した事により人の流れと物の流れが変化します。
 現在ヌワタ地方が複雑な国境地帯であり要衝であるのに交通の要地となっていないのは、ひとえに人や馬車が通りやすい街道が無いからでございます。
 今は皇国より西との交易はエルト王国やノイル王国と海路を使った交易をするのみに留まっておりますが、ヌワタ地方にもし主要街道並の街道が通ったならば、商人達は皇国の産物を沿岸諸国のみならず、ビルド王国やヘルミナ王国へ売り込む事すら可能になります。
 つまり、今豊かに栄えている地域がより栄える事となります」


 恐らくまだ奈宮国内には生産力に余力がある。
 もし生産力に余力が無いとしても、利に聡い商人達が新たな市場に見向きもしないハズが無い。
 街道の敷設を呼び水として需要を掘り起こした事によって供給の拡大が可能になれば、それは即ち生産量と売上高の増加に繋がり、税収の増加として返ってくる。


「さらに、ヌワタ地方を介して人や物が動く事により、ヌワタ地方そのものに金が落ちます。
 金が落ちるとなれば人が集まり、人が集まれば物が集まります。そうなれば自然とヌワタ地方で産する物品も増えるでしょう」


 最終的には、ヌワタ地方そのものが豊かに成長する、と。
 ここまで理想的に成長するかどうかはヌワタ地方を統治する領主の才覚次第だが、余程の馬鹿が統治していない限りはある程度の成果は上がるはずだ。

 順を追って説明し終えて一息つくと、俺の前で皇帝をはじめとする皆が絶句して固まっていた。
 風林のおっさんだけが面白そうに笑みを浮かべているが、さっきの女の子なんて口が半開きになったままだ。

 途中から合いの手も反論も来ないとは思っていたが、それだけ集中して喋っていたという事か。
 うーむ、経済なんざ完っ壁に専門外だからかなり与太話に近いと思うんだけど、そんなに衝撃的な事かね?



 あー、でもまぁ、この時代の街道の役割を考えればインフラ整備の考え方は新鮮かもしれない、か。軍用道としてしか認識されてない可能性まであるしなぁ。
 そこまでではないにしても、理論立てて経済効果を論じる奴が果たしているかどうか。

 つーか、マクロ経済っていう概念すらあるのかどーか、か。
 俺自身の知識が生兵法でも、概念自体がなけりゃあそりゃあ衝撃的な話になるか。

「街道を、一本作るだけで……、それだけの事が起こるというのか……?」

「そうです。他の地域ならいざ知らず、ことヌワタ地方に限ればそう的を外した意見ではないと愚考します」

「仮にそれが本当であるのならば、確かに我らが資金を融通するだけの価値は有るが……」

「では、最後にもう1つこの街道を敷設する事で得られる最も大きな利を述べたいと存じます」

「まだあるというのか?」

「……来るべきヴィスト王国との戦の際の軍勢移動時間の大幅な短縮です。
 ヌワタ地方とエルト王国中枢部を結べば、双方の援軍が短時間で互いの戦地へ移動できます」

「なっ……!」


 今度こそ、謁見の場の空気が凍りついた。
 先ほどまで面白そうに笑みを浮かべていた風林のおっさんでさえ、眼光鋭くこちらへ視線を向けたまま口を一文字に結んでいる。


「馬鹿な……。そちはヌワタ地方が最前線になるとでも申すのか?!」

「仮にヘルミナ王国が陥ちた場合、既に属国と化しているウィルマー王国の立場はさらに弱くなり、完全に併合されてしまうでしょう。
 今でさえヴィスト王国と一対一でやりあえる国はそう多くはないというのに、そうなってしまえば国力で彼の国に比肩しうる存在はここ奈宮皇国のみとなってしまいます。
 ロードレア公国もビルド王国も単体でヴィスト王国に対するにはやや国力が不足している上に、あまつさえビルド王国の王都マックラーはヘルミナ王国が陥ちればその柔らかい脇腹を敵前に晒す事となります」

「つまり、そう遠くない将来にビルド王国はヴィストの手に落ちる、と」

「このまま何も行動を起こさなければそうなると、私は確信しています」

「……良かろう。そちの言う街道敷設に関しては余が責任を持って資金を出そう」

「ありがとうございます!」


 よっしゃーっ!
 これでとりあえず当面打てる手は全て打った事になる。帰ったら帰ったで事務処理の山が待っているだろうが、当面の厄介な問題がクリアできる目処が立ったのは大きい。

 これでだいぶ気が楽になった。


「それにしても、これほどの才能の持ち主が我が国ではなくエルト王国に産まれるとは……。ムスト殿の事といい、天は二物を与えず、という事なのかの」

「未熟な身にはもったいないお言葉、恐れ入ります」

「ふっ……、それだけの弁舌を披露してなお未熟と申すか。そちが未熟な身であるのならば我が娘は今だ青い実にすらなっておらぬな。そう謙遜せずとも良い、褒め言葉くらい素直に受け取っておくがよい」

「はっ、ありがとうございます」


 あー、あんまり謙遜しすぎても失礼になるか……。とはいうものの、素直に受けとって増長していると思われるのもマズイしなぁ。
 一度は謙遜しておくのが形式みたいなもんか?
 まぁ、えらく上機嫌だからいいけど……。

 それに反比例するように例の女の子の表情が沈む事沈む事。見ていて何だか気の毒ですらある。


「それでは、この後の細かい事は風林と詰めるが良い。一葉も、後学のために同席するのも良かろう」

「御意」

「はい」


 え、あの女の子って一葉だったの?
 原作じゃ侍ユニットがほとんど使えない上にイベントも無いという事でずっとお留守番扱いだった一葉?
 上になる事にこだわりを持つエロ担当の子の?

 ……ごめん、少し言い過ぎたかも。



 しかし、あのつるぺたがあの破壊力のスタイルに育つのかぁ。しかも、原作じゃ奈宮皇国側の主要メンバーの中で一番有能っぽい描写をされてなかったっけ?
 なんという才色兼備。
 せめてゲームのユニットにもその有能さが反映されてりゃもう少し使っただろうに……。


「…………」


 うーん、何だかとっても目の敵フラグを立ててしまった気がするんだけど、大丈夫なのか?





















 しかしまぁ、フラグはともかく今は細部の詰めが先だな。



 と言っても、費用試算すら出来ていない――というか出来ないので、予算面に関してはとりあえずヌワタ地方からの税収をもって充てるという事を決めただけで終わってしまった。
 上限枠はさっきは提示されなかったんだが、まぁ、こんなものだろう。皇国としてもそれ以上に費用を出す気にはならんだろうし。
 一応こっちからも資金は出すから、足りなくなるという事は考えなくてもいいと思っている。

 やや泥縄式だけど、実際いくらかかるかの試算が技術的にも人員的にも出来ない状況なんだよなぁ。
 超おおまかな概算なら出るけど、んないい加減な数値を基にして予算組めないし。
 少なくともウチ単体じゃ無理ってだけしか分からないような状況でどうしろと?

 しっかし、ヌワタ地方の税収が振り向けられるだけでウチの出せる予算と桁が1つ違うとか、やはり奈宮は凄いとしか言いようが無い。
 あとは、工事に関する実務のために数名の経験豊富な内政官が派遣されてくるという事も決まった。

 もちろんウチが不正をしないかという監視を兼ねてるわけだが、ウチの内政官のお寒い人員事情を考えればすぐに事実上の事務方トップと化すだろう。
 むしろ、ウチの内政官をしごき上げて鍛えてやって欲しいとすら思ってたりする。現場の事務方を取り扱う人員には頭を悩ませていたので、これは渡りに船といえた。

 ただし、建設自体はヌワタ地方側から開始する事に決まった。
 一応こちらからも既存の街道――とも言えない貧弱な物だが――の拡張工事をするという形で工事は開始するが、奈宮側から出てくる資金に関しては全て向こう側から開始する工事に充てられるという事で。これはもう当然と言えば当然の事なので文句を言えるはずも無い。
 そもそも、どっちから工事を始めようと開通しなきゃ戦略的には意味が全く無い街道なので、最初から文句なんて無い。

 その他、野営テントの貸し出しとか人足用の糧食の確保に関しても万全を期したし、資材の確保やその輸送に関しても現地調達しきれない糧食まで含めて商人から調達するという事で合意した。
 その際、工事の進捗状況によって何回か入札を行うという事で風林のおっさんを説得するのに少し手間取ったけど。

 入札に参加するのは奈宮とエルトに本拠のある一定以上の大商人という事にしたので、これで多少は奈宮の大商人との繋がりも出来るといいな。
 あと、資材とかが安くなればもっと嬉しいな。



 談合とか贈賄とか、考えなきゃいけない負の側面もいっぱいあるけどな!


「今決めておく事はこれくらいでいいですかね……」

「そうですな。後は、万が一人足が不足しそうになった場合どうするかですが……。現地から調達しますかな?」

「ちゃんと給料を支払ってさえいれば、むしろ余る事の方が起こりそうですがね。まぁ、万が一そうなったらウチの連中を連れて行きますよ。人数の足しにはなるでしょう」

「む……。お気持ちはありがたく頂戴しますが、しかし有事でもないのに兵を領内に入れるのは……」

「あぁいや、違いますよ。ウチの連中とは言っても、輸送や土木工事専門の非武装の奴らですから。自分の身くらいは守れてもらわないと困るんでいずれ訓練を課すかもしれませんが、今のところは槍を握った事も無いタダの素人です」

「ほぅ……」

「と言っても、まだ数が少ないので領地に帰ったら改めて増員しなければいけませんが。今回連中を使うかどうかに関わらず、まともな頭数は揃えておきたいですからね」


 連中には後方任務をまとめて担当してもらうつもりなのだ。
 正面戦力と同じ数だけ、というのは無茶だが、多少は余裕を持たせて編成したい。正面戦力以上に重要とも言える奴らだから、早めに予定の数を揃えておきたいというのもあるし、少し急いで増員するつもりだ。

 なにせ、槍を構えて陣を組むだけなら半分素人みたいな新兵でも形くらいにはなるが、職人に近い存在になるであろう後方部隊――特に工兵――の奴らはそうは行かない。
 前線に野戦築城したのが戦闘前に自重で崩壊するとか、そういった類の光景なんて想像したくもないからな。
 だが、職人というのは育てるのに時間が掛かるのだ……。

 あと、軍・政関わらず優秀な官僚も育てないと……。
 こっちも正面戦力と同じかそれ以上に重要な人材だし、やっぱり育てるのに時間が掛かる。



 もちろん正面戦力の連中だって育てるのに金と時間が掛かるんだけどな!



 しっかし、こんな事でヴィスト軍の進攻までに準備が間に合うのかよ? 我ながら心配になってきた。
 近代軍制に近い形での常備軍を一から育ててるようなもんだからなぁ。最低でも2――いや、3年は欲しいところなんだが。


「むぅ……。荷駄の人足を揃えて運用するのであれば聞いた事がありますが、なかなか斬新な隊ですな」

「まぁ、先代が散々領内を荒らした後ですので好きにやらせてもらっています。
 ただ、若い内の苦労は買ってでもしておけとは言いますが、荒れ果てた領内を立て直しながらヴィスト王国の動向を警戒してそれに備えなきゃいけないというのは……。家を継いだばかりの若造にとっては厳しい話ですよ」


 半ば愚痴みたいになってしまったが、軍制についての情報は出来る限り流出しないように抑えておきたいので話を逸らしておく。
 後方任務専門の部隊が新設されるという話は流出してしまうが、それをどう使うかまではまだ教えたくないのだ。

 前線近くに策源地として砦を築くのは普通にやられているようだが、野戦築城系の技術はまだ無いと考えて良さそうだしな。戦略レベルでの高速機動と野戦陣地を組み合わせれば数が少なくてもある程度戦いにはなるだろう。

 いずれ流出する技術ではあると思うけど。


「貴殿には……」


 一葉タンが何かを言いかけたが、何故か最後まで言いきらずにうつむいてしまった。

 俺なんて大した事ないんだから、そんなにビクつかなくてもいいのに。


「私自身の事ならいくらでも答えられますから。遠慮無く何でも聞いて下さい」

「……貴殿の、私にとっての風林のような師はどなたになるのでしょうか? 一度お会いしてみたいと思うのですが……」

「うーん……、何か分からない事があればその都度周囲の者に聞いていますし、特にカーロンには世話になっていますが……。特別に師と仰ぐような者はいませんね」


 うん、敢えて言うなら高校の時にお世話になった担任の先生かな?
 しかしまぁ、当然そんな事は言えない訳で。こうなってみると日本の教育システムって凄かったんだなぁ、と思うね。
 問題点も一杯あるんだけどさ。


「そんな事が……。師を持たずに、そのような……」

「いやまぁ、私が特殊なだけですよ。羽ペン片手に予算が足りねぇなんてボヤきながら悶絶する10歳児なんて、私の他にもいるのなら見てみたいものですよ」

「…………」

「焦る事は無いんですよ、一葉殿。貴女には風林殿という優れた師もおられますし、才覚にも恵まれているように見受けられます。驕らず精進すれば必ず良き為政者になれます」


 なんか思い詰めてるみたいだからうっかり語っちまったけど、俺が言っても説得力ないと思えちゃうんだよなぁ。

 なにせ、俺は単純にズルしてるだけなのに対して彼女は地の頭の出来が抜群だしさ。
 今は下駄を履いている分俺の方が勝ってるけど……。時間を経て知識と経験を得た彼女と、時間を経て記憶が薄れてメッキが剥がれた俺とでは勝負にならないとしか思えないのな。

 まぁ、勝負する気にすらならないんだけどさ。


「納得できませんか?」

「貴殿と私では何が違うというのですか? 私にも貴殿のような知謀があれば、父上を助けられるのに……」

「繰り返しますが、焦らない事です。今はそうではありませんが、強大な奈宮皇国といえどいずれ必ず揺らぐ時が来ます。その時こそ、貴女の力が必要とされる事でしょう。ですから、今はじっと力を蓄えるべきです。
 ……私は、たまたまその時が貴女より早く来ただけなのですから」

「なら、その時が早く来れば良いのに……」


 ……俺は、出来れば“その時”は来て欲しくないと思っているんだがな。

 “その時”の事を理解しているらしい風林のおっさんは苦笑いしているだけだが、俺の言う“その時”とは即ち奈宮皇国の後継者問題が噴出する時に他ならないからだ。
 別に平和な時ならお家騒動の1つや2つ、こっちに迷惑さえ掛けなきゃ知ったこっちゃないんだが……。今はヴィスト王国の圧力という大問題がある。

 奈宮皇国の国力であれば、ヴィスト王国の攻勢だけならば余程の下手を打たない限り致命傷にはそうはならない。
 局面的には押し込まれるだろうが、奈宮がどうこうなる前にカーディルの寿命が尽きるだろう。

 だが、これに国内の混乱が重なるのであれば話は別だ。
 原作では皇子2人と一番上の皇女の旦那が跡目争いをしていたとか言ってたし、このフラグはあまりにも危険すぎる。



 ヴィスト王国の攻勢は“その時”じゃないのかって?
 そりゃあまぁ、原作開始時点の勢力範囲くらいまで押し込まれればヤバいが、神楽が陥ちなきゃどうという事は……。

 って、そういえば強制イベントで都城陥落するんだったっけ。

 うっわー、思ってるよりヤバいなぁ。
 まぁ、原作通りの進行ならギリギリ耐えてくれるんだろうけどさ。
 極論すれば、ジン=アーバレストがウチの王国に来るまで耐えきれば後は極悪非道の主人公様が何とかしてくれるんだし。俺はそれまで領地を守り切れれば、何とかなるだろ。

 ……極悪非道の主人公ってのは言い過ぎか?



 まぁいいや。
 いずれにしてもこの子はすぐに頭角を現すだろうし、そうなれば微妙な立ち位置とその優秀さ故に主人公の毒牙にかかるんだろうなぁ。

 こんなに良い子で、しかも美人さんなのに。もったいない。


「ところで話は変わりますが、セージ殿は嫁を貰う話などはありませんのかな?」

「……は? いや、私はまだ10歳になったばかりなんですが……」

「別にその年頃であれば婚約の話が出てくるには早いという訳ではありますまい。書を紐解けば産まれて間もない娘と立って歩き始めたばかりの稚児との婚約という話すらあるくらいですぞ」

「いやまぁ、そりゃそうかもしれませんが……。俺はただの田舎貴族ですよ? どこぞの王族というわけでも無いのにそういった話は……」

「そうですかな? 貴殿ほどの知謀の冴えを見せる童ならば、婚約の1つでもして自らの勢力に繋ぎ止めておこうという話が出てきても不思議では無いのですが。
 例えば、エルト王国は確かエルネア様が13歳で貴殿とはちょうど歳の頃が合うと思うのですが……」

「いやいや、エルネア様は陛下の一人娘ですよ。いくらなんでもそこまで思いきった話は出て来ないでしょう」


 これから先のエルト王国の立たされる状況を考えると、いくらなんでも一人娘を何の武勲も無いガキと結婚させるのは無理だろう。
 平和な時代なら……、いや、それでも無いな。ウチがいくら名門だとは言え、他の貴族の反発も大きいだろう。

 つーか、普通に暗殺フラグとか立ちそうだから慎んで遠慮申し上げたい。
 だいたい、今の領地だって重荷になりかねないのにこの上さらにエルト王国の行く末まで背負わされたりなんぞしたら洒落にならん。


「それに、いくら頭が回るといっても所詮なんの後ろ盾も無い10歳のガキですから。流石にエルト国王の座を手にするにはいささか政治力が足りませんね。話が出た途端暗殺でもされるのがオチですよ」

「そこまで理解しているのならなおさらですが……、しかし貴殿のような俊英をつまらぬ権力争いの贄に差しだすのも馬鹿げていますな」


 うぇ……、やっぱこのおっさん油断ならんわ。
 もし仮に俺が奈宮皇国の敵に回ると確信したなら容赦無く謀殺しにくるぞ。それも、エルト国内貴族間の勢力争いに見せかけてさっくり暗殺するくらいやりかねん。
 一応、この先奈宮皇国を敵に回す事だけは無いと思うからその死亡フラグは立たないと信じたいけど。


「風林、1つ聞きたいのだけど……。私がセージ殿と結婚すれば父上を助けられるのではありませんか?」

「そうですな……、セージ殿の将来性を考えれば悪くない考えだと思いますぞ」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 一葉殿と私では家格が釣り合いませんよ。それに、いくらお父上を助ける為とは言え好きでもない男に嫁ぐ事は無いでしょう!」

「いえいえ、ご謙遜をなされる事はありますまい。リトリー公爵家と言えばエルト王国の建国に最も貢献した名家にございましょう。建国当初は王家に並ぶほどの名声を誇ったと聞いていますぞ」


 はぁぁっ?! ウチってそんな大それた家だったの!?

 って、そんな事に驚いている場合じゃねー。この歳で薔薇色の鎖に繋がれるとかありえないから。
 そんでもってそれ以上に、奈宮皇国のお家騒動に巻き込まれかねないとかマジで勘弁願いたい。頭が痛いとか、そんなレベルじゃねーぞ。

 いやしかし、これで奈宮皇国からの援軍が期待できるというプラスもある事には――お家騒動による混乱で差し引きマイナスになるんですね、わかります。

 ……そもそも、こんな縁談王家に無断で組んだら普通にマズイだろ。それだけで反乱の意思ありとして処断されかねないっつーの。


「ま、まぁそのような話はここでしていても埒があきませんから……。いずれにしても皇帝陛下がお決めになる事ですし、私の意志はどうあれまずはエルト王国を通して頂かないとお答えできかねます」

「確かに、仰る通り我々がどうこう言っていてもそれで決まる話ではありませんな。姫様も、そのお考え自体は決して悪いものではございませんでしたから、落ち込まれたり焦って先走ったりしないようお願いしますぞ」

「はい……」


 なんかドッと疲れたな……。
 別にこんな色々なフラグを立てたり潰したりするためにこっちに来たんじゃないんだが……。

 まったり貴族ライフを楽しむ余生を目指しているはずなのに、全速力であさっての方向に突っ走ってる気がしないでもない今日この頃。
 ……俺、本格的に胃薬が必要かもしれん。



 さっさと領地に帰りてぇ……。






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