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No.12804の一覧
[0] 偽典 魔人転生 閑話海鳴怪奇ファイル開始[吉野](2014/09/27 10:11)
[1] プロローグ[吉野](2010/03/22 22:32)
[2] 第一話 誕生。魔人と魔王と淫獣と。[吉野](2009/11/24 04:27)
[3] 第二話 初陣。闘牛士と吸血鬼とツンデレと。(前編)[吉野](2009/11/24 04:24)
[4] 第二話 初陣。闘牛士と吸血鬼とツンデレと。(後編)後半大幅加筆修正版[吉野](2009/12/26 16:34)
[5] 第二話 初陣。闘牛士と吸血鬼とツンデレと。(あとしまつ)[吉野](2009/12/26 16:55)
[6] 第三話 武装TAKAMACHI 魔王再臨。(前編)[吉野](2009/12/05 13:47)
[7] 第三話 武装TAKAMACHI 魔王再臨。(中編)[吉野](2009/12/06 01:19)
[8] 第三話 武装TAKAMACHI 魔王再臨。(後編)~なのはの気持ち~[吉野](2009/12/25 13:57)
[9] 第四話 愚者の英断、臆病者の勇気。(前編)[吉野](2011/06/08 12:41)
[10] 第四話 愚者の英断、臆病者の勇気。(中編)[吉野](2010/01/17 22:26)
[11] 第四話 愚者の英断、臆病者の勇気。(後編)[吉野](2010/03/22 22:22)
[12] 間幕 悪魔考察[吉野](2010/02/07 11:43)
[13] 第四話 愚者の英断、臆病者の勇気。(終編)~令示の悔恨~[吉野](2010/03/22 22:29)
[14] 第五話 魔僧は月夜に翔ぶ (前編)[吉野](2011/06/08 12:41)
[15] 第五話 魔僧は月夜に翔ぶ (中編)[吉野](2011/06/08 12:41)
[17] 第五話 魔僧は月夜に翔ぶ (後編)[吉野](2011/06/08 12:44)
[18] 第六話 ぶつかり合う信念、擦れ違う想い。 (前編)[吉野](2011/06/08 12:45)
[19] 第六話 ぶつかり合う信念、擦れ違う想い。 (後編)[吉野](2011/06/08 12:45)
[20] 第七話 それぞれの思惑 (前編)[吉野](2011/06/08 12:45)
[21] 第七話 それぞれの思惑 (後編)[吉野](2011/06/08 12:45)
[22] 第八話 地獄の天使は海を駆る[吉野](2011/01/04 22:02)
[23] 第九話 決斗! 不屈の心は砕けない (前編)[吉野](2011/06/08 12:46)
[24] 第九話 決斗! 不屈の心は砕けない (中編)[吉野](2012/02/09 17:37)
[25] 第九話 決斗! 不屈の心は砕けない (後編)[吉野](2011/06/14 10:16)
[26] 第十話 絶望への最終楽章か。希望への前奏曲か。[吉野](2011/08/25 19:32)
[33] ※おわび[吉野](2012/02/05 23:37)
[38] 第十一話 Voyage[吉野](2012/02/09 17:39)
[40] 間幕 紅き奈落の底で[吉野](2012/02/06 00:08)
[41] 閑話 海鳴の休日(文末に加筆)[吉野](2013/02/27 18:56)
[42] 閑話 海鳴怪奇ファイルVol.1 うしろに立つ少女[吉野](2013/02/27 18:59)
[43] 閑話 海鳴怪奇ファイルVol.2 絢爛舞踏会[吉野](2014/09/27 10:10)
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[12804] 第一話 誕生。魔人と魔王と淫獣と。
Name: 吉野◆fe64ebc7 ID:8181ec1c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/24 04:27






第一話 誕生。魔人と魔王と淫獣と。    


 高町なのはは悔やんでいた。

 自分の判断が甘かったばかりに、ジュエルシードを見逃し、街の中心で暴走を引き起こすという、大惨事を招いてしまったことを。

 しかし、その悔恨すらも力に変え、砲撃の如き長距離間封印魔法を命中させた彼女は、一路暴走体が出現した場所へと向かい

──蒼白となった。

 暴走体の元となった少年少女はいい。気を失ってはいるものの、目立った外傷は無い。

 なのはの視線はその先──数メートル程離れたあたりで倒れている少年を見つめていた。

 身に着けている服はあちこちが千切れ、ボロボロになっており、そこから覗く肌には目を逸らしたくなるような裂

傷と打撲の跡。更に、多量の吐血の為であろう、口元と上着が真っ赤に染まっていた。

 誰が見ても危険な状態の重傷者である。すぐに手当てをしなければ、命に関わる。

 だが、命の危機にある人間を目の当たりにして、なのはは完全にパニックに陥っていた。

「あ……嫌……」

 いかに魔導師として天才的なセンスの持ち主であるとは言え、高町なのはは数日前までただの一般人、しかも小学生

の女の子なのだ。戦場や災害現場の惨状など、フィルターのかかったテレビ画面越しでしか見たことが無い。冷静に対

処しろと言う方が酷だろう。

「なのは! しっかりして! あの子はまだ生きているよ、早く手当てをしなくちゃ!」

 しかし、なのはにとって幸いであったのは、ユーノ・スクライアというパートナーが居たことだ。

「──え。あ…うん、わかったよ、ユーノ君!」

 ユーノの言葉で我に返ったなのは。未だ青い顔をしていたが、己の成すべき事を思い出し、決意を言葉にする。

「まずジュエルシードを回収しよう。あの子の手当てをしている時にまた暴走なんてしたら、目も当てられないよ」

「うん! レイジングハート、お願い!」

『Yes, my master.』

 なのははレイジングハートを構え、自分を落ち着かせるように深呼吸をして、呪文を紡ぐ。

「リリカルマジカル。封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード封印!」

 なのはの言葉に応じて、少年少女の間に落ちていたジュエルシードがふわりと浮き上がり、レイジングハートの中へと吸い込まれた。

「ジュエルシードシリアルⅩⅩ、封印完了!」

「よし、後はあの子だ。急ごうなのは!」

「あ、待ってよユーノ君!」

 肩より地に降りて駆け出すユーノを追って、なのはは慌ててそれに続く。

「で、でもユーノ君、手当てってどうやってやるの?」

「大丈夫。応急処置なら僕が出来るし、なのはにも教えられるから」

「そ、そうなの? スゴイね…」

 遺跡発掘を生業とするスクライア一族は、その職業上、遺跡内の罠や採掘作業中の事故、盗掘者や強盗、遺跡内部

のガーディアンとの戦闘等、多くの危険が伴う。応急処置を始めとする治療技術は必要不可欠なのだ。

(問題はあの子の怪我が、僕の治療で助かるレベルかどうか──っ!)

 なのはに不安を与えぬよう、念話にせずに心中で少年の状態を危惧していたユーノは、眼前の光景に驚き、目を剥いた。

 その負傷した少年が、這いずるように無理矢理動き出したのだ。

「なのは! あの子を止めて! 骨が折れていて、それが内臓を傷つけたら大変なことになる!」

「ええっ!? う、うん、わかった!」

 ユーノの言葉に、なのはは最悪の事態を想像しぎょっとするも、すぐさま少年の元へと駆け寄り、声をかける。

「あ、あの動かないで! 今動いたら「お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」──って、ええっ!?」

 なのはの制止の言葉に重ねるように、少年は絶叫を上げ、力任せに瓦礫を掴んだ手を、高々と天へと掲げる。

 その瞬間、なのはとユーノは強力な魔力の波長を捉えた。その震源は──

「あの子…!」

「ジュエルシードを持ってる!?」

 二人が少年の手にした瓦礫の中に、青く輝くジュエルシードを見つけたその刹那、宝石が真紅の光を放ち、少年を包み込む。

「いけない、暴走する! なのは、一旦離れて!」

「ふえっ!? う、うん!」

 肩に飛び乗ったユーノに促され、なのはは慌ててその場から離れた。

 安全圏まで退いたところで、再度少年へと目をやると、放たれた紅光は地へと広がり、円形を作りだして、その

内外に複雑な図形や文字を描いていく。

(アレは…魔法陣!?)

 ユーノはジュエルシードの起こした、予想外の現象に目を剥く。

 魔力を放出するならば兎も角、理性も意思も演算能力もない暴走体が魔法を発動させるなど、有り得ないことだ。

 しかも、その魔法陣は、円を基本とするミッド式とも、三角を基本とするベルガ式とも違う、未知のもの。それは、

円の中心に上下逆の対になる二つの三角形──六芒星を配した魔法陣だった。

 ユーノはこのワケの解らない出来事の連続に、頭がオーバーヒートしてしまいそうだった。

 ユーノの混乱をよそに、完成した魔法陣が上空へ向け真紅の閃光を放出。

 それと同時に紅光の柱を中心に嵐の如き暴風が吹き荒れた。

「きゃぁ!」

「うわぁ!」

 吹き荒れる砂塵混じりの旋風に、なのはは顔とスカートの裾を押さえ、ユーノは飛ばされまいとなのはの肩にしがみつく。

 その間、時間にして数秒。

 吹っ飛ばされるかと思ったほどの強風は、あっと言う間に通り抜け、紅光も消滅した。

 辺りが静寂を取り戻したその時、なのは達の前方より、ジャリッ、と靴底で砂を噛む音が響いた。

 あの少年だろうか? 二人は砂埃を防いでいた手を除け正面へと目を向け──

「「!?」」

 ──言葉を失った。

 二人の視線の先に在るのは、地に立つ一人の人物。

「ソレ」は、意匠を凝らした刺繍や、貴金属の作られた象嵌で飾り立てた、豪奢な衣装と帽子で身を包んでいた。

 左手には、触れただけで、あらゆる物を両断してしまいそうな鋭利なサーベル。

 右手には、血で染め上げたような真紅の布。

 なのはは知らない。「ソレ」の出で立ちが、遥か西方の情熱の国では、闘牛士と呼ばれていることを。

 もっとも、例えなのはがそれを知っていたとしても、気付くことはなかったであろう。何故なら、彼女の目は、「ソレ」

の顔からそれることなく凝視し続けていたからだ。



「ソレ」には、

 ──目が無かった。

 ──唇が無かった。

 ──鼻がなかった。

 ──耳が無かった。


 筋肉も脂肪も皮膚も髪も無く、在るのは白磁の如き頭蓋のみ。「ソレ」は、直立する人骨だったのだ。

「お、おおおおおおおお化けぇぇっ!?」

「違うよなのは! アレはジュエルシードの暴走体だよ!」

 半泣きでパニック寸前のなのはを、必死で宥めるユーノ。が、その彼自身も先程から驚きの連続で頭の中がグチャグチャだった。

「で、でもあれ、ガイコツだよっ!?」

「あれはきっとあの子が怪我をしたことで強烈な死のイメージが生まれたのと、死にたくないって気持ちがごちゃ

混ぜになったものだよ──多分」

「言った! 今たぶんって言った!」



 ククッ…



「「!!」」

 風に乗って耳に届いた笑い声が二人を我に返した。

 慌ててガイコツの暴走体の方を見れば、「ソレ」は肩を震わせ笑い出した。

「クククククハハハハハハハハっ! フハハハハハハハハハッ!! 愉快、痛快、爽快!!まさしく快也!!」

「しゃ、喋った…」

「へ? そこはおかしいの?」

 呆然と呟くユーノの言葉に、首をかしげるなのは。

「ジュエルシードの暴走体は欲望や願望を肥大化させた存在。意識や知性なんてそれに押さえ込まれてしまう筈なのに…

ああ、もうワケがわからない!」

「えと、大丈夫? ユーノ君」

 頭を抱えてしまったユーノに、なのはは心配そうに声をかけた、その時──

「フハハハハハハハッ!」

「あっ!」

「逃げちゃう! って、もう見えない!?」

 ガイコツから目を離した、ほんの僅か数秒。その間にそいつは高笑いを上げながら、ビルからビルへと跳び移り、あっと

言う間に逃げ出してしまった。

「「ど、どうしよう…」」

 二人は唖然とした表情で、ガイコツの消えた方向を見つめていた。





 第一話 誕生。魔人と魔王と淫獣と。 END


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