第一章 血の獣 弐 それは、新宿炎上の24時間前つまり一日前から始まっていた。
新宿炎上24時20分前
場所:アメリカ・ニューヨーク州 セフィロト機関東アメリカ支部
「ハー、もうやんなちゃうわ。」
金髪、黒色肌の美人は、機械に囲まれた場所で、白いため息をついていた。
「どうしたんだいアン。ため息なんかついちゃって。」
スピカーから若いアルトが聞いた男の声がアンの耳にとどく。
「何で、私見たいな美人がどうしてこんな機械がいっぱいで寒いところにいなきゃいけないのよ。」
「まあそう言うなよ、アン。あと20分で本日のセフィのチェック終わるからそれまでの辛抱だ。」
「あと20分こんな床にいたら凍死するわよ。私が着ているのは、レオタードのような薄いボディスーツなのよ。それにカイル。あんたは、窓隔てた部屋の制御室でぬくぬくとコーヒー飲んでるくせに偉そうな事を言うな。」
アンは、窓の向こうのカイルを睨みつける。カイルは、頭を掻きながらコーヒーを飲む。カイルの周りでは、モニター室の計器の最終チェックを済ませながらまた始まったよと、苦笑いを浮かべあっている。
「仕方ないだろアンは、このセフィロト機関の予知能力者なんだから。予知機関セフィを使い、今日も世界に危険が無いか予知しなきゃいけないんだ。」
「わかってるわよ。でも私の予知能力なんてせいぜい明日の夕ご飯がわかる程度よ。そんなので、世界救えたらすごいと前から思うんだけど。」
アンの言葉にカイルは苦笑する。
「まあ、君の予知能力はその程度だけどこのセフィを使えば君の能力を何倍にも増幅できるんだ。」
「ま、そうね。セフィて何なのよこれ。」
と、アンは言いながら目の前の機械に蹴りを入れる。それを見てカイルは、あわてる。
「アン、それは精密機械なんだよそれに、何度もセフィについて話しただろう。何時になったら覚えるんだい。」
「ええそうね、ご飯の時も廊下で歩いてる時も、そしてベットの上でも聞いたわ。いい加減うんざりするぐらいね。」
カイルはぎょっとする。周りはそんな二人を横目に見つつ、そうかもうそこまでいったかと思ってる。カイルは、そんな同僚達の目を気にするように、アンを睨みつける。
「バカ、こんなとこでそんなこと言うな。」
その声は、そこはかとなく小声だがスピカー越しなのでアンのいる部屋には響いていた。そんなカイルの声にアンは少し笑みがこみ上げてきていた。
「(いじめすぎたかなまぁ、いいか。)あはは、ごみーん。じゃ、また言って忘れないようにね?」
その態度にカイルは、観念したのか椅子のどっしりと座る。
「はー、わかったよ。一度しか言わないから良く聞けよ。」
「うん、うん。」
「はー、セフィとは、セフィロト機関の略称。予知機関で、それ単体でも予知を行う事が出来る。だけどアンみたいな予知能力者がいることで、さらに繊細に予知の内容を知る事が出来、また確実に未来を予知する事ができる。」
「はい、先生。しつもん、うちの組織セフィロト機関て言うけどこの機械と名前かぶってない。」
「いい質問だね。アン、当初セフィロト機関とは、この予知機関であるこの機械、セフィロト機関を指している。でも国連が様々な応用また予知による、災害や事件の防止に役立てることになった。それでこの組織が創設されたのは、いいが組織の名前にいいのが考え付かずになり。時の人々は、そのまま機械の名前を取ってセフィロト機関となった。そして機械の方のセフィロト機関は、略称されセフィとして一般化になったというわけだ。て、聞いてるのかアン。」
アンは耳を掻きながらあさっての方を見ていた。
「あ、はいはい、聞いてるわよ。一様。」
カイルは握りこぶしを握りながらフルフルしてる。わー怒ってる。
「あははは、わるい、わるい。」
「おまえは、「ハーイ、痴話げんかはそこまでだ。」
カイルの後ろに白髪混じりの温厚そうな中年が現れて言う。
「ハイル指令。何時の間に来ていたんですか。」
アンは少し驚きながら言い。カイルは、さらに驚き椅子から落ちそうになる。それを見て、ハイル指令は、髪をなでながらしわくちゃな笑みを浮かべる。
「セフィロト機関とセフィからじゃよ、アン。」
「あはははは、そこからかーーー。(やばい自分がしてるぐらい知っておけとか言われないわよね。)」
内心どぎまぎするアンをよそに、ハイルの笑みは真剣な顔になる。
「さてアン、あと5分で開始じゃ、準備をしろ。他の者も準備を急げ定刻道理にセフィ、アンによる予知を行なう。」
ハイルの厳しい声にその場にいるすべての者がこう答える。
「ラジャー。」
そう答えるとカイルを始め人々は準備を急ぐ、そしてアンもまたセフィとの接続を準備し始める。
新宿炎上24時5分前
場所:アメリカ・ニューヨーク州 セフィロト機関東アメリカ支部
「アン、あと1分で開始だ。準備できてる。」
「ええ、出来てるは、しかしこの中って狭いわね。まぁ、シートは上質なの使っているけどいいけど。」
アンは、セフィの中に入り、モニター越しにカイルをかるぐちを叩く。セフィの中は、狭く機械がごちゃに配置されて、足、体を拘束するような台が置かれている。
「アン、そろそろヘルメットを着けってくれ、君の脳内に見た予知をこちらで記録しなければならないんだ。」
ハイルのモニターに現れる。その顔は、先ほどより少し険しさを増している。
「あちゃ、何時もながらハイル指令この予知解析のときは、何時も険しい顔になるのよね。ま、仕方ないかもね、もしかしたら世界滅亡なんか見るかもしれないからね。はぁ、心配ないと思うけどね。」
と、アンは思いながらチューブが沢山ついたヘルメットをかぶる。
「さぁ、ちゃぁちゃぁと済ませて。ご飯にしますか。」
「お前いちよう緊張感を持てよ。」
おどけて言うアンにカイルを始めみんなの手が止まり、緊張感がモニター室からそがれていく良い意味でね。
「予知解析まであと1分ですセフィ起動を開始します。」
カイルの隣に座る女性がつげる。そしてみんなの手が動き出す。
「セフィ、起動確認。」
「セフィ、アンとの神経リンク開始します。」
アンの顔は、少しゆがむ。セフィとの神経リンクで、脳内に入る情報量が増し辛そうだ。
「セフィとのシンクロ率87パーセント。」
「アンもうすぐ終わるから我慢だ。」
「わかってるわよ。さっさと終わらせるわよ。」
カイルの気遣いに、強がりを言うアン。その間ちゃくちゃくとセフィとの接続が進む。
「セフィ完全起動確認、動作及び補助機関とのリンク、すべてオールグリーン。」
「指令準備完了です。」
女性がつげる。そのといにハイルは、首を縦に振り答えをつげる。
「アン、予知解析開始だ。」
「ラジャー。」
アンは、意識を集中する。
新宿炎上まで24時5秒前
「予知、完全透写まで5秒前。」
アンはさらに意識を集中する。未来を見出すために、頭の中に見える黒い霧の中をのぞく。
「4」
カイルは、息を呑む。
「3」
ハイルはモニターを見入る。
「2」
アンは、黒い霧の中から赤いものが見えてくる感じが心にまとわりつく。
「1」
アンは、この時久しぶりにカイルとデートした否とその時考える。
「0」
「きゃあぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー。」
アンの叫びが、部屋中に響く。
「アン、どうしたアン。」
カイルは、アンに呼びかけるその声は必死の色となっていく。なおもアンの叫びは響く。
「セフィとのリンク強制切断。アンを外に出せ。」
ハイルの声を荒上げる。
「出来ません、アンとのリンクをもとよりセフィが、強制停止の信号を受け付けません。」
「何だと、そんなことありえるはずわ.....。」
カイルは立ち上がりモニター室からでて、アンの居るセフィとの接合部分に走る。セフィは蒸気を出し、高温を発する。カイルはちゅうちょなく、手動のハッチ開閉弁を握る。
「くぅ。」
カイルの手が焼ける臭いが当たりに広がる。カイルは痛みを無視して開閉弁を回す。そうこうしているうちにハイル指令や整備士が駆け寄る。
ハッチが重々しく開く。
シューーー
熱気がハッチの中から噴き出しあたりを白くする。カイルは、手で顔を押さえる。
煙が消え、ハッチの中がわかるようになるとカイルは、ハッチの中を見る。
そこには、アンの見事な髪は焼け爛れ、毛穴と言う毛穴から血が噴き出し、瞳から赤い血の涙が瞳を染っていた。
「アン。」
カイルの声は震える。その場にいたものは皆、驚愕と恐怖の色を顔に貼り付ける。
「ぴく。」
カイルの声に反応するように、アンが震える。
「アーーーン。」
カイルは、アンをハッチから取り出し抱きかかえる。
「アン、アン、アン。」
カイルは何度もアンを呼びかける。アンは、震えながらカイルの方を力なしに見上げる。
「ア・・・・・・ウ・・・・・ト・・・・・チ・・・ル・・・・ド・・・・レ・・・ン。」
アンはそう言うと息を引き取る。
「アン、アン、アン、アアアアアアアアーン。」
カイルは血に染まるアンを抱きしめ叫ぶ、その叫び声はまるで世界に響くような叫びが日その場を響き渡った。
新宿炎上24時間前
この出来事が同時刻に、西アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、世界中に広がるセフィロト機関の予知能力者を始め、予知能力をあると思われる人間、予知をする生き物未来を見る事ができる物すべてが、この世のものとも思えない叫びを発して全身から血を噴出し、辺りを血の海へと変えて絶命する。彼らは最後にひとつの言葉を残して死に絶える。
「アウトチルドレン。」
彼らは、そういい残す。そして今、未来を見ることは私だけ。そう、罪に埋もれた卑怯で卑しい女である。
私、陽朔 鈴を残して。
でも私にとって生き残った事は、これからの過酷な日々を私にもたらすものだった。その時の私は何も気づかずに眠り続けていた。