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No.12668の一覧
[0] ゼロの死人占い師(ゼロの使い魔×DiabloⅡ)[歯科猫](2011/11/22 22:15)
[1] その1:プロローグ[歯科猫](2009/11/15 18:46)
[2] その2[歯科猫](2009/11/15 18:45)
[3] その3[歯科猫](2009/12/25 16:12)
[4] その4[歯科猫](2009/10/13 21:20)
[5] その5:最初のクエスト(前編)[歯科猫](2009/10/15 19:03)
[6] その6:最初のクエスト(後編)[歯科猫](2011/11/22 22:13)
[7] その7:ラン・フーケ・ラン[歯科猫](2009/10/18 16:13)
[8] その8:美しい、まぶしい[歯科猫](2009/10/19 14:51)
[9] その9:さよならシエスタ[歯科猫](2009/10/22 13:29)
[10] その10:ホラー映画のお約束[歯科猫](2009/10/31 01:54)
[11] その11:いい日旅立ち[歯科猫](2009/10/31 15:40)
[12] その12:胸いっぱいに夢を[歯科猫](2009/11/15 18:49)
[13] その13:明日へと橋をかけよう[歯科猫](2010/05/27 23:04)
[14] その14:戦いのうた[歯科猫](2010/03/30 14:38)
[15] その15:この景色の中をずっと[歯科猫](2009/11/09 18:05)
[16] その16:きっと半分はやさしさで[歯科猫](2009/11/15 18:50)
[17] その17:雨、あがる[歯科猫](2009/11/17 23:07)
[18] その18:炎の食材(前編)[歯科猫](2009/11/24 17:56)
[19] その19:炎の食材(後編)[歯科猫](2010/03/30 14:37)
[20] その20:ルイズ・イン・ナイトメア[歯科猫](2010/01/17 19:30)
[21] その21:冒険してみたい年頃[歯科猫](2010/05/14 16:47)
[22] その22:ハートに火をつけて(前編)[歯科猫](2010/07/12 19:54)
[23] その23:ハートに火をつけて(中編)[歯科猫](2010/08/05 01:54)
[24] その24:ハートに火をつけて(後編)[歯科猫](2010/07/17 20:41)
[25] その25:星空に、君と[歯科猫](2010/07/22 14:18)
[26] その26:ザ・フリーダム・トゥ・ゴー・ホーム[歯科猫](2010/08/05 16:10)
[27] その27:炎、あなたがここにいてほしい[歯科猫](2010/08/05 14:56)
[28] その28:君の笑顔に、花束を[歯科猫](2010/11/05 17:30)
[29] その29:ないしょのお話オンパレード[歯科猫](2010/11/05 17:28)
[30] その30:そんなところもチャーミング[歯科猫](2011/01/31 23:55)
[31] その31:忘れないからね[歯科猫](2011/02/02 20:30)
[32] その32:サマー・マッドネス[歯科猫](2011/04/22 18:49)
[33] その33:ルイズの人形遊戯[歯科猫](2011/05/21 19:37)
[34] その34:つぐみのこころ[歯科猫](2011/06/25 16:18)
[35] その35:青の時代[歯科猫](2011/07/28 14:47)
[36] その36:子犬のしっぽ的な何か[歯科猫](2011/11/24 17:52)
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[12668] その11:いい日旅立ち
Name: 歯科猫◆93b518d2 ID:b582cd8c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/31 15:40
////11-1:【さーふぁ】

ゼロのルイズは今、たくさんの悩みや困った事態を抱えている。

(やっぱり気まずい……どう話しかけたらよいのかしら)

ある日のこと、教師ギトーが『遍在』のスペルを使って、二人に分身したとたんに、ばっと左右同時に両手足をひろげ『超高速反復横飛び!!』と言った。
『私のジョークは風のようにクールである』と言いながら木枯らしのように去っていった。
ひょっとすると、あれは彼が彼なりに生徒たちとの距離を縮めようと考え抜いた結果の、一世一代の大舞台だったのかもしれない。

それはさておき―――

(あれと同じくらい……いえ、もっと気まずいわね……)

ゼロのメイジ、ルイズ・フランソワーズは、ここ何日か、雪風のタバサにあまり近づけずにいる―――
雪風のメイジは全く気にしていない様子だが、ルイズのほうは、顔をあわせるとぎこちなくなってしまうのだ。
なにしろ、ある日の朝、目が覚めたら、タバサと一緒にベッドの中に居て―――自分は、なんと服を着ていない、すっぱだかだった。
それ以来、気まずくてしかたがない。幸いのところ向こうは気にしていないようなので、仲直りしないと、と思う。

今日の授業は午前中で終わりなので、ルイズはひとり日傘を差して、てくてくと散歩をしていた。最近ときどき、日の光が目や肌にきついことがある。
サンクチュアリ世界において、ラズマ教徒たちは、東方の密林の地下に都市を作って住んでいる。
巨大なドームがいくつか、それらをつなぐ洞穴が四方八方に地下茎(リゾーム)のように延びている。
夢で見たとき、どこか不気味ながらも人の生活を感じさせる、ほのかな明かりのぽつぽつと燈る街は、美しかったなあ、とルイズは思い返す。

ルイズも先日ギーシュに頼み、使い魔のモグラにちょっとした空洞を掘ってもらった。
そこを基点に、ゴーレムやスケルトンといった労働力を駆使し、目下着々と地下室(ダンジョンともいう)を製作中である。
使用に耐える部屋のうちひとつには、『黄金の霊薬(エリクサー)』の精製拠点を移してあり、順調に作成中である。

カジノ、宝石商売、ポーション、アイテム販売で得た大量の資金を、惜しみなくエリクサーの素材購入のためにつぎ込んでいる。
実験中に出来た試作品は、そのうち実家に持ってゆく予定だ。
実際に作ろうとしてみると霊薬は非常に難しく、これの効果は本物に遠く及ばない微々たるものだが、姉の病状の進行を和らげるために、ささやかながら貢献するはずである。

さて、一週間ほど後には、ルイズの住むトリステイン王国の王女、アンリエッタ姫が学院へと視察にやってくるそうだ。
午後からの学院行事、『使い魔品評会』に出席したがっているという。
ルイズは数少ない友人たちに、総出で、どうか出演しないでくれと懇願された。
トリステインの姫君に公衆の面前でアワを吹かせたり失禁させたり、心臓マヒでショック死させたりするわけにはいかないからだ。

―――最悪、戦争になる。

トリステインの象徴が崩れたぞ!
ゲルマニアとの同盟ってレベルじゃねーぞ!
たったいま国は大混乱だ!
あばばばば!
あれ、これってチャンスじゃね? そうじゃね?
よろしい、ならば戦争だ!

――と、想像して、ルイズは一人ぶるぶると震えてみる。

もちろん、大いなる死霊術の秘儀は、他人にそうそう見せてよいものではない。
なのでルイズは最初から、品評会に出るつもりなど無かった。だが―――

ルイズとアンリエッタ王女は、かつて幼いころに友情を誓い合った遊び仲間でもあった。なので、彼女に自分の使い魔を見せることができないのは、寂しくも思う。
かつて、貴族は国のため、国の体である王のために命を張るものだ、と姉であるカトレアは言った。
だがルイズはいちトリステイン貴族であるのと同時に、司教の遺体を送り返すまでは、ラズマ聖職者として行動せねばならない。

王女を喜ばせる、国の力となる貴族の喜びと、神聖なる生命と死とのはざまで、大いなる運命の流れに貢献する喜びには、溝と隔たりがある。
運命のいたずらによってその狭間に閉じ込められた、小さなルイズ・フランソワーズは、まだ悟りにも達観にも至っていない。

ともあれ―――

現在のルイズの問題は、数日前の錯乱、デルフリンガーの目撃した空き巣、雪風のタバサとの気まずい関係、その他にも山積みである。
ルイズの首にはもう、『ヨルダンの石』の指輪の通されたネックレスは、かかっていない。

空き巣に入られた翌日には、風邪気味の鼻をずびずびくしゅんとすすりつつ、部屋じゅうに対侵入者用のワナをしかけた。
姉のときの教訓を活かし、無関係な人がワナにかからないよう、攻撃対象をディテクトマジックを使ったものに限定した。
うしろぐらい侵入者ほど、警戒するだろうから。

ご丁寧に『危険!!ワナあり入るな!!入ればとびちるきみの肉』という看板まで立てた―――これで完璧ね!とルイズは額の汗を拭き、満面の笑みだった。
シエスタがぼんやりと突っ立ったまま、死んだ目をしてそれを眺めつづけていた。ああ、そんなに気に入ってくれたのね!とルイズはご満悦である。

さて、白髪のメイジは、静かに怒っている―――
あのとき、もっと落ち着いて、心をもっと強くしなやかに持っていれば、あの程度の邪悪な視線に屈することなどなかったのではないか。
おかげで裸で外に出て友人に迷惑をかけるなどという、たいへん恥ずかしいことをしてしまった―――翌日は、どれほど顔を赤くしたものか。
未熟な自分がうらめしく、邪悪がゆるせない。

二度は無い、次があるとすれば、跳ね除けるか、静かにやりすごさねばならない―――恐れれば恐れるほど、ひとの心は闇に飲み込まれるものだから。

ところで、ここハルケギニアであれほど邪悪な気配を感じたという事実は、極めて大きな問題である。
翌日には運命の流れのなかの巨大な<苦悶>の気配が薄まっており、おかげでなんとか精神状態を復帰させることができたのだが、
ルイズにはこの世界で、いったい何が起きているのかさっぱり解らず、ただ首をひねるだけだ。

<存在の大いなる環(Great Circle of Being)>の自然なバランスを崩すほどに大きなものが、この世界に入り込んできたのだろうか。
まだいるのか、そうでないのか。沢山の人々がひどく怯え怖がっている、<恐怖>の気配がうっすらと漂っている。
アルビオンで王党派と貴族派のあいだで戦乱が起きているというが、どこかで大きな戦争が起きたときは、あのような運命のゆがみや悪意が普通に生まれるものなのだろうか。

大きく恐ろしい邪悪な存在にたいし、たった一人のラズマの徒ルイズ・フランソワーズは、何が出来るのだろうか。
天使もラズマの大司教もいないハルケギニアは、小国トリステインは、もしそんな邪悪に侵略されたとすれば、果たして耐えきれるのだろうか。

―――ルイズには、悲しくなるほどに、解らないことばかりだ。そっと、ため息をつく。

アンリエッタ王女に告げようか、この世界に危機が迫っているかもしれない、と。もちろん、確信も証拠もなにひとつ無い。
異教徒の『危機』とは正教の『勝利』なのだ。ただの妄言であり、異端であり、心をまどわす邪悪とされるかもしれない。
ただでこそ、学院での彼女の立場は、この有り様である―――さあ見よ、彼女の通る先々で、まるで神話における預言者の割った海のように割れていく人なみを!

ルイズ・フランソワーズは心を震わせ、自分の出来ることを考え、頭脳をルーンでブーストし、フル回転させて、しゃにむに行動する。
彼女は必死に占いの勉強をし、より大きな流れを、より細密な運命を、より有効な選択肢を見通さんと、ひたすらに努力を続けている。
知識を学び、霊力を強くし、神聖なる技を磨き、生と死との境界を見極め、秘薬を調合し、道具を集め開発し、心強く平時に心休まる仲間を得て―――

やがて来るであろう大きな運命の波に、耐えようとしている。


一週間後、仲直りの意を決したルイズがお菓子を持ってタバサの部屋をおとずれた日、ひとつの事件が起きる―――



////11-2:【鳥だ、飛行機だ、いや……】

金髪縦ロールの貴族の少女、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは、まず頑丈なロープを用意した。
秘薬の原料を梱包するために用いられるそれは、固定化をかけなくとも荷を運ぶ馬やロバの背にとりつけて左右に重たい荷物をぶらさげても千切れない、頑丈なロープだ。

次に、椅子をうんしょうんしょと運ぶ。
貧乏ゆえに貴族とはいえあまり装飾の少ない部屋の調度品だ、木の質はそこそこで案外長持ちしている、シックなデザインの古い椅子だ。
割と気に入っている。

彼女は『レビテーション』の魔法で浮かび上がり、天井の梁(はり)にロープを結び付けようとする。
難しい。片手に杖をもったままだ、とりあえず彼女はロープの端を、木でできた梁の上へとくぐらせ、床へと降りてくる。

しばし考えたあと、天井から下がるロープ二本、片方にしっかりと輪をつくり、そこにもう一方を通して引っ張る。ぐいっ。
するすると輪が天井へとのぼってゆく。
天井から垂れたそのロープを引っ張って、ちょうど人間一人分くらいの体重なら支えられそうなことを確認して、モンモランシーは満足そうに微笑む。

やがて、彼女は椅子にのぼり、床から2メイルほどの場所のロープに、ロープ本体をくぐらせた、もうひとつちいさな輪をつくる。
水滴のような形をした大きな輪ができあがる。
惚れ惚れするほど、ステキなできばえだ。モンモランシーは目を潤ませて、完成したそれを眺め、満面の笑顔を見せた。



「私こと、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは」

始祖にじっくりと祈ったあと、彼女はおごそかにそう宣言する。
椅子のうえで、自分の綺麗な金髪の縦ロールに丁寧に整えた髪がひっかからないように、慎重に慎重に、頭をロープの輪に通す。

「本日で、この世界を卒業いたします……さようなら、みんなありがとう、そして……生まれてきてすみませんでした」

瞳を閉じ、そっと微笑む彼女の姿は儚く、か弱く、どこか美しさを感じさせるものであった。

やがて彼女は、この世の外へと、宙へと、新たなる輪廻への旅立ちの、大きな一歩を踏み出そうとし―――



「ちょまってーっ! だめえーっ!! だ、だめですよーっ!! 待ってくださいー!!!!」
「離してシエスタ! 私は、私は! 一生のお願い! 離してちょうだい! 私はもう終わったの!」
「いやです! 絶対に離してあげません! 私ひとり残して逝かないで下さい!! お願いですあとで一緒に土下座しますから!」

息を切らせながら戻ってきたシエスタが、涙を滝のように流しながら抱きついて、モンモランシーのいい日旅立ちをとめようとした。
椅子の上で暴れる彼女を落としてしまわないように、それはもう渾身の力を込めて。

床には、二人の人物が倒れている。ひとりは、紫という趣味の悪い色の服を着た金髪の少年だ。
もうひとりは、服のびりびりにやぶけた上半身はだかの少女である。胸は大きめのようである。
ワインまみれで、気を失っている―――部屋の主モンモランシーが、そのうちひとりの頭をワインの瓶で思い切りどついたのだ。

金髪の少年は、ギーシュ・ド・グラモン。土のドットメイジであり、この学校の男子生徒。モンモランシーの恋人である。
もうひとりの、上半身裸の少女は―――少なくとも、この学院の生徒ではない。

「『エア・カッター』」

頼もしい詠唱が響き、空気の刃がロープを切断した。
モンモランシーは床へと落下し、シエスタが抱きとめて一緒に倒れ、押しつぶされてふぐう、とうめいた。
部屋に駆け込み魔法を放ったのは、クールビューティーなメイジ、雪風のタバサだった。その後ろからは、ゼロのルイズが現れる。

「おまたせ! ねえロープまだあるかしら? ……っと、タバサ、魔法で代用できるのね」

ゼロのルイズは、赤い液体の入った小瓶を、倒れている少年少女二人の口へと突っ込んだ。回復ポーション(Healing Potion)である。
倒れている人物の頭部を強打されたときの傷が、みるみるうちに治って行った。ルイズは渋い顔をしつつ、少女へと持ってきた上着を着せた。
タバサは、「魔法の拘束はそのうち切れる、こっちを使う」、と言い、落ちていたロープを拾って―――その二人をがんじがらめに縛り上げた。
目隠しとさるぐつわまできっちりとするあたり、念の入れようは半端ではない。

だが、いくら念に念を入れたとしても、回避しえない運命というものは存在するようだ―――

「んんむ゙っ!! んーっ! ん゙んんー!!」
「……あっ」

ぐいぐい、ぐいっと、不意に縛り上げられたままの少女がはげしく身をよじる。このままでは、どこかに頭をぶつけるかもしれない。
危険だ―――と、押さえようとしたタバサが、はじかれてバランスを崩した。ぐらり―――

「っ……!!」

彼女は盛大に、晩酌セットのおかれたままのテーブルを倒しつつ突っ込んだ。液体が宙を舞い、タバサの眼鏡と顔をぐっしょりとぬらす。

―――先ほどこの部屋で起きた、あまりに信じられないような、最低の最悪をきわめる事態に、首を吊ろうとするほどに動転していたモンモランシー……
そんな彼女がフタを閉め忘れたままに置いていた、危険すぎる液体の入っていたビンが、床に水溜りを作りつつ、転がっている。
それは人を信じることの出来なかった少女が作り出した、魔の液体。

「あーっ!!」「ちょ」「ま……」

三人が目を丸くして息を飲み、空気が凍った。動いているのは、気絶から復帰したようで、縛られて目隠し猿轡をされイモムシのようにびくんびくんと暴れている少女のみ。
モンモランシーも、シエスタも、ルイズも、血の気の引いた真っ青な顔をしている。
もう事態は、すでに取り返しのつかないところまで悪化していたのに―――これ以上悪くなったら、どうなってしまうんだろう!!

「……大丈夫」

タバサはどうやら気管に入ったらしく、けほけほと小さく咳き込んでいる。最初に目が合ったのは―――ゼロのルイズだ。
一同の内心はこうである―――今の、飲んだのか!? 飲んでいないのか!? 本当に大丈夫? 本当に……セーフ? セーフだよね?
それはただのワイン? ワインよね、違う液体じゃないわよね……たった数滴で効果のある、あの液体じゃないわよね。
テーブルには赤ワインしかなくて、タバサの顔にかかっている液体は透明なように見えるけれど、実は白ワインなのよきっと!!

「うん、良かった、大丈夫そうね……ちょっと……いえ、かなり怖いから、ふき取っておいて頂戴」

ルイズがタオルを渡すと、タバサは無言で頷いてから、顔をぬぐい、メガネを拭いた。
モンモランシーとシエスタが、ルイズに向かって土下座している。やめて、とルイズは心底困った顔で言った。私が謝られることじゃない、と。
問題はなにひとつ解決していない。たとえこの場に居る誰が土下座したとしても、解決のしようのない問題が起きてしまったのである。

「信じます」

鼻声で、あまりに弱々しい声で、モンモランシーが言った。

「人を信じます、あなたと始祖とを信じます、これから何があろうと人を疑うことは決してしませんから、どうか許してください」

押し殺した泣き声が、室内に響く。『人を信じなかったせいで、人間関係で洒落にならない大失敗をやらかす』というルイズの占いが、的中したのだ。
ただひとつ、これはもはや人間関係というレベルではなかった。国際関係でも、軍事関係でも、政治関係でも経済関係でもあった。

「だからやめてモンモランシー、こんな風になったのは、私のせいでもあるのよ……あなたが私に謝っても仕方ないわ」

一方でルイズ・フランソワーズも、ひどくばつの悪そうな表情をしている。
彼女が今のところ冷静をとりつくろっていられるのは、あまりに事態が突飛すぎて、取り乱すのが馬鹿らしくなったからだ。
いまだにイモムシのように床を這いまわり続けている少女が、当初半裸になっていたのは、何を隠そうルイズのせいだ。
<神の頭脳>は、どうすればこの問題を解決しうるか考え、オーバーヒート寸前の状態で回転をしつづけている。

「いいかしら、モンモランシー、こうなったらあなたと私は共犯者、運命共同体よ……解決するまで、何があっても互いを裏切らない、そう誓って」

ルイズはモンモランシーの顔を両手で掴み、むりやり引き上げて、しっかりと目をあわせる。
その深い深い目に見つめられ、モンモランシーは、暗闇のなかに飲み込まれたような気持ちになる。ごくり、と喉を鳴らす。

「本当……助けてくれるの? ルイズ」
「ええ、一緒に助かる方法を考えましょう」

うろたえるな、トリステイン貴族はうろたえない、とルイズは言った。

「本当に?」
「そうよ」

なら誓うわ、と言ったモンモランシーの顔は、涙でふやけきっていた。
彼女の内心は、こうである。
事態は、まるで悪夢のように、混沌と破壊を極める。
だが……この薄気味悪く、学院でもっとも恐れられている白髪のメイジ―――ルイズなら、ゼロのルイズなら―――きっとなんとかしてくれる!!

たぶん―――なんとかしてくれる!!
頬に当たる彼女の手がぶるぶると震えてて正直顔面美容マッサージされてるみたいだけど、きっとなんとかしてくれる!!

「あ、りが、とう……」

モンモランシーの顔が、希望の涙と鼻水に染まった。よかった、まだ終わってない、終わってない……
すっ―――と、手がさしだされた。雪風のタバサだ。
モンモランシーは、彼女は自分を慰めてくれているのか、と思った。口が、彼女にも、お礼を言おうとする。ありが―――

「だめ」

―――もっとも、その期待は、ものの見事に打ち砕かれることになった。
雪風のタバサは、ただそれだけ言って、ゼロのルイズを、モンモランシーから引き剥がした。

「……そう」

ルイズは、ぽつりと静かにそう言った。すっと無表情になり、やがて虚空を見つめはじめる。

「……アウト、……だった、のね……」

モンモランシーは絶望中、シエスタは現実逃避中である。

床には二人の人間が倒れ、タバサは―――ゼロのルイズの手をきゅっ、とにぎり、そっと指をからめてくる。

事態はいまや、HELL(ベリーハードモード)最深部への到達最速新記録を極めつつあった。

「仕方ないわ……うん、とりあえずは、拉致(らち)りましょう―――うふふふ」

ゼロのルイズは、瞳孔を開き、不気味に笑った。ウフフフフ……ははっ、アハハ、アーッハッハ!!
モンモランシーは、その恐ろしいゼロのルイズが今や、頼もしくて頼もしくてしかたがなかった。なぜなら―――


床に倒れ、ロープでぐるぐる巻きに縛られてぞわぞわとうごめく少女の名は―――アンリエッタ・ド・トリステイン。
トリステイン王国の、やんごとなき姫君であった。



―――

時間はさかのぼる。

「あら? ハダカのお姫さまが空飛んでる」と、モンモランシー。
「え? どこ! どこどこ!?」と、ギーシュ。

部屋で恋人とワインを酌み交わしている途中―――
モンモランシーは、彼が後ろを向いた隙に、相手のワインに無色透明の液体を数滴ほど注ぎ込んだ。
ほぼ貯蓄財産全てを使って作られた、強力かつ禁制の惚れ薬であった。

すでに惚れている相手に惚れ薬、など意味が無いようにも思われるだろうが、彼女には別の事情があった。
彼氏は浮気性であり、何故だかゼロのルイズと、最近とても親しい。ゼロのルイズと、自分の恋人とを、これ以上近づけたくは無かった。
効き目があるのかどうかは解らないが、これで、やきもきする必要も無くなる―――と、安心し、『嘘に決まってるじゃない』と続けようとしたのであった。

「マジだ!!!」

だが、それは叶わなかった。ギーシュがそう叫んだのである。すわ頭が狂ったのか、と思い、モンモランシーも窓の外を覗いたとき、それが目に入ってきた。
なんと半裸の少女が、『フライ』で空を飛んで、こちらへやってくるのだ。
二人は目を丸くして、絶句した。その少女はどう見ても、昼の使い魔品評会に出席していた、アンリエッタ王女その人だったのだから。
窓から覗いているギーシュたちを見つけると、空を飛んで近寄ってきた。涙目で、窓をこんこんとノックしている。

「た、たたたか……」

王女は、顔は真っ青で、息は荒く、なにかとてもとても恐ろしい目にあってきたように見える。服は、何者かによってびりびりに引き裂かれている。
ただ事ではない、とギーシュが窓を開け、王女を迎え入れた。

「で、ででで」「おおお、おうじょでん……」

二人もようやく、言葉にならない言葉を吐き出した。ギーシュは喉がからからに渇いてしまったらしく、ワインを一口含んで喉を湿らせた。

「わ、私にも……どうかそれを」
「あっ、飲みかけで……」
「かま……い、ません」

アンリエッタはかすれた声でそう言って、グラスを受け取ると、煽った―――

王女は、幼馴染の友人ルイズ・フランソワーズに会いに行ったらしい。
ノックをしたところ、男の声に留守だと言われた。
ならば帰るまで待たせてもらう、と住居に入ってディテクトマジックを使ったら棺おけに妙な反応があり、開けたら何者かに襲われた、と事情を語っていたのだが……

―――

そのワインの中に禁制品の『惚れ薬』が入っていたのは、いうまでもない。
たちまち二人は、両想いの恋に落ちてしまった。

放っておけば、ちゅっちゅちゅっちゅ。
ああ、いち貧乏貴族の四男と王女との禁断の恋の味はいかに。

「姫! ぼかぁ、ぼかあもう!!」ちゅっちゅっちゅ。
「いや! アンアンと呼んでくださいまし!」ちゅちゅちゅ。
「アンアン! ああ、なんて背徳的な響き!」ちゅちゅちゅ。

モンモランシーの恋人は、王女を脱がせ始めた。畏れ多くもトリステインの至宝、麗しの姫君の、豊かな双丘へ手を伸ばし、触り始めた。いやん、ばかん。
もう今すぐにでも、ギシギシアンアンと『ユニット:次期トリステイン国王』の全力生産を始めそうだった。モンモランシーの部屋で。
すでに、この時点でもう、事態は手遅れに近かった。モンモランシーのうら若き人生も、終わりに近かった。長い歴史をもつトリステイン王国も、終わりに近かった。性的な意味で。

―――ごめんとうさま、ごめんかあさま、私はもう終わりです、私の家も終わりです、私の国も終わりです……

なので、モンモランシーは、もう干からびるんじゃないかと思うほどに涙をだらだらと流し、ギーシュの頭に向けて、中身のたっぷりつまった未開封のワインの瓶を―――

振りぬいた―――

続いてスペル『眠りの雲』を唱え、王女を眠らせた。

まずはシエスタを巻き込んだ。どうしましょうどうしましょう、シエスタもうろたえるばかりだった。この瞬間に彼女は間違いなく、世界でいちばん不憫なメイドの座を不動のものとした。
途中で、雪風のタバサの部屋から出てくる、ゼロのルイズに遭遇した。おうちに侵入者が入って、ワナにかかったみたいだ、と慌てていたので、侵入者はこっちよ、と連れてきた。
事態を知って仰天したゼロのルイズとタバサは、ギーシュの頭から血がだくだく流れているのを見て、まずタバサの部屋へと回復ポーションを取りに行き―――

ぼうっと待っている間に、モンモランシーは、『モンモランシー終了のお知らせ』を天から受信し、この世からひとりそっと立ち去ろうとしていたのだった。

―――そして現在。

おどろおどろしい雰囲気を放つ、夜の『幽霊屋敷』。
ルイズはアンリエッタを拉致し、地下へと監禁した。ギーシュも縛ったまま、地下の急造した倉庫へと放り込んである。
モンモランシーは、ぐったりと床に座り込んでいる。はや涙も枯れはて、放心状態だ。ごめんなさい、カナブンよりもごめんなさい、とただひたすらに呟いている。

「タバサ、巻き込んでごめんなさい」
「気にしていないから、いい」

ルイズの言葉に、青髪の少女はゆっくりと首を振る―――幸せそうに、ルイズとおててをつなぎ、指をからめたまま。

「……今のあなたの心は、薬でおかしくなっているの」
「あなたの力になりたい……それは、私の本心、前からそういう気持ちがあった」

ルイズは、ぎゅっとタバサの手を握る。

「タバサ、ごめん……私たちを助けて……お願い、シルフィードを呼んで」

ルイズ・フランソワーズは、うろたえない。膝がカクカクとわらっているが、これはうろたえのうちには入らない、きっと。

先ほど彼女が大きな声で笑っていたのは、もはや笑うことしかできない状況であったから、などでは断じてない、きっと。


////11-3:【それを愛と呼ぶよ】


ああ、わたくしを彼と引き剥がすなど、なんてことをするのですか。
―――姫君、彼に会わせてさしあげてもよろしいのですが、いくつか条件があります。
なんなりとおききいれいたします!
―――あなたがルイズ・フランソワーズの住居に侵入した目的は何ですか。教えてください。
わたくしのおともだちに頼みごとをしようと思ったのよ! さあはやく彼に! わたくしは普通の女の子になりたいの! ゲルマニアの皇帝になんて絶対に嫁ぎたくない!
―――頼みごととは?
昔好きだったウェールズ王子にあてた、始祖にかけて愛を誓った手紙を取り返しに行ってもらわないとまずいけど、もうわたしは恋に生きます、トリステインいらない!
―――ウェールズ殿下のことは?
わたくしは若かったのよ、彼はわたくしに愛を誓ってくださいませんでした、よいのです、なので、わたくしはあたらしい恋に目覚めたのです!

―――

ルイズは実感する。
人の心とは、複雑きわまりないものである。
ある人が真にどのようなことを考えているのか、というのは、現実においてはどんなに推測しても無駄におわることのほうが多いものだ。

薬でゆがめられているとはいえ、今の彼女は心からこのようなことを言っているのだろう。
では彼女は悪い人間なのか、というと、そうではない。心と立場が、乖離してしまっているのだ。ルイズも似たようなものである。

失望するようなことではなく、彼女のことをひとりの人間として、あるがままに感じることができたような気がする。
誰を責めてもいけないのだ。ただ、みな自分の人生を生きることだけしかできないのだから。

いかなる立場にあろうと……
どんな人でも闇を持っている。恐怖、憎悪、破壊衝動。三柱の魔神。
どんな人でも怒りを持っている。
どんな人でも悩み、苦しみ、他人を責める気持ちを持っている。
他人を自分のものにしたいという気持ちを持っている。相手が恋人であれ、友人であれ、奴隷であれ使用人であれ。
自分を無償で与えてもよいという気持ちもある。
それらは複雑に絡まりあっていて、自分でも他人でも、だれがみても本当のかたちはわからない。

ある人にとって、何が大切なのか、というのはまさしくそれだ。国、運命、家族、恋人、財産。
ルイズは自分自身にとって何が本当に大切なのか、わからなくなりかけていた。

ぐっ、と不意に<存在の偉大なる円環>に繋がる。それはこの宇宙全体に広がるほどの優しさのかたまり。
運命の流れは、あらゆる人のあらゆる気持ちを飲み込むほど大きく、粉々に打ち砕くほどに悲しいもの。

いつしかルイズは、タバサの持っていたちいさな宝箱のたくさんの中身のことを、思い出していた―――

たぶん、現実逃避ではない。殺伐としたこの世界に心の安らぎを求めた、ただそれだけである。

―――

『幽霊屋敷』の中、空気は重い。ただでさえ薄気味の悪い雰囲気が、ますます恐ろしい何かの異空間へと進化しつつあるように見える。

部屋の隅にじっと体育座りで、膝に顔を埋めているのはモンモランシー。生気がなく、死体一歩手前のようだ。
その隣で、放心した彼女の肩に手を置いてやっているのは、シエスタ。目が死んでいる。
疾風のギトーが、壁に背中をあずけて、涼しそうな表情で立っている。彼は普段より不気味な男だとささやかれているが、この状況におけるその余裕さは、まさに不気味でもある。
コルベールがしかめつらで、腕を組んで立っている。月光に眼鏡を光らせ額にしわを寄せれば寄せるほど、不気味な顔に見える。
窓からじっと外を見て、室内に背を向けて立っているのは、部屋の主、ゼロのルイズ。もうただの不気味さを通り越して、どこかカリスマに似たようなものを放っているようにも見える。
その隣で、しっかりと手をつなぎ、ルイズと同じ外を見つめているのが、雪風のタバサ。こころもち嬉しそうだが冷徹無表情。
キュルケ・フォン・ツェルプストーだけが、これはひどい、あんまりだ、でもあたしにはあまり関係ないのよね、どうしようかしら、という顔をしている。彼女だけが、この場において唯一まともな人間のように見える。

「タバサ、ごめんなさいね、症状の軽いあなたを治療するのは、いちばんあとになるわ……精製用の器具がふたつしかないのよ」

ルイズが言った。

「かまわない……わたしは、幸せだから」

タバサが、そう言った。同性よ、偽りなのよ、とキュルケが言ったが、これがすぐに終わる偽ものだということは知っているし、かまわない、とタバサは答えた。
はじめてだから、大切なきもちだから、と続いた。恋多きキュルケはぐっと胸がつまり、顔を覆ってしまった。

「さて……解除薬の材料が足りないわけなんだけれど」

エリクサーの材料と、惚れ薬解除薬の材料は、残念なことに重複していなかった。
ルイズは、アンリエッタの口内へと、カトレアのために作った試作のマイナー版霊薬を、泣く泣くそそぎこんだ。
すこしだけ症状が改善されたが、一時的なもののようだ。本物のもつ効果とは天と地との差であろう。

……材料を取ってきて、完全な解除薬ができるまで、最低でも二日はかかりそうだった。

ルイズの薬のおかげで一時的に正気に戻ったアンリエッタは、わたしのことはかまわないから、国を救ってください、と言った。
彼女は国を守るため、同盟のため、ゲルマニアの皇帝へと嫁がなければならない。いわゆる、望まぬ結婚である。

トリステイン王国は小国である。
周囲には、浮遊大陸アルビオン、大国ガリア、そして始祖より続く正統の王家をもたない、ゲルマニア帝国がある。
現在、アルビオン大陸では大規模な内乱が起こっており、聖地奪還をかかげる貴族派が、国王と王太子をを中心とした王党派を圧倒しているのだという。
貴族派をまとめる組織<レコン・キスタ>の総司令が、失われた魔法系統<虚無>の使い手だ、と言われており、正統な王権を主張しているそうだ。

そのようなわけで、アルビオン王家が滅ぼされ、<レコン・キスタ>によって占領されたなら、次に攻められるのはトリステインだ。
トリステイン一国でアルビオンを迎え撃つことはできない。
なので、アンリエッタの政略結婚とひきかえに、トリステインはゲルマニアと軍事同盟を結ばなければならない。

アンリエッタは、かつてアルビオンのウェールズ王太子と、愛し合ったことがあった。
そのときに書いた恋文が<レコン・キスタ>の手にわたってしまえば、その同盟が崩壊する火種となる。そうなれば小国トリステインは、終わりだ。
宮廷で誰にも相談できず悩みぬいたアンリエッタは、唯一心から信頼できる相手、幼馴染であるルイズのもとへやってきたのだ。

王女は、使者の証明たる水のルビーと、封書をルイズへと渡した。
私が信頼できるのはあなただけ、ウェールズさまに親書を渡すのはあなた。どうか他の人には任せないで下さいまし、と言った。

そこから、話がおかしくなりはじめる。
ところで、あなた本当にわたしのおともだちルイズなの? 髪の毛の色がぜんぜんちがうじゃない。
ルイズはあなたみたいに恐ろしい娘じゃないわ、はっ、まさか、あなたはルイズに化けている偽者ね。ああ信書とルビー返して! 返してよ泥棒猫!
ああグラモンさま……あなたのアンアンをお助け下さいまし……

幼馴染の敬愛する姫にそう言われたルイズは、それはそれは傷ついたものだった。タバサがぎゅっと手を握ってくれて、心がいくぶんか安らいだ。

ルイズたちがやらなければいけないことは、ふたつ。

ひとつは一刻も早く王女を正気に戻すこと。望まぬ政略結婚だというのは非常に心苦しいが、彼女はゲルマニア皇帝のもとへといかなければならない身だ。
正直このままギーシュとお花畑でちゅっちゅいやーんしてたほうが彼女にとっては幸せなのかもしれないが、そうもいかない。

もうひとつは、その結婚を妨げるであろう手紙を、ニューカッスル城にいるらしいウェールズ王太子本人に会って、返してもらうこと。
戦乱のど真ん中へと、飛び込んでいかなければならない。

さて、ふたつのパーティに分かれることとなった―――

戦乱うずまくアルビオン大陸、『ニューカッスルまで到達する』という任務には、スクウェアメイジである疾風のギトーがつくことになった。
向かうは風の大陸だ、風のメイジであるところの私が行くべきである、と進んで引き受けたのであった。
じゃあなんであんた水の国トリステインに住んでいるんだ、と誰もが思ったが、口には出さなかった。

「ミスタ・ギトーだけでは大変だろう」

コルベールが言った。トリステインに利害関係のあるものが、そちらの任務につかねばならない。

「私とモンモランシーは、材料調達と迅速な調合のために、ぎりぎりまで残らなきゃいけません」

ルイズが言った。タバサはトリステインの人間ではないし、ルイズのそばを離れたくない、と言ったので、そちらに加わることとなった。
コルベールが、では私もアルビオンへ行こう、といった。私の炎は人には向けぬ、だが私には今や発明品『やさしい毒ヘビ君』がある、と。
キュルケはゲルマニアの人間。なので、ルイズについてゆくことにしたそうだ。
シエスタは、薬剤調合組の世話、地下の虜囚の世話をすることとなった。

「ミスタ・コルベール」

ルイズは、一本の巻物を、彼に手渡した。青いリボンで封をされている、サンクチュアリの魔術の封じ込められた巻物だ。

「使い方は、以前説明した通りです……任務達成の折に私を呼ぶとき、そして、道中危険を感じたら、迷わず使って下さい」

コルベールは、かなり不気味な笑みを浮かべて頷いた。
以前より、それを使ってみたくてたまらなかったらしい。
自分たちの研究がトリステインを救うのだ、という高揚が、いまや彼の心を炎蛇(ガーディアン・ハイドラ)のように燃え上がらせているに違いない。

////【次回:男三人珍道中、へとつづく】


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