<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.12606の一覧
[0] 【2章完結】魔法少女リリカルなのは 心の渇いた吸血鬼(型月さっちん×りりなの) [デモア](2021/10/29 12:22)
[1] 第0話_a[デモア](2012/02/26 02:03)
[2] 第0話_b[デモア](2013/06/10 12:31)
[3] 第0話_c[デモア](2013/08/17 03:19)
[4] 割と重要なお知らせ[デモア](2013/03/11 21:50)
[5] 第1話[デモア](2013/05/03 01:21)
[6] 第2話[デモア](2011/07/05 20:29)
[7] 第3話[デモア](2013/02/16 20:33)
[8] 第4話[デモア](2014/10/31 00:02)
[9] 第5話[デモア](2013/05/03 01:22)
[10] 第6話[デモア](2013/02/16 20:43)
[11] 第7話[デモア](2013/05/03 01:22)
[12] 第8話[デモア](2012/02/03 19:23)
[13] 第9話[デモア](2012/02/03 19:23)
[14] 第10話[デモア](2012/08/10 02:35)
[15] 第11話[デモア](2012/08/10 02:38)
[16] 第12話[デモア](2013/05/01 04:48)
[17] 第13話[デモア](2013/10/26 18:49)
[18] 第14話[デモア](2013/07/22 16:51)
[19] 第15話[デモア](2012/08/10 02:41)
[20] 第16話[デモア](2013/05/02 11:24)
[21] 第17話[デモア](2013/05/02 11:09)
[22] 第18話[デモア](2013/05/02 11:02)
[23] 第19話[デモア](2013/05/02 10:58)
[24] 第20話[デモア](2013/03/14 01:03)
[25] 第21話[デモア](2012/02/14 04:31)
[26] 第22話[デモア](2013/01/02 22:45)
[27] 第23話[デモア](2015/05/31 14:00)
[28] 第24話[デモア](2014/04/30 03:14)
[29] 第25話[デモア](2015/04/07 05:15)
[30] 第26話[デモア](2014/05/30 09:29)
[31] 最終話[デモア](2021/10/29 11:51)
[47] Garden 第1話[デモア](2014/05/30 09:31)
[48] Garden 第2話[デモア](2013/02/20 12:58)
[49] Garden 第3話[デモア](2021/09/20 12:07)
[50] Garden 第4話[デモア](2013/10/15 02:22)
[51] Garden 第5話[デモア](2014/07/30 15:23)
[52] Garden 第6話[デモア](2014/06/02 01:07)
[53] Garden 第7話[デモア](2014/10/21 18:36)
[54] Garden 第8話[デモア](2014/10/24 02:26)
[55] Garden 第9話[デモア](2014/06/07 17:56)
[56] Garden 第10話[デモア](2015/04/03 01:46)
[57] Garden 第11話[デモア](2015/06/28 22:41)
[58] Garden 第12話[デモア](2016/03/15 20:10)
[59] Garden 第13話[デモア](2021/09/20 12:11)
[60] Garden 第14話[デモア](2021/09/26 00:06)
[61] Garden 第15話[デモア](2021/09/27 12:06)
[62] Garden 第16話[デモア](2021/10/01 12:14)
[63] Garden 第17話[デモア](2021/10/06 11:20)
[64] Garden 第18話[デモア](2021/10/08 12:06)
[65] Garden 第19話[デモア](2021/10/13 12:14)
[66] Garden 第20話[デモア](2021/10/29 13:09)
[67] Garden 第21話[デモア](2021/10/15 12:04)
[68] Garden 第22話[デモア](2021/10/21 02:35)
[69] Garden 第23話[デモア](2021/10/22 21:49)
[70] Garden 第24話[デモア](2021/10/26 12:37)
[71] Garden 最終話[デモア](2021/11/02 21:52)
[73] あとがき[デモア](2021/10/29 12:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[12606] 第2話
Name: デモア◆45e06a21 ID:8a290937 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/05 20:29
「うっ……」

なのは達の見ている前で、小さな人型の方が呻いて大きくふらついた。何とか踏ん張っているが、今にも倒れそうだ。
だが、暗闇でよく見えないその姿を凝視していたなのはは、ある事に気が付き声を上げた。

「……え!? あれって」

「グ……グゴ……」

しかし、その時先程吹っ飛ばされた方のドデカイ人型がうめき声を上げながら立ち上がるのを確認した。
そちらは、余程体が頑丈に出来ているのか、あれほどの力で殴り飛ばされたのにどっしりと立ち上がった。

そして、次の瞬間には小さい方へドシドシとどでかい足音を響かせながら、右腕を振りかぶって駆けていく。
やたら吹っ飛ばされていたためそれなりの時間がかかるだろうが、それでも今からこちらが駆けつけたところで間に合うようなタイミングじゃない。

「!! 大変だよユーノ君! あの娘が!」

それが分かっていながらも放っておける訳がないなのはは、急いで走り出す。
戦っているのはあくまで暴走体同士だと思っているため、それなりに冷静なユーノはなのはのその言い回しに違和感を覚えた。
なのはの肩の上で揺らされながら、怪訝な声で問う。

「あの娘?」

なのはは、そんなユーノの声に苛立ちを覚えるが、そんなことをしている場合じゃないと、更に叫ぶ。

「あの娘! 小さい方!! 私と同じぐらいの女の子!!」

「え!?」

「早く助けないと!!」

その言葉に、ユーノは未だふらふらしている小さい方を注意深く観察する。するとユーノの目にも確かに、9歳ぐらいのボロボロの女の子が写った。
暴走体かも知れないが、この分だとそのベースは間違いなく現地住人、しかもまだ幼い女の子だ。
その事実を確認した途端、ユーノの中に焦りが生まれる。大型の暴走体は、もう女の子のすぐ側まで来ている。

(どうしよう、今からじゃ何をしたって間に合わない! ああもう! こんな事ならなのはに飛行魔法とか攻撃魔法とか教えとけば良かった!!)

だがしかし、そんなことは土台無理といったものだ。何と言ってもなのはが魔法を使うのはこれが4回目。
先日、犬を取り込み、実態を伴った事で強力になったジュエルシードと戦いはしたがそんな本格的な戦闘等していないし、それからほとんど時間も経っていないのだ。
そんなこと、教える暇も無かった。

そんなことをしている間に、なのは達は女の子と5メートルぐらいの位置まで来ていたが、大型の暴走体の方はもう腕を振り下ろすだけの所まで来ていた。
それは短いようでそれでも絶対的な、どうにもならない差。

「グオオオォォォォ!!」

大型の暴走体は雄叫びを上げながら腕を振り下ろそうとする。女の子の方は未だふらついていて、相対する暴走体を見上げているが、とてもじゃないが避けれそうにない。
もう駄目だ。なのはもユーノも、そう思い、間に合わなかったと、諦めの気持ちと共に、足を止めた。



が。


「グ……ォ……」

今政にその豪腕を振り下ろそうとしていた大型の暴走体は、そのままの姿で固まっていた。いつまで経っても、その破壊の瞬間はやってこない。
なのは達はその光景を不思議そうに見つめていたが、その内、大型の暴走体が仰向けに倒れた。

ズドンと、空気を振るわせる音にビクリと体を震わせ、なのはは呆然とする。
どう見ても気絶しているようにしか見えない。

「え……と……?」

その声が引き金になり、同じく呆然としていたユーノが覚醒し、急いでなのはに言う。

「! 兎に角、チャンスだよなのは。今のうちに封印を!」

「あっ うん」

それを聞いたなのはも、ハッとして杖を倒れた暴走体に向け、呪文を唱える。

《sealling mode》

「リリカル マジカル!」

レイジングハートはなのはの意を汲み、封印形態になる。
なのはが呪文を唱えると、レイジングハートから光の帯が無数に飛び出し、ゴリラの様な姿をしていた暴走体に纏わりついた。気絶している暴走体の額から、ⅩⅢの文字が表れる。

「ジュエルシード、シリアル13、封印!」

《seal》

暴走体の体が光り、どんどん小さくなってゆく。
そして、その後には目を回しているサルの子供と、水色の宝石――ジュエルシードがあった。
ジュエルシードはレイジングハートに近づいていき、その中に格納される。


「なのは、あっちの娘も」

「うん」

ユーノの言葉に、なのははまだ封印形態のレイジングハートを少女の方に向ける。
見ると、その少女は酷い有様だった。着けているのは何故かシャツと下着だけ。その着衣も今はもうボロボロで、土だらけ木屑だらけ。そこら中に葉っぱも着いていて、暗くてよく見えないが体も傷だらけだろう。

その姿になのはは息を呑んだ。そして、通じないだろうと思いつつも、少女に向かって口を開いた。何かを言わなければやりきれなかった。

「ごめんね。こわかった よ n ……」

半ば泣きそうな声がなのはの口からこぼれたが、その言葉は、なのはが少女の目を見た瞬間に途切れ始め、最後には止まってしまった。
なのは自身も、レイジングハートを持っていた腕もおろしてどこか呆然とし始めた。
それは、ユーノも同じで、少女の瞳をみたまま固まってしまっていた。

《Master?》

レイジングハートがなのはに呼びかけるが、返事は無い。ただの屍のようだ。






さつきは、ふらふらとしながら目の前の少女へ歩を進めた。
さっきは本当に危なかったと、さつきの心臓はまだバクバクと鳴っていた。


先ほど、さつきは目の前のデカブツを殴り飛ばしたあと、いきなりふらついた体に困惑していた。
相手も全然吹っ飛ばなかったし、今までの体と同スペックならまだ大丈夫だと思っていたので、なんで? と思いながらもさつきは内心焦っていた。

今にして思ってみれば、この体は『今は』人間なのだ。寒い等とは慣れていたからそう感じなかっただけで、大した服も着ずにこんな夜中に歩いていたら体が冷えるのは当たり前。体が冷える=体力を奪われるというのは、酷く当然のことだった。
体から血も流れていたとなっては、尚更だ。

そして、その体力が枯渇しかけていた自分に、起き上がったゴリラ(?)が殺る気まんまんで近づいて来たとき、さつきはかなり焦っていた。体はふらふらして言うことを聞いてくれない。このままじゃマトモにあの馬鹿力を受けることになる。

軽いパニック状態に陥りながら、必死にこの状況の打開策を模索した。しかし、焦った頭でそんな直ぐに解決案が思いつくはずも無く、ようやく一つ思いついたのはもうゴリラ(?)は目の前、しかも初めてやることなので成功の保障は無いという最悪の状況だった。
しかし、もうやるしか無かった。

もうどうにでもなれと、半ばヤケになりながらさつきはそれを使用した。

それ―――吸血鬼固有の能力、使い方だけは宝石爺からレクチャーしてもらった、『魅了の魔眼』。
目と目を合わせることで、相手を思い通りに操ることの出来る魔眼である。
命じたのは、『動くな、止まれ』のみ。

見上げるようにして放ったそれは、何とか上手く行ったようだった。ゴリラ(?)は腕を振り上げた状態で止まっていた。
と、ゴリラ(?)も本当は先ほどのダメージが効いていたのか、その場で倒れてしまった。

「リリカル マジカル!」

そのことにさつきが安堵していると、いきなり右手の方からその言葉と共に桜色に光るリボンが放たれ、目の前のゴリラに纏わり着いたと思ったら、

「ジュエルシード、シリアル13、封印!」

何やらゴリラ(?)が光に包まれ、その光が収まった時にはそこには目を回したサルと水色の宝石だけが残っていた。
一体何? と、さつきはその宝石が飛んでいった、リボンが飛んできた方へ目を向けると、そこには白い服を身に纏い、杖をこちらに向けている可愛らしい少女が居たのだった。

「なのは、あっちの娘も」

「うん」

この世界の子かな? この世界って、あんな格好が普通の服装なの? こんな時間にどうしてこんな小さい子が? さっきのは一体何?
等々考えていたさつきだったが、その言葉に冷や汗を流した。
見間違いでなければ、最初の台詞はその子の肩に乗っているフェレットが発した様に見えた。ここは平行世界だ。人間の言葉を発する動物もいるかも知れない。それはまだいい。だが、その発した台詞がさつきには問題だった。

そのフェレットは、『あっちの娘『も』』と言った。そして、二人ともこっちを見ている。と言うことは、自分はさっきのと同類と思われていて、自分もさっきみたいなことをされる可能性がやたら高いとさつきは思った。

冗談じゃ無い。それがその時さつきが思った事だった。これ以上の厄介ごとは御免だった。そして、さつきは少女が何か言っているのも構わず必死になってその二人にも『魅了の魔眼』を使ったのだった。
そして、それが上手く行ったのでついでにその血も貰っておこうと思って今に至る。


さつきは目の前の少女を見た。ワンピースみたいな白が基調とされた服、ツインテールの栗色の髪、可愛い顔立ち、手には杖。
十人中十人が同じ感想を抱くであろうその姿は、まさしく『魔法少女』だった。

(これとかさっきのことって、もしかしてこの世界じゃ普通のことなのかな……)

そうだとしたら、とんでもない世界に来てしまったものだとさつきは嘆息した。
兎に角、後ですぐに調べようとさつきは思い、取り敢えず今はとその少女の首筋に噛み付いた。

(んくっ、んくっ、んくっ)

体の痛みが消えて行き、体力も回復して行くのが分かる。そこまで多く採っちゃうと貧血を起こしたりして危険なのでそろそろ止めなければと思うが、

(やばい、止まれない……)

やっとありつけた血に、さつきの体は離れてくれなかった。
さつきが内心で焦っていると、救いの手は別のところから来た。

《Master!!》

「えっ!?」

「きゃっ!」

さつきはいきなり聞こえたその声に驚いて体を離し、その前の少女――なのははその声で正気に戻り、さつきが離れた時の衝撃でバランスを崩してたたらを踏んだ。
声の主はレイジングハートで、相手がフラフラである、自分の主人が(何か様子がおかしいが)接近を許している、別に攻撃して来ている訳ではない等の要因があり今まで黙認していたのだが、いきなり首筋に噛み付かれた自分の主に危機感を覚え、先ほどよりも大きな声で叫んだのだった。

「っ、痛っ!」

そして、なのはは自分の首に痛みを感じ、そこに手を添えるとその手はそう多くは無いが血に濡れていた。

「……え?」

多くは無くとも首元から流れ出る血、という一介の少女とはほぼ無縁の現実感の無い光景に、なのはは間抜けとも見える声を上げた。

「なのは、見せて!」

同様に正気に戻っていたユーノはそれを見てなのはの傷口を確認する。

「何だこの傷は……でも、これなら」

ユーノはそう言うと、なのはの首筋の傷に治癒魔法をかけ始めた。ユーノが冷静に対応したお陰で、なのはがパニックになることは無かった。
なのはは痛みが引いていくのを感じながら、ふと気づいた。

「あ! あの娘は!?」

二人の前に、既に少女の姿は無かった。




さつきは、森の茂みに隠れながらドキドキしている胸を押さえて深呼吸していた。
あの後、これ以上少女の目の前にいると面倒なことになると考え、大急ぎで姿をくらましたのだ。

(何だったんだろあの声……ビックリしたー。
 でも、お陰で助かったかも。もう、しっかりしなきゃ。自制も出来ないなんて)

さつきは、そう思いながら体の調子を確認した。
『復元呪詛』――吸血鬼の持つ能力、擬似的な時間逆行による体の復元によって、特に酷かった腕と脇腹の傷を重点的に復元した。
まだかなりの量の擦り傷、切り傷が残っているが、全て軽く、この後また血を飲めば完治するだろう。体力の方も普通に動けるぐらいには回復した。
これなら問題ない。とさつきは判断した。

(よし、それじゃ。折角の情報源を無駄には出来ないよね)

と、さつきは茂みからさっきのなのはと言うらしい女の子を確認する。
なのはは森の隣の公園のベンチに座ろうとしていた。
何かしら有益な情報があるかも知れないと、さつきは気づかれない様に彼女の声が聞こえる位置まで移動する。

「はふぅ~~。 今日はビックリしっぱなしだよ……」

ある程度近づいた所で、ベンチに座りながら言うなのはの声が聞こえた。
この程度でいいだろうと、さつきはその場でなりを顰める。

「お疲れ様、なのは」

「うん。ありがと、ユーノ君。でも、本当に良いの? あの娘追わなくて」

どうやらフェレットの方はユーノと言うらしい。

(っていうか、本当にフェレットが喋ってるよ……
 何かもう、非常識に見えてもこの世界じゃ常識なんだよね……)

と、さつきは盛大な勘違いをしながらも自分にとって重要になりそうな話題を聞くために更に耳をそばだてる。

「うん。今は、ね。あの娘は不確定要素が多いからね。被害が出る前に何とかしなきゃいけないけど、その前にさっき何があったのかレイジングハートの記録データを見て、何かしらの対策を取っておいた方がいい。また同じようなことになるかも知れないし。体力の回復もしておいた方がいい」

「ふーん。って、え!? でもそれって今すぐ被害が出たら何にもできないよ! あの娘もあんな怪我してるのに! ユーノ君さっきほっといても何の問題も無いって言ったじゃない! 私はまだ頑張れるから早く追わないと」

そう言って立ち上がろうとするなのはを、ユーノが急いで止めた。

「待ってなのは! たぶんだけど、被害はそうそう出ないし、むしろ対応を間違える方が危険だから! あの娘にとっても!」

「……ユーノ君、私は本当に大丈夫だから」

だが、なのははそれを自分を気遣っての言葉と取ったようだ。

「いや、本当にそういうことじゃ無いから。たぶんだけど、あの娘には理性がある」

「?」

その言葉に、なのはは首を傾げる。取り合えず、はなしを聞く気にはなった様だ。大人しくベンチに座る。

(あの娘達、一体わたしを何だと……ええそうですよ。どうせわたしは人外ですよ化け物ですよ……)

どす黒いオーラを振り撒きながらも注意深く話を聞くさつき。

「あのねなのは、普通の暴走体なら、周りに被害を与えるだけの、破壊衝動の塊みたいなものの筈なんだ。
 でもあの娘は撤退という、本来暴走体が行うはずの無い行動を取っている」

「……つまり、どういうこと?」

「あの娘は、正しく願いを叶えたのかも知れない。
 ジュエルシードは本来持ち主の願いを叶える魔法の石。持ち主を求めて暴走したり、変な風に力が働いて回りに被害が出たりする危険なものだけど、決して正しく動作しない訳じゃない」

そのユーノの言葉を聞いたさつきは、今まで纏っていたどす黒いオーラを押さえ込んだ。同時に、自分の心臓が早鐘を打ったかの様に鳴り出すのを感じる。
さつきの体を急速に駆け回っていく感情の正体は……期待。

(その石なら……もしかして……)

「そっか。じゃああの娘は、ジュエルシードに願いを叶えてもらっただけの普通の女の子ってことだね」

なのははユーノの言葉を聞いて、ユーノの言わんとしていることを理解した。

「うん。でも、ここからが問題。あの娘、なのはと同じぐらいでまだ小さかったし……こんな事に巻き込まれてパニックを起こしてるかも知れない。
 なのはもあのパワーは見ただろう? パニックを起こしたあの娘があの力を振りかざしたらそれこそ危険だよ」

「うん……それに、あんな傷を負って……」

ユーノの言葉に、なのはは真剣な表情で頷いた。

(そんな事しません!)

叫びだしたい衝動に駆られながら、さつきは必死に堪えた。

「パニックに陥った子は、対応を間違えると怖いからね。そうで無くても、あの力は危険だ。早いとこ見つけて、ジュエルシードを回収しなきゃ」

「うん。……あれ? でも、あの娘はジュエルシードに何て願ったんだろう?」

あーもう早くここから離れようかな~等と考えながら、まだ有益な情報があるかも知れないとまだ粘るさつき。

「うーん……力が強くなりたい、とか?」

「女の子がそんなこと願うかなぁ」

「う~ん、願わないかもね……
 それも、レイジングハートの記録映像を見れば何かヒントがあるかも知れない。早いとこ見て追跡を開始しよう」

「うん。もう十分体力も回復したよ。じゃあ、レイジングハート、お願いね」

先ほどから何度か出てきた意味不明用語、レイジングハート、それは一体何なのかとさつきはそちらを凝視すると、

《All right. My master》

先ほどさつきを驚かせた声が、少女の持つ杖から発せられていた。
そして、その杖から先ほど自分が少女に近づいていった場面が立体映像で映し出される様に、さつきは心底おどろいた。

(何これ!? こっちの科学ってこんなにも進んでるの!!?)

そして、映像の中のさつきがなのはの首筋に噛み付いた。

「え!? これって……」

「………」

その光景に、なのはは驚愕し、ユーノは深く考え込む仕草をした。

「……私、血、吸われてる?」

「うん……多分」

なのはは些か呆然としながらその光景を見つめている。その手は無意識的に噛まれた部分へ持っていかれていた。

「え……でも……私、こんなの覚えてないよ」

「うん。僕もだよ」

《Master and you were the feeling made a blank surprise then.(マスター達はその時ずっと呆然とした感じでした)》

「何をされたか分かるかい?」

唯一その時のことを覚えているらしいレイジングハートに、ユーノは聞いた。
さつきは高校生の頭脳を駆使しながら必死に英語を解読する。
普通に理解している風ななのはに、さつきは戦慄した。

《Perhaps, I think that it is magic like the hint.(恐らく、暗示の様な魔法だと思われます)
 I seem that it is a trigger to match eyes.(目を合わせることがトリガーだと思います)》

なのはは黙って全てをユーノに任せている。さつきが見たところ、自分の専門分野じゃ無いからの様だ。

「暗示の魔法……聴いたことが無いな……幻影魔法の応用……?
 いや、そもそもこの世界に魔導師は存在しない筈。
 じゃあ、あれはジュエルシードを取り込んだことによって得たレアスキル……?
 レイジングハート、今度からはブロック出来るかい?」

このユーノの呟きに、さつきは肩をピクリと震わせた。
本人にとっては何気ない台詞だったかも知れないが、さつきにとっては有益な情報の塊だった。

(今の台詞……ってことは、後で色々と情報を纏めとかないと……もしかしたら、とんでもない勘違いをしてるかも知れない)

と、再びレイジングハートが話し始めたので思考を中断する。

《Yes. Magic manages to become it as follows in case of the one at that level.(はい。魔法の方は、あのレベルのものならば次からは何とかなります)》

「そうか。じゃあ、こんどからはブロック頼むよ、レイジングハート
 それと、あの血を吸う行為には一体何があるか分かるかい?」

《The act of sucking blood is uncertain.(吸血行為に関しては不明です)
 But, though it seems that there will be a wound of her body after blood is breathed in soon to some degree. (しかし、血を吸った後の彼女の体の傷がある程度治っている様に見えます。)》

「「え?」」

それにはなのはも反応した。レイジングハートは、血を吸う前のさつきの映像と吸った後のさつきの映像を映し出した。

「本当だ……よかった……」

自分の事の様に安心した様子を見せるなのは。その様子に、さつきの胸には罪悪感が渦巻いた。
そして、その映像を見て再度頭を悩ませるユーノ。

「うーん。これは一体……これもジュエルシードの影響? いやでも……」

と、そこにレイジングハートが言葉を続ける。

《In the addition, I might want to confirm another one.(それと、もう一つ確認したいことがあるのですが。)》

「ん? 何だい?」

《Though it is not thought that the Jewel Seed reacted from that girl.(あの少女からは、ジュエルシードの反応が無かったように思うのですが)》

「「……へ?」」

なのはとユーノ、二人の声が重なった。
と、次の瞬間には滝の様な汗を流し始めるユーノ。
そんなどこか思い当たる節があった様な状態のユーノに、なのはが声をかける。

「えっと……ユーノ君? それってつまり……」

「え、えーとね、これはその超展開の連続でジュエルシードの反応が無いことに気がつかなかったっていうかいや気がついてたけど気にする余裕が無かったっていうか何かしらの異変はジュエルシードによるものっていう固定観念が仇になったっていうk」

マシンガンの様に垂れ流される言い訳を、なのはが遮る。

「つ・ま・り! あの娘は暴走体でもなんでも無かったって事なんだよね!?」

「……はい。その通りですすいません」

がっくりと項垂れるユーノ。
その様子を見たさつきは、誤解が解かれたことで幾分も気分がスッキリし、レイジングハートに感謝していた。

(うん。取り合えずあのユーノってフェレットは今度ぶん殴っとこ)

語尾に☆が着いているのは目の錯覚だろう。

閑話休題




「でも、あの娘ってジュエルシードの暴走体じゃなんなら一体なんなんだろう?」

レイジングハートとユーノから驚愕の事実を知らされたなのはは、次の問題点を指摘する。
ちなみに、彼女はジュエルシードの発動の瞬間は感知出来ても、発動中のジュエルシードの反応はまだイマイチ判別出来ないのだ。
ユーノとは、至近距離で2つ同時に発動したため発動したのは1つと誤認したという結論に至っていたのだった。

「うーん。ここは管理外世界だから、この世界に魔導師は居ないはずだし。魔法の有る管理世界から来たにしては様子がおかしかったし……
 でもあのパワーはどう考えてもあんな子供が……っていうかただの人間が出せるものじゃ無いしそれに血を吸うって……
 ってうわっ! な、なのは!?」

と、その瞬間になのはは飛び上がり、いきなりオロオロし始める。その肩に乗っていたユーノは、その拍子に落ちそうになってしまう。

「ユ、ユーノ君! どうしよう! 私、今までと同じだよね!? 口の中とか、牙とかはえて無いよね!!?」

明らかに様子がおかしいなのはに、ユーノは戸惑いながらも兎に角落ち着かせようとする。

「お、落ち着いてなのは。一体何があったのさ。なのはは今までのなのはだよ」

《Master, settle down first, and explain.(マスター、まずは落ち着いて、わけを話してください)》

レイジングハートにまで諌められ、なのはは涙目涙声になりながらも説明する。

「あ、あのね、ユーノ君……んっ……この世界にはね、吸血鬼っていう日の光が苦手な……人の血を吸うモンスターがいてね……その吸血鬼に噛まれると……ぐすっ……その人も吸血鬼になっちゃうって……」

ユーノはその話に困惑し、レイジングハートは……

《Master, please settle down. Abnormality is not found in Master's body at all. It is a street up to now.(マスター、落ち着いてください。マスターの体に異常は全くありません。今まで通りです)》

「ほ、本当……?」

《Yes. I doesn't tell a lie to Master.(はい。マスターに嘘はつきません)》

「うん。ありがとう。レイジングハート」

まだ不安が拭えないようだが、何とか落ち着いたなのはに、ユーノが尋ねる。

「ねえなのは。その吸血鬼……って、本当に実在するの?」

「ううん。……架空の生き物の……筈、なんだけど……ジュエルシードの暴走体だって思ってたから、吸血鬼のことすっかり忘れてて、思いつかなかったけど……でも、この世界で血を吸う人型のって言えば吸血鬼しか……」

「なのは、考えすぎだよ。あの娘はそんなんじゃ無いって。現に今、なのはは吸血鬼になんてなってないだろ?」

「うん……ありがとう。ユーノ君」

なのはの様子を見て、ユーノはもう家に帰ることを進言した。なのはもその提案に直ぐに頷き、二人は帰路に着いたのだった。

(兎に角、吸血鬼っていうのについて色々と調べておかないと……)

そうユーノは決意した。





一方その頃、さつきは。

「願いを叶える魔法の石、ジュエルシード。わたしの世界じゃ不可能だったけど、もしかしてその石なら……」

(わたしの体を元に戻して、元の世界に帰れるかも知れない。そうすれば……)

さつきは、なのはが取り乱し始めたところでどうにもかくにも居ずらくなり、急いでそこから離れたのだった。彼女は今、自分の服を回収し、繁華街の裏路地に居る。
そして、そこで先ほど聞いた事を元に思考を重ねていく。

魔術を学んだ彼女ならわかる。そんな事はとうてい不可能であろうと。
だが、人というのは新たな可能性が浮かび上がれば、それに縋りつきたくなるものだ。たとえそれが、一度キッパリと諦めたと思っていたものでも、その誘惑を断ち切るなんてことはそうそう出来るものじゃない。

それに、

(あのフェレット……《この世界には》って言ってた。あの口ぶりだと、他の世界に行った事があるって風だったし。
 って言うことは、あのフェレット達は第二魔法と同等の事をできるということなのかな。
 もしそうだとしたら……もし、わたしの世界で魔法とされている事がこっちの世界では当たり前だとしたら、そこで魔法の石と呼ばれているあの宝石なら……本当に不可能じゃないかも知れない)

そうなのだ。先ほどユーノが言った言葉には、さつきが期待を持つに十分な語句がかなり含まれていたのだった。
そしてさつきは、一旦それに関する思考を中断し、情報の整理にかかる。

(暗示と判断したものも魔法って言ってたって事は、彼らにこっちの魔術と魔法の区別は無いんだよね。
 『この世界に魔導師は存在しない筈』、『ここは管理外世界だから、この世界に魔導師は居ないはず』ってあのフェレットは言ってた。ってことは、彼らはこの世界にとって異質な存在ということ。さっきここに来るまでに町並みとかを見た限りでは、ここはわたしの世界とそんなに変わらないみたいだったし。
 これからコンビ二の雑誌とか図書館とかで調べて裏づけとらないといけないけど、たぶんこの世界はわたしの世界とほとんど同じで、彼らは他の世界から来たってことで合ってると思う。
 今度何とかして接触しないと。
 あとは、この世界に魔術教会とか時計塔とかないか調べとかないとね。
 あ、あと、新しい服の調達もしなきゃ……やっぱり、最初は泥棒かなぁ……)

情報の整理と、今後の方針を纏めて、丁度裏路地に入ってきた学生たちを見据える。どうやら塾の帰りに近道をするだけらしい。本当に治安のいい街だ。
『魅了の魔眼』もまだ拙いけど何とか使えるようになったし、結構楽に残りの血は補えそうだなと思いながら、さつきはその人達に近づいていった。







あとがき

まず最初に謝っておきます。ごめんなさい。
またもややたらと遅くなってしまいました。
前回書いた、中間テストがあり、それで大失敗。7つ中5つが赤点という最悪の結果になってしまい、それの補修やら再試やらで忙しく(←現在進行中

今回の話もそこまで進展がある訳でもないのに、長々とお待たせしてしまい本当にすいませんでした。
冬休み中に1、2話追加できたらなと思います。何分再試が(ry


なに分作者の環境上、大急ぎで書かなければならなかったので誤字、脱字、矛盾点や読みにくい部分などが大量発生している駄文だと思いますが、今後時間を見つけて直して行きます。すいません。
そこら辺もばんばん指摘して下さい。では。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.03213095664978