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No.12496の一覧
[0] Muv-Luv Initiative (オリ主転生→BETA大戦世界) [still breathing][Caliz](2020/03/25 01:32)
[1] 第一部 第零話 ─二度目の人生─[Caliz](2012/06/01 19:10)
[2] 第一話 ─平和な日常─[Caliz](2011/11/26 18:02)
[3] 第二話 ─未知との遭遇─[Caliz](2011/07/21 07:12)
[4] 第三話 ─熟考する転生者─[Caliz](2011/07/23 04:07)
[5] 第四話 ─動き始める世界─[Caliz](2011/11/27 07:49)
[6] 第五話 ─それぞれの誕生日─ 前編[Caliz](2011/11/26 16:09)
[7] 第六話 ─それぞれの誕生日─ 中編[Caliz](2011/11/26 16:48)
[8] 第七話 ─それぞれの誕生日─ 後編[Caliz](2011/11/26 17:09)
[9] 第八話 ─Encounter─ 前編[Caliz](2011/11/26 17:11)
[10] 第九話 ─Encounter─ 中編[Caliz](2011/11/26 17:32)
[11] 第十話 ─Encounter─ 後編[Caliz](2012/07/09 09:14)
[12] 第二部 第零話 ─海の向こう─[Caliz](2012/07/09 10:14)
[13] 第一話 ─集いの兆し─[Caliz](2012/06/17 10:07)
[14] 第二話 ─TAO─ √I_R_G[caliz](2020/03/22 06:22)
[15] 第三話 ─大陸からのエトランゼ─[Caliz](2020/03/22 06:22)
[16] 第四話 ─因果連鎖─[Caliz](2020/03/22 06:20)
[17] 第五話 ─6/7─ 前編[Caliz](2020/03/22 05:57)
[18] 第六話 ─6/7─ 中編[Caliz](2020/03/22 11:24)
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[12496] 第二話 ─未知との遭遇─
Name: Caliz◆9df7376e ID:5e4b39e2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/21 07:12
1987.March.Oneday


名前というものがある。
生まれたときに付けられるもので、変更も効くが一生付き合っていくというのが一般的だろう。
それはとても大切なもので、色んな思いや願いを込められて命名されるもの。
だというのに前世では通称DQNネームと呼ばれる、名前の変更を家庭裁判所に届け出るべきだ!と迷わず断言出来るような酷い名前を付けられる子供もいた。
光宙と書いてピカチュウと読むのは泣いていいと思う。実物を見たわけではなかったから、フィクションだと思いたい。


その日、両親は二人で買い物のために外出した。
俺も連れていかれる予定だったが、一人で留守番をしてみたいと試しに言ってみると二つ返事でOKを貰えた。
普段から年不相応に落ち着いているのを見せられているせいか、両親の判断基準がブレているような気がするが結果はオーライだ。
だが特に理由があって居残った訳ではない。一人になれる時間が欲しいと漠然と思って行動しただけだった。
その後案の定手持ち無沙汰になった時、ふと俺は未だに自分の名に宛がわれた漢字を知らなかったな、と思い至る。
思い立ったが吉日という言葉もある。俺はすぐに家宅捜査を行った。


そして今。
俺は両親の寝室にあるタンスの前で打ちひしがれている


手に握るは母子健康手帳。
開かれたページには俺の名前。
そこには四文字でこう書かれている。


【 不破 衛士 】


「Oh……」

英語で呻いて手帳を閉じた。
ゴッド、嫌な汗が止まりません。
しかし……だがしかし、一度だけなら誤射もとい、目の錯覚かもしれない。
よぉし!勇気を振り絞ってもう一度確認してみよう!

俺はバッ!と勢いよく手帳を開いた。


【 不 破 衛 士 】


「Oh……Jesus……」

なんという……。
なんということでしょう……。
これが俺の名前に当てられた字だというのか。
神は死んだ。
なんて酷い漢字構成だ……。
ある意味DQNネームより困ったモノだろこれ。
こいつは俺、間違いなく学校とかで馬鹿にされそうじゃないか?ガキって思慮足りないし容赦もないし。
いや、変ではないよ、うん。常用漢字だし、響きもいいし、何よりエイジと読める。
前の世界でなら衛士という漢字でエイジと呼んでも特に問題はなかっただろう。
というか実際に存在もしていた。そういう名前の人が何人かいたのを覚えている。
けれども、だ。この世界でこの二文字が意味するものは一つに他ならない。
人類の盾にして剣たる、誉れ高き選ばれし兵士達の呼び名だ。
そういえば父は徴兵時に衛士適正ナシと判断されており、泣く泣く戦術機と携わることが出来る整備兵になったと耳にした。
この名前を付けた理由としては、息子に夢を継いで欲しいと言った所だろうか。
新生児に付けられる名前というのは世界情勢や国家情勢、それに流行りモノ等に左右されるという話を聞いたことがあるが……。
俺はその一環を身を持って体験させられてしまったとでも言うのか。
それにしても職業の名前をそのままつけるのは流石にどうなんだよこれ。
せめて少し捻るべきだろ。

「……あがー……」

将来ウサミミESP娘が呟くであろう呻き声を発しながら頭を抱える。
何と言うか……このネーミング、両親が狙ったのだろうか?

不破 衛士。

似たような漢字構成で不殺と書いて殺さずとか読むのをどこぞの剣客漫画で見かけた。
ならば不破と書いて破れずとでも読んでみようか。

破れずの衛士。

なるほど、涙が出るほど完璧である。
死の八分を名前のご利益だけで突破できるのではないか、というアホな錯覚を覚えそうなほどに素敵な名前だ。
ああ、衛士になれればの話だけどな。
まだなれるかどうか一切解らない段階だろうって話だ。
というかこの名前で衛士適正検査弾かれてみろ。赤っ恥なんてものじゃないぞ。それこそ改名ものだ。
そもそも、あの検査は努力とかそういったものを超越したところで適正が決定されていたような気がする。
一体何が要因となって適正があると判断されるのか謎だ。異常に優秀な三半規管? 尋常じゃなく突出した空間認識能力? さっぱり解らん。
どうせ後々徴兵される時に衛士適正検査は避けられない。だから適正があれば儲けもの程度に思うのが賢明か。
その結果次第では、衛士になるという選択肢が俺の前に広がる一つの可能性としてあるだろう。そのぐらいの認識でいい。
忘れられがちだが衛士というのはエリートコースの一つ。歩めるならば歩んでみるのもいいだろう。
俺の目的達成のためにも、階級が上がりやすいのに越したことはない。
だが、その道は極めて法外なチップを要求されるのを決して忘れてはいけない。
掛け金は俺の命。そしてオッズは大穴もいいところ。なんてデンジャラスなコースだろう。
BETAに貪られて二階級特進なんぞ御免被る。
お父様、お母様。そんな茨の道を積極的に歩めと仰いますか?

二人が帰ってきたら必ずどういった経緯でこんな名前をつけたのか問い質してやる──ッ!

俺は決意を胸に居間にて両親を待つことにした。








「ま、夕方まで帰ってこないんですがね……」

息巻いて握った手帳を持ったまま居間に来たのがいいが、手持ち無沙汰になってしまった訳だ。
……スーパー詰問タイムまでまだまだ暇がある。
さて、どうするか。特別することもない。
この年だと本格的な体のトレーニングはまだまだ早すぎる。
こんな時期から無茶をやって体を壊すのも莫迦らしい。
故に、本気で取り組めるのは柔軟ぐらいしかない。ただ、それだってもう十二分に柔らかい訳だが。
だったら脳のトレーニングでもするか。最寄の図書館なら集中して勉強が出来る。
しかし、留守番を仰せ付かった身としては外に足を運ぶ訳にも行かないか。
なら家の中で……無理か。今この家に存在するその手の類の書物など既に手垢がつくほどやり尽くした。
時間は成るべく有益に使いたいところだが、時には怠惰に過ごしてみるのもいいだろうか。
と言っても時代や世界情勢のこともあり、中流家庭の我が家にある娯楽なんぞTVやラジオがいいところである。
80年代ということもあってネットのような上等なものは当然ない。
将来的に普及する可能性についても、一切期待しないほうがよいだろう。
この世界では当分の間、TVとラジオが大衆にとって最も馴染み深くなる娯楽家電となる。
まぁ俺はその二つに新聞を加え、情報収集としての意味合いで使うことの方が圧倒的に多いが。
政治、軍事、世界情勢……調べなければいけないことは数多い。
歴史の流れはある程度把握してる。だが逆に言えばある程度でしかない。
圧倒的に空白の時間が多いのだ。それを埋めるためには多種多様な情報を集めざるを得ない。
ただ最近始まった国営放送のラジオドラマ「いつか君と…」。
これだけは毎週欠かさず、純粋に楽しむために聴いている。
このラジオドラマは衛士と整備士の恋物語だ。こいつが中々面白いのである。
まぁ父曰く、整備というのは激務であって衛士と恋愛する暇があるならその時間で体を休めて作業効率を上げた方がいい、とか夢もヘッタクレもないことを懇切丁寧に教えてくれた。
その直後、希望を打ち砕くような教育に悪い情報を与えるなと母からキツくお灸を据えられていたのにはちょっと同情した。
けど残念だ。今日は「いつか君と…」の放送日じゃない。
この時間だと他に何かやってるだろうか。チャンネルを回し、周波数を弄る。

『それでは明日の天気図です……』

「……まだニュースがやってるだけマシだと思っておくか」

情報を集める作業の始まりだ。
さて、何か目新しいことはないものか。
今年に入ってから政治関連でのニュースはいくつかあったが、肝心の軍事関連はさっぱりである。
F-15が技術検証という名目で今年中に試験導入されるはずなのだが、機密やら何やらに引っかかっているのか動きが全く見えない。
まだ4月と今年の半ばすら過ぎていないが、それを考慮しても何らかの情報は既に流れていておかしくない。
大して有益な情報でないと判断されたのか? 確かに放送で国民に伝えてどうなるといった類の情報ではないが……。
何はともあれ早く耳に入れたいのである。そうなる、と解っていても確認しないと気になってしまうのだ。
出来るだけ早急に続報が欲しい。
しかし軍事関連と言えば去年の日米合同演習は存外に驚いた。生中継とかしてくれるもんなんだな。
そのおかげで巌谷おじ様無双がリアルタイムで見ることができた。
やはり性能で劣る機体で格上の機体相手に腕の差で勝つというのは胸に込み上げてくるものがある。
それにあそこで負けていれば純国産機開発の道が絶たれていた可能性は極めて高い。
あの一勝は日本帝国にとって、とても価値のある一勝だった。

『続いての……去年……れた……期力戦術選……国防省は……』

……噂をすれば何とやら。TVに感あり。
ニュースキャスターが興味深い言葉を放ってくれた。タイミングが完璧である。
これで漸く技術蓄積が足りずに停滞していた不知火の開発が進み始める訳か。
でも、そこまでやっても結局は拡張性の確保までには至らなかったんだよな……。
こればかりは日本の技術力が純粋に足りなかったからで、俺にどうこう出来ることでもない。
俺一人がどうこうしたところで、技術力の底上げなんて出来るわけがない。
それは、ただ只管にトライアル&エラーの繰り返しをすることでしか解決出来ない、とても尊いものだ。
これから富嶽、光菱、河崎の三社はF-15のライセンス生産で技術力を蓄積させ、そして見事に不知火を作り上げる。
だから結果が解っていたとしても、今は純国産機開発への第一歩が始まったことに喜んで───……


『本日付けでF-15とF-16を試験導入が開始されることが判明しました。尚───』


「────────────────────────は?」


……何つった今。

ちょっと待て。

F-15と────F-16?

何故、F-16まで!?

待ってくれ、意味が解らない。知らない、俺はそんなの知らない!

試験導入?何故だ、そもそも最終選考に残っていたのはF-15とF-14だろ。

なのに何故ここでF-16の名前が出てくる!?

どういうことなんだ、何でこんなことになってる!?


『比較検証トライアルの後、勝ち残ったどちらかが実戦部隊に引渡しされる模様です』


───待てよ、待ってくれ! 有り得ない、もうこの段階で既に実戦部隊引渡しが確定しているだと!?

初めは技術検証目的だったはずだろ────ッ!

ギシリと、TVに押し当てた両手が軋む。

動揺のあまり、興奮して無意識にTVに掴みかかっていたようだ。

「畜生ッ!何なんだよ、これは……」

頭がおかしくなりそうだ。夢であって欲しい……。けれど、想像以上に力を入れてしまっていたのか、両手が痛い。これは、紛れも無い現実。認めたくない、これを認めたら、俺はこれからどうすればいいのか解らない。

「───ッ……莫迦、何取り乱してんだ……」

頭を冷やせ。まずは一度落ち着いて自分の知っている───いや、"知っていた"情報をまとめるんだ。

日本は停滞した国産機開発のために技術検証の名目でF-14とF-15から後者を選抜し、12機を試験導入。後に技術格差を目の当たりにして188機を追加受注、最終的には予定調達機数を絞って120機のF-15を配備することになる。

はずだった。
……蓋を開けてみればどうだ。
実戦部隊引渡し前提でのF-15とF-16の比較検証トライアルがこれから始まる?
俺の知っているオルタネイティヴ、アンリミテッドの歴史にはこんなことはなかった。
本編にだってF-15Jしか出ておらず、F-16なんて影も形もなかった。
第一、F-16は次期主力戦術機としてエントリーすらしていなかったはずだろう。
確かに、時系列的には矛盾はない。F-16は去年に米国で実戦配備され、それと同時に他国への輸出を精力的に行った。
今この段階では特に居座古座も起きておらず、イデオロギー関連で両国の関係は良好だ。優先して回してもらえても別に不思議ではない。
しかしまだ1年しか経っていないだぞ? 余りにもトントン拍子に事が進み過ぎている。頭が突撃級の前面並に硬いエセ国粋主義の老害だって相当いるはずなんだ。

───いやもっと根本的な問題がある。
そもそもこの歴史じゃ、オルタネイティヴ、アンリミテッドが始まる未来へと繋がらない。


「……待てよ、まさか……」


そう。オルタネイティヴでもアンリミテッドでもない。
似て非なる未来、全く異なる未来へ繋がる歴史を辿るというのなら。

「……そんな、嘘だろ……ッ!」


怖い。震えが止まらない。

未知が、忍び寄ってくる。


「────だとすれば、この世界は」


どうしてこうなるのだろう。俺のような異分子が紛れ込んだせいなのだろうか。

今回のことは単なる予兆に過ぎないとでも言うのか。

そして、これから更なる未知の深淵へと突き進んで行くのか。

この世界は……オルタネイティヴやアンリミテッドの過去を基にしながらも、今日この日から道を違えてしまった────。


「───Ifの世界だとでも言うのかよ───ッ!!!」


俺の切り札であるはずの「未来情報」が、単なる「正史の歴史」に変わった瞬間だった。






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