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No.12496の一覧
[0] Muv-Luv Initiative (オリ主転生→BETA大戦世界) [still breathing][Caliz](2020/03/25 01:32)
[1] 第一部 第零話 ─二度目の人生─[Caliz](2012/06/01 19:10)
[2] 第一話 ─平和な日常─[Caliz](2011/11/26 18:02)
[3] 第二話 ─未知との遭遇─[Caliz](2011/07/21 07:12)
[4] 第三話 ─熟考する転生者─[Caliz](2011/07/23 04:07)
[5] 第四話 ─動き始める世界─[Caliz](2011/11/27 07:49)
[6] 第五話 ─それぞれの誕生日─ 前編[Caliz](2011/11/26 16:09)
[7] 第六話 ─それぞれの誕生日─ 中編[Caliz](2011/11/26 16:48)
[8] 第七話 ─それぞれの誕生日─ 後編[Caliz](2011/11/26 17:09)
[9] 第八話 ─Encounter─ 前編[Caliz](2011/11/26 17:11)
[10] 第九話 ─Encounter─ 中編[Caliz](2011/11/26 17:32)
[11] 第十話 ─Encounter─ 後編[Caliz](2012/07/09 09:14)
[12] 第二部 第零話 ─海の向こう─[Caliz](2012/07/09 10:14)
[13] 第一話 ─集いの兆し─[Caliz](2012/06/17 10:07)
[14] 第二話 ─TAO─ √I_R_G[caliz](2020/03/22 06:22)
[15] 第三話 ─大陸からのエトランゼ─[Caliz](2020/03/22 06:22)
[16] 第四話 ─因果連鎖─[Caliz](2020/03/22 06:20)
[17] 第五話 ─6/7─ 前編[Caliz](2020/03/22 05:57)
[18] 第六話 ─6/7─ 中編[Caliz](2020/03/22 11:24)
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[12496] 第一部 第零話 ─二度目の人生─
Name: Caliz◆9df7376e ID:5e4b39e2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/01 19:10
A.D.1984 Dec,16


人として"二度目"の生を受ける、という奇跡を体験した日から1年が過ぎた。

始めは確固たる意識がある訳ではなかった。
もし魂という存在があるとして、肉体という器に馴染むための準備期間といったところなのだろうか。
ノンレム睡眠の最中に無理矢理に叩き起こされたような酷い倦怠感、そして再度の休眠。
どれほどそのサイクルを繰り返しただろう。気付けばいつの間にか自我が完全に定着していた。
五感も正常に機能している。この時、既に生後半年を迎えていた。
その上、俺はここが"来世"だということを確かに認識できた。

当然、戸惑いしかなかった。

お世辞にも長く生きたとは言えない"一度目"の人生を何度も反芻する。
……断言しよう。その手の奇跡を授かるような敬虔な人間ではなかった。
生まれ育ったお国柄のこともあってか、宗教やら神と言ったものにはてんで無頓着に育った。
挙句、クリスマスと称して飲み食いして騒ぎ、その一週間後には初詣という混同っぷりである。
そんな自分が、前世の自我やら知識をほぼ完全に引き継いだまま、誰しもが一度は夢を見る"転生"などというオカルト的な特権を受け入れていいのか?と。
俺は不慣れな赤ん坊としての生活の最中、そういったことばかり考えていた。

そしてその半年後の、今日。

死に際を改めて回想してみる。

俺はバイクで高速を走っていたと思ったら、対向車線からタイヤをバーストさせた大型トラックがすっ飛んできて即死した。
もう自分でも何が何だか解らない。
運が悪いなんて言葉で済まされていい訳がない。
中央分離帯を乗り越えて来るとか斬新すぎる。
完全に俺に責任はない。0:10で向こうが悪い。法的にもそうだろう。
あまりにも想定外過ぎる上、相対速度とかも考慮すれば避けようがない。
理不尽だ、不条理だ。

だから俺には二度目の人生を謳歌する権利がある。

と、結論を出した。

勿論、半年悩んでこんな即物的な結論な訳がない。
正直に言うと半年も悩んでない。
ぶっちゃけると一時間掛けずに答えを出した。
ならばこの半年間何をしていたかと言うと、闘っていたのだ。

現実と。

初めて母親から授乳する時

「えいじちゃーん?はぁ~い、おっぱいでちゅよ~?」

なんて言われて、もう本気で泣きたくなった。
ちなみに、えいじというのは俺の新しい名前らしい。
どういう漢字が宛がわれているのかはまだ解っていない。
苗字は「ふわ」のようだ。こちらもまだ確認した訳じゃないが、恐らく漢字表記は「不破」だろうか?
「ふわ えいじ」それが今の俺の名前のようだ。
苗字のほうが結構珍しいが、いい名前だと思う。生前の名前もそこそこ気に入っていたが、なんというか、そう、響きがいいと思う。

しかし、母乳プレイとかマニアックにもほどがあるので簡便してほしい。

こんな経験、自我がある時にしたくなかった。
勿論、始めは拒絶しようとした。
だが母親が物凄い悲しそうな顔をして

「う、うぐ……あなた……エイジちゃんが急におっぱい飲んでくれなくなって……まだ乳離れの時期じゃないのに……」

なんて夫に向かって涙ぐむのだ。反則である。
父親も困った顔をしていた。これじゃ拒絶する訳にはいかない。
一度目の人生では両親が早々に他界し、ほとんど父方の祖父母に育てて貰ったようなものだった。
その祖父母も俺が成人し、社会人になるとまるで遣り残すことはないというかのようにあっさり死んでしまった。
だから円満で暖かい家庭と言うものには常々憧れていた。
せっかくの二度目の人生。こんなところで両親との遺恨を残したくは無い。
覚悟を決めろ俺。なぁにちょっと羞恥心を押さえつけるだけだ。
確か1才前後で離乳食にシフトしていくはず。
それまでの辛抱だ。耐えるんだ。
頑張れ、俺、超頑張れ、と喝を入れ、母乳を飲む。
マズいとまではいかなかったが、味が薄かった。

辛すぎる食事を終えた後は、現状でどれほど体が動くのかテストしてみた。
はっきり言って期待はしていなかった。
生後5ヶ月だ。まだ碌に動けるものではないだろうと、半ば諦めていた。
すると驚いたことに、立って歩くことに成功した。
壁に寄り掛かってではなく、二本の足で、である。
しかも、喋ることも出来た。
どうやら赤ちゃんという存在を見くびっていたようだ。
世間一般から見れば月齢5ヶ月でこれは余りにも早熟だろうが。
神経系の成長が早いらしい。
前世の知識と経験があるとはいえ、体が付いてこないだろうと思っていたのでこれは僥倖だ。
両親は「うちの子はもうしっかり喋るし歩くし天才だな!」などと喜んでいた。
勿論、多少の罪悪感はあるが、演技している。わざわざ自分から実は転生したんですよーなんて広めて頭のおかしい子扱いされるのは嫌だ。
あくまで「一般常識の範疇において早熟で賢い子」だと認識される程度の行動しかしていない。

……いや、例外としてトイレだけはそういったことを考えずに自重せず、自分で行くようにした。オマルだが。
生後半年で自主的に行くというのは異例すぎるのだが、お漏らしだけは避けたかったのだ。
……精神年齢二十歳を軽く超えているのに、お漏らしは辛すぎる。
オムツをしているからお漏らししてもいいなんてことは決してない。
あんな不快感を味わうのはご免である。

と、避け得ない多種多様な面倒事があった訳だが、俺は今日、無事に1歳を迎えることが出来た。
先ほどまでテーブルを囲んで誕生日を祝ってもらっていたばかりだ。
今は寝たふりをしながら脳内会議をしている。

今日を一つの転機としよう。
いい機会だ。意識的には丁度半年、体の起源からすれば丁度一年。
定めるべきだろう。
今後の身の振り方の方針を。

半年前の覚醒の日から、俺は行動を開始していた。
この世界の情報収集である。
動き回れるならば行動しない訳にはいかない。
俺はどんな世界の、どんな星の、どんな国に生まれたのか?
両親の会話、テレビに映される世界、目に付いた様々な文字の羅列、etc,etc。
身の回りで手の届く、視線の届く全ての範囲から情報を読み取った。

……まぁ、自分の名前や両親の喋る言語で九割予想は付いていたが、ここは地球の日本のようだった。

入ってくる情報の全てが日本語だったから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
肝心の時間だが……俺の意識が覚醒した時点での西暦は既に1984年だった。
そして俺の誕生日である今日は、1984年12月16日で間違いないようだ。
生まれ変わりの際に過去へと遡ってしまったのかと思い込んだ。
輪廻転生とやらは時間を超えて過去へと逆行することも出来るのか、と。
だがそういった疑問も、すぐに消えていく。
安堵したのだ。まず日本語が、そして何より自分の常識が通じる、と。

そう思った。

……が、更に情報を収集していくことによってそれは勘違いだと気づかされることになる。
所々で両親の会話に入り込む、俺の知る1984年の日本の情報と、この世界の日本の情報との齟齬。

────戦争中?……どこと、どこの陣営が?湾岸戦争にはまだ早い。冷戦こそ続いていたが、1984年現在に日本から見て戦争と呼ばれる規模の争いが起きているのはおかしい。

────日本帝国?……第二次世界大戦は40年も前に終わったはずだ。時代錯誤が過ぎるんじゃないのか?

────戦術機?……戦闘機の聞き間違いだ。そうに違いない。まだ子供なのに耳が遠くなったか?俺。

──────── B E T A ?

……腹を括るしかない。最早、疑う余地もない。
全ての情報を整合するに……誠に信じがたいが、現実として受け入れるしかないだろう。
ここは間違いなく、マブラヴの────BETAと戦争している世界の日本だ。
もし仮に俺を転生させた神とかいうのがいるとしよう。

チェーンソーでバラバラにしてやりたい。

創作フィクションの物語世界に転生。
なるほど、そういうものもあるのか。
悪くない。むしろ、いい。望むところだ。夢のようだ。歓迎しよう、盛大に。

その物語の世界観が絶望的じゃなければ、だが。

何故、何故に幾千幾万もある物語の中から、よりにもよってマブラヴなのか────ッ!

確かにマブラヴは好きだ。戦術機、いいね、大好きだよ。A3最高じゃないか。
メカ本だって迷わず購入したさ。アレはイイものだった。
だが、それとこれとは話が別だろう。転生先としては泣いて謝ってお断りしたい世界だろう。
これじゃ俺は人生を謳歌するどころか、桜花のように散ってしまう可能性のほうが高い。
誰が上手いこと言えと言ったって?別にそういう意図で言った訳じゃない。
この世界に生きている限り、死ぬ可能性からは逃れられない。
生前の平和と言える世界でさえ、俺は事故で死んだのだ。
ましてやこの世界は戦争中だ。死亡確率は極めて高い。

俺は既に一度死んでいる。そして、死ぬ時の感覚も、覚えている。

一瞬の衝撃と、一瞬の激痛の後に訪れた、無。
あの言葉では形容し難い感覚。
アレをもう一度味わう?────BETAに食われゆく中で?冗談じゃない。
死にたくない、そう易々と二度も死んで堪るか。
無い知恵絞って、考えてみよう。具体的に死なないようにするにはどうするか。

傍観でもするか?いや、却下だ。

傍観は死を受け入れるのとほぼ同義だ。何故か? それは十中八九、この世界が死に絶えるからだ。
オルタネイティヴ5によってBETAの魔の手から逃れることが出来るのは選ばれた約10万人のみ。
その約10万人に選ばれることが出来れば、生き残れるだろう。だが、その他大勢の人間を滅亡が確定している地球に残して、だ。

なら、逃げるか?

あらゆる手段を用いて選ばれし10万人になり、逃げるか?この星から。
それが、元一般人の俺に出来る最良の選択ではないか?
だが選ばれる根拠なんてどこにもない。
それに今からそれを進んで選択するのは、正しいことか?間違いじゃないのか?
逃亡を選ぶのは、本当にどうしようもなくなった時でいいのではないか?
この考えも希望的観測から来る楽観なのだろうか?
だが、理性でも本能でも、逃亡という行為に対して中々納得がいかない。

……いや、違う。忘れてはいけないことを、忘れていた。

この世界は幾つもの偶然が重なり、一人の少女の強い想いによってのだ。
終りの無い円環の中に。
だから、逃亡も傍観も結局は無意味。

なら───立ち向かうしかないじゃないか。

だが、この余りにも過酷で無慈悲な御伽噺に、介入するのか?……出来るのか?一般人だった俺に。
覚悟もない、本格的に体を鍛えたこともない、喧嘩すら碌にした事もない、こんな俺に。
……極めて困難だろう。徴兵されるまでにまだまだ時間的猶予があるとはいえ、到底出来るとは思えない。
確かに前の人生ではそこそこ不幸で厳しい経験をしてきたとは思う。
だが、この世界でこれから経験していく『闘い』と比較するには、俺の前世なんぞ対象としては温過ぎるはずだ。
───戦争。それは想像も付かないほど、俺の持つ常識から懸け離れた事象。
そんなところに自分から飛び込むというのだ。
もし、もし仮に適正が合り、試験で合格して衛士になれたとしよう。
そして更に『白銀武』が出来たように俺にも上手く戦術機を扱えたとしよう。
それでも俺がBETAとの戦闘で生き残ることが出来るビジョンが見えてこない。
まだまだ問題は山積みだ。
介入する、と。口でいうだけなら簡単だ。
だが、不確定要素が余りにも多すぎる。
下手な介入をして未来への希望の種を潰してしまいました、ではお話にならないのだ。
だから、慎重にならざるを得ない。
故に余計なことをせずに全てが始まる日、2001年の10月22日まで何もしないで待つという選択肢すら候補に上がってきてしまう。

この世界はアンリミテッドなのか、それともオルタネイティヴなのか。

それすら未だに解っていないのだから。
一体この世界は、どちらなのか?

それは、1998年に日本をBETAに蹂躙された挙句、
1999年の明星作戦においてG弾が投下され、
2001年10月22日に現れた『白銀武』がどういった存在か見極めた時に漸く解ること。

───つまり、完全に後手。それでは遅い、遅すぎる。

そんな所から介入したって、大局に影響はない。結局、全てが『白銀武』任せ。
『二度目』の武が現れたと仮定しても、それまでに余計なことをしていれば桜花作戦が失敗してしまうリスクだってある。
ただでさえ甚大な犠牲を出しながら綱渡りの末に成功しているのだ。
妙な刺激を与えれば、綱ごと全てが堕ちるとしても不思議じゃない。

だったら、やはり介入などせずに傍観したほうがいいのではないか?
全てを運に任せ、武が世界を救ってくれることを祈り続けるべきじゃないのか?

───駄目だ。それは断じて選んではいけない選択だ。

俺が余計なことさえしなければ……2001.10.22に『白銀武』は確実に現れるだろう。

───だが、それが『一度目』の白銀武ならどうなる?

そう……そのまま俺が何もアプローチを掛けなければ、オルタネイティヴ計画は5段階目に移行する。
そしてその果てにあるのは、G弾の集中運用で生じた重力偏差による───ユーラシア大陸の完全海没。
……決して見過ごすわけにはいかない結末を迎えることとなる。

───だから、介入しない訳にはいかない。
日本を、世界を、人類を有利にするために。
『一度目』の白銀武をオルタネイティヴ4の完遂へと導くために。

───だが、下手な介入もしてはいけない。
日本を、世界を、人類を不利にしないために。
限りなく0に近いが『二度目』の武が現れた時、オルタネイティヴ4の完遂の妨げにならないために。

……俺はこの両方をこなしながら、2001.10.22の運命の日、白銀武に接触出来る立場に収まらなければならない。

余りにも厳し過ぎる現実に板ばさみされたこの状況。
どう打破すべきなのか?
まだ十年以上先のことなのに焦ってしまう。
考えが纏まらない。方針が定まらない。
どんな行動を起こせばいい?まず何をするべきだ?
最高の、最良の、最低限の未来を確立する為に……俺は一体どうすればいい?





……いや、待て。何かが引っかかる。見落としていたことでもあるか?

『1998年に日本をBETAに蹂躙された挙句』

────あぁ……そうだ。

……そうだよクソッ!

そもそも、俺に地球の未来がどうのこうのと大局のことを考えている余裕なんてなかったんじゃないか。

何を神の視点で語っている。

己の視点で語れ。

このまま此処にいては、BETAの大軍に飲み込まれて死んでしまう。

俺も。まだ実質半年の付き合いだけど、俺に二度目の生を与え、愛を込めて育ててくれている"新しい両親"も。

死んでしまう。皆、皆、死んでしまう。

ここは、決して遠くはない未来、地獄になる場所。

俺は、自分が九州地方の熊本県に在住しているということを、完璧に失念していた。


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