「ふぅん、信じられん話だねえ…」
散々実験しておいてまだ言うか…?
この体のことを話したとき、
確かめるとか言い出して腕を軽く切られた。
2のダメージを受けた。
アイテムの出し入れを見てもらった。
なるほど、と納得していた。
やっと信じてもらえたと思った。
甘かった。
今度はお前も知らないことを試すとか言い出した。
毒の反応を見るために軽い毒から強い毒までいくつも飲まされた。
すぐに解毒剤を渡されたが肝が冷えた。
さすがに致死毒を試しはしなかったが…。
…解毒もいろんな種類の実験みたいだったけどな。
因みに結果は
弱い毒も強い毒も関係なく、
[毒状態になりました。1秒につき1のダメージを受けます]
だった。
やはり声は俺にしか聞こえてないみたいだ。
違う種類の物を飲んでも効いた。
ただ、麻痺系、筋弛緩系の毒物は別らしい。
[麻痺状態になりました。一定時間動けません]
一定時間ってどれ位だよ!と突っ込もうにも痺れて口も効けない。
ちなみに薬はミシェル先生に口移しで飲まされた。
うぅ、泣いていいか…?
「アレだけやっといて信じない気ですか?」
「いや、体のことは信じてもいいよ。自分の目で見たことだからねぇ。
でも、あんたの言う前の世界とやらは簡単には信じられんよ」
「そんなこと言われても証明のしようもないですね。向こうの世界の物でもあればいいんですけど、目が覚めたときにはこの体。
向こうの世界の品なんて持っているはずも無いですから」
「…まぁ、いいさね。一応信じたことにしておくよ。」
ほっ。
これ以上実験されたらたまったもんじゃない。
今はとりあえずでも信じてもらえればいいさ…。
「で、弟子入りだっけ?それは本気かい?」
「あぁ、さっき言ったように技能ってのがあるみたいで、技術書や図鑑を読んだりすることで
手に入れられるみたいなんですよ。それで…」
俺は宿屋で考えた、3つのスキル習得条件の可能性を先生に教えた。
「ふぅん。つまりは、物は試しってことなのかい…」
「お願いします。ここでの治療に必要な薬草は自分で探してこれるみたいだから…」
「………」
沈黙が痛い
「アンナはどう思う?」
「別にいいんじゃないですか~?誰に迷惑かけるわけでもないし」
うお、そういえばこの人もいた。
俺がいたぶられてるときも全く喋らなかったし、
先生の印象が濃すぎて気づかなかった!
「仕方ない、か。いいよ、あたしもいろいろ実験させてもらったしねぇ」
「よろしくお願いします!」
「おめでと~」
アンナさんの小さな拍手。
「ありがとうございます」
「さて、もう用はないかい?それなら…」
「いえ、お聞きしたいことがあります」
そう。聞きたいことは山ほどある。
この世界じゃ常識っぽいから聞くこともできないようなこと。
下手に事情を人に喋ることができないから、疑問に思っても誰にも聞けなかったのだ。
「もう時間も遅いんだ。早く言っておくれ?」
「はい。それでですね…」
この世界ってどんなところだ?この国って戦争してたりするのか?
などの世界観の疑問。
魔物って?
野生の獣の別名なのか?
魔物に対する疑問。
ギルドって一体何だ?
さっき言われたギルドのこと。
「そうか、そんなことも知らないんだねぇ、それは…」
…
……
…………
先生の話をまとめると
現在、この大陸には5つの国があり、ここは世界の南ラギア王国。
知性ある種族として獣人族、妖精族、人族、魔人族がいる。
各種族ごとに国が分かれており、住み分けはできている。
じゃあ、残りの1国はどうなのかというと、混血の人達の国であるとのこと。
50年ほど前には魔人族が各国と大きな戦を起こしていたらしいが、現在はどの国も戦争はしていない。
魔物はもともとはただの動物。
世界に多くの生き物が生まれたことで澱みが生まれ、世界の各地にそれが溜まる場所がある。
そこに近づいた生き物が変質して、魔物になるんだそうだ。
元の生き物に戻す方法はあるらしいのだが、先生も知らなかった。
倒した後の死骸には澱みは残らないので普通に食肉としても使える。
知性ある種族が澱みによって変質すると魔人族になるらしい。
まぁ、目が赤くなって好戦的な性格に変わるだけらしいが。
ギルドとはあらゆるトラブル、依頼を解決する何でも屋みたいなものだ。
魔物の大量発生の調査。その殲滅。盗賊討伐。特定種類の素材集め。
荒事も扱ってるハ○ーワークみたいなもんかな?
何処の街にも大抵あり、ほぼ全ての国の認可を受けているので、国中の依頼がここに集まる。
入るにも抜けるにもペナルティーはないが、依頼によっては失敗時に相応のペナルティーがあるものもある。
と、こういうことらしい。
「なるほど…丁寧な説明ありがとうございます」
「もう遅い。いいかげん帰んな」
「明日からの仕事の説明もあるので、明日は夜明け頃までにきてくださいね~」
「はい、それでは失礼します」
診療所を出る。
完全に日が落ちている。
長居しすぎたな…。
早く宿に戻ろう。
寝なくても良いとはいえ、精神的にはかなり疲れている。
それにしても、
宿代払ったらもう所持金がほとんどない…。
「こりゃ、明日収入なかったら路地で寝ないといけなくなるな」
…頑張ろう。
宿について金を払い部屋を借りる。
さて、寝る前にすることがある。
それは…
「せっかく手に入った技能だ。試さないと」
基本魔法の技能を手に入れた俺は、魔法が使えるようになっているはず。
魔法…今まで以上に目立ったファンタジー要素に年甲斐もなくはしゃいでしまう。
攻撃魔法っぽい「フレアアロー」は部屋の備品を壊しそうだから使えないが、
「ライト」なら使える。
おそらく一瞬光って相手の目を潰す目潰しか、
一定時間光るだけの電球のようなものかどちらかだ。
早速試してみよう。
「ライト」
…。
試すこと13回。
「スキル『ライト』」
[ライトを使いました。]
よし、使えた。MPが2減っている。
目の前に小さな光の玉が浮いている。
どうやら電球の方だったみたいだ。
頭の中で命令するとその通りに動く。
コレ、結構面白いな…。
しばらく遊んでいると不意に消えてしまった。
やはりある程度たつと消える。
次はどれくらいで消えるのかしっかり秒数を数えてよう。
……
だいたい10分で光の玉は消えた。
MPがなくなるまで使い続けた。熟練度を見ると、3.2まであがっていた。
最後のときの方が消えるまでの時間が長かった気がする。
明日は早い。
MPもなくなったことだし眠っておこう…。
所持金変動
元所持金 220ガット
図書館入場料 -50
宿宿泊費 -150
残合計 20ガット