次の試験は遠距離武器の試験らしいが…
お、ここかな?
「よう、坊主!よく来たな?
ちゃんと忠告どおり装備を揃えたようで安心したぜ」
あ、昨日の髭のおっさん。
…さっきの試験の文句の一つでも言ってやる。
「こんにちわ。ボルドーさん、で合ってますよね?」
「お、よく知ってんな。俺、お前に名乗ったっけか?」
「直接聞いたわけじゃありませんよ。
それより、さっきの魔法の試験官に余計なこと言いましたね?
変な期待かけられてて、評価が辛かったんですよ!」
「なに言ってんだ?
お前位の魔法使いなら、あんな試験楽勝だったろ?」
やっぱりこの人の勘違いだったか…。
俺は魔法の試験官に言った理由をもう一度繰り返した。
おっさんは途端に申し訳なさそうな顔で謝ってくれた。
「すまねえ、そんなバランス悪く魔法の習得をしてるとは思わなかった」
「…もういいですけど、
話した人には誤解、解いておいてくださいね?」
「いや、解かねえほうがいい」
そうか、なら許そ…
ん?
…なんでだ!
「それはまた何故?」
「そんなこと話してみろ。
技術があって、金も持ってるヤツが、ほとんど武力を持ってねえってことになる。
柄の悪い連中にとっちゃ、お前さんは歩く財布袋にしか見えんだろうさ。
お前に自衛力がないってばれるのは、自殺行為だ」
げ…。
ポーション売りに来たのは死亡フラグだったか…。
「対策はあるさ。
評判と同じぐらいに、実力を高めりゃいい。
幸い、ギルドには訓練施設がある。
俺達試験官は本来、訓練所の教官なんだぜ?」
やっぱり強くならないといけないか。
俺の強さは、昨日の蜂にも死にかける程度だ。
今まで、能力を考えなしに使いすぎてたところもある。
これからのこともあるし、いずれこうなってた可能性は高いだろうな…。
「それじゃ、気を取り直して試験開始だ!
弓でも短剣でも投槍でも、好きな獲物を選びな。
向こうの的にどれだけ当たったかで成績が決まるぜ」
そういえばテストの途中だった。
…どれがいいかといわれても。
「え~と、どれも使ったことないんですが…。
どれが一番使いやすいですかね?」
「お前、そんなことを試験官に聞くなよな…。
教えるわけないだろ、普通?」
そうだよなぁ。
しかしどれにしても当たらない気がする…。
「やれやれだぜ…。
……俺はこれから独り言を言う。盗み聞きするんじゃないぞ。
あぁ、試験官なんてめんどくせえ。
早く終わって酒の一杯でも飲みたいぜ。
だいたい、この試験って素人がやっても失敗しやすいんだよな。
まず武器選択がなってねえ、自分に見合ったものを使えってんだ。
短剣は投げやすいが、刃の部分で的に当てなきゃならん。素人が使っても普通は刺さらん。
投槍は重さがネックだ。力がないやつにはお勧めできん。
弓は狙いをつけやすいが、素早く正確に射つには熟練が要る武器だが、この中では当てやすい。
弓が一番命中しやすいのに、わからないからってこの試験は最初から諦めやがる。
もっと慎重に行けば、最低限は取れるだろうに…」
…!
ありがとう、おっちゃん!!
「弓をお願いします」
「お、居たのか。
…チャンスは10回だ。制限時間はないから、慌てずゆっくり狙いをつけろ」
弓を受け取るときに、小声で「今回限りだからな」と呟いたのが聞こえた。
弓といっても和弓じゃない。
西洋弓なので横に構えるのだ。
とりあえず一発目は様子見。
大きく上に逸れた。
ニ発目は弱すぎて届かない、三発目は横にずれた。
四発目は惜しくも掠っただけだった。
慎重に狙いをつけての五発目…。
ようやく的の端に刺さった!
五発目となるべく同じになるように心がけ、残りを慎重に射つ…。
結局当たったのは5発目だけ。
他は全て外れてしまった。
せっかくアドバイスしてもらっても、このザマか…。
「コレで試験終了だ
遠距離武器は的に当たった位置と、的からの距離で成績が決まる。
お前さんの場合は、ギリギリおまけしてもFランクだ。
最終結果は最初の受付で聞いてくれ。」
コレで終わりか。
なんか、全くいい評価ないし、すごい不安だ。
最低限の実力があれば受かるって言ってたのに
これで落ちたら、どうしよう…。
あとがき
戦闘技能習得フラグを立てました。
実は魔法試験は、辛い評価じゃなければDランクだったり。
10/10
弓の命中数を修正。