2009/09/26 初投稿
注意事項
本作はクロス作品(機動戦士ガンダム00×コードギアス ナイトメアオブナナリー)です。
本作では、オリジナル本編と多少異なる箇所があります。
本作にでてくるキャラクターは、本編基準ですが、所々で違うと思われる場所があるかもしれません。前もってご了承願います。
私は、探し物をしていました。
それは幾多の世界で幾度ともなく、目の前から姿を消していく最愛の兄の姿。
未来に身を捧げ、時には世界から旅立ち、時には、その命の灯火を消す。
どちらにしろ、彼は……二度と、私のまえに現れることはありませんでした。
なぜ?なぜ、お兄様だけがすべてを受け入れて、犠牲とならなくてはいけないのでしょう。
自分にとって、お兄様の代わりなどはいないというのに。
幾多の世界のどこかひとつにでも、自分とお兄様が幸せに暮らしている世界があってもいいのではないか、世界に、人に、束縛されることなく、兄と妹、男と女として、過ごしている世界があっても……。
気がつけば、私は……白き世界にいました。
長い長い、白い廊下が続く世界。
そこには、様々な絵画が飾られている、不思議な場所。
廊下の先は見えない…まるで、永遠に続いているよう。
「ここは…」
「Cの世界」
振り返った矢先、そこには腕を組み廊下の壁に寄りかかる己の姿そっくりでありながら、その雰囲気は異なるものがいた。
「ネモ?」
「お前は、選択を為した。未来を、時を止めないということを……」
「……」
「だが、お前は、ナナリー・ヴィ・ブリタニアは、お兄様を捜し求める。これは過去を省みているのではないのか?」
ナナリーは、自分の服を握りながら目の前のネモを見つめる。
彼女には自分の心、感情が流れているために、すべてが筒抜けである。
うそなどはつけない。
「…私は自分の決断を誤っているとは思いません。ただ……お兄様が幸せに暮らせる世界があってもいいということだけを望んでいるだけです」
「お兄様は、世界の歪みを、ゼロとして裁いている。それを止めることは……」
「私は、お兄様にも幸せになってほしい……たとえ、この世界の、ナナリー・ランペルージの身が、心が擦り切れることになったとしても…」
「……その心に偽りはないようだな」
ネモはもたれた壁から離れると、ナナリーのまえに片膝を立てて跪く。
ナナリーを見上げるネモ……ネモを見下ろすナナリー。
私達は、お兄様のいる世界を捜し求める。
コードギアス ナイトメアオブナナリー×機動戦士ガンダム00
『Nightmare』
「現在、我々はこの軌道エレベーターを完全に掌握している。人質は、約1万人。私達は、自分達のエゴを暴力として無闇に振り回すアロウズのやり方を断固否定する」
放送は、地球と宇宙の架け橋となる軌道エレベーターのひとつ、アフリカタワー上内にいるすべてのものに響きわたる。軌道エレベーターの中にいた一般市民たちは、その突然の銃声と、武装した兵士たちに、ただ促され、ついていくことしか出来ないでいた。その中に、ナナリー・ランペルージもいた。彼女は、他の一般市民と同様にして、兵士に一箇所に集められていた。
「さっさと歩け!」
「ぼ、暴力はやめてください!!」
泣き叫ぶ子供にも容赦のない軍人達。
ナナリーはそんな様子を見ながら、彼らもまた、理想を掲げながらも暴力を行使する、黒の騎士団や、ブリタニア帝国と変わりがないと感じる。だが、それは自分も同じ。理想のためならば暴力は、正義の行動として許可される。
『これが、お兄様が変えたいと願う世界の現状だ』
ネモの言葉に、ナナリーは何も言い返すことが出来ない。
「私達は、人質の方を楯にするつもりはありません。交渉が上手く行けばすぐにでも地上に解放する事を約束しよう」
放送から聞こえてくる言葉……。
それからは、地球連邦という枠組みの中に存在する独立治安部隊アロウズがいかに危険な存在なのかを永遠と語りはじめる。ナナリーは、そんな言葉に耳を傾ける気にはなれなかった。なぜならば、今、ここに掴まっている人たちは、そんなものなど知る必要もない人たちだからだ。ここの人達は、たとえ、この軍人が言うよう、悪しきアロウズという名の組織が世界を治めていたとしても、その中で生きている。
「……銃を片手に、人質をとって正義を話すことはおかしいです……」
ナナリーは、そう、静まりながら、演説を聞いている人たちの中でつぶやいた。
「おい、お前!何を言っている!」
軍人が銃を向けて、ナナリーを見る。
ナナリーは立ち上がり、軍人を見つめる。ネモは額を抑えながら、いつものナナリーの行動に、溜息が漏れる。ナナリーは、そんなネモなどお構い無しに軍人を見る。その目は、濁りのないものであり、銃を持つ兵士に対してまったく動じない様子である。
「貴様っ!閣下の話を妨げるとは…」
「こいつは、別の場所に捕まえておけ」
ナナリーにと近づくものたち、ネモはナナリーを見つめる。それは彼女が力を発揮することに対しての、許可を求めるものであったが、ナナリーはそれを首を横に振り拒否する。こんなところで、ナイトメアを出してしまえば、他の人に迷惑がかかってしまう。それは避けなくてはいけない。ナナリーは拘束され、別の場所にと移動される。
廊下を歩く中、ナナリーは、自分達がいた世界とこの世界を比べる。
ブリタニアに虐げられながらも、そこには平和があった。それは自分達が見えない中でのものだったのかもしれない。だけれど、黒の騎士団が現れたことで、平和はくずれさった。そこには無関係な犠牲者も当然いた。それと同じことをここでやろうとしている。
『だが、お兄様の行動がなければ、世界は父上、母上の手により人間としての個を捨てることになるところだったぞ?』
それはわかっている。
だが結果論であることは否めない。
暴力は何も見出さない…暴力でなければすべてを解決することが出来ない。
暴力でしか事態を解決することが出来ない
本当に?
大きな震動が建物全体を覆う。ナナリーは思わず、倒れてしまう。軍人達が動揺している。一体なにが起こったというのか?ナナリーはゆっくりと立ち上がろうとする中、銃声が響きわたる。それも一発や二発ではない……。
「なにが起こったんだ!?」
「わからん、だが、ここには人質がいるんだ、下手な手出しは出来ないはずだ」
『愚かな連中だ。人質は、その者に価値がなければ意味がない』
ナナリーはネモのほうを見る。
『……アロウズとかいったか、あいつらは人質ごと、テロリストを殲滅するつもりだ』
「まさか……」
ナナリーの脳裏に移る映像。
それは、人質達を無残に殺戮する4つ足の機械の映像……。
老若男女……機械は慈悲も迷いもない。
ただ、目の前の標的を撃つのみ。
「こんな、こんなこと……」
ナナリーは思わず目を覆う。
「なに!?オートマトンだと!?」
「バカな、人質ごと…」
軍人達は、通信を聞いて、目を見開く。
ナナリー、みた人を殺す機械とうのが、そのオートマトンなのだろう。テロリスト相手なら人質など、どうなってもかまわない……テロリストもテロリストならば、それを鎮圧するほうも、鎮圧するほう……。
『絶望、その絶望も私達には変える力がある、違うか?』
「……」
『ナナリー!』
ナナリーは、正面に現れる黒い機械を見る。
彼女の前、先ほど自分を拘束した軍人達が銃撃で応戦するが、相手は機械、ただの武器ではその装甲を貫くことは出来ない。反撃の銃撃で、軍人達に身体は貫かれそのまま崩れ落ちる。血が飛び散り、赤い液体が、ナナリーの服にとかかる。オートマトンは、人間の体温を把握し、次の相手を、ナナリーにと変える。だが、その目標の体温は忽然と変化する。
軌道エレベーターで人質ごと殺戮を行なうオートマトンに対して迎撃の指示を出すハーキュリーは、突如、大きな震動を感じて、思わず倒れそうになる。
「なにがあった!?」
「建物、軌道エレベーター内にて、高熱源反応!」
「バカな!?建物内だと!?」
「モニターにだします!」
ハーキュリーとともにする、彼の説得役として抜擢されたセルゲイ・スルミノフも、映像を見る。彼の予想としては、こういった事態を見逃すはずがないソレスタルビーイングであろうと思っていた。
「!?」
「なんだ、この機体は……」
そこに映し出されたのは、まったく別の機体。
それも今まで見たことのないものである。こんなものがソレスタルビーイングにあるとは聞いてはいないし、またアロウズにあるとも知らない。セルゲイとハーキュリーは、そのおぞましい機体に、何も言う言葉がない。
だが、確かにその機体は存在し、建物内を飛び出し、軌道エレベーター内にと姿を現す。
ナイトメアフレームを操るネモとナナリー。
『……そうだ、私達はこの世界に絶望をしにきたわけじゃない。このような世界を変えるためにきたんだ。私達の持つ、力で……』
『第1話 魔女降臨』