爆音。続いて轟音。まさにそこは地獄であった。
地は爆せ、建物は吹き飛び、黒煙が世界を支配していた。
街であったその場所は、最早地獄となり果てていたのだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ...っ......ハァ、ハァ...ハァ...ハァ...」
だが、ただひたすらに生を求め、虫のように逃げ惑う彼女には関係のないことだった。
ただ本能に従ってひた走り、安全な場所をみつけるまで。彼女の思考が戻ることはないだろう。
...本来ならば、彼女はここで死していた。彼女は物語には直接関係のない、ただのその他大勢でしかなかったのだから。
しかし、その必死の形相で歪んでいるにも関わらず、綺麗に整った顔立ちが彼女を救った。...おそらく。
「待て」
「!?」
本来ならば無視しているだろうその声に、彼女は驚き足を止めた。
道を塞ぐように目の前に佇む声の主は、なんかこう......アレだったのだ。
「な...何...?」
悠長に話などしていられない状況下でも、そう訊かずにはいられなかった。今この瞬間にも、辺りには爆音が鳴り響いている。一刻の猶予もないような状況。しかし、この空間だけには、何もないような時間がのほほんと流れていた。
「助けて欲しいか」
「...ハァ...ハァ...」
息が乱れて声が出ない。
このクソみたいな狂った状況から救ってもらえるのなら、藁にだって豚にだって縋ってやる。
「た、助け...コホ、コホ...」
今にも倒れそうになりながら、彼女は本当に藁にも豚にも縋る思いで途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「だが私は正義の味方ではない。救い料を払わなければ救ってやらん」
「コホ...すくい...りょう......?」
金だろうが何だろうが、本当に助けてくれるならいくらでも払ってやる。
生存本能しかない今の彼女には、選択肢などなかった。
「ハァ、ハァ...いくら...?」
彼女がそう言うと、ソイツはニヤリと目と鼻?を歪ませ...
「10億万円だ!!!」
しばらくの間、豚の笑い声と彼女の沈黙が時間を支配した...
続く...