いっそ冬木市から離れるか、と思った。
聖杯戦争が始まったら結界がどうとかって、どっかのSSで読んだことがあった気がしたけど、今はまだ聖杯戦争前。というか、やるなら今しかない。
という訳で、転校して素敵な学園生活送り直すんだワショーイ!
とりあえず、不動産会社に電話して家売って、先立つものゲットうはは!!
……電話繋がりませんでした。
でっかいブザーがどっかから鳴って、紙が一枚ひらひらと落ちてきました。
『このいえをうるなんてとんでもない』
……切嗣ってたぶん結構バカだったんだと思います。
――interlude――
最近、先輩の様子がおかしい。
まず、朝起きられなくなった。昔の先輩は起きてるか、すぐに起きてくれて、いつもの顔でおはようと言ってくれたはず。
でも、今は起きない。身体を揺らしても起きない。
……しかも、その時、えーと、む、むねを! はうぅ……、恥ずかしいけど、胸を触ってくるんです。
わかっています。先輩にそんな気がないってことは。目覚まし時計と間違えたんですよね。
でも、他にも変なところがあるんです!
先輩は私の料理の師匠で、どっちが料理を作るので言い合いになるくらい料理が好きです。
でも、最近は全然作ろうともしません。
私が部活で遅い時なんかはカップラーメン食べてます。
あの、味にうるさくて、和食を何よりも最良とする先輩が、です!!
どうして急にラーメンを食べ始めたのかはわかりません。もしかすると、急に食べたくなったとかそういうのかもしれません。
確かにそれはありえます。でも、今まで一度もそんなことなかった先輩がなんで……。
そう考えるとちらつく影があります。美人で、成績も良くて、先輩と同い年で、つまり同じ学年で……しかも、風の噂では中華料理が得意だという先輩が。
あああありえませんっっ!! そもそも、一緒にいる場面なんか見たこともないはずです!!
でもでも、もしかしたら、私が部活をしているうちに……。
ゆゆゆ許せません!! あの泥棒猫!! そんな校舎の裏で、ファスナーをそっと口で降ろして、そのまま先輩のたくましいものを……、なんて!!
絶対に認めません! そんなうらやま……じゃなくって、いくらあの人だからって、先輩を譲ったりなんかしません!!
第一、最近の先輩は、私のごはんを食べた後、すごく嬉しそうな顔で言ってくれるんです!
――すごくおいしい。桜のメシなら、毎日食べたい。って!!
これはきっともう、プロポーズです!! 毎日味噌汁作ってくれっていう先輩の遠まわしで古風なアピールです!!
やっと私の時代が来たんです! だから、絶対に負けません!!
~間桐桜の日記より抜粋~
親父と不動産屋に裏切られた悲しみで涙する俺の唯一の楽しみは飯だ。
原作でもえらくスゴ腕だったらしい桜のご飯を初めて食べた時、俺は心から涙した。
正直、美味すぎた。何より、かわいい女の子が俺のために作ってくれたご飯っていう点がうれしすぎた。
だから、ぶっちゃけ『原作キャラに近づくの怖くね?』という観点から、早急に追い出すべきだと結論付けていた桜対策は初っ端から挫折していた。
でも、あんま関わらなかったら原作でも緩やかにフェードアウトしてくれるキャラだし、大丈夫だよね! いや、あの乳はおしいけれども!
いやいや、大丈夫だ!! 俺は生きていける!! 桜は優しい子だから、きっと俺の気持ちを汲んでくれるはず!!
とりあえず、休学届けってどう書けばいいのか、早急に調べないといけない。だから、今日を生きるための活力が必要なんだ!!
ともかく、ありがとう桜!! メチャクチャおいしい。でも、辛いものは尻に響くから勘弁な!!