「ううっ」
強烈な眠気からさめる。顔や腕がちくちくする。起き上がってみて、次郎は自分が藁の中にいることに気付いた。
「な、何だ次は??」一人ごち、辺りを見回す。
「ヒヒーン!」それに驚いたかのように馬が何頭も吠えた。
「こ、ここ馬小屋か??」馬自体は大学で何度か見たことがあるのであまりびっくりはしないが、なぜ自分がこのような場所にいるのか、それがわからない。自然、緊張し、馬小屋の中をそっと動き入り口を見つけ、そとをみる。レンガ造りの建物、瓦敷きの建築物、かと思えば今いる馬小屋のような粗末な木の小屋。訳のわからない世界での眠りから覚めると、そこはまるで中世ヨーロッパと江戸時代を合わせた様な珍妙な世界だった。
「なんだここ。日本・・・・・・・だよな。??」辺りを再度見る。なぜ、こんなところにいるのか。それが皆目判らない。落ち着くために深呼吸をしてみる。朝特有の清冽な空気を感じる。
見れば、朝日か夕日かが空にある。しかし、先ほどの空気の感じからいっても今は朝なのだろう。とりあえず、馬小屋からでて、辺りをもう一度見回す。幾人かの人間が道を歩いている。しかし、その人間がまた奇妙であった。耳がやたら長い人間や、子供のように体が小さいのに完全なおっさん顔の人間。髪の色も、金もあれば赤、黒もある。まったく日本らしくない。それでも、とりあえず、道を歩く人に声をかけ、ここがどこであるのか聞いて見なければなるまい、そう考える。
「あの、すいません」
背の小さなおじさん?にまず聞いてみる。
「すいません、ちょっとお聞きしたいんですがここはどこでしょうか」
突然声をかけられ、びくっとするおじさん。
「ここがどこか?あんた何言ってんだ??ここはリルガミンの街の目抜き通りさ。判ったかい?あ、さてはリルガミンは初めてなのか?」
「あ、ハイここに来たのは初めてで。」とりあえず、日本語は通じるようだから日本だろう次郎はそう思った。
「やっぱり迷宮目的かい?俺も若い頃ここにきてさ、戦士としてならしたもんさ!」
「そ、そうなんですか…」(迷宮?戦士?何言ってんだ??)
「ま、今はしがない鍛冶屋だけどな。まあ、とにかく生き延びれたんだから文句は言えねーよ。兄ちゃんも頑張って稼いでくれや。
あ、そうそう、ギルガメッシュの酒場はこの道をまっすぐいった左手にあるから。いい仲間見つけなよ!後、良ければ最初の装備はうち、ボルタック商店で買ってくれや。サービスするぜ。それじゃーな」
「あ、はい」
とりあえず調子だけ合わせておく。オッサンが手を上げて振るの返しつつ見送る。
次郎はまさか、まさかと思いながらさっきの情報を整理する。間違いであって欲しいと思いながら。
昨日の声の、「ゲームの世界」、そしてオッサンの言ってたリルミガン、ギルガメッシュの酒場、そしてボルタック商店……これから導かれるのは恐ろしい事実だった。決して認めたくない事柄。
それは「声」の言ったゲームの世界、ここはもしかして、ウィザードリィ、の世界なんじゃなかろうか……