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No.11947の一覧
[0] クリティカルヒットは勘弁してください(現実→wiz5)[炯](2009/11/15 00:55)
[1] 第二話[炯](2009/11/15 00:55)
[2] 第三話[炯](2009/11/15 00:56)
[3] [炯](2009/11/16 00:37)
[4] [炯](2009/11/15 00:57)
[5] [炯](2009/11/15 00:57)
[6] [炯](2009/11/15 00:58)
[7] [炯](2009/11/15 00:58)
[8] [炯](2009/11/15 00:59)
[9] 10[炯](2009/11/15 00:59)
[10] 11[炯](2009/11/16 00:43)
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[11947] 11
Name: 炯◆7c1373d4 ID:140f0f98 前を表示する
Date: 2009/11/16 00:43
「なんか、色々おかしいレベルアップしたよ、やっぱり。」
皆で朝食をとるために食堂に集まったとき、次郎が告白した。

「やっぱりな。それで、どんな感じにレベルアップしたんだ?」
パンをちぎりながら、やはり、という感じでイチエイが答える。

「まず、信仰心以外が全部上がって、それに、呪文を覚えたらしい。盗賊なのにな。」

「まて、お前、たしか、生命力と運の二つのパラメーターが種族限界だったよな。その二つも上がったのか?」

「ああ。なんか上がったらしい。信じられないけどな。」
自身、信じられないといった顔で答える。

「…呪文、何…覚えた?」
スープにパンを浸しながらマユルが聞く。表情には表れにくいが、なんだかんだでやはり好奇心がジロウの異常性に向いている様だ。

「あ、呪文覚えたのに、何覚えたか確認するの忘れてた」
しまったという顔のジロウ。一応の覚悟はしていたが、やはり混乱してしまっているようだ。何を覚えたのかを確認するのは冒険者にとっても、ゲーマーにとっても最優先確認事項であるのだがそれさえも出来ていない。

「…私はカルキを覚えた。あと、バディオスとミルワも……」
少しだけ嬉しさと自信を感じさせる声色で言うマユル。彼女が積極的に声を上げるのだ。顔には表れていないが内心はかなり嬉しいのであろう。

「これでマユルさんは一つ目の位階の呪文を全て覚えましたねー。私もデュマピックとモグレフを覚えましたから、同じく一つ目の位階の呪文は全て覚えましたよー。これでカティノを最大で四回使えますー。」
いつもよりも更にニコニコしながら、スープを飲みつつ話すタニヤ。





ここで少し、魔法の説明をしよう。

僧侶であるマユルが今回覚えた第一位階の魔法。その効果は...

カルキはパーティ全体の回避率をわずかに上げる呪文である。
また、バディオスは一体の敵に少しのダメージを与える呪文である。
ミルワは少し変わっている魔法だ。効果は『洞窟の先を少しの間明るくする』ただそれだけの魔法である。
余談ではあるが、ハッキリ言って僧侶の第一位階の魔法で使う意義があるのは最も基本的なディオスのみである。
 

 一方の魔法使いであるタニヤが覚えた第一位階に位置する魔法は、というと。

デュマピックの魔法。この効果は『地図表示』である。洞窟の入り口を原点とし、座標で現在位置と踏破した洞窟の地形情報を教えてくれる、迷ったときに非常にありがたい魔法である。
モグレフの方は、唱えたものの回避率を上げてくれる魔法である。が、しかし、またしても余談になるが、魔法使いがこの魔法を唱える事態に陥ったとしたらそれは戦術的な失敗を意味するので、”使えない魔法”の筆頭にさえ挙げてもよさそうな魔法だ。


なぜ、こんな魔法達を覚えたことで嬉しそうにするのか?これはタニヤの先ほどの台詞の最後に言った『これでカティノを最大で四回使えます。』という言葉に集約される。
ウィザードリィの魔法の限界使用回数は七つある位階ごとに決められる。つまり、第一位階の魔法を一回も唱えられなくても、最高位である第七階位の魔法を7回使える、ということがありえる。
 一般的なマジックポイント制はドラゴンクエストのように全体の大きなMPがあり、そこから引き算していって0になるとあらゆる魔法を使えなくなる、というものだろう。つまり、ホイミが使えない状況ではベホマも唱えられない。上級魔法の方がより多くのMPを食うからだ。しかし、ウィザードリィの世界ではマジックポイントは位階毎に決められるのでベホマに相当するマディを唱えられるが、ホイミに相当するディオスは全く使えない、といった状況がありうる。
そして、位階毎のマジックポイントの制限値は最低でも、その位階で覚えた魔法の数、となる。つまり、五つの第一位階の魔法を覚えたマユルは五回ディオスを唱えられ、4つの第一位階の魔法を覚えたタニヤのほうは4回カティノを唱えられるということになる。
 このため、一般的には使い道が無いような魔法でも覚えれば、”使用意義のある魔法”の使用回数を上げてくれるので、意味があるのである。マユルとタニヤが嬉しそうな理由。これがその答えである。
 ちなみに、一回の冒険で唱えられる限界使用回数は、一つの位階毎に、どんなに頑張っても9回が限度である。たった9回しかディオスは使えないし、マディも同じく9回しか使えない。このシステムを守りつづけているのがWIZARDRYシリーズの特徴であり、また、高難易度の原因の一つでもあるだろう。
 




 
「それでは今から確かめてみてはどうだ?」
サラダを大皿からとりわけながらサラが言う。相変わらずジロウの異常性に対して何も考えていないような様子だ。

「そうだな。ステータス。と、呪文書は……何だこれ、マジかよ」

「どうした?」
驚きの声を上げるジロウの隣のイチエイが覗き込もうとする。

「ちょっと信じらんねーな……」
やはり唖然とするイチエイ。予想していたとはいえ、現実に目の前に起こるとなかなか衝撃は大きい。

ジロウのステータスの呪文書には魔法使い、僧侶の両方の第一階位の呪文全てが書かれていた。

「おまえ、もしかしてレベル一のときにもう呪文覚えてたのかもな。呪文書みてなかったから気付かなかっただけで。普通ロードや侍でもレベル2で第一階位の呪文なんて覚えねーからな。魔法使いと僧侶の要素も端から持ってたと考えるのが妥当だろうからな……」
半ば呆れたような口調で言うイチエイ。

「なんだ、それならジロウにもディオスやカティノを使ってもらったら良かったな。」
のほほんとしたサラ。本物のロードというものはこれくらいいい加減で良いのだろうか?とさえ思ってしまう。

「ジロウ、お前、本当に何者なのだ?種族限界値を超え、クリティカルヒットや鑑定、お次は魔法。本当に神に選ばれた存在だとでも言うのか?」
じとーっとした目でジロウを眺めるマナ。やはり疑り深い性格のようだ。

「いや、実際そうなのかも知れんぞ、ボーナスは神が決めていらっしゃったというし、このような特別なステータスもその証かもしれん。そうなれば、私達もいつか吟遊詩人たちに詠われるようになるかも知れぬ。うん、そうなれば故郷のみんなもきっと喜んでくれるに違いない。」
「そうですねー。カッコよく詠われたいですよねー。頑張らなくちゃいけませんねー」
サラとタニヤの楽観主義2人組は嬉しそうに語り合う。なんとなくマナがこの三人組のメンバーに入れられていることに納得してしまう。

「そ、そうですね。そうなると良いですね。」
サラがそう言うのならマナも倣わねばならない。ちょっと引きぎみながらぎこちない笑顔で話を合わせるマナ。
苦労してるんだろうなー、とジロウは思ってしまった。自分が原因の一端のくせに……

「そういえば、マナもレベルアップしたのだろう?どんな感じだったのだ?」

「あ、はい、夜寝てたらですね、夢うつつの状態のときにどこからとも無く神秘的な声が聞こえてきましてヒットポイントやら力やらが上がったと言ってくるんです。これもリルガミン特有の事象なのでしょうね。ちなみに私はヒットポイント、力、生命力、すばやさ、運が上がりました。」

「うーん。なんとも不思議な体験をしたようだな。私も早くその声とやらを聞きたいものだ。」
「サラ様はロードですからね。話によるとロードは大器晩成型とのことですが、きっともうしばらくすればレベルアップしますよ。僧侶の魔法も覚えるかもしれませんよ。」
残念そうなサラを慰めるようにマナ。
そう、今回のレベルアップはサラを除いた全員であった。サラは経験値を多く必要とするロードであるため、今日は未だレベルアップはしていなかったのだ。

「それじゃ、次の冒険の時はサラは後衛だな。俺とジロウ、マナが前衛でやるぜ。」
ウィザードリィの世界ではレベル1と2の差はとてつもなく大きい。それをよく知るイチエイは当然のようにそういった。
「む、盗賊二人が前衛でロードの私が後衛か……前で戦いところだが、しかし、無理を言うのは申し訳ない、か。すまんがよろしく頼む。」
残念さを顔であらわした後、少し前に体を傾け礼をし、信頼を託す。


「とにかく、マユルも次郎もディオスを5回使えんだからどうやら、明日にはまた迷宮に潜れそうだな。」
満腹になった腹をさすりながらイチエイが予定の変更を告げる。うなずく面々。思ったより断然早く冒険に復帰できそうだ。この初心者達にとっては一泊10Gでさえも結構きつい。
「イチエイは明日も来てくれるのか?」
確認するサラ。
「ああ、ちょっと興味もあるしな。取り分は7分の2で良いぜ。」
答えるイチエイ。
「そうか!助かる!」
嬉しそうにするサラ。助かるのが戦力的になのか、金銭的になのか……どちらとも取れる言い方だがあまり深く考えていないのかもしれない。
「とりあえず、飯食い終わったらディオス頼むわ。マユル、ジロウ。」
「おお。」
「…了解。」


 こうして、レベルアップの日の一日は過ぎていった。
 
 
 
 
 
 
「よし、準備出来てるな、それじゃあもう一度確認するぜ。前衛は俺、マナ、ジロウ。後衛はサラ、マユル、タニヤの順で、何かあったらすぐにスイッチできるようにサラは準備してくれ。作戦は前回同様、まずタニヤがカティノ。効果があった奴らを俺たち前衛が始末して、後衛はいつでも呪文を出せるように集中しといてくれ。サラはスイッチも大事だが、もしも、そっちまで抜けた奴が居たらその相手もしてくれよ。」

大まかな戦術の確認をするイチエイ。昨日のディオス連発でもうすっかり傷は無くなり、好調な様子だ。彼の確認に了解の意思を示す他のメンバーも完全な状態のようだ。計画通り一日を置いただけで迷宮に再び入ることが出来た次郎たち。
 まずはいつもどおり、一番近い扉から空けていく……
いきなりヒットだ!リーチリザードの群れが出てくる。
「さて、こいつらはもう一度会ったこともあるし、それにレベルも2になった。ちょうどよくレベルアップの凄さを体験できるなかなかいい遭遇だな。マナ、ジロウ、今回は矢面には俺が立たないで置くことにするぜ。まず死ぬことは無いから安心してやってくれ」
落ち着いた声でリーチリザードたちを眺めながらイチエイが言う。
「了解。」
「判った。」
緊張した面持ちで了承の返事をする二人。
「よし、ジロウ、カティノが効いた奴らに一気に行くぞ!」
その緊張を吹き飛ばすように丹田に力を入れて声を出すマナ。
「カティノ!」
その声とほぼ同時にタニヤのカティノが真正面の群れに放たれ、2匹のトカゲが眠りに落ちる。急いで突っ込んで攻撃を放つサラと次郎。眠りに落ちた無防備な敵に無慈悲に切りつけ、絶命させる。しかし、残りの3匹の攻撃が二人に降りかかる!
「く!」
モロに爪で引っかかれる次郎。
「けど、全然いける!」
再び爪で攻撃しようとするリーチリザードから距離を置くジロウ。
「だいじょうぶなんだな??」こちらのマナはまるたてで上手く攻撃を捌き、距離を置く。

もし、レベル1でこの攻撃を受けていたら6,7回も受ければ死んでいたかもしれない攻撃だが、レベルが上がり大幅にヒットポイントが上がった今では一撃程度では大怪我にはならない。

「ああ、レベルアップのおかげだ。掠り傷…って訳には行かないがまだまだ前衛でいける。」
ゲーム上でもレベル1のパーティと2のパーティでは雲泥の差がある。そんな世界で今生きている次郎にとって、その差はさらに大きく感じられた。

「カティノ!」
再び眠りの魔法がトカゲを直撃し、残りのトカゲが全て眠りに付く。それを落ち着いて次々に攻撃し、その命を光の粒にする!

「いや、後ろから見ていたがレベルアップとは凄いものらしいな!次郎が爪でやられたときはスイッチしようかと思ったのだが、明らかに血の出が少ないし、声も大丈夫そうだったので様子を見るだけにしたが…見事に勝利したな」
サラが感嘆の声で次郎に声を掛ける。

「初めて攻撃食らって一瞬凄くびびったんだけど、レベルアップのおかげか思ったよりは痛くなかったぜ。でも…」
緊張が未だ解けきっていないのか、少し震える体で答える。そう、次郎はこれが始めての戦闘での傷だった。訓練所で剣の稽古をつけていたおかげで何とか痛みにもある程度耐性が付いている、そう思っていたが実戦となれば話は違ってくる。痛みだけでなく、命のかかった戦闘という恐怖がある。その覚悟も出来ていたはずだった。今までは運がよかったが今回初めて攻撃を受け、傷は深くは無かったがその恐怖が思ったよりもずっと重いということに気付いた。

「サラはよくレベル一であんなに頑張ったな。マナもだ。尊敬するよ。見てくれよ、俺なんてレベル2になって、もう敵も居なくなったのに未だ体が少し震えてるぜ。」

「フン、そんなものだろう。わたしだって初めて冒険に出た日の夜は恐怖が急に襲ってきたし、一昨日のネザーマンの日なんてなかなか寝付けなかった。」
ぶっきらぼうにマナが言う。
「ああ、私もマナと同じだ。夜に急に吐き気さえ伴う恐怖感に駆られてな……なかなか冒険譚のようにカッコ良くはいかんものだなと情けなく思ったものだ。」
サラもそれにうなずく。

「そうだ、みんなそんなもんだろ。でも、何回もここに潜ってればその恐怖も少しだけど、やわらいでくる。それに、臆病にしてくれるその恐怖を利用しようって風になってくるもんだ。その恐怖が無い奴なんてすぐに無理して死んじまう。実際俺がリルガミンに来たとき、酒場の常連で周りの奴らを臆病者扱いするやたら威勢のいい戦士の男が居たんだが、今はもうそいつを見かけることは無いぜ。」
イチエイも続いて賛意を示す。

『こいつら……さすが中世の世界に生きているだけあって強い…』
全くそんなそぶりを見せなかった仲間の告白に驚く。自分はまだまだこの世界に生きている実感が無かったのかもしれない。そう反省するジロウ。



宝箱を調査し、罠を外す。今回は未だ震えの残る次郎は宝箱には触れず、全てイチエイが行った。中身をジロウが鑑定し、ただのつえだと判明する。


「さあ、次の扉に行こうか。いざとなれば次郎もカティノを使えるし、ディオスも未だ残っている。それにレベルも上がっている。」
前回は連戦で失敗したが、今回は前回とは違う。十二分に安全だろう。


こうして、次郎たちは無事、合計二回の玄室戦をこなし、町に戻ることが出来た。



















     一応、前回までの投稿の分の誤字、脱字を直しておきました。かなりあったので直すのがなかなか遅れまして申し訳なかったです。一話の最初っから「の」が連続してあるし……wordの校正機能を使ってみたら良いのではとのご意見がありましたので、それを採用させていただき、さらにざっと自分の目でも見てみました。漢字の変換ミスにはwordさんも流石に対応していないみたいでそこはなかなか苦労しました。自動校正ソフトのもっといいやつがあったらうれるだろうなー。


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